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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
4月のニュースから
■JR福知山線脱線事故/JR西日本の安全軽視の体質が明らかに
福知山線で25日起きた脱線事故はまだ原因が特定されていませんが、新たな事実が次々に出てきます。全体に感じるのはJR西日本の利益優先体質であり、不利な情報を出さずに情報操作もしかねない、従業員をまるで物のように扱う上司らの陰湿な態度など、封建的で、権力にこびる内部の体質が透けて見えてきます。
同社は事故が起きる前の4月1日、全社員に文書を配布し「定時運転」の徹底を求めていました。またある運転士は上司からこう言われた、との証言も明らかになっています。それは「制限速度は頭に入って入るはず。その範囲内で回復しろ」と、言うものです。しかし遅れが出た場合、運行ダイヤに余裕がないことから、制限速度を守っていては遅れを取り戻すことはできません。したがつて「駅間で制限速度を超えるスピードを出すのは日常茶飯事」と複数の運転士が証言している状況になるわけです。
「制限速度は守らなければならない」と管理側は言うものの、「遅れを取り戻さなければならない」とも言い、速度超過の責任を暗に運転士個人に負わせるような体質、つまり定時運転を優先し速度超過を黙認する同社の安全意識の欠如が感じられます。
また定時運転を守れなかった運転士には、「日勤(教育)」と呼ばれる研修があることも今回の事故で一般の人にも知られることになりました。
日勤については28日、都内で記者会見をした現役運転士は「非常に辛い日々だった」と述べ、7年前に18メートルのオーバーランをしたときには制服姿で駅のホームに立ち、到着する列車の運転士に「ご苦労様」と言い続けたといいます。今回の事故を起こした運転士が昨年100メートルのオーバーランで訓告処分を受けた際には、「内規の文書をただひたすら書き写すだけの写経だったようだ」との指摘もあります。
まるで権力を傘にかけたしごきのようなことが行われている同社は、安全や職員の研修などについて一体どのようなポリシーを持っているのでしょうか。現在のJR西日本には、「国鉄時代に上司におべっかを使ってきた人間が今の管理職となっている」との指摘もあり、乗客の安全を考えることよりも「会社のため」といいながら、一部管理職の利害ばかりを考えている集団、そして押さえつけられた環境でノルマに追われた業務をこなしている現場の職員、という構図になっているようです。
さらに同社の問題を深刻にしている事実として、2001年9月、今回の高見運転士と同じ大阪支社の運転士(当時44)が日勤が終了した翌日に自宅で首つり自殺しています。日勤教育の期間中には、上司が取り巻く中央の席に座らされたり、トイレに自由に行けないなどの状況にあったといいます。また、この運転士の手帳には自殺の2年前、勤務態度について上司から「おまえが首をつっても知ったことじゃない」と、なじられたことまでも記述されているのです。まるで映画で見る刑務所内の看守と受刑者の関係のような、異常な世界です。
JR西日本の陰湿な体質、そして適正な運転士を配置しない合理化・効率優先で安全を軽視した結果が招いた事故であることは明白です。
それを裏付けるものとして、死亡した運転士が所属するJR西日本大阪社長の本年度の方針を示した内部文書があり、5つの柱が課題として示されています。そこに最初に掲げられているのは、なんと「稼ぐ」という言葉であり、「まだまだ事業では稼ぐところがたくさんあります」などと呼びかけ、最も重要なはずの安全輸送は2番目の項目「目指す」に掲載されています。また社会的責任は、3番目の項目「守る」に入れられているのです。
さて5月12日の新聞では、脱線した快速電車が事故現場の右カーブ手前で通常より大幅に遅れて強めの常用ブレーキをかけたものの、十分に減速できなかった可能性が高いことが明らかになった、とありました。遅れを取り戻すためカーブぎりぎりまで減速せず、常用ブレーキが遅れ、続いて操作した非常ブレーキも結果的に間に合わず横転したことになります。
一方ベテラン運転士らによると、カーブ直前まで減速せず制限速度をオーバーしたままカーブを走行するのは時間短縮の“技術”で、制限速度を超えても大丈夫な速度をカーブごとにメモし、ノウハウを後輩に伝えることもあるといいます。そのようなことをしなければ、厳格なダイヤに縛られる運転士が遅れを取り戻すことはできず、11か月という経験の浅い運転士には到底勤まらない福知山線の乗務だったことが分かります。
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■松下製温風機で1人死亡/2県で計7人がCO中毒
松下電器産業は20日、松下製の石油温風機で、今年に入って福島県と長野県で3件、7人が一酸化炭素(CO)中毒になり、うち小学6年生(12)1人が死亡した、と発表しました。いずれも製造から14年以上たっており、空気を送るゴム製ホースが経年劣化で亀裂が入り、不完全燃焼を起こしたとみられています。
同社では、同様の欠陥があると推定される1985年から92年までに製造したFF式石油温風機と石油ヒーター計25機種、約15万台について、無料で点検、部品交換をします。
林義孝常務は記者会見で「大変な事故を起こし責任を痛感している。事故原因を調査中にさらに2件の事故を招き、反省すべきところは多い」と謝罪しましたが、最初の事故からの対応に問題が残ります。
ゴム製ホースの亀裂が原因とされますが、なぜ公表が遅れたのでしょうか。一酸化炭素中毒であることから、ゴムホースという原因の特定にさほど時間がかかるとは思えません。1月の死亡事故では、製品との因果関係は明白だと思われることから、「原因は調査中」であっても、ユーザーに注意を促すことをなぜしなかったのでしょう。「他の原因を探す」という、企業にありがちな責任回避の意識が働き公表が遅れたのでは、と考えたくなります。5人の拡大被害を招いた同社の不手際について具体的な説明が欲しいものです。
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18日午後1時ごろ、東京都港区にある屋内型娯楽施設「東京ジョイポリス」で、座席が垂直に上昇・下降し、スカイダイビングの疑似体験ができるアトラクションに乗っていた石川県内の男性(30)が、高さ約5メートルの位置から転落、間もなく死亡しました。
警視庁捜査一課によると、男性は足が不自由なため車いすで来場、太っていたので2つある安全装置のうち腰の安全ベルトを着けずに遊具に座りました。対応の男性係員は責任者に「ベルトが締まらないが大丈夫か」と確認し了解を得ていたといいます。
同課は安全管理に問題があったとみて、業務上過失致死容疑で関係者から事情を聴いています。
調べでは、事故が起きたのは6人乗りの「ビバ!スカイダイビング」で、約12メートル上昇後、座席が60度に前傾して上下、床面に空の映像が映されて風が吹き上がる仕組みになっています。座席は横1列で腰の安全ベルトと、上からおりてくるバーで体を固定するようになっています。男性は安全ベルトを着けていなかったため、座席が傾いた状態で数回上下した後、バーをすり抜けるように落ちてしまいました。
アルバイト係員が警視庁の事情聴取に対し、「過去にも安全ベルトを着けないことがあったが事故は起きず、大丈夫だと思った」と話していることも分かりました。アルバイト係員の間だけで使われる現場マニュアルには、安全ベルトを締められなかったり、足を曲げられない人は利用を断るとしながら「どうしてもという場合は遊具の責任者であるセガの社員に確認」と記載され、当日の係員は社員の了解を得ていました。
マニュアルで管理することの危うさがあるようです。安全性の最終確認者である係員にどのような安全教育が行われたか分かりませんが、おそらくマニュアルの指示通りにするすることだけを教えたのではないでしょうか。
分からない時にはセガの社員に電話などで確認するだけで、現場の状況、お客さんの状態などの情報を伝えるためには、よほどのレポートマニュアルがなければできないことです。今まで事故がなかったから、ということであれば、あらゆる顧客に対する事故を想定したシミュレーションなども、行っていなかったに違いありません。
少々失礼な言い方ですがですが、ゲームの仮想現実の世界から、現実のアミューズメントパークの経営に進出するにあたり、どのような安全管理システムを構築してきたかを問う必要があります。
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■電動アシスト自転車、実は原付き/国民生活センターが注意
電動モーターで前進を補助する「電動アシスト自転車」を思わせる広告で、実際にはペダルを踏まずに前進可能な「原動機付き自転車」を販売しているとして、国民生活センターは6日までに、東京都内の輸入業者など3社に文書で注意するとともに、経済産業省などに適切な指導を要望しました。センターによると、3社の商品は、いずれも運転者がペダルでこぐ際にモーターで補助する機能と、ペダル無しで前進できる自走機能が付いています。
他社の補助機能のみの「電動アシスト自転車」と見掛け上はほとんど変わらず、3社は広告などで「電動アシスト自転車」などと表示、公道では自走機能を使わないよう求めていました。センターなどでは運転には方向指示器などが必要と指摘し、それらの無い二輪車では、ペダルを踏んで走行していても同法違反にあたるとしています。
中国製の製品によるトラブルのようですが、原付き自転車と知らないで購入した人も多いのではないでしょうか。方向指示器を付けていないこと、そしてヘルメットを装着しないこと、原付き免許不携帯から突然警察官に呼び止められるかも知れません。困ったことです。[目次へ]
■「ウイルスバスター」の不具合、原因は多重の人為ミス
情報セキュリティー会社「トレンドマイクロ」のウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」の更新ファイルの不具合により、企業などのパソコンが使えなくなった問題で、同社は24日、更新ファイルのプログラムミスや検査を怠るなど人為的なミスが重なったことが原因だったと発表しました。
同社によると、フィリピンにあるウイルス解析拠点で障害を起こした更新ファイルの作成時にミスが重なったのが原因で、まず更新しファイル作成時に、パソコンに無限に演算を繰り返させるようなプログラムミスが発生、このミスに気付かないまま、配布前の最終テストに入ったのが原因とのことです。
最終テストは、プログラムの発見も目的の一つですが、担当者が一部の手順を行わず、テストされたかどうかを確認する別の社員もそれを指摘しなかったことから、WindowsXPサービスパックを搭載したパソコンなどで誤動作を引き起こして今回のトラブルになったといいます。
ウイルスによるリスクを軽減するはずの対策ソフトの欠陥が引き起こした今回の事件は、悪意を持ったネット犯罪者に新たな弱みをさらけ出してしまったようです。ウイルス対策ソフトになりすましてパソコンに侵入するような、新手のプログラムが出てこないか少々心配です。[目次へ]
■PCB、製造中止後も混入/高圧変圧器など170万台
人体に有害として1972年に製造が中止された化学物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)が、工場の高圧変圧器などの電気機器に微量に混入し、その台数が推計で約170万台に達することが20日、経済産業、環境両省の調査で分かりました。
PCBは変圧器の絶縁油などに利用されていて、製造中止となってからは使われていないことになっていました。しかし2000年に一部メーカーの変圧器から、含有していないはずのPCBが検出されたことから当時の通産相が日本電機工業会(JEMA)に実態調査を要請していました。
JEMAは2003年11月、調査したメーカー26社のうち19社の変圧器など1911台から低濃度PCBを検出、古い絶縁油を再生する過程で、新しい絶縁油にもPCBが混入した可能性を報告しています。
PCBの処理については事業者任せのため、ずさんな管理が指摘されていて、倒産した会社にあったPCBの所在が不明となることもあります。国が政策としてPCB管理場所を一元化して確保、併せて処理を進める、ということをやらないかぎり2016年までの処理完了は無理のようです。おそくら今回と同じように2016年以降も、「PCBは全て処理したはずなのに…」という事件があちこちで起こることでしょう。国のずさんさがよく分かります。[目次へ]
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