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2005.11 No.143  発行 2005年11月15日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。



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10月のニュースから

■酸素不足で患者1人死亡/長野赤十字上山田病院

 長野県千曲市の長野赤十字上山田病院(西沢啓治院長)は17日、入院患者に酸素を供給している液体酸素タンクの残量が少なくなり、人工呼吸器を付けていた患者1人が低酸素血症などで13日、急性呼吸不全で死亡したと発表しました。同病院によると酸素はタンクから一括して院内へ供給する仕組みで、業者が通常5日おきに液体酸素を補給する契約でしたが、9月29日を最後に補給されていなかったといいます。病院は、酸素業者と実際の配送業者との連絡が不十分だったとし13日、遺族に謝罪し千曲署に届けたものです。

  事故の起きた日ですが、死亡した患者以外にも25人が治療や人工呼吸でタンクから酸素を受けていて、供給異常が分かった直後と翌日、担当医がそれぞれを診察したところ、6人が翌日から17日にかけて肺炎や腎不全で死亡していたことも判明しました。
病院は「酸素飽和度や血圧は問題なく、因果関係は少ない」としていますが、近く第三者を含む調査委員会を設置し、事故原因とともに6人の因果関係の有無についても調べることにしています。

 病院による事故の詳細は、13日午後5時半すぎ、重症肺炎で入院していた患者の人工呼吸器の警報が鳴り、駆けつけた看護師や医師らが、酸素供給や心臓マッサージを行い救命処置を施したものの、6時38分に死亡したものです。警報が鳴った原因を調べたところ、2.2トン入る酸素タンクに20キロしか残っておらず、この状態だと患者に供給される酸素濃度は低下すると話しています。
一方、タンクの酸素減少を示す院内の別の警報が7日夜に鳴っていたのですが、施設管理業者は翌日の8日が納入予定日だとして病院には連絡せず、病院もその後、納入を確認していなかったことから、二重の致命的なミスが起きました。

 西沢院長は会見で「日常業務への確認不徹底が浮き彫りになった。大変なご迷惑をかけ、おわび申し上げる」と謝罪。病院は、日々のタンク残量の点検や業者への指導徹底などの再発予防策を示しました。
病院や業者の話によると、液体酸素の納入や納品チェック方法は、病院と酸素業者は配送について1カ月ごとに契約、注文を受けた業者は、5日ごとの納品予定表を月1回、配送業者へ出すという複雑なものでした。配送業者は5日ごとに病院の外に置かれた容量2.2トンのタンクに供給することになっていて、残量が約520キロを下回ると病院内の警報が鳴って知らせる仕組みでしたが、実際の供給は9月29日が最後で、しかも今回の件について業者の1人は「酸素業者と配送業者の間で予定表を『出した』『届いていない』と意見が食い違っている」と話しています。

 病院側はこの日の会見で、業者の連携不十分を理由に挙げましたが、病院側の日常的な最終チェック・納品管理のずさんさが浮かび上がっています。
納品予定表は病院にも届けられていたのですが、9月までは原本を病院が管理していたというものの、納品されたかどうかの突き合わせ確認はしていなかったといい、基本的な納品管理も出来ていなかったようです。しかも病院側は管理が面倒だったのか、驚くことに10月からは施設管理業者に、原本も渡していたというのです。直接患者の命を預かる立場の病院が、「安全」であることの検証もないまま、日常の業務に当たっていたことであり、今後の責任追及が待たれます。

 液体酸素を含むガス類の残量は、厚生省(当時)が日常的に点検するよう通知しているもので、同病院の西沢啓治院長は「通知は知っている。結果的に違反状態だった」と認め、「担当部署がきちんとやっていると思ったが私の監督不足だった」としています。
しかし監督不足、という言葉は一見院長に責任があることを認めながらも、病院にとっての重要品の納品管理報告書など、経営者が確認すべきシステムを構築していなかったことでもあり、監督・指導といったレベルではないと思います。

 上山田病院には安全・管理委員会がありますが、主に病室にある酸素の供給口や配管を点検、管理しているといい「タンクは施設管理の業者任せになっていた」(松本光司事務部長)と述べていることから、安全を他人任せにするそのポリシーに問題があります。
およそ考えられない事故でしたが、この病院だけが異常だったのでしょうか。多くの病院では安全管理システムの認識が低いため、人のエラーをシステムで未然に防ぐという目的が理解できず、単純なミスで人の命が失われるという残念なケースが多いようです。


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医療事故、7割超がミス/医療事故調査会鑑定結果

 医療事故の原因などを鑑定している医師らの団体「医療事故調査会」は2日、設立10年で鑑定が終了した733件のうち、7割以上が医師らのミスによるという結果を発表しました。
これは調査会が同日、東京都内で開いた設立10周年の記念シンポジウム「医療事故を防ぐために」で発表したものです。

 2004年度までの10年間で同調査会が鑑定を依頼されたのは計1081件、このうち鑑定が終了した733件でミスと判断したのは計542件(73.9%)、ミスでなかったのは109件(14.9%)、不明は82件(11.2%)で、「ミス」と「不明」を合わせると624件に達しています。
733件の原因を分類すると、最も多いのが「医療知識・技術の未熟性」で554件(75.6%)、うち診断時が179件もあり、外科の治療時の151件を上回っています。
手術時に起きる医療事故が多く報道されることから、「外科治療時に多い」と考えがちですが、診断時のミスがそれよりも多い、というのは意外でした。高度な知識ではなく、医師としての基本的な知識・技術が未熟だという、それほど医師の質が低下していることになります。

 調査会の代表世話人、森功・八尾総合病院長は「診断で決めつけて誤るのが多いのは残念なこと。医師の教育がばらばらで放置されている」と話しています。

 事故の原因で次いで多いのは、患者への説明が必要項目を満たさず、治療法など選択権を奪うという「意志の疎通不足」で、原因の集計を始めた1997年度は4.6%と低かったものの、99年度は11.1%、昨年度は26.1%と四分の一に達しています。その原因は患者に渡す文書が一般的な説明だけで、個別の説明への配慮がないためで、「患者のための医療」がなおざりにされている現状が分かります。

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鳥インフルエンザEU上陸、各国に衝撃

 中東のトルコで13日、そして東欧のルーマニアで15日に見つかった鳥インフルエンザが、いずれも強毒性のH5N1型ウイルスと確認されたことから、欧州連合(EU)加盟国内に衝撃が走っています。
17日にはギリシャの小島でも七面鳥から鶏インフルエンザが見つかり、ついにEU域内へと波及、事態を重く見たEUは、感染が確認された国からの鳥や羽毛の輸入を直ちに禁止しました。また14日に開いた専門家による会合では、湿地など危険地帯の特定、渡り鳥と家きん類の隔離などの対策を呼びかけています。さらに17日の環境相理事会、20日の保健相理事会では、相次いでこの問題を取り上げEUを挙げて取り組む姿勢を示しました。

 人から人へ感染すれば「国内で最低5万人が死亡」とみる英国政府は、抗ウイルス剤80万人分を備蓄し、大発生に備えています。
また強力な抗ウイルス剤「タミフル」を製造する製薬大手のロシュはふる操業で量産、米国内に新工場を建設して増産する計画も明らかにしています。

 一方、ベトナムで今年2月に見つかったH5N1型ウイルス患者から、タミフルに耐性を持つウイルスが検出されたことが今月、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究で分かり、「今のところ耐性ウイルスが世界中に広まる可能性はほとんどないが、慎重な監視が重要」と同教授は話しています。

 また国連食糧農業機関(FAO)は19日、感染が渡り鳥の進路に沿って中東やアフリカ諸国に拡大する恐れが「著しく高まった」と発表しました。鳥インフルエンザがアフリカに飛び火すれば、アジア中心だった感染地域は一気に拡大。FAOは各地に根付いたウイルスが突然変異を起こし、人同士で簡単に感染する「新型インフルエンザウイルス」に生まれ変わる可能性が高まると警告しています。

 一向に気の抜けない鳥インフルエンザですが、スウェーデン国立獣医学研究所は22日、南部の都市エスキルトゥーナで死んだカモから、鳥インフルエンザのウイルスが検出されたことを明らかにし、クロアチアでも国立公園内で死んだ野生の白鳥からインフルエンザウイルスが検出されました。
またイタリアでも初の鳥インフルエンザ(H5N1型)が野生のカモから11月に発見されるなど、WHO局長の「大流行起きる」との発言は、一層現実味を帯びてきました。

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クボタ弔慰金支払い拒否/生活圏1キロ超理由に

 大手機械メーカー、クボタの旧神崎工場の周辺住民がアスベスト関連疾患に罹患した問題で、同社が中皮腫で死亡した3人に対する弔慰金支払いを、「居住地や生活圏が工場の半径1キロより遠い」として拒否したことが24日分かりました。

 支援団体「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」などが明らかにしたもので、死亡した3人(男性1人、女性2人)の居住地は工場の半径1.2−1.7キロほどだったといいます。同会世話人の古川和子さんは「石綿は軽い物質であり相当な距離まで飛ぶ。もっと範囲を大きくみてもらわないと住民らは救済されない」と指摘しています。

 企業の考えでは際限なく補償が拡大するのを恐れるものですが、1キロの距離にどの程度の客観性があるのか、たまたま過去の患者の分布がその付近に集中していたという単純なことだと思います。
 同社がこの問題について公表をしてから過去に遡ってアスベストと死亡の因果関係を調査する動きも活発になっています。今後も1キロ以上離れた場所でのアスベスト飛散による患者が出てくる可能性は少なくないので、他にアスベスト罹患を説明できる客観的事実がない場合、クボタは患者や遺族の申し出を受けるべきでしょう。

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天然温泉と誤解招く表示、初の排除命令/公取委

 天然温泉ではないのにパンフレットなどに「温泉三昧」「温泉大浴場」といった消費者を誤解させるまぎらわしい表示をしたとして、公正取引委員会は13日、厚生労働省の外郭団体「財団法人厚生年金事業振興団」と大手ビジネスホテル会社「ルートインジャパン」に景品表示法違反(優良誤認)で排除命令を出しました。公取委が温泉表示に排除命令を出すのは初めてですが、問題の表示はいずれも現在行われていないといいます。
公取委によると、厚生年金事業振興団は今年3月まで、「ウェルサンピア」など全国20カ所の宿泊施設内の温泉施設で、鉱石などが原料の医薬部外品を使い人工的に湯を作ったのに、各施設のパンフレットやホームページに「光明石温泉」などと表示していたものです。

 ルートインジャパンは今年8月まで、全国29カ所のホテル内の大浴場で、厚生年金事業振興団と同様の医薬部外品を使用、同社のガイドブックなどには「ラジウムイオン鉱泉大浴場」などと表示していました。
現在は正常な表示に改めていますが、昨年7月に長野県白骨温泉で発覚して全国に飛び火した温泉不正表示問題を知りながら、それでも客をだましていたことになり、排除命令は当然のことでしょう。

 ルートインジャパンの話では、「脱衣場には薬剤を使用していると説明しており、不当に顧客を誘引したとは考えていない。異議申し立てを含め対応を検討する」としていますが、同社のガイドブックを見て「温泉」と勘違いした客がいたのも事実だと思います。その宣伝効果により宿泊の契約をした顧客が訪れた脱衣場に、「薬剤使用の説明がある」から問題はないという論理は、客の目線を感じない少々乱暴な考えのようです。

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廃棄のコンビニ弁当、容器ごと燃料化/愛知県の業者と静岡大共同開発

 静岡大工学部の佐古猛教授(化学工学)の研究室と、廃棄物処理業の藤村通商(愛知県一宮市)が、コンビニ弁当などを容器ごと粉末燃料化する装置を共同開発しました。プラスチックや生ごみを分別せず、また有害物質を出さない利点もあり、関連技術を19日に特許申請、本年度末ごろの発売を目指します。
コンビニ弁当、スーパーの総菜などは廃棄率が高く、処理に頭を悩ます業者は多いのですが、焼却では水分を多く含んでいるため燃えにくく、堆肥にするにもプラスチックとの分別が必要な上、塩分の多さも難点でした。

 共同開発は藤村通商が今年1月、生ごみを安定的に燃料化する方法を佐古教授に調査依頼したのがきっかけで、佐古教授の指導で同社が試作したのが直径50センチ、全長約1.5メートルの鉄製円筒形の装置です。原料の弁当を容器ごと入れ、水分調整や加熱のために水蒸気を送り込み、羽の角度や形状を独自に設計した攪拌装置で混ぜ合わせることで均一化するものです。

 実験を繰り返した結果、コンビニ弁当を205度、20気圧で、総重量の10−15%程度の水を加え、約15分にわたって攪拌すると、さらさらの土のような細かい粉末状になるのを確認。粉末は1キロ当たり約6600キロカロリーの発熱量があり、重油の6−7割程度、乾燥木材よりも熱量が高いことが分かりました。
この試作機なら1回だけで、コンビニ3店が1日に出す程度(約50キロ)の弁当処理が可能とのことです。粉末はボイラー、発電などの燃料に使え、装置をコンビニやスーパー、社員食堂などに備え付ける方式が想定されます。既に全国の大手企業や自治体などから数十台に上る引き合いがあり、テスト使用している例もあるといいます。

 運転手にとっては「管理されている」というストレスが増えますが、今までルーズであったことと、乗客の安全のためには仕方がないようです。管理が非常に厳しいという航空会社でも今年5月、乗務前12時間以内に飲酒したという問題がありましたので、バス業界に限らずできるだけ多くの企業に採用してもらいたいものです。

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たばこ自販機、未成年識別導入は2008年/日本たばこ協会

 たばこメーカーでつくる社団法人日本たばこ協会などは27日、全国約62万台のたばこ自販機に、2008年中に成人識別機能を搭載することを決めたと発表しました。
同協会によると、ICチップを搭載した「たばこカード」を成人だけに発行、カードを自販機の読み取り部分にかざして、たばこを購入するものです。
カードは、同協会に身分証明書のコピーと顔写真など
を添えて郵便で申し込むと、無料で発行されます。将来的には窓口を設けて、申し込みが出来るようにするようです。

 同協会によると、2004年度のたばこ売り上げ高は4兆682億円で、このうち自販機での購入が約半分だったといいます。
たばこ自販機の未成年識別という形で業界主導の対応策が進んでいますが、本来は自販機の設置基準を厳格にして、どうしても必要な場所に限り認可すればいいのですが、あふれるたばこ自販機は行政の税収優先、業者の儲け優先の姿勢が招いた結果で、先進諸国ではとても考えられない劣悪な社会環境です。
行政はこのような社会環境作りを反省する事もなく、今回も業界に任せることにしていますが、はたして青少年の健康問題について厚労省は本当に危機感を持っているのでしょうか。

 この識別システムでは、他人になりすました偽装カードが氾濫する懸念もあり、青少年の健康対策には効果がないかもしれません。意地悪な見方ですが、その方が業界にとっては都合が良のではないでしょうか。「業界は精いっぱい努力した」という言い訳が通用し、かつ売り上げの激減を回避できるからです。

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喫煙率10年連続で過去最低を更新、女性は微増/JT調査

 成人でたばこを吸う人の割合は昨年比0.2ポイント減の29.2%と10年連続で過去最低を更新したことが18日、日本たばこ産業(JT)の調査で分かりました。


 調査は6月、全国の男女1万6000人を対象に実施し、1万391人(64.9%)から回答を得たものです。
男女別では、男性が昨年6月に比べ1.1ポイント減の45.8%と14年連続の減少ですが、前年まで3年連続で減っていた女性は逆に0.6ポイント増の13.8%となりました。

 喫煙者人口を推計すると、男性が2281万人、女性が739万人の計3020万人となり、昨年より12万人減ったことなり、喫煙者率が最も高い年代は、男性が30代の54.6%で、女性は20代と30代で共に20.9%となっています。

 ここ10年ほど男性は着実に減少化傾向が続き、女性は横ばい、と言うパターンが定着しています。2010年には男性の喫煙率が40%を切るか切らないか、と言うところまで行きそうです。しかし1999年WHOの調べによると、その当時からスウェーデン、ニュージーランド、アメリカ、イギリス、オーストラリアは30%以下であり、他の主要な先進国も40%以下となっています。日本がこれほどまでに高い喫煙率を維持していることについて、政府は猛省すべきです。

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