1999.2 No.62  発行 1999年2月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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クラッチを踏まないとエンジン始動せず/マニュアル車の誤発進
 防止
駐車場でCO中毒死/雪の斑尾高原駐車場
加湿器リコール/TDK
心臓病の医療機器を全便に設置/英国航空
プルトニウムなどの放射性元素が地下水に拡散/米研究所発表
スキー中はヘルメット着用を/CPSC勧告
労働安全衛生マネジメントシステム/第三者審査登録への動き
あいまい広告規制/JIS、国際規格導入へ
電車内全席優先席/阪急電鉄
職場の全面禁煙は合法か?/ドイツ連邦労働裁判所が判断


1月のニュースから

■クラッチを踏まないとエンジン始動せず/マニュアル車の誤発進防止

 マニュアル車で、ローかバックに入れた状態で駐車する場合がありますが、車のエンジン始動時にクラッチを踏まないと危険な誤発進となります。警視庁によると、97年7月と9月に静岡県で、98年5月には滋賀県で誤発進による事故が発生しています。これらの事故では乗車前にエアコンをかけようとした運転者が、ドアを開けて立ったままでキーを回してエンジンをかけたところ車が急に発進(バック)、近くにいた幼児が死亡したものです。
 運輸省の指示により自動車工業会では誤発進の安全対策を検討していましたが、12日、運転席に座りクラッチを踏まないとエンジンがかからないようにする対策をまとめ、運輸省に報告しました。対象は乗用車と2トン以下の小型トラックのマニュアル車で、1月販売の新車から順次改良するとしています。この安全対策は、クラッチを踏まなければキーを回してもセルモーターに電流が流れず、エンジンの始動ができないものです。
 運転手が自分で駐車したときの状態を忘れて起きる事故ですが、人に頼んで車のエンジンをかけてもらう人もおり、危ない思いをした人は結構多いと思います。習慣性のある操作の場合、安全を疑うことには思考がおよばず、思わぬ事故が起きるものです。クラッチを踏んでエンジンを始動することはバッテリーの負担を減らすことでもあり、今日からでもぜひ実行したいものです。

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■駐車場でCO中毒死/雪の斑尾高原駐車場

 9日、飯山市の斑尾高原にスノーボードに来ていた東京都の男性(19)と千葉県の男性(20)が、駐車場の乗用車内で一酸化炭素(CO)中毒で死亡しているのが発見されました。飯山署の調べでは死亡した2人は午後3時半ころ仲間と別れてホテルに戻っています。午後7時ころ仲間が携帯電話で2人を呼び出しても応答がなかったことから、この時間にすでに死亡していたと見られています。事故当日2人は、買い出しに行く約束になっていたようです。
 事故当時の推定状況では、外気温は氷点下8度と寒く、車には30〜40cmの雪が積もっていたため暖気運転をして体を温めながら、ボンネットに積もった雪を溶かそうとしていたようです。車の後方は雪が壁状に高くなっており、マフラーも埋もれていて車の周辺の雪は車底部よりも高くなっていました。このため暖気運転の熱でマフラー周囲の雪が溶けて空間ができ、車体下の空間とつながり、周りの雪で逃げ場のない排気ガスが車体の下にたまる状態だったと見られています。その後、車の底部の継ぎ目などの隙間から排ガスが車内に入り込んだと推測されます。
 車の排気ガスの恐さを見た気がしますが、「雪が降り続いている状況でボンネットに30cm積もっていれば、暖気では溶けない。そうした雪国の常識も都会の人にとっては想像できないことかも知れない」という宿泊関係者もいました。
 最近の飯山地方は高速道路でアクセスが楽になったため、夜明け前にスキー場に到着し、リフトが動くまで車中で過ごす若者グループが増えているといいます。雪に埋もれたままエンジンをかけ、車内に長時間いないよう“雪国の常識”を理解して欲しいものです。

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■加湿器リコール/TDK

 TDK製のスチーム式加湿器「ユゲインスチームマスター」による事故が今月、全国で3件発生したことから同社では25日、2機種合わせて4万9,800台を回収すると発表しました。 事故原因は加湿器のスチームを発生させるヒータ部分が外れてボディー底部に接触し、その熱でボディーが溶けるもので、最悪の場合は発火し火災の原因になるとしています。対象製品は「KS-500H」と「KS-300W」です。
 TDKでは94年7月、スチ−ム式加湿器KS-31W、KS-32Gの2機種について「スチ−ムを発生させる“蒸発皿”のパッキン部より水モレが発生するケ−スがあり、最悪の場合、発火にいたる恐れがある」としてリコールしています。しかも、このときの回収が順調に進まなかったために96年3月、再度リコールの社告を出していました。
 今回のヒーター部が外れるケース、前回の水漏れのケース、いずれも非常に初歩的な設計ミス、あるいはずさんな製造による欠陥だと考えられます。94年の社告の「…今後、このようなご迷惑をおかけすることのないように万全の体制で製品開発、品質管理を行なっていく所存でございます…」とありますが、“万全の品質管理”を行っていなかったことが、今回のリコールで明らかになってしまいました。
 この程度の会社なのかも知れませんが、全く困ったものです。

<実は数年前、デザインが気に入りTDKの加湿器を購入し、該当機種ではないものの少々不安を感じながら毎日使用しています。もちろん家を空けるときには電源プラグをコンセントから抜きますが…。>

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■心臓病の医療機器を全便に設置/英国航空

 ブリティッシュ・エアウェイズは8日、今後1年以内に同航空の運行便全てに心臓モニター装置や心臓蘇生装置などを設置すると発表しました。同社では、このような医療機器を運行便全てに設置するのは世界初とし、4月から長距離便を手始めに順次設置することにしています。
 設置される心臓モニターを使用すると、地上の医師に衛星経由で患者のデータを送ることができ、乗務員が医師の指示に基づき適切な措置を施すことができます。また心機能を回復させる「細動除去器」も設置され、患者の心拍をチェックし、必要であれば電気ショックを与えることもできるようになっています。
 航空機の場合、乗客への緊急を要する医療処置の必要性は高かったと思います。同社の取り組みは評価できるもので、他の航空会社の追従が望まれます。

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■プルトニウムなどの放射性元素が地下水に拡散/米研究所発表

 プルトニウムなどの放射性元素は水に溶けにくいため地下での移動が少ないと考えられていて、日本など多くの国では原発や再処理工場から出る廃棄物を地中に埋設処分することにしています。
 米国立ローレンス・リバモア研究所のアニー・カースティング博士らが7日付の英科学誌ネイチャーに発表した研究結果で、プルトニウムなどの放射性元素は、地下水中の浮遊粒子に付着して比較的短時間に遠くまで運ばれることが分かりました。
 博士らは1956年から92年まで地下核実験が行われていたネバダ実験場内の分析用井戸から、97年に地下水を採取して調査したところ、深さ約1,400メートルの地下核実験の穴から1.3キロ離れた2カ所の井戸で微量のプルトニウム、コバルト、セシウムの放射性元素を検出しました。プルトニウムの組成分析の結果、実験の穴から地下水中を移動してきたのに間違いないと判明したものです。
 水に溶けないといわれてきたプルトニウムですが、博士らは地下水中に自然にできる粘土などの浮遊粒子の表面に付着して運ばれたと考えています。
 日本で計画している高レベル放射性廃棄物はガラスで固めて地下数百メートルに埋設し処分する方法ですが、数万年にもおよぶ廃棄物から出る放射能が地下水などで拡散することがあるとすると大きな問題です。放射性廃棄物の処分についての安全性評価を見直す必要があるようです。

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■スキー中はヘルメット着用を/CPSC勧告

 米消費者製品安全委員会(CPSC)はスキーやスノーボードの愛好家に対し、頭部の安全保護のためヘルメットの着用を勧告する報告書を8日、発表しました。
 米国では1997年にスキーやスノーボードによる転倒や衝突事故で頭部の障害事故が1万7,500件発生しています。これら事故の内CPSCでは大人の事故の44%、15歳以下の子供の事故の53%にヘルメット効果があったはずだとし、大人で5,100件、子供で2,600件はヘルメット着用により頭部障害を防げたか、あるいは障害の程度を軽くできたと報告しています。
 また、スウェーデンでのヘルメットを着用したときの頭部障害は、着用しない人より50%も低かった、との調査結果も報告されています。
 街中でのスケートボードや、自転車通学時のヘルメット着用は違和感無くても、雪のゲレンデでヘルメットの着用は躊躇する人もいるかも知れません。しかしスピードもでるスキー場での衝突・転倒事故は、「アスファルト道路に倒れることと同じように危険なもの」と考たほうがいいようです。

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■労働安全衛生マネジメントシステム/第三者審査登録への動き

 労働災害による経営リスクを最小限にする労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)はISOでも標準化について検討されましたが、各国の法体系と関連することなどから1997年、時期尚早として専門委員会(TC)の設置が見送られています。しかしヨーロッパでは英国規格(BS8800)をベースにした第三者機関による審査登録が1997年から始まっていて、現在すでに100件近く登録されています。
 日本でも最近になり審査登録への動きが活発になっています。自動車部品メーカーの矢崎部品が日本品質保証機構(JQA)から認証を取得、橋梁などの建材関連製品を作る栗本鉄工所でも日本検査キューエイ(JICQA)から認証を取得しています。
 また、ソニーケミカルもデット・ノルスケ・ベリタス(DNV)から認証を取得、日本環境保証機構(JACO)も複数の電機メーカーの審査を手がけている状況です。
 現在、労働災害事故は全世界で年間1億2,500万件、事故死は22万人に上るとの国際労働機関(ILO)の調査報告があり、各国のOHSMSへの期待とニーズは高いといわれています。日本でも労働災害・疾病により被災者は年間約60万人、死亡者は約2,000人に達しており、システムとして労働安全衛生に取り組むことで安全な職場環境を構築したい企業は多いようです。
 OHSMSの認証を取得した栗本鉄工所の埼玉工場長は、「安全衛生管理の継続展開によってより快適で安全な職場を構築したい。その結果、連続稼働日数(98年12月末時点1380日)を延ばせれば」とした上で、「幸福を求める職場で不幸になるのは絶対許されないこと。効果は確実に出てくるはず」と期待しています。
 さて、2月に入り水道管不当カルテル事件で騒がしいのですが、栗本鉄工所からも逮捕者が出てしまいました。企業の努力で品質、環境、労働安全衛生などのシステムを整備し認証を取得しても、「法に抵触してでも利益を得よう」という営業モラル?が優先する体質があるのでしょう。支店長、部長クラスが逮捕されたということは会社全体のシステムが、顧客のために機能していないことでもあります。環境ISOも取得している同社ですが、企業の社会的責任や法律といったビジネス環境への影響・対処は考えていないのでしょう。残念なことです。

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■あいまい広告規制/JIS、国際規格導入へ

 企業が品物やサービスの環境面について広告などで表現する際の規格がISOにより検討されていましたが、規格案が31日までに明らかになりました。規格案では「環境にやさしい」などのあいまいな表現は使えず、広告内容の妥当性を証明する情報の提供を企業に義務付けています。通産省はISOでの規格化を受け、5月にもJISで制定する考えでいます。
 新JISでは、消費者が企業の広告内容の根拠などについて疑問を持った場合、企業に対し情報提供を求め検証できることになり、消費者にとっては好ましいことです。
 規格の対象は広告、宣伝、製品や包装に付けるラベルやマーク、製品の取り扱いや技術の説明書などで、製品の購入者にとって科学的に信頼できる情報であることの根拠を企業に提供させるものです。具体的には、企業が第三者機関による保証・証明を受けていない場合の表現では、「正確で誤解を与えず検証が可能」、「生産から廃棄までの全段階を考慮して製品に環境改善の効果がある」などの条件を満たす必要があります。また、「リサイクル率」「省エネ」など広告でよく使われる12項目の表現には評価方法を定めています。企業は作成した書類を製品の寿命を考慮して一定期間持ち、消費者らの求めに応じて公開しなければなりません。“企業秘密”として情報の提供が行われないことへの対処では、「企業秘密のみで検証が可能な表現は使用できない」としました。
 製品についての情報・説明(プロダクト・インフォメーション=PI)の内容を、評価・検証せずに外注の作成した文章、コピーをそのまま使用する企業もあるようです。また顧客のためにならないPIも多いのですが、企業のリスクとしてPIをとらえる意味からも、今回の新JIS制定により企業の考えが少しでも変化することを期待します。

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■電車内全席優先席/阪急電鉄

 阪急電鉄では4月から、高齢者や体の不自由な人のための優先座席を全ての席に拡大することを決めました。高齢者や妊娠中の女性などから寄せられた「優先座席を増やして欲しい」との要望に応える措置で、全国初の試みです。
 シルバーシートでおなじみの優先席ですが、すぐに席が埋まってしまい一般席を探すものの「優先席でなければ席を譲らなくてもよい」という利己的な解釈・行動をとる人が多く、いやな思いをすることも多いようです。このためあえて優先席に座らずに頑張って空いている一般席を確保する高齢者もいて、まるで高齢者以外の人に対する防御反応のようです。このような敵対関係では、公共機関における利用者同志の協力など生まれる状況ではないようです。今回の阪急電鉄の対応で評価できるのは、優先席の数をいくつか増やすということではなく、全席にしたことです。これは「電車のいすは弱い人優先で、元気な人は席を譲りないさ」という啓もう活動でもあります。今まで威張って席を譲らなかった人の困惑顔を見てみたいものです。
 困っている人がいようとお構いなしの国民性?は恥ずべきもので、他の先進諸国で弱者を省みない行動をとれば、蔑みの言葉や罵声を浴びることさえあります。我が国では自分の(経済)利益が最優先の“エコノミックアニマル”が(最近はなぜかマスコミから消えた言葉ですが)、いまだに大手を振っているようです。子供の教育やしつけの議論の前に、大人のしつけを論じなければなりません。

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■職場の全面禁煙は合法か?/ドイツ連邦労働裁判所が判断

 ドイツのハンブルクの半導体メーカーが製品への損害や非喫煙者への健康被害を避けるため、社内での喫煙を禁じたことに対し愛煙家の従業員が「人権侵害」だとして撤回を求める訴訟を起こしていましたが、ドイツ連邦労働裁判所(労働事件の最高裁判所)は19日、「企業経営者は職場を全面禁煙にする権限がある」との判断を示しました。
 このメーカーでは禁煙決定後に従業員の抗議に対処するため、戸外に風雨よけのガラス張り喫煙室を設けたのですが、そこで喫煙する従業員から「動物園の動物と同じように観察されているようで不愉快」との反発から従業員が提訴に踏み切ったものです。職場で完全な分煙対策をとることや喫煙室のスペースを確保することが難しいこともあり、戸外に特別な部屋を設けることは致し方のないことでしょう。また、就業時間中の喫煙であることから、ガラス越しに内部が見えるようにするのも経営者としては当然のことですが、おそらく人がよく通る場所だったのでしょう。従業員が「人権侵害」と反発した理由も理解できます。
 判決理由で労働裁は「非喫煙者をタバコの煙による健康被害や不快感から守るための禁煙措置は妥当」としながらも、「過剰な規制は望ましくなく、許容できる範囲で喫煙者の自由を認めることも必要で、全面禁煙にするかどうかは喫煙者と非喫煙者の利益を勘案し、ケースバイケースで判断すべきだ」と付け加えています。確かにその通りで、喫煙者のマナーの良し悪しで非喫煙者の反発も大きくなるものです。米国ほどでないにしても禁煙は世界的な流れですので、マナーある喫煙を望みたいものです。
 ところで1月21日にオープンした地下鉄赤坂見附駅前、東急プラザビル2階の「ロイヤルホスト」は、大手ファミリーレストランで初の店内全面禁煙です。「タバコはファッションだから」という若者も多いことから、ファッション的な街での禁煙レストランは歓迎できます。

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終わりに

 最近では学校や家庭の焼却炉を使用しない動きも多くなり、ビニール類の焼却で発生するダイオキシンをなるべく出さない取り組みが進んできました。このため伝統行事でもダイオキシン問題を無視することはできず、小正月の1月15日頃各地で行われた「どんど焼き」にも変化が起きています。
 大量のしめ飾りなどを高く積んで燃やす「どんど焼き」ですが、今年は畑の中や河原の会場でビニール類を分別したところがありました。神社でも神社本庁が97年末出した分別徹底の通達に従い、「どんど焼き」でビニール類の分別を求めたところもありました。ただ住民がまだ慣れないのか完全とはいかなかったようです。
 それでも伝統行事がダイオキシン問題で中止にならないよう、主催者側は来年も分別徹底をさらに進めることになるでしょう。

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