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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
7月のニュースから
■JAS認定、不正に取得/信濃興農、規格外添加物使用
規格外の添加物を入れた果実飲料で日本農林規格(JAS)認定を不正に取得し、JASマーク付きの商品を販売したとして、農水省は8日、長野県須坂市の食品製造会社「信濃興農」を現住注意するとともに、消費者への情報提供を要請しました。同省によると、不正があったのは同社が製造した果実飲料「リンゴ5倍濃縮果汁」で、本来はJAS認定外となる濃度の薄い飲料に、リンゴ酸などの添加物を加えることで糖度を上げ認定を取得、濃い果汁と偽装しJASマーク付きの製品を販売したものです。製品は菓子などの原料として食品会社に流通しているとのことです。
毎年、同社から依頼を受けて製品を検査し、JASの合格品を認定していた日本炭酸飲料検査協会によると、検査では規格外の添加物が含まれるかまでは確認せず、糖度20%以上など3項目に適合していれば合格にしてきたといいます。「業者側が『余計な物は入れていない』と言えば信じるしかない。それ以上調べていればきりがない」(検査部)とも話しています。
同省は同社がこの仕組みを悪用、検査をすり抜けることを意図した上で適合認定を申請したもので、極めて悪質であることから会社名の公表に踏み切ったとしています。また、製品の原材料には「りんご」とだけ記されており、長野保健所は食品衛生法違反(虚偽表示)に当たるかどうかについて調べています。
同省によると「こうしたケースは食品ではおそらく初めて」としていますが、JASの認定検査そのものの信頼が揺らぐものであり、JAS表示を誰にでも行えることでの不正防止策を取ってこなかった同省の甘さもあります。今回は匿名の情報提供を基に調査したところ不正が分かったものだといい、他の食品業界の不正事件でも同様な告発に頼らざるを得ない状況では困ってしまいます。
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■塩、アセロラ、ブロッコリーも/いつまで続く食品の不正
外国産の塩が原料なのに、容器や袋に国産と受け取られるような表示をしたとして、公正取引委員会は21日、景品表示法違反(優良誤認)の恐れがあるとして「伯方の塩」を製造販売する伯方塩業(愛媛県伯方町)など塩の製造、販売会社9社に表示内容の改善を求める警告をしました。公取委によると、伯方塩業は2001年4月から、一般家庭向け調理用塩「HAKATA焼塩」を販売。容器には「にがりをほどよく残した伯方の塩を焼いた」とあるのに、実際はメキシコ産の天日塩を伯方島周辺の海水に溶かして加工していたものです。
ほかの8社も塩の産地として知られる兵庫県赤穂市や沖縄県が原産地であるようにPRしながら、メキシコやオーストラリアの塩を海水に溶かして加工していました。公取委に対して、一部の社は「天日塩は国内では採れないため、材料名に天日塩と示しておけば外国産だと分かると思っていた」としていますが、この発言の背景には1971年に「塩業の整理及び近代化の促進に関する臨時措置法」が公布されたことがあり、その後国内では海水から塩を作れないようになりました。そこで業者は海外の塩を輸入し、国内の海で溶かしたものを乾燥、法律上の特殊塩として販売する道を選んできたわけです。したがって業者の考えでは「原材料からすべて純国産の天然海塩はあり得ない」のが常識のようです。
さて今回警告を受けた中の3社は、重油が燃料なのに「薪炊き仕込みで丁寧に仕上げた」などと、完全に詐欺まがいの表記をしていましたが、公取委は表示が目立たない場所にあったり、商品として出回った数が少なかったりしたことから、排除命令にせず警告にとどめたと説明しています。
次は、科学的に合成したビタミンCを多く使いながら、「アセロラ由来の天然ビタミンC」などと表示していたとして、公正取引委員会は29日、景品表示法違反(優良誤認)で、アサヒビールの子会社「アサヒフードアンドへルスケア」と薬局チェーンの「セガミメディクス」に排除命令を出したニュースです。
公取委によると、アサヒは2001年10月から今年4月までの間、錠剤の健康食品「アクティオアセロラC」に、3粒あたりの成分として「アセロラ果実エキス800ミリグラム、(内ビタミンC200ミリグラム含有)」などと表示していたといいます。セガミはアサヒからの供給を受けて、同様の表示をした商品を販売していたものです。公取委は、商品に含まれるビタミンCのうち、アセロラ由来のものはたったの0.3%程度で、残りは合成だとしています。
原因は原料のアセロラ粉末の輸入卸業者がアサヒに対し「100%アセロラ由来」と説明していたことから、としていますが、食品業界の虚偽表示が相次いでいる中、帳票類の表記や言葉だけで品質を保証できると思っている同社のマネージメントに問題があるでしょう。
さて大阪市第3セクターの荷役会社「大阪港埠頭ターミナル」のブロッコリー産地偽装事件で、大阪府警生活経済課は30日、不正競争防止法違反(虚偽表示)の疑いで、大阪市港区の同社本社や下請け会社「オーエスサービス」など5カ所を家宅捜索しました。調べでは、ターミナル社青果部門の課長ら3人は、2002年3月、同社の加工場で米国産ブロッコリーの段ボール約1500箱から計約1万2000個を抜き取り中国産を混ぜ、「米国産」と誤認させる原産地表示で出荷した疑いが持たれています。
野菜パッケージの中のいくつかをすり替える、という新手の方法ですが、他の食品でも行われているような気がします。彼らは「何でもありの犯罪者」であり、抑止力となる罰則の強化を求めたいものです。
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■温泉で入浴剤使用/白骨温泉の公共野天風呂
乳白色の温泉で人気が高い長野県の白骨温泉が運営する「公共野天風呂」に、湯の乳白色を保つために入浴剤が入れられていたことが、11日に分かりました。その後「CMのときに一度だけ入浴剤を使用した」といっていた白骨グランドホテルが、4年半もの間常用していたことが発覚、同温泉の評判は地に落ちた感じがします。
温泉が循環式であることすら表示することを嫌う業者も多いこの業界では、「分からなければいい」とする安易な考えに傾きがちです。昨年8月に吉良温泉が10年以上もの間水道水を沸かすなどして営業していたことが発覚(ASPニュース117号)、顧客を欺く事件があったばかりですが…。温泉で不正をしている業者が多いことは、8月になり群馬県の伊香保温泉で水道水などを加熱しただけの旅館やホテル7件が見つかったことでも明らかです。伊香保温泉の2軒ではホームページ上で温泉の表示の宣伝をしていたといい、きわめて悪質です。また福岡県二丈町の「天然の温泉村」経営の2施設が敷地内の井戸水を加熱していたものを、「泉質単純硫黄泉、効能神経痛」などと欲場内の掲示するなど宣伝していたことから、全国初の公取委による景品表示法違反(優良認識)警告が出されました。
顧客が品質を判別できない商品は品質表示に頼らざるを得なく、このような商品を扱う業者ほど厳格な品質維持と客観的な顧客情報を提供する義務があります。業種に関わらず不祥事が相次いでいますが、ここでも懲りない業者を温存する法律や甘い罰則の問題があります。これは現政府与党の国民不在政治が長く続いた結果、と見るべきでしょう。[目次へ]
■警報音放置、患者死亡/榊原記念病院
東京都府中市の榊原記念病院で今年3月、心疾患で入院中の男性患者(当時23)が、心電図モニターで異常を示す警報音がたびたびなっていたにもかかわらず、1時間以上放置され死亡していたことが22日分かりました。
遺族や病院の話によると、患者は下半身のむくみで3月19日に入院、検査で心臓に血栓が見つかり入院、胸部に電極を貼り、心拍波形を監視モニターに無線で送る装置を取り付けていました。23日の朝食後、1人でトイレの個室に入った後、記録が残っている午後9時40分から56分だけで20回以上異常を示す警報音が鳴っていましたが、同10時45分まで発見されず、その夜に亡くなりました。
当時この病室では患者ら十数人を3人の看護師が担当、心電図モニターを常時監視する体制ではなかったといい、何のために患者に電極を貼ったのか意味のない、あるいは事故を暗に黙認するような状況でした。
今回のケースでは「音量を最小限に設定していた」ということと、「警報が鳴っても「きっと他の部屋へ行って電波が途切れたんだ」とする、できるだけ仕事を増やしたくない、という都合の良い思い込みの結果ですが、それを助長してきたのは経営効率最優先の病院そのものです。しかし「看護師の思い込み」で片付けたい病院側には、その認識がないようです。[目次へ]
■呼吸器外され患者死亡/青森県立病院で医療ミス
青森市の青森県立中央病院で11日、たんの吸引のため人工呼吸器を外された80代の女性患者が死亡し、病院は26日までに医療事故として青森署に届けました。
人工呼吸器は外れるとアラームが鳴る仕組みですが、事故当時は鳴らないように操作されていたといいます。警告アラームが簡単に鳴らないよう設定できる機器、というのは問題ですが、一般消費者向け製品でない医療機器の場合はプロ用、ということで安全基準も厳しくないのが普通です。したがって病院および職員は機器の警報装置を無効にする際には、厳格な手順に従いその目的と警報の代替手段、そして病院としての承認システムなどが必要になりますが、実際はかなりいい加減なようです。[目次へ]
■テレビ内部のちり、高濃度の有害物質検出/国立環境研究所など調査
テレビ内部にたまったちりに、ダイオキシンに似た毒性がある臭素化ダイオキシンや、機器を燃えにくくするため製造時に加えられる有害な臭素系難燃材が高濃度で含まれていることが、国立環境研究所などの27日までの調査で分かりました。調査では、製造時の熱などにより難燃材から臭素化ダイオキシンが生成された可能性が高いとしています。
欧米では、難燃材を使った電子機器がある室内のほこりから臭素化ダイオキシンを検出したとの報告もあり、家電製品や電子機器が原因で起きる室内汚染の問題がクローズアップしそうです。[目次へ]
■子供の薬使用、より安全に/厚労省、用量の明確化の検討始める
厚生労働省は27日、子供の用法・用量が添付文書に書かれていない医薬品が広く使われている現状の見直しのため、成長段階に応じた安全な使用量を明確にする制度の検討を始めました。子供の臨床試験は安全面などから本人や親の同意が得にくい上、患者数が少なく製薬会社では採算が合わないため新薬承認は大人の試験データだけで行われることが多いといわれています。
添付文書ににない使い方は「適用外」となり、子供の体重や医師の経験で処方量が決められています。米国では1998年、食品医薬品局(FDA)の規制で新薬承認に子供用のデータも集めるよう製薬会社に義務づけ、その後対策が進んでいるようです。
大西鐘寿・高松短大教授(小児科学)を主任とする厚労省研究班の調査では、子供の治療に日常的に使われる医薬品のうち、約75%は添付文書に子供の用法・用量が記載されていなかったとしています。大西教授は「子供は肝臓や腎臓が未発達で薬の成分を処理する能力が弱く、単純に体重比で大人の何分の一と決めるのは危険で、適用外使用だと副作用が出ても救済されない恐れもあり、抜本的な制度見直しが必要だ」と指摘しています。[目次へ]
■受動喫煙で賠償命令、江戸川区の職員勝訴/東京地裁初判決
職場で十分な分煙や禁煙の対策が取られなかったため健康被害を受けたとして、東京都江戸川区職員の河村昌弘さん(36)が区に約30万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が12日、東京地裁でありました。土肥章大裁判長は区の安全配慮義務違反を認め、慰謝料5万円の支払いを命じました。たばこ被害をめぐる訴訟で賠償が命じられたのは、初めてだといいます。
土肥裁判長は、たばこを吸わない人が周囲の煙を吸い込む「受動喫煙」について、国内外の研究結果を基に「肺がんなどのリスクが増大する」と指摘、「区は一定の範囲で受動喫煙の危険性から職員を保護する配慮義務を負っていた」としました。判決によると河村さんは95年4月から同区都市開発部に勤務、職場は十分な分煙対策が取られておらず、喉頭炎や頭痛の症状が悪化、96年1月には病院で「受動喫煙による急性障害が疑われる」と診断されました。しかし区側はその後も職場環境を改善せず、同年4月に他の職場である保健所へ河村さんを移動しました。
市民団体「たばこ問題情報センター」によると、たばこ被害をめぐっては80年以降、河村さんのケース以外に計16件の訴訟が起こされているが、いずれもたばこと健康被害の因果関係などが認められずに原告敗訴となっているといいます。今回は「国内外の研究結果を基に肺がんなどのリスクが存在する」とした判決なので、合理的な判断だと思います。判決後の26日、同区および河村氏双方が控訴しない方針を明らかにしたことから、この東京地裁の判決が確定しました。[目次へ]
終わりに
韓国では29日から、たばこの自動販売機が改修され、身分証明書を投入して年齢が19才以上であることを示さなければ、たばこを買えなくなりました。磁気カードの登録証には生年月日が書き込まれていて、購入者の年齢を確認するものです。
韓国では青少年保護法により、19歳未満の者にたばこを販売した場合、2年以下の懲役または1000万ウォン(約100万円)以下の罰金が科せられますが、自販機については対策がありませんでした。韓国保険福祉省によると、未成年の喫煙は減少傾向にあるものの、高校生の喫煙率は男子22.1%、女子6.8%(2003年統計)としています。
わが国でも高校生の喫煙率は高く早急な対策が必要ですが、コンビニなどで簡単にたばこが購入できるのが現状です。レジのそばの「18歳未満にはたばこを販売しません」という看板が泣いています。これは我が国の大人の社会的責任意識が希薄なためですが、企業の社会的責任対応が進むこととでのギャップが気になります。企業を離れた一個人での社会的責任を確立してもらいたいものですが…。
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