1995.4 Vol.16  発行 1995年4月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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工場全焼した原因「電線通じ高周波」/関電などに賠償請求
ウォーターライド事故訴訟で全面勝訴/三精輸送機
上の滑降者に注意義務/最高裁スキー衝突で初判断
古いシステムキチンのつり戸棚 棚傾き食器落下の恐れ
損害賠償額に上限/PL訴訟など米下院が法案可決
企業責任を軽減 産業界は大歓迎
ISO9000の認証取得目的、「体質改善」が79%
「酷似なべ販売は不当」/ふきこぼれ防止の商品
五輪施設の愛称 類似登録を調査へ
PL法6割以上が「知らない」 知っている女性2割にとどまる/総理府調査

3月の新聞記事より

■工場全焼した原因「電線通じ高周波」/関電などに賠償請求

 平成3年11月に起きた火災で工場が全焼した大阪府東大阪市の刺しゅう加工業野口弘さん(50)が3日、原因は高周波電波が電線を通じて工場内に入り込んだためとして、関西電力(大阪市)と関西電気保安協会(同)に総額約3億3100万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
 この火災をめぐって、昨年4月に工場跡地で行った実験で、高周波電波で火災が起きる可能性があることを指摘した大槻義彦早大理工学部教授は、電力会社に対し、高周波電波対策を取るよう警告しており、原告側は同教授を証人に立てることなども検討している。
 訴えによると、野口さんの工場では平成元年9月ごろから電話機などに原因不明の故障が起き始めた。同保安協会が3年11月、静電気が原因とみて工場2階の床の上などに静電気を防ぐための器具を置いたところ、工場内でボヤなどが相次ぎ、軽量鉄骨一部2階建ての工場を全焼した。
 野口さんは、高周波がどうして発生したのかは不明としながらも、火災はラジオの周波数帯の1000キロヘルツからその千倍の1ギガヘルツ程度の高周波が工場内に入り込み、静電気防止器具などで増幅されたのが原因と指摘。同電力と協会は十分な調査をして適切な措置を取らなかったと主張している。

 ASPニュース94年5月号で紹介した、名古屋市科学館の高周波が原因と見られる爆発事故は、まだ記憶に新しいと思います。
 今回のケースは高周波を原因とせず、静電気防止用器具を設置したため、それが火災の原因になったものです。したがって、関西電気保安協会の責任は免れないと思います。
 大きな電気設備を持つ場所では、電源線の入口に巨大なフィルターでも設置しなくてはダメなのでしょうか。あるいはミニ変電所にした方がいいのかも知れませんが、工場や施設の中と、外部とを高周波的に遮断しなければなりません。
 電気はPL法の対象外であることから、企業(お得意さん)が自衛策を採るだけというのは納得がいきません。複数の電力会社と自由契約でき、品質の良い電気を利用できるようにはならないものでしょうか。
 いずれにしても、電力会社の高周波対策の不備に対して責任が追及できるものなのか、裁判の成り行きに注目したいと思います。

■ウォーターライド事故訴訟で全面勝訴/三精輸送機

 90年4月2日に「国際花と緑の博覧会」(大阪)会場で起きた場内交通システム「ウォーターライド」落下事故について、同システムの企画を行った博報堂が機器を製造した三精輸送機(社長太田昭比古氏)に13億9300万円の損害賠傷を請求していた訴訟で、東京地裁は29日、三精輸送機側の全面勝訴とする判決を下した。判決では弁護士費用も原告負担とされており、三精輸送機には全く損害賠償義務はない。
 三精輸送機は、91年7月に博報堂から訴えられた時点で@大阪府警の調査では機器に過失はなかったA91年3月の同事件に対する刑事処分で、「経営主体のジャスコの不十分な運行体制が原因とされている」ことなどを挙げ、損害賠償に応じる必要はないとの考え方を示していた。
 このため、今回の判決に対しても「妥当な判決」と評価している。

 各種イベント会場での乗り物による事故は、同じような原因が繰り返されています。これはハードの設計技術の問題よりも、運営方法や適切な従業員教育などのソフトウェアの安全対策が遅れていることの現れです。
 博報堂が求めていた損害賠償額には、入場者数の減少を分析してのものだと思いますが、このような訴えが平然と行われるようでは製造メーカーも考えなくてはなりません。
 設備の使用方法についての条件を厳しくしたり、主催者側の運行管理、労務管理などの書類を提出させることが必要でしょう。また法律の整備されているものは、その遵守を改めて明記することも必要かも知れません。

■上の滑降者に注意義務/最高裁スキー衝突で初判断

 北海道倶知安町のスキー場で、ゲレンデの下方を滑っていた主婦と、上方から滑降してきた学生が衝突した事故をめぐり、負傷した主婦が学生側の過失を主張して損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が10日、最高裁第2小法廷で言い渡された。根岸重治裁判長は、「スキー場で上方から滑降する者は、下方を滑る者の動静に気を配り、接触や衝突を回避できるように速度や進路を選択すべき注意義務がある」と最高裁としての初判断を示し、主婦の請求を退けた2審判決を破棄、審理を札幌高裁に差し戻した。
 1、2審判決によると、事故は91年3月10日、「ニセコ国際ひらふスキー場」で発生。主婦側は学生側に過失があったとして550万円の賠償を求めて提訴したが、学生側は「主婦はゲレンデを横切るように滑っており、進路妨害が事故の原因」と主張、どちらに注意義務があるかが争われた。
 1、2審は、「スキーは一定の危険性を内包するもの」としたうえで、「この事故では学生に暴走や危険な滑走はなかった」とした。これに対し、この日の最高裁判決はゲレンデでの注意義務が上方からのスキーヤーにあると初めて認定したうえで、「このケースでは上方から下方を見渡すことができた」と指摘、学生の過失を認めた。

 もっともな判断が下されました。公共な場所などにおける、安全行動モラル(危険を回避するために各人が行うべき行動責任)の認識が増すことを期待したいと思います。

■古いシステムキチンのつり戸棚 棚傾き食器落下の恐れ

 システムキチンの一部であるつり戸棚の棚が突然傾き、収納していた食器が落下する事故が起きている。いずれも棚を支える棚受け部品(ダボ)が破損していた。ダボの材質であるプラスチックの劣化が原因とみられ、国民生活センターは「古いタイプのつり戸棚は点検を」と呼び掛けている。事故が起きたのは、クリナップ(本社・東京)が1983年から製造、販売しているシステムキチン「クリンレディ」シリーズ。長さ1.7cm、軸の直径0.5cmのプラスチック製ダボを差し替えて棚板を移動できるタイプで、事故の相談は昨年7月、同センターに寄せられた。
 同センターによると、事故を起こしたつり戸棚は、流し台の上方の壁に取り付け、食器棚に使われていたが、取り付けて9年目に、棚板を四隅で支えていたダボの1つが突然折れた。載せていた大皿などが扉のガラスを突き破って落下し、その衝撃で水切りステンレスがへこんだり、床に陶器やガラスの破片が突き刺さるなどしたという。
 クリナップによると、同様の落下事故は、この事故のほかに、これまでに8件報告されている。最初の事故は86年11月。事故があったつり戸棚は、ダボの差し込み方が十分でなかった1件を除けば、いずれも手前側の軸が折れていた。
 このため、同社は、88年8月販売分から、ダボの軸を強度の高い金属製に変更。「材質であるABS樹脂と呼ばれるプラスチックが、長年使っているうちに劣化したのが主な原因」(同社広報課)としている。
 台所メーカーなど47社が加盟するキッチン・バス工業会によると、現在、プラスチック製ダボは、普及タイプのシステムキチンや単体売りのつり戸棚を中心に使われている。金属製に比べて材料費が半分以下と安いからだ。ダボそのものも市販されている。
 国民生活センターは「つり戸棚は高い位置にあり、棚の食器が落ちると人身事故にもつながりかねない。ダボがプラスチック製で心配だったら、メーカーに相談した方がいい」とアドバイスしている。クリナップは、事故製品と同タイプのつり戸棚を使っている消費者に対して、プラスチック製ダボの金属製への交換に応じている。問い合わせは同社お客様相談課 電話0120-34-5972ヘ。

 強度が必要な個所へのプラスチック部品の使用について注意しなければならないようです。プラスチック製の登山靴やスキー靴などの事故もあり、各種環境におけるプラスチックの経年変化については、あまり調べられていないのかも知れません。
 樹脂のメカフレームなど色々な場所で活躍しているプラスチックですが、目で見て「ちょっと不安だな」、という場所に使われていたら注意しましょう。

■損害賠償額に上限/PL訴訟など米下院が法案可決

 【ワシントン10日共同】米下院本会議は10日、製造物責任(PL)を含む民事訴訟で、原告が得る懲罰的損害賠償額の上限を25万ドルか実質的な損害の3倍と規定した「常識的賠償基準改革法案」を賛成265、反対161で可決、上院に送った。
 多くの米企業は、行き過ぎた損害賠償額が企業の研究・開発を遅らせ、国際競争力を奪う結果になっているとして同法案を支持。これに対し消費者グループは、企業寄りと反対していた。ホワイトハウスは、消費者保護の観点から「上院での修正を期待する」(マカリー大統領報道官)としている。
 共和党の選挙公約「米国との契約」が打ち出した「訴訟改革法案」は、この日可決された法案に加え、敗訴者に勝訴者の裁判費用負担を義務付ける「裁判費用責任法案」、「訴訟乱発防止法案」の3本からなり、これですべて下院を通過した。

■企業責任を軽減 産業界は大歓迎

 【ワシントン10日共同】米下院が10日可決、上院に送付した「常識的賠償基準改革法案」は、製品を利用する上で消費者に不利益が出た場合の企業の責任を軽減する内容が含まれており、米産業界は「われわれはあまりにも長い間、訴訟の乱用に脅かされてきた」(米商業会議所)と大歓迎している。
 この日可決された法案では、15年以上前の古い製品に関する訴訟に制限を加えるほか、消費者が誤用したり注意書きを無視した場合に生じた損害額を小さく評価することなどが盛り込まれている。

 懲罰的損害賠償額に上限を定めることは、大方の支持が得られることだと思います。ただ上限が日本円にして2000万円程度の賠償金では、懲罰とは言えないかも知れません。

■ISO9000の認証取得目的、「体質改善」が79%

 日本能率協会コンサルティングは、企業の「ISO9000シリーズに関する実態調査」(速報ベース)を実施。回答企業は取得済みおよび準備中で総数370事業所。
 同調査結果によると、企業のISO9000シリーズの認証を取得する目的は、商取引上では「輸出など海外取引」が42%と最も多く、次いで「顧客の要請」(37%)となっている。さらに内部革新上の取得目的として「体質改善」を挙げる企業が79%と圧倒的に多い。この「体質改善」を答えた企業を分析してみると認証取得済み企業が82.2%、認証取得希望企業が73.5%を占めている。
 体質改善の実態をみると、61.7%の認証取得済み企業が成果が上がったとしている。成果として、対外的には「クレームの減少」が挙げられており、内部品質向上の面では「製造品質・開発設計・資材購買」の順。このように企業は品質管理システムの要求事項を満たしながら、しかも体質改善を意図した品質管理システムをデザインして、それをいかに運用していくかで成果が決まると指適している。

 商取引上の要請がなくとも79%の企業が、体質改善のためISO9000を取得したいというデータではありません。
 数値そのものの意味はあまりありませんが、「認証取得するとほかにも良いことがありますよ」ということでしょう。

■「酷似なべ販売は不当」/ふきこぼれ防止の商品

 ヒット商品「ふきこぼれない山本なベ」を独自に開発した長野県須坂市のソフィアテック(山本正彦社長)が、大阪市内の雑貨卸会社を相手に、酷似したなべを輸入、販売しているのは不正競争に当たるとし、輸入、販売の差し止めと800万円の損害賠償などを求める民事訴訟を、13日までに長野地裁に起こした。訴えだと、「山本なベ」は、なべの上部ほど内径が広がっているのが特徴で、ふきこぼれの欠点を解消、マスコミにも取り上げられている。雑貨卸会社は、形状や商品の説明内容も全く同じ韓国製のなべを「ふきこぼれないおふくろ鍋(なベ)」との酷似した商標で販売している、とし、広く知られた商標使用を不正競争としている不正競争防止法に基づき、販売差し止めなどを求めている。
 雑貨卸会社専務は「(訴えには)事実でないこともあるが、今は詳しいことは言えない」としている。
 山本なべは、山本社長の発案。実用新案、特許を申請中で、91年からソフィアテック系列工場で製造、販売している。これまでに80万個を販売、現在は月に3万個を売り上げている。

■五輪施設の愛称 類似登録を調査へ

 長野市はこのほど決めた五輪施設の愛称の1つが東京放送(TBS)の新社屋名と同じだった問題を受けて、その他の4つの愛称についても商標登録の有無を調査することを決めた。登録がなければ自ら出願する方針。基本的には決定した愛称をそのまま利用していく考えだが、全国への知名度をアップさせるためにも各愛称の最後に「長野」という地名を付け加えることも検討している。
 5施設の愛称は全国から集まった候補作を地元中高生の審査を経て22日に決まった。だがこのうちアイスホッケーA会場の「ビッグハット」はTBSがすでに商標登録に出願していた新社屋名と同一であることが発覚。
 TBSの配慮でそのまま利用できるようにはなったが、事前調査を怠った市側の不手際を印象づけた格好だ。

 全くお粗末な話ですが、これが日本の現状レベルなのでしょう。
 おそらく担当者が人に聞きながら業務を行っていたのでしょうが、こういうときこそマニュアルが必要だと思います。

■PL法6割以上が「知らない」 知っている女性2割にとどまる/総理府調査

 消費者保護を目的に7月1日から施行される「製造物責任法」(PL法)について、全く知らない人が6割を超えることが、総理府が12日付で発表した消費者問題の世論調査で明らかになった。
 調査によると、PL法の内容まで知っているとの回答は12%で、「制定されたこと」「法律の目的だけ」は知っているとした人を含めても32.4%にとどまった。男性では45.8%が知っていると回答したのに対し、女性は21%と低く、大きな差が出た。
 「PL法制定で消費者行動は変わるか」との質問には、6割を超える人が「変わる」と回答、「積極的に苦情を申し出る」が25.7%と4分の1を占めた。「購入する際に安全性に考慮する」「安全使用を心がける」などを上げる人も多かった。
 調査は昨年12月に全国3000人を対象に実施され、回答率は72.9%。

 これからだんだんと認識が高まってくると思いますが、こんなものでしょう。
 「積極的に苦情を申し出る」という人が全体の15%程度になっていますが、今まで「プリンに異物が入っていてもクレームなどしなかった」という人もいるので、それほど危機感を強めることはないと思います。

終わりに

 ビッグハットの不手際にはあきれてしまいましたが、最近、企業のために商標登録されているかどうかを調べる会社が出てきました。
 この会社は、自社のパソコンと特許庁に登録されている180万件のデータを結び、特許の調査業務を行っていますが、新たに商標登録専門の調査業務を始めたものです。
 調査だけの費用は一回8000円です。
 またヒットしたネーミングも調査できるため、新しいネーミングの選択にも活用できるようです。
 問い合わせ先は、アイビーリサーチ(新潟県柏崎市土合334の1、社長藤沢正人氏、電話0257-22-9171)。


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