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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
12月のニュースから
■タダノ製クレーン車、岡山で6人死傷/操作と逆に曲がる欠陥
建設用クレーンなどを製造販売しているタダノ製のクレーン車で、安全装置の欠陥から運転手が曲がろうとする方向とは逆に車が曲がる事故が起きています。今年8月、岡山県でハンドルを左に切ろうとしたクレーン車が右に曲がってしまい、対向車線の乗用車と衝突、6人が死傷する事故が起きていたことが9日、分かりました。
国土交通省の調べでは、死亡事故を引き起こしていた建設用クレーン大手タダノ製を含め、3社の大型クレーン車で計11件の事故が起きていたといいます。国交省は10日午前、タダノに対し警告書を出したほか、他のメーカーに対しても「一般道を走行する上できわめて危険」として、早急にリコール(回収、無償交換)などの措置を取るよう指導に乗り出しました。
このクレーン車に搭載されているシステムは、クレーンを後ろに向けて作業する際、操作しやすいようにしたもので、運転席の逆ステアリングスイッチを入れると、車が逆向きに曲がるようになっています。運転手が逆向きでも、通常の感覚で作業が行えるよう配慮した、いわゆる安全機能ともいえます。
このシステムの安全装置というのは、一般道を走る際、スイッチを切り忘れても自動的にシステムを解除するものですが、この装置が故障したために逆作動状態に気付かずに事故になったものです。
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■新幹線ドア、走行中開く/警告ランプで緊急停車
東海道新幹線東京発名古屋行き「こだま482号」で6日午後7時ごろ、時速250キロで新横浜−小田原間を走行中にデッキドアが突然開き、緊急停車していたことが分かりました。運転席でドアの異常を示すランプが点灯したため緊急停車、運転士が1号車左側のドアを調べたところ、ドアを手で開けようとしても開かず、安全策としてドアに鍵をかけて運転を再開したものです。
JR東海は、ドアに何らかの異常があったことは事実だと認識し、ドアが開いたとしたら風圧で走行中に開かないようにドアを押しつける装置の油圧が一時的に下がった可能性があると見ています。当日は満席で現場のデッキには数人の乗客がいたようですが、ドアに寄りかかる人がいなくて幸いでした。鉄道車両のドアは小さなプルタブやティシュペーパーなどでも閉まらなくなる事故があり、これらは安全上センサー感度を高めているので理解できますが、走行中のドアが開く、ということは困ります。
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■心臓弁膜手術で3人死亡/同じ医師が担当、東京医大病院
東京医科大学病院(東京都新宿区、臼井正彦院長)第2外科で、2002年10月から今年にかけて、男性心臓外科医(45)が担当した心臓弁膜症の患者3人が手術後に死亡、遺族が「医療ミスの疑いがある」としてカルテなどの証拠保全を申し立て、東京簡裁が認める決定をしていたことが11日、分かりました。しかも同医師が執刀した別の手術でも女性患者が亡くなっていることから、病院は死亡との因果関係を調査しているといいます。
患者が術後に亡くなったのはいずれも心臓の弁が正常に閉じないなどの理由で血液の流れが悪くなる心臓弁膜症患者に対する手術で、専門家によると、手術による死亡率は数%程度だといい、同じ医師の担当による死亡ケースが2年間で3件、というのは異常な状態です。
同病院によると、証拠保全の対象となったのは02年10月から今年前半までの1年余りに男性医師が担当した手術で、02年10月には心臓弁の閉鎖不全で手術を受けた女性(当時71)が手術翌日に心臓から出血、再手術をしたものの、2カ月半後に死亡しました。昨年3月には冠動脈のバイパス手術も同時に受けた女性(同 68)も同様に術後に出血が続き、約2週間後に亡くなり、今年に入っても男性患者(同67)が死亡しています。[目次へ]
■自動回転扉の安全対策進み始める
六本木ヒルズでの男児死亡事故を受け、国土交通省が全国の大型自動回転扉を調べたところ、現在も稼働中の133基のうち、同省などが作成した事故防止ガイドラインに適合しているのは、約19%の25基であることが分かりました。
残り108基はガイドラインの基準を全て満たしてはいないものの、警備員を置くなどの安全措置を講じているといいます。
ガイドラインでは、安全を保てる速度の上限設定をはじめ、回転扉以外のドアの併設、衝撃緩和のための基準などが盛り込まれています。しかし改修費用が1基あたり数十万円単位でかかることから、各施設の経済的事情が反映された結果となったようです。
1990年代に急増した回転扉の事故をヒルズの死亡事故まで把握していなかった反省から、国交省は新たな情報収集方法を検討しています。これは、欠陥が疑われる交通事故を各警察が同省に通報する制度が九月に実施され、欠陥車両の早期発見と迅速リコールに直結していることから、建築物事故においても消防庁と連携した通報制度が効果を上げるものと考えられるからです。[目次へ]
■BSE対策、「米工場順守せず」
米国内の食肉加工場でBSEの防止規制が順守されず、脳や脊髄などの特定危険部位が食肉中に混入している恐れがあるとする警告書を、米政府の食品検査官らが加盟する労働組合がまとめ、米農務省に提出していたことが明らかになりました。
警告書を出したのは米最大の労組、米労働総同盟産別会議傘下の全米食品検査官合同評議会で、BSE対策のずさんな運用ぶりが現場の担当者により告発されたのは重大なことです。生後間もない牛からはBSEの検出が困難なことから、EUでは病気または死亡した 24 カ月齢以上の牛および 30 カ月以上の健康牛で検査を行っていて、日本の全頭検査は無駄が多いことが指摘されています。たしかに危険部位の完全な除去を適切なシステムで運用する方が、膨大な税金を使う全頭検査よりも有効だと思います。
そのため米国は、米国産牛肉の輸入解禁に際して全頭検査をやめて24カ月以上の検査にすることを求めていますが、その前提となる危険部位の除去運用システムの信頼性が無いことが判明したので、この問題はしばらく尾を引きそうです。[目次へ]
■ハンドル形車いす拒否は人権侵害/法務省、JR東海に改善勧告
法務省は16日までに、駅や列車内でハンドル形電動車いすの利用を一律に認めないのは身体障害者への重大な人権侵害として、JR東海に対応の改善を勧告しました。大手鉄道各社の大半が利用を認めており「不当な差別的取り扱い」と判断したものです。公共交通機関への人権侵害での勧告は初めてのものだといいます。
同省と大阪法務局は、ハンドル形車いすに乗ったままでの駅施設内への立ち入りを拒否された大阪市の山名勝さんの被害申告を受けて、4月に調査を開始しました。その結果、同社は1都2府8県の約400駅のほか、列車を含む施設の全てで利用を認めていなかったことが判明しました。
同社は
1.他の車いすなどに比べ車体や回転半径が大きい
2.乗降時の助走で勢いがつく可能性がある
3.介助者が操作できず暴走する恐れがある
などから本人や乗客の安全を考慮したと説明しています。しかし鉄道50社以上が一定の条件下で利用を認めていることから、同省は人権侵害にあたると判断したものです。
JR東海の論拠は事故が起きることを前提とした推論で、事故防止対策を考えなくても済むような、まるで役人みたいな言い訳に聞こえます。そこには他の鉄道会社では可能で同社でできない客観的な理由はなく、同社の言う「本人や乗客の安全を考慮」の言葉が空しく響きます。本音は、事故時に責任が及ぶのを恐れているだけのようです。[目次へ]
■山中温泉2旅館、風呂に水道水
加賀温泉郷の一つ山中温泉(石川県山中町)で、旅館協同組合加盟の旅館2軒が風呂の水に水道水を使っていることが16日、明らかになりました。同組合は「温泉」と偽った表示はないものの、消費者の誤解を招きかねないとして、年末までに両旅館が温泉を引かない場合、パンフレットやホームページを改め、旅館ごとに温泉の使用、不使用を明示することにしました。
同組合には温泉を利用しない旅館でも加盟でき、両旅館のうち1軒は、山中町に配湯料(全旅館平均で年1300万円)が払えなくなったためで、2年ほど前に水道水に切り替えたといい、もう1軒は配湯を受ける体制が整っていない状態だといいます。
最近の同旅館組合のホームページの旅館案内では、2軒の旅館について「温泉ではない」と分けて掲載していました。しかし全国の温泉ガイドや宿予約のホームページでは相変わらず「温泉」として掲載され、しかも「…温泉の質も◎」や、中には 「泉質: カルシウム・ナトリウム硫酸塩泉、効用: 神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、切り傷」などと虚偽の情報表示もあり、注意が必要です。これらは同旅館の問題ではなく、ホテル・旅館予約サイトや旅行会社などのホームページ管理がいいかげん、ということです。更新されない誤った情報の垂れ流しは困ります。
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■10年間・10万キロの品質保証/三菱自、2005年春から
三菱自動車は一連のリコール隠しで販売が低迷していますが、国内で販売した新車に対し、期間が10年間、走行距離が10万キロ以内なら、不具合を無料で修理する異例のサービスを2005年春から展開する方針を固めたことが10日、分かりました。
通常各社が行っている新車に対するメーカー保証は「3年間、6万キロ」程度で、三菱は「10年間、10万キロ」の充実した保証制度を打ち出すことで、リコール隠しで失った顧客の品質に対する不安を払拭させる狙いがあるようです。保証は、エンジンなど主要な部品について無料で実施するもので、消耗品など対象外部品の修理は有償となります。
顧客にとっては歓迎なことですが、はたしてどの程度の効果があるのでしょう。
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■販売業者の反発続出/産地など不当表示での排除命令
商品の原産地などを不当に表示した業者に公正取引委員会が行う排除命令を巡り、命令を受けた業者が公取委の処分に反発したり、納入業者に対して訴訟を起こしたりするケースが目立ってきました。景品表示法では命令の対象はあくまで表示した業者であることから、納入時の情報が誤っていたことが原因でも表示した業者は処分を免れないことからトラブルとなっているようです。
ルーマニア製のズボンをイタリア製と表示したとして11月に輸入業者と供に排除命令を受けた「ワールド」など5社は、公取委に対し「今回の排除命令が先例となれば、輸入業者から安心して購入し販売することができなくなる」との異例の声明文を出して公取委に納得できないと訴えました。
販売者は輸入業者などに対し損害賠償を請求することもできますですが、ワールドなどは「輸入業者から安心して購入し販売することができなくなる」と訴えてるだけです。工業製品で自社ブランドをOEM調達している企業は数多くあり、製造会社の瑕疵も最終完成品のブランドを持つ企業が責任を負うのは当然です。その上で必要であれば製造元や部品メーカーに補償を求めるだけです。ワールドでは「このままではリスクを背負ったままになる」といっていますが、世界中から素材・部品・半製品などを調達しているのにリスクがないはずがありません。それでも品質やコスト的な魅力があるため、いわゆるリスクを背負って商売をしているはずです。どうも彼らの言い分がよく分かりません。[目次へ]
■国策で混合ガソリン導入/中国
自動車大国に成長した中国が、国策として米国などにならって車のガソリンにエタノールを混合し始めました。日本ではエンジン部品などの腐蝕が指摘され、メーカー保護からか遅々として進まない混合ガソリンですが、米国ではガソリン9割、エタノール1割の「E10」という混合ガソリンが使われていて、日本車メーカーも対応技術を持っているのにです。中国東北部ではトウモロコシが大量に収穫でき、農家の収入増につながることから、2002年から東北三省(黒竜江、吉林、遼寧)などで混合ガソリンの試験販売を始め、遼寧省大連市などでこの11月から通常ガソリンの販売を禁じています。将来は中国全土で「E10」に切り替える方針だといいます。
ガソリン使用量を減らし、二酸化炭素(CO2)の排出量を押さえる効果がある混合ガソリンを我が国でも早急に普及させたいものです。環境省では2010年から「E10」に切り替えたい意向のようですが、どうなることやら。決断・実行の早い中国と比較するのは酷かもしれませんが、少々うらやましい気がします。[目次へ]
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