1995.7 Vol.19  発行 1995年7月15日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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自動車の安全性の試験データ公表/自動車事故対策センター
PL対応/石油元売り各社 製品に警告表示
電気製品の安全認証制度/JQAの活動本格化
公取委 「下請けいじめ」監視/PL法施行で懸念
SGマーク製品 賠償額最高1億円に
包装廃棄物リサイクル法が成立
違法コピー訴訟でベンダー側と和解 米BSA
赤字はき出し2兆8000億/たばこの社会コスト推計

6月の新聞記事より

■自動車の安全性の試験データ公表/自動車事故対策センター

 運輸省の外郭団体の自動車事故対策センターは今年度から、市販されている乗用車の安全性能を車種ごとに試験し、一般ユーザーに情報提供する。こうした自動車の試験を継続的に行い公表するのは国内では初めて。衝突時の安全性とブレーキ性能の2項目について各車種を採点、一覧表などにして比較できるようにする。今年度は各メーカーの大衆車クラスを1台ずつ、合計8台程度を同センターが購入、試験のうえ来春をめどに結果を発表する。
 衝突試験は自動車の全面全体を障害物にぶつける方式で、運転席に載せた人形にぶつける方式で、運転席に載せた人形の頭部と胸部にかかる加速度から衝撃度を測定する。また、車体が変形する度合いと、衝突後も乗っている人が生存できる空間が確保されているかどうかを見る。ブレーキ性能は時速100キロを超える高速時の制動や車輪のロック状態を試験項目にする。
 試験結果は各社の同じクラスの車種ごとに、項目別に3段階評価などの形でまとめて一括して公表する。衝突後の「生存空間」は「著しく損なわれる場合」に限ってユーザーに注意を促す。

 「情報があふれている」といわれる社会ですが、まだまだ消費者に提供されていない情報が多くあります。安全に関わるデータは各方面から積極的に公表して欲しいものです。消費者が安全や品質を正しく判断することで、メーカーとの共生関係を上手に築くことができるでしょう。

■PL対応/石油元売り各社 製品に警告表示

 石油元売り各社は、7月1日から製造物責任(PL)法が施行されるのに対応して、サービスステーション(SS)の店頭や製品上でガソリン、潤滑油などの石油製品の警告表示を一斉に開始する。各社とも両表示についてはすでに石油連盟が作成したモデルに準拠して自主作成しているが、エッソ石油だけが「発がんの可能性」について独自の表示を行う。
 エッソ石油は親会社である米エクソンの環境・健康・安全に関する基本方針に基づいて「発がんの可能性」については独自の表示を行う。
 ガソリンには発がん性物質とされる「ベンゼン」が含まれているが、石連モデルを基に各社は『取扱注意』として「健康に影響を及ぼす可能性がある」ため「長期間継続的にガソリン蒸気を吸入しないで下さい」と表示する。これは「SSの従業員に過度の不安を与えないように」(業界)というのが理由だ。
 しかしエッソでは「事実関係ははっきり明記した方がPLの精神に合致する」(同社)として「長期間ガソリン蒸気を吸入すると発がんの可能性があると報告されている」と発がん性について明記した。「通常の使用においては人の健康には影響した事例は報告されていない」とのただし書きが付くものの、この結果、ベンゼンの発がん性の可能性に触れたのは同社だけとなっている。
 米国ではカリフォルニアなど9の地域で、ベンゼンの含有員を1%以下に抑える法規制が今年1月から施行されている。日本では現行規制では5%未満となっているが、出光興産はすでに約500億円かけて含有量1%未満に抑える装置を稼働、ガソリンの差別化を図っている。
 出光では「ベンゼンの問題はPL表示とは別にアピールしている」としているが、“発がんの可能性がある”のにもかかわらず健康に“影響を及ぼす”との表示で一致した業界の横並び体質には、当の業界内部に「PLを語る以前の問題」という指摘もある。

 従業員に配慮したような「SSの従業員に過度の不安を与えないように」と業界では言っているようですが、はたして正しい情報を伝えない権利があるのでしょうか。むしろ従業員の健康に直接関わる情報は、正確に伝える義務があるはずです。
 業界の委員会などでは、発言力の大きい企業(個人)の影響が顕著に現れますが、エッソの判断は消費者の立場に立ったPL法の精神に合うものだと思います。安全に関わる企業ポリシーを社会にアピールできる会社がもっと増えて欲しいものです。

■電気製品の安全認証制度/JQAの活動本格化

 電気製品の安全確保のための第三者機関による認証制度が発足し、日本品質保証機構(JQA、東京都港区赤坂lの9の15、理事長池田徳三氏、03-3584-9352)の認証が本格的に始まった。第1号の松下電器産業製の電子レンジに続き、東芝製のカラーテレビも認証を取得した。引き続きコンピューターなど情報処理関係でもテストが行われている。
 同制度は電気用品取締法の改正に基づいて、従来の任意認証から第三者認証に移行することになり、電気製品認証協議会(会長山村昌氏=東京大学名誉教授)が第三者機関として、JQA、日本電気用品試験所(JET)、日本写真機光学機器検査協会(JCII)の3団体を認定した。
 このうちJQAはすべての電気製品とそれに使用される部品・材料を対象として「JQA総合製品安全認証制度(S-JQAマーク制度)をスタートさせ、95年1月から受け付けている。すでにこれまでに松下電器の電子レンジ「型式NE-N3」、東芝のカラ−テレビ「型名25S4」の2品を認証、両者ともマークを表示した製品の量産を関始した。JQAでは家電、AV機器に続き情報処理機器についても試験を行っている。
 JQAの認証システムは、製品などの規格適合性試験と製造工場の品質管理体制の確認を行っており、製品などの試験については他の機関、企業などが行った試験データも活用また工場の検査についてはISO9000認証、他の機関の認証などを活用している。また、JQAの国際的なネットワークにより、各国の認証機関の認証を同時に取得することができるため、世界の安全認証制度の共通化が可能である。

 第三者機関による試験・認証制度は、企業の安全性評価の信頼性を高めるための手段として意義がありますが、PL対策のために行うというのでは誤解を生じます。
 認証マークが表示されている製品でも、何らかの欠陥による事故が起きたらPL事故として訴えられます。
 ここで述べている製品の試験とは、あくまでもタイプテスト(1台もしくは数台のサンプルによる試験)であり、工場で大量生産される製品の安全性が立証されている訳ではありません。
 したがって、第三者機関の認証もPL的には信頼のおける参考データとしてとらえた方がいいでしょう。もちろんJQAの試験にも合格しない製品では、PL上大きなリスクを背負っていると言えるでしょうが‥‥。

■公取委 「下請けいじめ」監視/PL法施行で懸念

 公正取引委員会は7月1日からの製造物責任法(PL法)施行に伴い、製品の欠陥で生じた賠償責任を親企業が下請け企業に押し付ける恐れがあるとして、主要な業界団体などに対して近く注意喚起することを決めた。「下請け企業への一方的な負担金の割り当て」など下請け法や独占禁止法に抵触する具体例を示し、各業界に下請けへの不当な責任転嫁をしないよう訴える。定期的に調査も実施して、下請けいじめを継続して監視する方針だ。
 公取委は、被害の原因が下請けの製造した部品かどうか明らかでないのに賠償負担を一方的に割り当て、それを下請け代金から差し引いたりする行為は、下請け法違反や独禁法の「優越的地位の乱用」に相当する恐れがあると警告した。下請けに責任があったとしても、相談もなく過剰な負担額を定めるケースも問題とした。
 現在、PL法施行に向けて、多くの企業が製品の安全性を高めようと、設計や検査基準の変更に乗り出している。この場合、設計変更に伴うコスト負担を下請け企業に押し付ける行為は、違法の恐れがあるとした。
 さらに、賠償責任を補償するPL保険の加入について、親企業の系列である保険会社への加入を強制したり下請けに一律で保険金額を指定するといった行為を問題と指摘。下請け企業を被保険者に合むPL保険に親企業が勝手に加入、代金を徴収するのも不当との考えを示した。
 公取委はこうした方針について、メーカー団体など430の業界団体に対し、傘下の会員への指導を徹底するよう月内に申し入れる。公取委が実施したアンケート調査によると、下請け企業からは「親企業に全面的に責任があっても負担を押し付けられるのではないか」「部品に欠陥があったと指摘された場合、親企業に反論するのは難しい」といった不安が出ていた。

 しっかり監視して欲しいと思いますが、似たようなことで最近スーパーや百貨店各社が取引先のメーカーや問屋に対してPL保険の加入を働きかけている中には、半強制的に進めているケースがあるようです。
 大手の小売業ならば、PB商品に対する対処もあることですし、PL保険の有無より独自の安全性評価基準にしたがって評価すべきだと思います。

■SGマーク製品 賠償額最高1億円に

 100円ライターや脚立などに張られたSG(安全商品)マーク。製造物責任法(PL法)が施行される7月1日から、SGマークが付いた製品の損害賠償限度額が、現行の1人当たり3000万円から1億円に引き上げられる。
 SGマーク制度は、通産省の外郭団体である製品安全協会が1973年に始めた任意の安全保証制度で、独自に定めた安全性認定基準を満たした製品にマークを発行、表示している。現在認定対象は107品目。乳幼児用製品、家具・家庭・ちゅう房用品、スポーツ・レジャー用品、高齢者用製品など、日ごろ身近に使う製品が中心だ。
 新たに限度額が1億円になるのは、ゴルフクラブとそのシャフト、除草に使用する屋外用携帯石油バーナーの3品目。いずれも7月1日から同マークが付いた製品が店頭に並ぶ。その他の品目についても、5000万円程度まで限度額を引き上げることを検討中だ。 これまで賠償に到った事例は軽いけがややけどが多く、1件当たり平均40万円程度で、実績から考えると直ちに引き上げる必要はない。しかし、PL法時代を迎えて製品欠陥に対するメーカーの責任に関心が高まっている上、ゴルフ愛好者の職業届や今後の事故形態も考えると、現行の限度額は必ずしも十分とは言えない」と、角野専務理事は引き上げの背景を説明する。

■包装廃棄物リサイクル法が成立

 今通常国会に提出されていた「容器包装の分別収集および再商品化の促進に関する法律」が9日成立した。法律ではビン、缶、紙、プラスチック性の容器包装を対象に、事業者のリサイクル責任、消費者の分別排出、市町村の分別収集の責任ーーといった取り組みを求めている。施行は97年度から。
 同法の成立に関連して橋本通産相は、9日の閣議後の記者会見で、「リサイクルの推進で、今後はエネルギーの効率的利用を目指したい」と述べ、環境保全とエネルギー問題の解決、経済成長が三位一体となった対応の重要性を強調した。同法は厚生、通産の両省によって3月始めに大綱がまとめられたが、食品メーカーや流通業界など「事業者」に包装資材メーカーも加えるべきとする農水省との間で調整作業を進めてきた。審議では、市町村の分別収集費はなるべく公表するよう指導すべきとの付帯決議もなされた。

 一定期間の猶予の対象や再商品化の定義などは、6ヶ月後に出る省令待ちのため、関係業界はとくに大きな動きはないようです。しかしリサイクル率の低いPETボトルなどでは対応に苦慮しそうです。
 リサイクルはメーカーと消費者、それに行政の対応が大事であり、その中でも消費者の協力をどのように得られるかがポイントになるでしょう。また、デポジット制度が理解を得られるどうかも重要になるでしょう。

■違法コピー訴訟でベンダー側と和解 米BSA

 米ビジネスソフトウェアアライアンス(BSA、ワシントンDC、会長ロバート・ハリマン氏)は、コンピュータソフトの違法コピーで鹿児島県の事務機器販売会社「総合事務機三和」に対して民事訴訟を提起していた件について、ソフトベンダー側と和解した。BSAによれば、三和側が無断複製を全面的に認め、複製されたソフトの定価の2倍に当たる197万8000円を支払うことで合意した。
 経緯は、三和が95本の「MS-DOS」と1本の「1-2-3」を無断でコピーしているとして、米マイクロソフトと米ロータスディベロップメントとが、95年4月7日に鹿児島地裁に訴訟を起こしたもの。今回関係者の話し合いによって三和側が損害賠償金を支払うことで合意した。

 今年のASPニュース5月号で紹介した訴訟は、早々と和解により決着がつきました。反論の余地がなかったのだと思います。

■赤字はき出し2兆8000億/たばこの社会コスト推計

 調査をまとめたのは、国立がんセンター研究所の渡辺昌・がん情報研究部長と、同研究所の客員研究員で、経済学、数学が専門の後藤公彦・元米リパブリック・ニューヨーク銀行上級副社長。
 推計ではまず、たばこによって生み出される社会的な利益として、国庫に入る税金や、たばこ産業従業員に支払われる賃金、たばこ企業が得る利益などを計算した。さらに、産業連関表(1990年)をもとに、紙やフィルターなどの材料費や製品の輸送費、広告費など、たばこを生産するために他の産業化投入された金額も計算し、これによる経済的波及効果も調べた。その結果、たばこを生産、消費する総合的経済効果は、合計で約2兆8000億円に達したという。一方、たばこによる社会的損失には、たばこが原因とみられる病気の医療費(3兆2000億円)や、清掃費用、たばこによる火災を消し止めるための消防費用(合わせて2000億円)などがある。
 さらに、たばこを吸う人は吸わない場合より8年早く亡くなると仮定、生きていれば生み出していたはずの、国民所得の損失3兆円)も計算した。推計ではたばこだけが原因の病気で亡くなった人は年間11万5000人。これらの損失を足し合わせ、喫煙による社会的コストを5兆6000億円とした。この結果、差し引きすると2兆8000億円の“赤字”となる。たばこの消費量や、たばこに起因する死者の数などが今のペースで増え続けた場合、“赤字”幅は2010年には7兆8000億円、2020年には10兆8000億円と年々膨らんでいき、2030年には14兆2000億円になるという。

 たばこ好きな国会議員も多いし、日本はなかなか欧米並にはなりません。このような記事により、たばこの必要性について考える機会が増えてくれればいいと思います。

終わりに

 PL法が施行されましたが、製品そのものの安全性は高められたのでしょうか?企業の対応が警告・表示やPL保険だけというのでは人任せすぎるように思えます。警告・表示や取扱説明書などはユーザーに読ませることで製品の不安全さを多少解消するものであり、PL保険は事故が起きたあとの対処でしかありません。
 製品の安全性を向上せずにPL事故が起きた後のことを考えるのは、消費者への不利益を正しくとらえていません。消費者は被害救済が望みではなく(事故になど遭いたくありません!)、安全な品質の良い製品を望んでいるからです。
 もともと被害者を救済するための企業の支払い能力を担保すべきPL保険ですが、どうも企業の経営リスクを吸収するためだけの「安全パイ」になってしまったようです。安全な製品を作る努力を怠り、その場しのぎのPL保険で対処していると、これからの社会を乗り切ってはいけないと思うのですが‥‥。
 このような企業が数多く存続する社会では、保険金を負担するのは回り回って消費者であることから、消費者は二重の不利益を強いられることになります。損害保険会社もPL保険の契約数を増やすことだけを考えずに、安全な製品が多く出回る社会を目指した企業活動をして欲しいものです。
 使われないPL保険が生む社会全体の不利益も考えるべきでしょう。


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