1995.10 Vol.22  発行 1995年10月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


[ ホームページ ] [ インターネットプラザ ] [ ASP ホームページ ] [ ASP news ]


通産・製品評価技術センター、1日スタート
企業庁下請け取引ビデオ制作
NZミネラル水にカビ/西友が販売 東京・豊島区が回収指示
サントリー、アルコール飲料回収/雑菌混入し異臭が発生
カルピス、自主再検査/ミネラル水「エビアン」
ミネラルウオーター新たに7銘柄に異物/都が回収指示
トヨタの国内車、欧の側面衝突基準採用
危険わかれば自動回避/三菱自、研究車両を開発
携帯電話で安全基準/郵政省着手 電波の人体への影響考慮
原潜あわや大惨事/電気料滞納のロシア基地 送電止められ炉が異常加熱
フロン、エタン 間違いのない転換実行を/中小企業事業団指導員からみた助言

9月の新聞記事より

■通産・製品評価技術センター、1日スタート

 通産省の通産検査所が改組され、10月1日に「製品評価技術センター」として新たに出発する。世界レベルの産業・技術基盤の整備をどう推進するか、深山英房所長に機構改革のねらいなどを聞いた。
――“くらしと技術の明日を目指す”というキャッチフレーズでの再出発ですが、業務内容は‥‥。
 「従来以上に消費者に近い存在になることはもちろん、産業・技術インフラの整備では世界のトップレベルを目指す。PL法施行を背景とする製品事故の未然防止など消費生活基盤、DNA解析、福祉用具の標準化の推進といった技術基盤、さらに産業基盤である化学兵器禁止条約や基準・認証制度の整合化といった国際対応の3つの基盤整備が柱だ」
――技術基盤分野での蓄積には定評がありますね。
 「本所には先頃『製品・人間生活空間系安全解析施設』を新設し、床のすべりやすさや照明のギラつきなどを実験している。高齢者・障害者福祉の観点から快適環境のあり方を追及している。一方、DNA解析はバイオテクノロジー産業の育成の一環であり、100℃でも元気に繁殖する『好熱菌』のメカニズム解明は世界的な取り組みだ。来年早々にはどこにどういう遺伝子があるか突き止め、新たな細菌研究のテーマを固めることができよう」

 産業界、社会のための指針作りを期待しつつ、どのように機能するのかを見ていきたいと思います。

■企業庁下請け取引ビデオ制作

 通産省・中小企業庁は7月に施行されたPL法に対応、同法と下請け取引との関係を説明した「PL法って何だ?」と題するビデオを制作した。各都道府県の下請け振興公社を通じて、約500本を一般に貸し出す。これをツールに企業からの相談受け付けや製品安全に関する普及・啓発策を強化していく。
 ビデオは製造現場の実態に即したドラマ仕立て。@欠陥の定義や表示のあり方などPL法の概要A自己責任の有無や親企業との負担割合、PL保険の扱いといった取引上の留意点B顧問弁護士制度や製品安全向上資金融資、関連情報の提供事業など国の施策――を分かりやすく紹介している。出演はタレントのベンガルら。
 中小企業庁が有識者や経営者代表らから組織したビデオ作成委員会(委員長富川勲氏=弁護士)が企画した。時間は約30分、非売品。ビデオと合わせて、PL法と下請け代金支払い遅延防止法の条文を盛込んだ「下請け取引ミニミニ法令集」も貸し出す。

■NZミネラル水にカビ/西友が販売 東京・豊島区が回収指示

 スーパー大手の西友で販売していたニュージーランド産のミネラルウオーターにカビが混入していることがわかり、東京都豊島区は13日、輸入業者に販売の中止と、すでに出回っている商品の回収を指示した。
 都衛生局によると、カビ混入が見つかったのは商品名「ナチュラルスプリングウォーター」で1.5リットル入りのペットボトル入り。食品輸入業者の「スマイル」(東京都豊島区)が昨年8月から今年8月の間、約132万本を輸入、これまでに約68万4000本が全国217の西友の店舗に卸されている。
 都では今月11日に「綿状の異物が入っている」との通報を受けて、都立衛生研究所で在庫品を検査したところ、混入した異物がカビの一種であることが、13日までに判明した。販売店などへの同種の苦情はこれまでに都内や神奈川県横須賀市で計9件あったが、体の不調を訴える例はないという。西友によると6日から販売を中止、すでに購入した客には返品を呼び掛けるという。

 14日には中堅食品スーパーいなげやで販売しているミネラルウオーターにもカビの混入が発見され、東京都衛生局は同社に販売の中止と回収を指示しました。
 またセゾングループの良品計画(本社東京都豊島区)が販売しているミネラルウオーターでは、糸状のプラスチック片が見つかり、豊島区は19日、商品の販売停止と回収を指示しました。

■サントリー、アルコール飲料回収/雑菌混入し異臭が発生

 サントリーは18日、アルコール分4%の缶入り飲料「カルーアミルク」の一部に雑菌が混入していたとして、姉妹品の「カルーアミルクカプチーノ」と合わせ、計8000ケース(1ケースは190ミリリットル入り30本)を回収すると発表した。同製品は原液を英国の酒類・飲料メーカー、アライド・ドメック社(本社ブリストル)から輸入、協力会社のジャパンフーズ(千葉県長柄町)に生産を委託していた。
 異常があったのは今年4月20日に製造した製品で、混入していた細菌はバチルス属という分類に属する雑菌だという。サントリーでは、この雑菌は空気中や土壌中に一般に存在しており、飲み込んでも人体には影響がないが、混入すると、酸味と異臭が発生することから、回収に踏み切った。
 「カルーアミルク」に異臭がするとの連絡が消費者から始めて寄せられたのは8月29日。サントリーではロット番号が同じ製品1000本を対象に検査を実施したが、当時は細菌が発見できなかったという。しかし、9月14日に同じロット番号の製品について再び苦情が寄せられたため、2万3000本を対象に再検査。その結果、25本からバチルス属の細菌が見つかった。

 ミネラルウオーターの騒ぎの最中に今度はサントリーです。いったいどうなっているのでしょうか。厚生省もとうとう9月20日に関係する6業界団体に衛生管理を徹底するよう通知しました。
 それもつかのま、今度は病院で使用する栄養剤の高カロリー輸液の袋に、虫が混入しているのが発見され、製造元の森永ルセルは23日に自主回収を行うと発表しました。
 さいわい患者に投与する前に看護婦により発見されたということです。

■カルピス、自主再検査/ミネラル水「エビアン」

 ミネラルウオーターに異物が混入する事件が相次ぐ中で、カルピス食品工業はフランスから輸入販売している「エビアン」について、メーカー在庫の30万ケースと年内に輸入する20万ケースの全品を再検査する方針を決めた。倉庫の製品を一本一本取り出し、従業員が目視でカビやプラスチック片などの有無をチェックする。エビアンは一連の異物混入騒動とは無関係だが、衛生管理に前向きな姿勢を打ち出すことで、消費者のミネラルウオーター離れを防ぎたい考え。
 カルピス食品はこれまで、仏産のミネラルウオーター「エビアン」について、パレットごとの外観検査やコンテナごとの風味検査などを実施、その上で商品を出荷してきた。だが、ミネラルウオーターの安全性に対する消費者の不安をぬぐい去るには、さらに万全の衛生対策を講じる必要があると判断した。
 当面の施策として、年内に取り扱う約50万ケース(1ケースは1.5リットル入り12本で換算)を対象に、一本一本を箱から抜き出して目視検査する。既に相模工場(神奈川県相模原市)で作業を始めている。ベテランのパートタイマーを中心に約30人のスタッフが、ひと月余りをかけて全商品をチェックする計画だ。
 カルピス食品によるとエビアン社はくみ上げた地下水を日に4回、製品についても同様の抜き取り検査を実施している。

■ミネラルウオーター新たに7銘柄に異物/都が回収指示

 東京都は25日、新たに輸入品6、国産品1銘柄のミネラルウオーターに異物が混入していることを発見、輸入業者および販売業者に販売中止、製品回収を指示したと発表した。
 都の緊急監視や消費者の苦情で明らかになった。この監視などによって、これまで9銘柄、16検体からカビ、プラスチック、鉱物(カルシウム)といった異物が検出されたことから、都は都食品衛生協会、都清涼飲料協同組合、都酒造組合、都小売酒販組合など8つの各団体長に、衛生管理の徹底を通知した。
 新たに発見された異物混入のミネラルウオーターは次のとおり。
◆ニュージーランド産「キーウィ ブルー」(大坂、三ツ矢貿易扱い品)、カビ
◆豪州産「パームスプリングス」、カビ
◆スイス産「ヴァレリースイス」、白色の微粒子状(主成分はカルシウム)
◆国産「哲多のはつらつ 健康水」(製造者、岡山県哲多町)、カビ
◆イタリア産「S. Bernardo」、白色のプラスチック片
◆カナダ産「セントアン ミネラルウォーター」、カビ
◆ベルギー産「スパ ミネラルウォーター」、カビ

 ミネラルウオーターの異物混入事件は10月に入ってもまだまだ続きます。カナダ産「ローレンシャンの水」、米国産「クリスタルガイザー・アルパインスプリングウォーター」と国産の「富士山の伏流水 朝霧高原」が東京都により販売中止と回収が指示されました。
 またジャスコは自社のPB商品「カナディアンロッキーの水」を、キャップに緩みのあることが確認されたとして回収することを発表しました。

■トヨタの国内車、欧の側面衝突基準採用

 トヨタ自動車(社長奥田碩氏)は、国内販売の乗用車について、98年10月に施行予定の欧州の新側面衝突基準を採用することを決めた。これまでは米国の新側面衝突基準に適応させていたが、欧州基準のほうが国内での実際の事故状況に近いことや、米国基準よりも厳しいことから、より高い水準の安全基準を導入する。米国へ輸出する車は米国基準を優先する。これからトヨタが国内販売するすべての乗用車は欧米どちらかの基準を満たすことになる。
 米国基準は93年から実施されており、欧州基準は98年10月の導入に向け審議中。しかし、欧州ではドイツの自動車ユーザー団体である「ADAC」が欧州新側面衝突基準として各社の試験を実施、公表しており、この試験方法が採用される可能性が高い。このため6日に国内販売した「サイノス」は時期は未定だが欧州へ輸出する計画もあり、トヨタの乗用車として初めて欧州基準を採用、達成した。

 日本企業が作る国内向製品では、安全レベルが欧米に比べて低いことが多々ありましたが、企業も自国の消費者に対する安全性が適正かどうかを考えるようになったようです。PL法の良い効果かもしれません。

■危険わかれば自動回避/三菱自、研究車両を開発

 三菱自動車工業は26日、自動操舵で衝突を回避するシステムを搭載した先進安全自動車(ASV)の研究車両「三菱ASV」を完成したと発表した。三菱ASVは、カメラやビームセンサーなどにより車周辺の状況を把握し、ドライバーや歩行者に危険が発生した場合に警報を発生する仕組み。ドライバーの反応が遅れた場合は自動制御と自動操舵で危険を回避する。ASVはトヨタ自動車や本田技研工業が研究車両を完成させているが、自動操舵システム搭載は三菱自工が初めて。
 危険を予測するシステムは「居眠り運転警報」「後方・後側方警報」「車線逸脱警報」「コーナー進入減速」「衝突回避」など11種類で構成。衝突回避システムには自動操舵を採用、警報にドライバーが反応しない場合は、自動制御と自動操舵で危険を回避することができるという。
 事故を起こした後に乗員と歩行者を保護する「衝突安全」については、ショックを吸収する車体構造の開発や、サイドおよび後席エアバッグによる乗員保護システムなど、4種類のシステムを採用した。

 安全な車の研究が進んでいます。トヨタが最初に開発し、本田が続いたASV車ですが、三菱自工の自動操舵システムは興味深いものです。実用化にはまだまだ時間がかかると思いますが、エアバスのように運転手のマニュアル操作とけんかすることの無いよう願いたいものです。
 安全対策を強化する動きは2輪車でも同様で、本田は13日、2輪車用のABSと前・後輪連動ブレーキシステムを開発したと発表しました。

■携帯電話で安全基準/郵政省着手 電波の人体への影響考慮

 郵政省は25日、急速に普及している携帯電話を安全に使うためのガイドライン作りに着手すると発表した。携帯電話に使われている無線や電気が脳波など人体に与える影響について医学的な分析が確立しているわけでないが、米国がすでに92年にガイドラインを策定している。
 今回、作成するのは、携帯電話専用のガイドライン。米国の場合、消費者にアンテナ部分を頭から2.5センチほど離して利用するよう呼びかけているほか、通信端末メーカーにもこうした使用に適した機器を作ることを義務付けている。
 米国では、脳しゅようにかかった人が携帯電話の頻繁な使用が病気の原因として裁判を起こす例も出ている。

■原潜あわや大惨事/電気料滞納のロシア基地 送電止められ炉が異常加熱

 ロシア北部コラ半島のムルマンスクにある北方艦隊基地で21日、電気料金の滞納を理由に基地への送電が停止したことが原因で、係留されている原子力潜水艦の原子炉が異常加熱する事故が起き、大惨事となる可能性もあったことが分かった。
 タス通信によると、地元電力会社のコラ電力が基地への送電を停止したため、原潜の原子炉の冷却装置が作動しなくなり、異常加熱が起きた。基地関係者の説得でコラ電力がまもなく送電を再開、大惨事は免れたという。
 同通信は「基地が電気代を払わなければ、コラ電力はいつでも送電を止める権利があり、基地に係留されている数十隻の原潜で大事故が起きる危険が常にある」と警告している。
 国防省も、電気料金200億ルーブル(約4億5000万円)を滞納しており、戦略核兵器が配備されている北部アルハンゲリスク州プレセツクのロケット発射基地が送電を停止された。

 ちょっとショッキングですが、自然災害ではなく、料金滞納による電力供給停止がもたらすリスクを考えることは、今まであまり無かったと思います。
 製品安全を考えるときに、社会基盤の前提をうっかり見落としてしまうこともあるかもしれません。注意したいと思います。

■フロン、エタン 間違いのない転換実行を/中小企業事業団指導員からみた助言

 中小企業が行政・業界団体の指導・支援を受けるのが少ない理由は?
 「そのような指導・支援のあることを知らない(工業新聞や県の情報誌および業界誌を見てない)」、「溶剤を納入しているディーラーが、ユーザーに指導を受けさせないようにしている」その理由として@ユーザーが外部から指導を受けると、情報が流れて他のディーラーが入り、商権が失われる恐れがあるAユーザーのためよりディーラー自身の利益が出る方法(設備投資額大きく、洗浄剤で利益大のものなど)を、勧める。B指導員がきた場合、ディーラーの説明や指導で間違ったところが分かると信用を落とすことがあげられる。
 あるユーザーを訪問したとき、設備が不完全で塩化メチレンが大量に発散していて、作業環境は悪いし、公害の心配もある現場でした。
 「どうしてチラー(冷水装置)を付けたり、フリーボードを高くするよう指導しないのか」とディーラーに聞きましたが、頭を傾げるだけ(そんな指導をすれば、月10缶納入していたのが、5缶に減って売り上げが減るためのようです)。
 脱フロン・エタンの検討はまず無洗浄できないかのステップから始まります。中小企業事業団からは「脱エタンのための現場用手引書」(9冊分)を発行しています。また、専門指導員の無料派遣など、各種の支援制度を設けています。ぜひ、これらを利用して、間違いのない脱フロン・脱エタンを実行していただきたいと思います。

終わりに

 キリンビールの「景品ビールジョッキ」と「太陽と風のビール」に始まった一連の回収騒動はとどまる所を知りません。
 飲食用製品などの製造・販売者の品質に関する問題が一気に吹き出してきました。
 これら人体内部に入る製品は、一般の工業製品に比べて品質管理は厳格であるべきですが、人体の許容値の大きさやバラつきにより、事故として表面化するのはごく一部でしかありません。今回の騒動は、人体に害のないカビなどの異物だったので、企業にとっては幸いでした。
 これを機に品質管理システムを見直すのは当然行われるでしょうが、クレーム処理や行政への報告、そして回収作業やマスコミ対応など、一連の処置が適切に機能したのか、あるいはできるのかをあらためて検証するのもよいでしょう。

Google
  Web ASP