1995.8 Vol.20  発行 1995年8月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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PL法、広告業界にも影響/誤使用防ぐ情報伝達必要
精米対象外のはずなのに/米穀店PL法に当惑
化粧品業界 欠陥なくても見舞金
景品ビールジョッキ 保冷液漏れ危険/28万個提供のキリン、回収
CSやPLお手の物/松下 高校家庭科講習会に協力
はさみ込み防ぐパワーウインドー/三菱自、全車に
色覚異常の人に配慮した表示を/厚生省検討会が提言
ISO47カ国 環境監査規格を採択/日本もJIS制定着手
三宅デザイン、名鉄百貨店を著作権侵害で訴え/衣料デザインで国内初
図書館でビデオ上映 著作権法違反?

7月の新聞記事より

■PL法、広告業界にも影響/誤使用防ぐ情報伝達必要

 「広告が理由でPL責任を問われることは、理論的にはあっても実際にはないのでは」と見るのは、電通法務部の田中忠雄氏。景品表示法や薬事法などすでにある法律で広告は枠をはめられている。例えば「自動車のエアバッグを装着すれば絶対安全」といった広告は、「絶対安全」はあり得ず、PL法以前に「不当表示」にあたる、というのが田中氏の主張だ。
 これに対し広告・マーケティング研究家の山田理英氏は「PLの観点では、今の広告は危ないことだらけ」と、反論する。あいまいな広告表現は相変わらず散見されるし、「景表法など既存の枠組みは最低のガイドライン。その中ですらトラブルは多いからPLが必要になった」と主張する。実はPL法には「広告」の文字は登場しない。「表示・警告上の欠陥」で直接責任を問われるのは取扱説明書などの不備が中心で、広告は2次的なものと見られている。これが解釈が分かれる原因だが、「広告も製品表示の一部」とされる可能性もあり、山田氏は「広告会社は大丈夫と楽観せずに最悪のケースを想定すべきだ」と話す。

 PL法の趣旨を今一度考えてみれば、企業(広告業界)が何をすべきか分かると思います。
 現状の広告作品が、消費者に正しく製品情報を提供しているかどうかを考えてみましょう。「広告に表現されていることだけが正しければよい」という発想では不十分です。消費者が実際に商品を使用するための情報が、過不足なく提供しているかどうかをリファレンスとすべきでしょう。
 良いこと尽くめの宣伝広告よりも、消費者の知りたいことを正しく提供する「冷静な広告」に安心感を持つ消費者も多いと思います。

■精米対象外のはずなのに/米穀店PL法に当惑

 7月1日のPL法施行に伴い、加工した商品の欠陥で身体に被害を受けた場合、損害賠償を問えるようになった。同省は他の農産物と同様、「精米は加工品には当たらない」と判断している。しかし、「今後、裁判の判例を見ないと確実なことは言えない」(日本米穀小売商業組合連合会)との見方もあり、あいまいさも残っている。
 こうしたことへの不安もあってか、一部の業者などが取引のある米穀店にPL保険への加入を要請。また、同法の存在をちらつかせて嫌がらせをする例も見られ、同連合会への相談・間い合わせが6月半ばごろから急速に増えているという。
 保険に入れば安心感はあるが、経営に余裕のない米穀店にとって保険料負担は重荷。このような事態を受け、コメ小売店の団体も共済事業での取り扱いなど対応策を検討し始めた。

 どのような不具合に対して不安がっているのでしょうか。今までの精米の質に関するユーザー情報を持っていると思いますが、異物の混入程度の問題なら心配することもないと思います。故意に毒性のあるものを混入すればそれは犯罪であり、PLとは別の問題です。

■化粧品業界 欠陥なくても見舞金

 大手化粧品メーカーなどで構成する日本化粧品工業連合会(福原義春会長)は製造物責任法(PL法)に対応して裁判外紛争処理機関「PL相談室」を設置「紛争処理ガイドライン」を作成した。
 PL相談室は常時2人の担当者が苦情などに対応するほか、紛争時のあっせんを手掛ける「委員会」を月内をメドに設置する。消費者とメーカーの相対交渉が不調の場合、間に入って主張の調整や和解に向けてのあっせん案を提示する。あっせんは有料だが裁判に比べ費用や時間はかからないという。メンバーは弁護士、技術関係の有識者、消費者問題関係の有識者、皮膚科専門医、消費者代表の五人で構成する。
 ガイドラインによると、各メーカーは製品に欠陥があった場合に賠償に応じるだけでなく、そうでない場合でも一定の条件を満たしていれば消費者救済の見地から治療費や見舞金を支給する方針。条件は正しい使い方を守る、製品を提示する、専門医師の診断書などでトラブルと製品との間に相当の因果関係が認められる−−など。同様の仕組みとしては医薬品業界が79年に医薬品の副作用で被害救済制度を発足させている。

■景品ビールジョッキ 保冷液漏れ危険/28万個提供のキリン、回収

 有害なエチレングリコールが保冷液として封入されているプラスチック製の2層構造ジョッキにひび割れが生じ、保冷液が飲み物に混入して健康を損なう恐れがあることが13日、厚生省の調べで分かった。同省はこのジョッキを景品としているキリンビールと、販売しているバドワイザー・ジャパンに対し、ひび割れができたときは使わないよう消費者に周知徹底するよう指導した。
 キリンは14日、新聞に社告を出し、自主回収を始める。バ社は既に7月上旬から自主回収している。
 回収の対象になったのはキリンの「キリンフロスティビアマグ」(280ml)とバ社の[アイスマグ」(470ml)と「アイスコールドマグ」(同)。
 厚生省によると、6月3日、静岡市の男子中学生が冷凍庫に入れていたキリンのジョッキに麦茶を入れて飲み、下痢をした。ジョッキを調べたところ、約8センチのひび割れがあり、保冷液のエチレングリコールが麦茶に混入したらしい。

 このジョッキは台湾製ですが、通常使用される低毒性のプロピレングリコールの代わりに、自動車の不凍液などに使われるエチレングリコールが保冷液の中にジョッキ1個あたり15ミリリットル含まれていることが分かったものです。
 キリンビールでは、自社で成分分析せずに「中の液体は無害」と外箱に表示してしまったとのことです。大手の会社でもこのような甘いチェック体制だったとは驚きです。
 安全に関わることは自分で検査・試験するのが原則であり、そのうえで外部機関のデータや取引先データと比較・検証すべきものです。そのときには、取引先からのデータあるいは文書が信頼できるかどうかの基準も確立していなければなりません。

■CSやPLお手の物/松下 高校家庭科講習会に協力

 松下電器産業(社長森下洋一氏)と松下電池工業(社長堂西司郎氏)は、家庭科の先生を対象にした「第39回全国高等学校家庭科講習会」に全面協力、27日、松下電池本社工場(大阪府守口市)内で電気製品の講習会や工場見学を実施した。顧客満足度(CS)活動や製造物責任(PL)法への対応といった視点から協力したもの。引き続き28日も実施する。
 300人の先生を対象に電池、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、掃除機の5つの製品について、1時間半ずつ製品の基礎知識、使用方法、注意点などについて説明した。
 94年から高校の家庭科が男女必須科目になり、家庭一般(衣服、料理)、生活技術(電子機器、コンピューターなど)、生活一般の3科目から1つを履修することになった。消費者としての自覚を高める狙いなどがある。

 企業の消費者啓もうの具体的な取り組み例です。パンフレットなどの一方向から提供する消費者啓もうよりも、教育の現場に安全意識を浸透させるのはより効果的です。

■はさみ込み防ぐパワーウインドー/三菱自、全車に

 三菱自動車工業(社長塚原董久氏)は幼児などのはさみ込みを防止する「セーフティー機構付きパワーウインドー」をパワーウインドー装着車全車に標準装備することを決めた。すでに軽自動車「ミニカ」など一部車種については標準装備しているが、今後、モデルチェンジの機をとらえて軽自動車から高級車までの全車標準装備に踏み切る。自動車メーカーでは安全装備について日産自動車、トヨタ自動車の両社がエアバッグの全車標準装備を決めているが、セーフティー機構付きパワーウインドーの全車標準装備を決めたのは同社が初めて。特にファミリー層にアピールしたい考えだ。
 セーフティー機構付きパワーウインドーはパワーウインドーの上昇時にはさみ込みがあった場合、センサーがはさみ込みを感知し、自動的に下降、停止するシステム。パワーウインドーの普及に伴って、幼児が誤ってはさまれるケースが出たことに対応して搭載された。
 同社では93年9月に発売した「ミニカ」に標準装備したのを皮切りに、その後に投入した「スペースギア」、「パジェロミニ」、「ディアマンテ」などの新型モデルにはすべて標準装備している。さらに今秋にもモデルチェンジが予定されている「ミラージュ」にも標準装備するほか、モデルチェンジを機に全車に対して標準装備を進めることを決めた。

 この装備によるコストアップはないということです。コストアップせずに安全性向上に努力することで消費者をつかもうとする企業は最近多くなってきました。販売価格を下げて訴求力を増やす方法と、安全や性能などの付加価値を高めて価格据え置きの方法いずれも歓迎です。
 車の安全性といえば、RVのフロントガードバーの安全性が最近話題になっています。もともとカンガルーや木の枝などから車両を守るためのものですが、歩行者に当たったときのけがの程度がひどいというので議論になっています。
 ヨーロッパのあるメーカーでは、「安全のため、はねられた人が車のボンネットに乗るような全面形状にしている」というコメントをテレビで見たことがあります。
 車の搭乗者の安全性だけでなく、歩行者の安全性にもようやく目が向けられてきたということでしょう。

■色覚異常の人に配慮した表示を/厚生省検討会が提言

 厚生省の「色覚問題に関する検討会」(座長・北原健二慈恵医大教授)は12日、色覚に異常を持つ人にも暮らしやすい社会を作るため、より好ましい色表示のあり方を提言した。厚生省は病院などの医療機関に提言を伝え、改善を要請する。
 検討会は色覚に異常を持つ人が理解しやすい環境を作るため@色の選択や配色で混同されやすい色を避けるA表示物の周辺の明るさを配慮するB色を識別しにくい場合、色以外に文字を付ける−−などを提案した。
 病院の「採血」「薬局」「レントゲン室」などを案内する図の場合、単に赤色や緑色などの矢印だけで表示している病院があるが、検討会は「赤色と緑色を識別しにくい人には不親切」と指摘。矢印に破線を入れることで色覚に異常を持つ人にも区別しやすくしたり、文字や番号で補足説明するよう求めている。
 また、ホテルの浴室で水の蛇口と湯の蛇口を青と赤の色だけで区別している例があるが、「水」「湯」と文字表示できないかと提言している。
 検討会は、「銀行などで使われる『入金は赤伝票、振替は緑伝票』といった表現は直感的で分かりやすいが、色覚に異常を持つ人に対する配慮も必要」と話している。

 以前テレビでも、色覚異常の人にとっては社会の配慮が足りない、という番組がありました。補色の関係である赤と緑の組合せは彩色効果があるためによく目にしますが、色覚異常の人にとっては1つの形でしか判別できません。
 製品あるいは取扱説明書などの印刷物の配色についても同様の配慮が必要で、製品を使用する人すべての使用環境を心掛けたいものです。

■ISO47カ国 環境監査規格を採択/日本もJIS制定着手

 日米欧など国際標準化機構(ISO)加盟47カ国は、企業の環境保全への取り組み方法を各国共通の標準として定める「環境管理・監査規格」の最終案で合意した。関係者によるとノルウェーのオスロで開かれていた専門家会議で1日、作業部会の原案を全会一致で採択、96年7月末までの発効を目指すことを決めた。
 採択した規格は、@各企業が環境保全に向けて独自の経営指針を策定A具体的な行動計画の立案B環境専任の役員の選出−−などが骨子。計画の達成の度合いを第三者が評価する「外部監査」も盛り込んだ。
 一方、環境保全を重視した製品を市場で優遇する「環境ラベル規格」などの制定は98年以降になる見通しだ。

■三宅デザイン、名鉄百貨店を著作権侵害で訴え/衣料デザインで国内初

 服飾デザイナー、三宅一生氏などの商品を企画・制作する三宅デザイン事務所(東京・渋谷、三宅一生社長)は15日、名鉄百貨店と中堅アパレルメーカーに対し、同社が開発した商品の類似品を製造・販売したとして不正競争防止法違反、著作権侵害などで11日に東京地裁に提訴したことを明らかにした。衣料品のデザインを巡る訴訟は「日本で初めて」(更級康晴知的財産部長)という。今後、ファッションデザインにも著作権保護の動きが高まりそうだ。
 同社によると、名鉄百貨店とアパレルメーカーのルルド(名古屋市、鈴木民男社長)は共同で三宅一生氏がデザインした「プリーツ・プリーズ」ブランドの類似商品を企画。94年4月から同年6月ごろまで名鉄百貨店で販売していた。
 三宅デザイン側はロゴマークや商品の販売方法も酷似しており、「ブランドのデザインの権利を侵害し、消費者の誤認混同を招く」として@類似品を製造・販売した旨の謝罪広告の掲載A各10万円の支払いB訴訟費用の負担ーーを求めている。

■図書館でビデオ上映 著作権法違反?

 ここ数年、全国の図書館では視聴覚関係施設を目玉に据える動きが目立ち、フィルムやビデオの上映会も増えてきた。旧作名画の上映は以前からあったが、最近は子供に人気のあるアニメや、ビデオ発売間もない話題作が次々に登場。関西で開館した図書館は、“集客効果”も狙って、毎週末の3日間に80人収容の多目的室を利用したビデオ上映会を開き、「氷の微笑」など話題作も取り上げた。
 フィルムは購入代金に著作権料が含まれているが、ビデオには上映を前提とした著作権料は含まれていない。このためビデオ協会などは91年暮れ、ビデオの上映会を開いている図書館に自粛を要請。一部の図書館には昨年、「上映会を続けるなら法的措置をとる」とする内容証明郵便を送った。それ以降、上映会を休止している図書館もある。
 ビデオ協会や日本国際映画著作権協会が根拠とするのは「著作者は著作物を公に上映し、または複製物により配布する権利を有する」と定めている著作権法26条。
 これに対し、日本図書館協会や各地の図書館は、同法38条の1項が、営利を目的にしない著作物の上映などを認めているとして、ビデオ上映会の正当性を訴えている。

終わりに

 7月は著作権あるいは意匠権、商標権についてのニュースが多くありました。
 マミーアートが「ミキハウス」ブランドの三起商行を意匠権侵害などで提訴しました。また、パソコンソフトの「三四郎」は商標権の問題で販売が中止され、「ジャスト三四六(さんよんろく)」として9月に発売されます。
 ちょっと変わったところでは、大阪名物「くいだおれ人形」のそっくりキャラクター商品の訴訟が100万円で和解しました。
 争いごとはなるべく避けようとする日本社会でも、「大事な権利は自ら守る」という基本が定着してきたようです。


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