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2004.5 No.125  発行 2004年5月15日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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4月のニュースから

■漢方薬にPL法初適用、輸入元に賠償命令/名古屋地裁判決

 中国から輸入した漢方薬の副作用で慢性腎不全になったとして、愛知県大府市の40代の女性が製造物責任(PL)法に基づき、衣料品等輸入販売会社「カーヤ」に約 6,000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が9日、名古屋地裁でありました。黒岩巳敏裁判長は「同法上の欠陥がある」として約3,340万円の支払いをカーヤに命じました。医薬品についてPL法上の欠陥責任を認めた司法判断は初めてのもので、効能を謳う漢方薬などの過剰宣伝に対する警告ともなりそうです。

 問題の漢方薬は「天津当帰四逆加呉茱萸生姜湯(てんしんとうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)エキス顆粒『KM』医療用」(KM)です。

 黒岩裁判長は「KMは長期間、継続的な服用によって腎障害という副作用を引き起こしえるが、それについての表示や警告はなかった」とした上で、「効能に比べ副作用の重さは顕著であり、別の成分の漢方薬で代替することも可能だった」としてPL法による賠償責任を認めたものです。副作用があるけれども代替品が無くどうしても社会的に必要な薬、というものはその存在理由がありますが、KMはそのような唯一無二の薬ではなかったため同法上での責任が科せられたものです。

 判決によると、女性は冷え性治療のため、1995年から2年間、婦人科医から処方されたKMを服用し、96年から前身の倦怠感などを感じ、病院で腎障害と診察され、人工透析を受けることを余儀なくされていました。


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国交省、中日本航空に改善命令/木曽川河川敷ヘリ墜落事故を受けて

 長野県木曽郡南木曽町の木曽川河川敷に、信越放送のチャーターしたヘリコプターが送電線に接触して墜落した事故で、国土交通省大阪航空局は23日、ヘリを運航していた中日本航空に運行管理などに対する事業改善命令を出しました。

 同社は2001年5月に三重県桑名市上空で訓練飛行中の軽飛行機とヘリコプターが接触、6人が死亡する事故を起こしていて、このときも事業改善命令を受けています。同局によると改善命令を2回受ける会社は初めてだといい、同社の安全管理体制が問われますが、前回の改善命令後も安全管理が不十分であることから、ルールがある無しの問題よりも安全についてのトップダウンの姿勢が欠けていたように思います。

 命令書は運航について、機長が飛行前に送電線などの障害物情報を確実に把握できる体制の整備や、飛行内容を正確に運行管理者が把握できる体制などの再構築を命じています。

 2度の改善命令を受けた同社では、今度こそきちんとした対応が求められますが、5月 21日までに改善命令に対する回答書を提出、その後同局が実際に会前体制がとられているか再度立入検査をして調べることになります。

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ガス漏れの恐れでホース回収/ブリジストンなど

 ブリジストン、東京ガス、ガス機器関連部品メーカーの光陽産業は20日、3社が販売する継ぎ手付きガスホースにガス漏れの恐れがあるとして、自主回収すると発表しました。

 回収するのはファンヒーターなどガス機器と元栓をつなぐ接続用の継ぎ手付きのガスホースです。光陽産業が昨年5月から同11月までに製造したガス器具側の継手の密閉具合が不十分だったのが原因とされ、すでにガス漏れが14件報告されていてます。中には着火して継ぎ手部分が焦げたケースもあったといい、危険なことから回収を急ぎ、対象は14万本以上になるようです。

 さて3社の社告内容ですが、具体的に説明しているのは東京ガスだけです。同社の社告によると、「機器との接続部分に曲がる力が加わった場合、微量のガスが漏れる可能性のあることが判明しました」とあります。
ファンヒーターでは機器との接続部分を真っすぐにするということは可能ですが、それでも置き場所によっては接続部が曲がるような負荷のかかることも多いと思います。使用環境に応じて危険なガス漏れを引き起こす原因が具体的に述べられているのは、消費者にとっては分かりやすく、そして迅速な対応にもつながると考えられ、評価できるものです。

 ちなみに光陽産業のそれは「稀にガス機器接続部分から微量のガスが漏れる可能性…」であり、またブリジストンは「継手の一部に不具合があり、機器との接続状態によっては、微量のガスが漏れる可能性…」となっています。こんなところにも企業の顧客に対する姿勢を見ることができます。

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放射線過剰照射事故、患者死亡との因果関係明らかに/調査団報告

 昨年10月に発覚した国立病院機構弘前病院の放射線過剰照射事故は、11年間に254名もの患者におよぶ国内最大規模の事件でした。その後専門家医師らによる調査団の調査が行われ、食道がんで治療を受けた64歳の患者が過剰照射が原因で死亡した可能性が高いことが12日までに分かりました。

 調査団によると死亡した患者は食道がんの治療で、33回にわたり計66グレイの照射を受ける予定のところを、同病院のミスで計82.5グレイを受けて最後の照射から2年 10カ月後に死亡したものです。

 同病院が遺体を解剖したところ、がんは治っていたものの、過剰照射による傷害と見られる潰瘍がほかの場所にできていたり、心臓にも水がたまっていたといいます。

 また副作用が出る恐れがあった患者は1995年から1999年で114人に上り、このうち 54人はもともと持っていたがんなどですでに死亡、残る60人が現在でも副作用の可能性があるといいます。

 患者の症状が激変することの多い医療過誤ではミスが発覚しやすく、その後の対応も取りやすいのですが、放射線過剰照射の場合はミスが埋もれやすいものです。今回初めて過剰照射と患者の死亡の因果関係が指摘されたことから、今後各病院における放射線治療上の安全管理の徹底が求められていくことでしょう。

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不適正表示で公取委が警告/食用油処理剤販売5社

 使用済みの食用油と混ぜて排水溝に流す油処理剤の販売で、排水溝の目詰まりを防げるうえ環境への影響も減らせると、実際にはない効果を不適切な表示でうたった景品表示法違反の恐れがあるとして、公正取引委員会は21日、植木(大阪市)、エヌアンドエス(高知県南国市)、日新メディコ(名古屋市)、トップアイ(同)、東邦テック(兵庫県尼崎市)など販売業者5社に警告しました。

 公取委によると、5社は食用油処理剤「油コックさん」「油かたぶら」「あぶらサラサラ」などの販売をめぐり、インターネットのホームページなどに、食用油と処理剤を混ぜて排水口に流している写真を掲載し「自然にやさしく流しても安心」「環境を守りながら配管もスッキリ」などと表示していました。しかし公取委が国民生活センターに依頼し5社の商品を調べたところ、実際は業者の表示とは異なることが判明したといいます。

 国民生活センターの調査結果では、食用油処理剤で処理しても、処理液中に含まれる油の量は変化しなかった菜箸等を使い表示通り混ぜた処理液は、一度混ざり合っても、すぐに分離が始まり、処理した状態を長時間保つことはできなかった。また、水で薄めると食用油が分離してしまった食用油処理剤で処理しても、有機物による水質汚濁という観点では環境負荷の軽減は見られなかった食用油500mlを食用油処理剤で処理し排水する場合、水環境を回復させるには、大量の水が必要であることが分かった環境に係る表示がすべての商品に見られ、環境性からみてそのまま排水してもよいという印象を与えるものが見られたというものです。
特に水の汚染度を示すBODの値は、5商品とも食用油をそのまま流す場合に比べ、約 1.3〜2.8倍と高くなりるというのですからひどいものです。

 素人的に考えても、油が水みたいに変化して環境負荷が少ない、と訴える商品は少々うさん臭いと感じますが、それでも多くの消費者がこれら商品を購入していたようです。それは消費者の身勝手さとも関係しているように思います。「処理の面倒な油をお手軽に、しかも環境に優しい」ということであれば、多少疑わしくてもいつも困っている油処理が楽になり、しかも良心をとがめることもない、という心理ではないでしょうか。
同センターでは消費者へのアドバイスとして、@食用油を食用油処理剤で処理し、一度混ざり合っても、他の排水と一緒に流すと食用油が分離することが分かったので、処理直後の見た目の変化に惑わされないようにしよう、A食用油はなるべく使い切るようにしよう。また廃棄する場合は、流さないで新聞紙にしみ込ませる等し、ゴミとして捨てよう 、と呼びかけています。

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ボンネット衝撃緩和の新基準/国交省、省令改正

 歩行者の交通事故死を減らすため国土交通省は20日、道路運送車両法の省令を改正、人が車のボンネットに衝突した際の衝撃を緩和する基準を新たに導入しました。同省ではこの改正で、交通事故で死亡する人を年間最大約100人減らせると試算しています。

 新基準の対象は、定員10人未満の乗用車と乗用車のボディーを使った総重量2.5トン以上の貨物車で、新型車は来年9月1日以降造られるものとなっています。同省によると、2003年の交通事故死傷者数は46年ぶりに8,000人を下回り、7,702人でした。しかし歩行者の死亡はここ数年全死者の3割前後と変わらず、うち半数以上の死因は頭部損傷でした。

 すでに自動車各社は衝撃吸収ボンネットを付けた車を販売していることから、対応はスムースにいくものと見られます。

 ところで重傷者の4割以上が足にけがを負っていることから、バンパーの衝撃緩和基準も必要で、同省では今後バンパーの基準づくりも進めるようです。

  ASPニュースNo.91で紹介しましたが、三菱自動車工業が96年7月に発売した「チャレンジャー」ではオプションのフロントグリルガードを、強い衝撃が加わると後方に倒れるものにし、カタログにも「ガードパーツではありません」と記載するなど、歩行者安全対策が進んできています。また最近の多くの車種では、バンパーを含めた歩行者傷害軽減ボディを採用するなど、より安全性を高めていて、これらメーカーの対応は国交省よりも先をいっています。

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消防車が救急現場に/“消救車”の登場待たれる

 東京消防庁は救急隊員が待機中の消防車に乗り込んで救急現場に駆けつける制度を 2000年4月から導入しています。その結果2002年は計約63万件の出動回数のうち、1/ 6に当たる約11万件が消防車による出動だったといいます。

  しかし現行の消防法では、「救急隊は、救急車及び救急隊員3人以上で編成しなければならない」などとしているため、応急処置をしながら患者を搬送できるのは救急車に限定しています。そのため消防車で駆けつけた退院が応急処置をして、病院への搬送のために救急車を待つことになり、1分でも早い対応が求められる救急現場からは不満もあるようです。

 千葉県松戸市では今年度から、消防車と救急車の機能を併せ待った「消救車」の導入を全国で初めて決めましたが、消防法のために消救車をとりあえず「消防車」として登録せざるを得ませんでした。同消防局の担当者は「救急車としての機能もあるのに、患者を搬送できないのはおかしい」として、今後同庁などに改善を求めていくとしています。

 ところで5月に入り、総務省消防庁は救急出動が急増としてるため、「消救車」の導入を認める方針に転換したようです。今後関係機関や車輌メーカーとの間で設備基準、登録制度に関する協議を進めて、早ければ年末にも救急現場などに登場することになりそうです。

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喫煙、がん年9万人/厚労省研究班試算

 喫煙によって日本人男性は毎年8万人、女性は8,000人ががんになっているとの試算を厚生労働省研究班が大規模調査に基づきまとめ、23日に公表しました。

 がんは毎年、男性28万人、女性20万人に発生していて、喫煙が原因のがんは約2割にも達することになります。

 研究班は40−69歳の男女9万人を8年から11年間追跡調査、タバコを吸わない人に比べ、男性喫煙者は1.6倍、以前吸っていてやめた男性は1.4倍、女性は喫煙者もやめた人も1.5倍高くなったといいます。

 男性の喫煙者は46%、やめた人は28%、女性ではそれぞれ10%、3%とされ、今回の調査結果をもとに日本全体での影響を試算したところ、男性はがんの29%、女性は 4%がたばこが原因で発生していると推定したものです。

 健康増進法により、大きな施設などでは禁煙、あるいは分煙の徹底が進んでいるようですが、個人経営のレストラン、食堂などではまだまだです。空調設備もないのに席だけ「禁煙席」と書かれている店も多くて困りますが、「客に逃げられる」という業者の感覚と行動は、まだたばこの害について社会の認識が浅いということなのでしょう。

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