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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
8月のニュースから
■美浜原発事故、関電の体質が原因
福井県美浜町の関西電力美浜原子力発電所3号機のタービン建家内配管からの蒸気噴出事故は、その後次々と事実が明らかになっています。2次系配管については国の指針が無いことから電力各社ばらばらの検査項目や検査法ですが、関電では配管の減肉に対する安全管理が甘かったようです。
検査は96年に三菱重工から、関電の関連会社である日本アームに引き継がれています。検査を自社で行わないことも多いのですが、他の電力会社の場合ですと、東京電力は下請け会社に完全委託するケースか、検査時には東電の職員が立ち会うケースのいずれかを採用しているとのことで、九州電力では、2次系の配管の肉厚を調べる検査を自主的に実施、その際に必ず原子力部門の社員を同行させているといいます。美浜原発と同じ加圧水型軽水炉を持つ四国電力は、グループ会社などに検査を外注していますが、「委託先から指摘があれば、直ちに対処できる体制を敷いている。今回の関電のケースのような事態は考えられない」と述べています。
さて当初の検査会社である三菱重工から日本アームに対し、99年4月と2000年8月の2回、文書で「事故の起きた配管部分も検査が必要」との指摘がありました。しかし日本アームでは指摘を重要視せず、社内通知だけにとどめ関電には報告を怠っていました。そのため事故のあった配管部分が検査対象から漏れていることを、日本アーム自体確認したのは、昨年4月の検査システム見直し時だったといいます。
ところが関電のスケジュールでは、3号機の検査を今年8月と決めていたのです。日本アームでは親会社である関電に、よけいな検査負担を強いることを遠慮したのか「緊急性はない」として報告せず、関電に知らせたのは昨年11月になってからでした。しかも報告先は本社ではなく、美浜発電所の機械補修課宛てだったのです。
この時点で関電・機械補修課から本社に連絡が行けば良かったのですが、現場の判断が優先されてしまいました。報告を受けた同課では、同原発が1976年の運転開始以来一度も配管の肉厚を調べていないことを知ったのですが、「緊急性が低い」ということで8月14日からの定期検査で調べることにしてしまいました。その判断の根拠というのが、96〜2001年に高浜原発1、2号機の流量計下流部で行われた検査では配管内部の摩耗が少なく、「まだ12年から50年以上の寿命がある」との結果が出ていたことに着目、これらの設備が美浜3号機と同じ基本設計で美浜より運転開始時期が早いことから緊急に検査する必要はないと考えたといいます。しかし98〜2003年に高浜原発3、4号機、大飯1号機の3設備で行った同様の検査では、摩耗で配管の寿命が「今後2年以下」とされ、炭素鋼から高強度のステンレスに交換する対策が採られていたのです。彼らは当然知り得る立場にありながら、この情報を生かしきれなかったのは、関電の効率優先体質が同課の作為的とも受け取れる誤認を誘ったのではないでしょうか。
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■三菱重工、ずさん試験/ミサイル開発で問題なしと報告
三菱重工業による88式地対艦ミサイルの改良型「SSM1改」の開発ミス問題で、いいかげんな設計図を基に作られた治具を使って強度試験を行った結果、得られたデータがでたらめだったことが12日分かりました。しかも同社では、このデータを防衛庁に「問題なし」と報告していたといいます。
SSM1改の開発は2001年度から6年間の予定で始まり、同社名古屋誘導推進システム製作所は、昨年10月の発射試験を前に同社名古屋航空宇宙システム製作所に強度試験を依託しました。
強度試験は治具で天井と床からミサイル本体を支えて、さまざまな圧力下でのひずみを測定しますが、ミサイル後部の噴射口に治具を取り付ける部位がないことから治具の設計者が加重ポイントを1カ所割愛、そのため適正な試験で数値をつなぐとグラフは谷型になるはずなのに山形となってしまったといいます。
しかし名航ではこの数値を疑うことなく「ひずみはなく適正」との報告をまとめ、これを受け取った名誘も「問題ない」と判断、防衛庁技術研究本部に提出したというものです。
客観的な検証ということのない同社のでたらめぶりですが、防衛庁開発計画課では三菱側から事情聴取、その結果SSM1改の開発を担当していたのは、陸上自衛隊が配備を終了したSSM1を維持・補修するための製造チームで、開発の専門家ではなかったことが判明したといいます。
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■豚コレラ、またワクチン由来ウイルス
鹿児島県高尾野町の養豚場で豚コレラに感染した疑いのある豚が見つかった問題で、農水省は4日、専門家の技術検討会を開き遺伝子解析の結果、3月と7月に同県内で見つかった未承認ワクチン由来の豚コレラウイルスと同一ウイルスが原因と結論付けました。致死立100%近い豚コレラウイルス感染かと心配されたのですが、いずれも国内で使用が原則中止されているワクチン由来のウイルスでした。農水省は鹿児島県で立て続けに見つかったことを重視、同県内の幅広い地域を対象に「薬事法の観点から、ワクチン使用の有無を徹底的に調べる」としています。
本当に必要なときのワクチン接種ですが、現在もどこかの養豚場で行われているとしたら、万一豚コレラが発生しても感染豚が散発的となる可能性から、発見が遅れるリスクがあるといわれています。[目次へ]
■8割を越す病院で針刺し/厚労省調査
使用済み注射針を医療従事者が自分に刺してしまう「針刺し」事故は依然多いようです。厚生労働省研究班の全国調査によると、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルス、エイズウイルスに汚染された血液が絡む針刺しが2000から2002年の3年間に8割を越える病院で起きていたことが16日、分かりました。実際に肝炎に感染したケースは、少なくとも42病院であり、簡単な操作で針が露出しなくできる安全なタイプの器材を全く導入していない病院も半数近くもあり、職業感染を防ぐ取り組みの遅れが目立ちます。調査は昨年2月から3月、全国にある300床以上の病院全てと、200床以上300床未満の病院の一部の計1800を対象に実施、961病院から回答がありました。
肝炎ウイルスなどに汚染された血液が絡む針刺しは、この問いに答えた893病院のうち740病院(83%)で発生、うち42病院では計47件の職業感染がありました。うち46件はC型肝炎で、残る1件がB型肝炎でした。
また病院で使う注射針や縫合針など一部でも安全器材を導入しているのは55%にとどまり、残りの45%は全く導入実績がないという驚きの結果でした。しかも注射針など鋭利な器材専用の廃棄容器を病室ごとに設置していない病院が84%を占め、使用済みの針へキャップをかぶせる危険な「リキャップ」を禁止してない病院も5%あったといいます。
米国では2000年に針刺し防止の安全器材の導入を医療機関に義務付ける連邦法が成立、2001年4月から施行されています。我が国では病院側が安全器材のコスト負担を嫌うために普及が進んでいないといわれています。厚生労働省は静脈留置針に限り、今年4月から診療報酬上の優遇措置を取りましたが、さらなる国の財政面などの支援を求める声が上がっています。[目次へ]
■C型肝炎ウイルス、口中にも/厚労省、歯科の安全指針作成へ
C型肝炎患者は口の中からもウイルスが検出されることが、厚生労働省研究班の調査で4日までに分かりました。最大でも血液中の濃度の十分の一程度で、感染力は不明なものの、同省は注意が必要として歯科開業医向けの安全指針を作ることになりました。
都内の歯科病院に歯肉炎や歯茎のがんで来院した肝炎患者21人の調査で、19人が患部からにじみ出た液体にC型肝炎ウイルスが検出 、8人からは唾液から見つかったといいます。
現在のところ口中の液体で通じた感染力は分かっていませんが、歯科医や他の患者の皮膚や口内などに傷口があると、そこから感染する危険性が考えられるため、手袋やマスクによる防御、診療器具の消毒などの対策が必要になるといいます。
指針では、消毒徹底や飛沫感染を防ぐため診療台同士を離すことなどを求める予定です。[目次へ]
■故意に浄水場の汚泥排出/長野県塩尻市
長野県塩尻市にある県企業局の、松塩水道用水管理事務所本山浄水場の職員が、奈良井川に故意に汚泥を排出していた事件が発覚しました。汚泥の排出は18日午後2時半過ぎで、川の濁りが収まらないことを疑問視した奈良井川漁協関係者の指摘で発覚、同日午後9時頃浄水場の排水溝から約10キロ下流でカジカが約50匹死んでいるのを組合員が確認しました。
県の調査によると、1982年の同浄水場稼働直後から勤める専門技師2人が、98年4月頃、99年7月頃、2002年4月と7月、今年8月18日の計5回、いずれも大雨による川の濁りに乗じて汚泥を排出していたことが分かりました。
同浄水場では乾燥させた汚泥を産廃処理業者に委託して埋め立てていましたが、リサイクル利用を目的に97年にセメント原料などとして別の業者と取引を始めました。しかし業者から含有水分を減らすよう求められ、乾燥期間が長期化、そのため汚泥の乾燥床が足りなくなる事態を懸念した職員が、定期的に大雨で川が濁っている時期に汚泥を排出していたものです。
処理場の乾燥床が少なくて困っていたので、要望を県に出していると思われますが、県では現場のとりあえずの対処に任せて黙認していたのではないでしょうか。
県ではまた、同浄水場上下流24キロ以内の水質と水生生物を23日に調べた結果、「排出された汚泥の影響は残っていないことが推定される」と発表しましたが、排出から時間が経った検査では信頼性に乏しく、責任を逃れるために「今回の不祥事の影響は少なかった」と言いたいだけのようです。
ところが9月14日になり、県が行った浄水場を管理する市町村など108の事業者を対象にしたアンケートで、全施設211カ所のうち、55%にあたる116カ所で汚泥を処理せずに公共水域に排出していたことが分かりました。これは長野県だけの問題ではなく、全国の浄水場汚泥排出問題になるかも知れません。[目次へ]
■医療訴訟の迅速化へ、裁判所の変化
高度で専門的なことから時間がかかり、負担が大きいといわれる医療訴訟ですが、最近の取り組みを紹介します。
東京地裁は「医療集中部」を3年前に発足して迅速化に取り組み、今年1月から3月に終えた医療訴訟の平均審理期間は1年5カ月で5年前より約1年短縮されたといいます。同地裁では「カンファレンス方式」と呼ばれる鑑定方法を取り入れ、裁判官と原告、病院双方の代理人、そして都内の13大学病院から専門委3人が出廷して個別に鑑定をするものです。病院側をかばうような発言もあるようですが、裁判官が次々に繰り出す質問にウソで取りつくろうのは難しく、おおむね客観的だとの評価があります。
医療訴訟では裁判官が鑑定に頼る傾向が強いといわれ、その責任の重さに鑑定を敬遠する医師が多いようです。そのため鑑定医師を見つけるのが難しく、訴訟長期化の温床だといわれてききました。しかし複数の医師が鑑定することで責任が分散、正しい発言を誘い出し、しかも訴訟短縮化につながるという良い取り組みだと思います。
医療事件集中部を持つ大阪地裁では、一昨年から手術の見学会を30回実施、裁判官が心臓バイパス手術、大腸がん切除や内視鏡を使った胆のう摘出など、訴訟になりやすい手術を実際に目で見て学んでいます。また年2回、医師や看護師を招いた勉強会も開いているとのことで、積極的に取り組んでいます。
千葉地裁でも県内の6大学付属病院の複数の医師が鑑定書を作成する方式を取り入れ、鑑定する医師を探し鑑定書提出するまでの期間が、今まで1年10カ月ほどあったものが、現在は約80日と大幅に短縮されたといいます。[目次へ]
■臭素化ダイオキシン、高濃度で検出/瀬戸内海、大阪湾周辺
ダイオキシンと似た毒性を持つことが注目されている臭素化ダイオキシンの汚染が、瀬戸内海や大阪港周辺に広がっていることを、摂南大の太田壮一助教授らが31日までの調査で確認しました。中でも岡山県の水島港周辺で採取した海底の泥からは、環境省が実施した全国調査の最大値の10倍以上という高濃度の臭素化ダイオキシンが見つかりました。
太田助教授は「周辺に多い化学物質工場などが発生源と見られるが、詳しいことは分からない。ほかにも汚染の激しい場所が存在する可能性もある」と指摘しています。
研究グループは2002年、大阪湾と瀬戸内海沿岸の17カ所で海底の泥を採取し、含まれる臭素化ダイオキシンを分析、水島港近くの泥から1グラムあたり1万6000ピコグラムの臭素化ダイオキシンを検出したものです。
物質の細かい分析などから、コンピューターや繊維製品を燃えにくくする臭素系難燃材が発生源の一つと考えられたものの、水島港周辺の場合は他の物質を扱う工場など、別の発生源があると考えられるといいます。[目次へ]
■運転中の携帯電話、11月から罰則適用
政府は24日、今年6月に成立した改正道交法のうち、運転中の携帯電話使用者への罰則を適用することについて11月1日から施行することを決めました。
シートベルトでも、罰則の適用からグンと装着率が上がりましたが、日本人には罰則のない法律など効果がない、という当たり前のことが今回も明らかになるでしょう。企業・業者に遠慮するいつもながらの行政の対応ですが、携帯各社はすでに十分儲けて、今後も顧客が増えていくので道交法改正くらいでは影響がない、ということなのでしょう…。[目次へ]
終わりに
長野県内で発売された中国産春雨などに使用を禁止されている「過酸化ベンゾイル」が含まれていたと県が誤って発表した問題で、検査で春雨を破砕するときに使ったジューサーミキサーから溶けだした物質を過酸化ベンゾイルと誤認して発表したことが分かりました。県環境保全研究所では「発表前にクロスチェックを行おうとしたが、過酸化ベンゾイルは熱に弱く、分子が壊れて失敗した」などと発言、事実を隠そうとしていたと疑われそうです。犯人探しで見つけた興奮のあまり、客観的な信頼性を得ることを怠った、長野県の失態といえるでしょう。お粗末でした。
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