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2003.2 No.110  発行 2003年2月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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箱ブランコ事故訴訟、原告の敗訴/最高裁

中電・北電の高圧配電線腐蝕問題/作業効率優先が原因?

ペースメーカー、IH式炊飯器で誤作動/厚労省注意喚起

刑務所製、実は輸入品/公取委、法務省に注意

高濃度のVOC/新車内の空気、国の目標値の35倍

最高1億円の罰金、残留農薬違反/食品衛生法改正案

アイガモは農薬ではない/農業資材審、農水相に指定を答申

排出量取引で水質保全/米、環境保護局

機内の迷惑行為に罰金/国土交通省、航空法改正へ



1月のニュースから

■箱ブランコ事故訴訟、原告の敗訴/最高裁

 神奈川県藤沢市の市営公園の箱ブランコで遊んでいて足を骨折した同市の岡部咲さんが、ブランコに構造的な欠陥があったとして、管理者の同市と遊具メーカー「上坂鉄工所」に約410万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(横尾和子裁判長)は30日、市とメーカーに過失はないとした2審・東京高裁の判決を支持し、岡部さん側の上告を棄却する決定をしました。

 一審の横浜地裁では岡部さん側が勝訴したものの、二審で敗訴、今回の最高裁の判決が注目されていましたがこれで確定となりました。二審での「箱ブランコは通常の遊び方をしている限りは安全。使用者本人も自らの危険を回避する責任を負う」との判断には少し違和感を覚えましたが、今回の最高裁の判断はこれを追認したのでしょうか。どのような根拠だったのか気になりますが、判断理由はいっさい明らかにされていないため、納得できない人も多いでしょう。箱ブランコの通常の遊び方では、「ころぶ児童がいるのは当たり前」という事実を見ようとしない司法の論理はどう見ても不自然です。

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■中電・北電の高圧配電線腐蝕問題/作業効率優先が原因?

 中部電力管内の5県に敷設されている高圧配電線に腐蝕、断線の恐れがある電線が含まれている問題で、製造メーカーの三菱電線工業が90年代、電線を覆う絶縁体を従来製品より剥がしやすくして敷設作業の効率が上がるよう、耐水のための樹脂の成分を変更、腐蝕につながった可能性の高いことが24日分かりました。断線事故が起きていた中電と北陸電力は同日、事故の発生などについて発表しました。

 しかし中部電力では昨年12月から管内全域で問題の電線の敷設個所を調べるため大がかりな調査を進めながら、「断線の可能性は極めて低い」として調査開始から1ヶ月間住民への公表を行っていませんでした。また調査を請け負っている業者には、住民から聞かれた際に「データ収集のための点検」などと説明するよう指示、さらに説明を求められた場合は相手の氏名などを確認して中電に連絡するよう求めていました。断線した電線に近づけば感電する恐れがありながら、デメリット情報を出さない電力会社の体質が見えるようです。その利益優先の考え方は、事故が起きた場合の被害など、住民の安全を配慮する気持ちが欠けているとしか思えません。

 経済産業省原子力安全保安院は「断線は国への報告義務がなく、各社の自主管理に任せている」という人任せの返事で、国の責任として国民のリスクを軽減しよう、という意識もありません。各社の自主管理が適切でないときにも、「私の責任はありません」と繰り返すだけの役人気質は何とかならないのでしょうか。

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■ペースメーカー、IH式炊飯器で誤作動/厚労省注意喚起

 電磁誘導加熱(IH)式の電気炊飯器が発生する電磁波の影響で、60代女性に埋め込まれた心臓ペースメーカーが誤作動を起こしていたことが分かり、厚生労働省は30日、医薬品・医療器具等安全性情報に掲載して注意を呼び掛けました。

 厚労省によると昨年4月、女性が医療機関で定期健診を受けた際、ペースメーカーがリセット状態になっていることに医師が気付き、再設定をしました。ところが設定を直してもリセットされることが続いたため調べたところ、異常が起きるのは炊事をしているときだけと分かりました。さらに詳しく調べた結果、家で使っていたIH式炊飯器が原因であったことが判明、11月に同省に報告したものです。

 このペースメーカーはリセットされた際、安全装置が働き基本的な機能が保持されていたため女性は異常に気付かず健康への被害もなかったといいます。

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■刑務所製、実は輸入品/公取委、法務省に注意

 受刑者の刑務作業で製作され「CAPIC(キャピック)」のブランドで知られる刑務所 製品として、一部塗装しただけの輸入家具が販売されていたことが23日、分かりまし た。家具業者の通報で、公正取引委員会から注意された法務省は完成品に占める刑務 作業の割合が小さく、不適切な48品目の製作と販売を中止しましたが、消費者への説 明はいっさいなく、偽ブランド品問題で高まっている商品表示への不信がまた拡大し
ました。

 刑務所製品は品質がいい、ということで人気ですが、こんなところでも不正がまかり 通っているのです。「分からなければいい」とする不正表示は、公務員・役人・企業 人・身近な商店主など職種を問わず行われており、日本人の基本的な物事に対する責 任感のなさには呆れるばかりです。真面目で誠実だった日本人はどこへ行ったのでし ょうか?一生懸命諸外国に追いつくために働いているときは良かったものの、いった ん経済大国になった後は、ずる賢く立ち回るだけで、法律違反と知りつつ利益を搾取 しているのです。今の日本人には不正をしたらいけない、という基本的な考えすらな いように感じます。

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■高濃度のVOC/新車内の空気、国の目標値の35倍

 購入直後の新車内の空気は国の目標値の30倍以上の揮発性有機化合物(VOC)で汚染 され、目標値以下になるのに3年以上もかかることが、大坂府立公衆衛生研究所の吉 田俊明主任研究員の研究で分かりました。

 自動車業界ではエアコンなどから外気が入る運転中には化学物質の濃度はもっと下が るはずだ、としていますが、各自動車メーカーでも2年前に国の指針値が出てから研 究を始めたばかりで、対策はこれからといったところです。

 よく「新車のこの臭いがたまらない」という人がいますが、普通に新車に乗っていて も1年以上は臭いが抜けないこともあり、運転中でもかなりのVOCを吸っているようで す。外気を入れようとしてもトラックなどの排気ガスが入るので内気を循環する人も 多いと思います。したがってメーカーのいう「運転中のVOCはもっと下がる」、とい うのは個々のケースで大きく変わってくるでしょう。メーカーは良い条件での見解を 述べるだけでなく、乳幼児も同じ環境にさらされるということを真剣に考え、速やか な対処をして欲しいと思います。

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■最高1億円の罰金、残留農薬違反/食品衛生法改正案

 厚生労働省は27日、基準を超す残留農薬を含んだ食品の輸入や販売をした法人に対す る罰金を、現行の最高100万円から1億円に引き上げる食品衛生法改正の要綱案をまと めました。

 罰金は企業側が違反を認識しながら輸入をしたり販売した場合に適用、違反が明らか になった業者を迅速に処分するため都道府県知事だけでなく、厚生労働相が直接、営 業禁止や営業停止処分にできるようにするとしています。改正案はまた食品の規格基 準違反と表示基準違反に対する罰則をいずれも法人は罰金1億円以下、個人は懲役2年 以下または罰金200万円以下に引き上げています。

 不正に手を染める人も、「顧客のために」という法遵守の精神が理解できずに、企業 内の職場環境などから「しなければならない」と感じる場合もあるでしょう。罰則の 強化は確信犯でもないかぎり、あえてリスクの大きな不正行為をしなくなると思いま す。

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■アイガモは農薬ではない/農業資材審、農水相に指定を答申

 無登録農薬事件を機に未登録農薬の使用を禁じた改正農薬取締法では、今まで農家が使用してきた農薬や化学農薬でない牛乳、酢、ミツバチ、アイガモなどの扱いが問題となっていました。問題を引き起こしたのは、同法での農薬の定義が「化学合成物質に限らず作物の病虫害の防除に用いられる薬剤および天敵」となっているためなのです。したがって有機農業で使用される酢や牛乳、あるいはアイガモなども対象になるかの議論が起こり、これまで農家が使用してきた無害な資材が特定農薬でなければ使えなくなるとの不安が続出したのです。30日に開かれた農業資材審議会では酢や重曹、ハチなどを指定する旨の答申を出し、アイガモは特定農薬指定から外されました。

 しかし化学的に合成された薬剤だけを「農薬」と定義すれば、特定農薬としての分類で混乱など生じなかったはずです。今回特定農薬として指定されなかった牛乳やアイガモを使用することができなくなった場合、化学合成農薬を使わざるを得ない状況となるかもしれず、有機農業が広がりつつある社会の流れに逆行するものになります。また有機農業で特定農薬であるハチや酢を使った場合、「無農薬」と表示することの矛盾が生じ、生産者や消費者が混乱するのは目に見えるようです。

 茨城大の中島紀一教授は「無登録農薬問題で問われたのは、化学合成農薬の大量使用の危険性だ。有機農業の防除技術を農薬取締法で管理することなど誰も望んでいない」とし、神奈川県有機農業研究会副会長の伊藤康江さんは、有機農産物の認証制度を定めた日本農林規格(JAS)法などと農薬取締法の間で、農薬の定義が異なることを指摘しています。また反農薬東京グループ代表の辻万千子さんは、改正法は「農薬の適切な規制を怠ってきた行政の責任は省みず、使用者への厳罰を科すことが主な内容となっている」とし、非農耕地や家庭での農薬使用に規制がないこと、毒性データが公開されない、などは従来通りのため、同法の抜本改正が必要だと訴えています。

 まるで「農業をするためには農水省の決めたものだけを使いなさい」というような同法ですが、多くの矛盾が今後の問題として積み残されてしまいました。「農薬」の定義が時代遅れなのだから「その定義を変えればいい」と思うのは、誰にでも分かりやすく混乱もないシンプルなものだと思います。役人というものはなぜかそのようなことを嫌い、今ある法律をそのまま残して他の文言や分類、細則を追加するといった安易な対処策をとってしまいます。いわゆるつじつま合わせですが、その結果生じる“くだらないこと”に時間と労力を使うには「多くの役人が必要だ」とでも言いたいのでしょうか。

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■排出量取引で水質保全/米、環境保護局

 地球環境保全のため各企業ではさまざまな取り組みを行っていますが、先進企業と後れを取ってる企業間でのバランスを取るためのユニークな制度が開始されるようです。

 米塀環境保護局(EPA)は13日、水質汚染の原因となる物質の排出枠を事業者間で売買することで、効率的に汚染物質の排出量を減らす制度を実施すると発表しました。

 これは政府が設定した目標を上回って汚染物質の排出を削減した者が、目標を達成できなかった企業などに余剰分を売れるようにして排出削減を推奨する政策です。排出量取引制度は、工場や農場などから出る窒素やリンなどを主な対象として、定められた排出量の上限から、どれだけ下回ったかを政府が定める基準に基づいて算定するものです。削減目標が達成できなかった企業は、不足分を購入すれば規制値を達成したと見なされます。

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■機内の迷惑行為に罰金/国土交通省、航空法改正へ

 国土交通省は、旅客機内で喫煙したり、携帯電話を使用したりするなどの迷惑行為をやめない乗客に対し、罰金を科せるよう航空法を改正する方針を決めました。

 同省によると罰金の対象になるのは、トイレなど機内でたばこを吸う、携帯電話などの電子機器を使用する、非常口の開閉装置に触るといった行為で、客室乗務員に対するセクシャルハラスメントや暴言も対象とする方向で検討しているといいます。改正法案では、こうした行為を機内の安全を阻害する行為と規定、機長がやめるよう命じても従わない場合は、着陸後に警察に身柄を引き渡し、50万円以下の罰金を科せるようにするものです。

 航空各社からなる定期航空協会の調査によると、日本航空、全日本航空、日本エアシステムの3社での機内迷惑行為は、1997年は76件でしたが、2000年には570件に急増したといいます。「このくらい大目に見て欲しい」とトイレでたばこを吸ったり、客室乗務員のサービスに対し、わがままで偉ぶるような“殿様”にでもなったように振る舞う人など、恥知らずの日本人が多いため、法律強化は歓迎できます。

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終わりに

 ペースメーカーが誤作動するIH式炊飯器のニュースがありましたが、最近のこれら炊飯器の価格は5万円近くもするものが多く高値安定傾向にあります。電気釜はタイマー、保温機能、マイコン制御、遠赤効果、そしてIH式と、メーカーの努力というよりは、価格を上げるために付加価値を付けてきたようにも思えます。掃除機なども同じような状況ですが、消費者個人が本質的な品質を考える必要があるようです。

 ご飯の味にこだわる人が「ブランド米の次には高い炊飯器」ということを、メーカーにたたき込まれた結果なのでしょうか。しかし本当にこだわるなら、素焼きのご飯釜を試したほうがはるかに効果があります。面倒だからといって朝1回ご飯を炊いて、後は保温したご飯を食べるような、コメの味がよく分からない人はしょうがないのですが…。

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