1994.11 Vol.11  発行 1994年11月27日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002

 


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電気製品の安全試験 民間が実施/「第三者認証制度」導入へ
PL紛争処理へ 相次ぎ仲裁機関/自動車・家電業界など
PL紛争処理機関/通産省が整備指針
取扱説明書 品目ごとに自主基準を/通産、PL対応で報告書
環境監査義務付け/日米欧など主要21カ国 国際規格原案で合意
「駅のホームから転落」/目の不自由な人 半数経験
日本ではソフト8割が不正利用/米の協会報告


10月の新聞記事より

■電気製品の安全試験 民間が実施/「第三者認証制度」導入へ

 通産省は14日、電子レンジやテレビなど国による安全性試験が義務付けられている電気製品の品目数を大幅に減らすとともに、試験を民間の認証機関にゆだねる「第三者認証制度」を導入する方針を決めた。
 同日開かれた同省・資源エネルギー庁公益事業部長の私的検討会の検討結果を踏まえた。
 欧米各国に日本の試験制度は手続きが複雑で、外国製品の参入障壁になっているとの批判があるため、規制緩和によって欧米のような民間主導型制度に近づけるのが狙い。製造物責任(PL)制度法制定に伴いメーカー側の安全確保への意識が高まったことも大幅規制緩和につながった。
 近く、メーカー、流通業者らで構成する協議会を開き、制度運営の在り方などを検討、来年3月までには民間認証機関の第一号が誕生する見込みだ。
 電気製品のうち感電や火災発生の危険性が高い282品目は電気用品取締法によって「甲種電気用品」とされ、国が指定した機関で安全性を試験した上で製造を許可している。
 このうち、電子レンジやテレビなど約100品目を来年度から、任意で検査を受ければよい「乙種」に移す。電線、ヒューズなど残りの品目も今後5年間で全て「乙種」に移行させる方針。
 同時に、現在、国指定の試験機関が独占している試験のノウハウを徐々に民間機関に普及させ、今後5年間のうちに第三者認証機関による試験制度を定着させる。これにより、任意の検査もすべて民間の機関が担うようになる。
 米国、英国、ドイツなどでは国が認めた民間の試験機関が独自の基準認証制度を持ち、メーカーから検査料をとって試験を実施、認定マークを与えている。日本に比べ、試験が簡素化されており、認可までの時間も短いという。

 電気用品取締法は品目(製品カテゴリー名)で分類するため、諸外国のように一貫した安全確保のポリシーがないとの指摘が多くありました。
 まず「甲種」と「乙種」の品目は内在する危険の度合いによってに分けられているものではなく、例えばACアダプターは、普通のオーディオ・ビデオ製品の一部分でしかなく、しかも電力消費の少ない製品ですが「甲種」に分類されています。  また、コンピューター関連機器などはどちらにも該当しないため、安全対策を施さなくても販売ができます。結局この法律は、今、安全のために電気用品全てを取り締まっているとはいえなくなっています。
 欧米の安全規格よりも低い安全レベルの電気用品取締法は、PL法の制定を機にその中身を世界で広く取り入られているIEC65規格に置き換えたほうが消費者重視の時代にあっていると思われます。
 いずれにしても「甲種電気用品」がなくなることは、国内向けの部品と海外向けの部品の共通化を進めることができるので、企業にとってはいいニュースでしょう。

■PL紛争処理へ 相次ぎ仲裁機関/自動車・家電業界など

 製造物責任(PL)法の施行を95年7月に控え、消費者の苦情を処理したり紛争を裁定するための中立的な第三者組織(裁判外紛争処理機関)を、自動車や家電製品などの業界団体が相次いで今年度内にも設立する。裁判に持ち込むよりも安い費用で迅速に紛争を解決できるようになり、消費者保護にもつながる。通産省はこうした動きを歓迎しており、10月中に各業界が処理機関を設立する際のポイントをまとめた指針を出し、産業界の処理機関設立の機運を一段と盛り上げる方針だ。
 この紛争処理機関は、消費者からの相談を受け付けると同時に、消費者とメーカーの間に立って仲裁案を提示する役割を担う。仲裁のための委員会は学識経験者や弁護士、消費者代表などで構成、メーカーからは委員を出さずに中立性を確保する。
 すでに住宅部品業界はドアや水回り器具などに関する苦情相談を受け付ける目的で9月に「住宅部品PLセンター」を設置し、同センターは来年1月から裁判以外の紛争処理のあっせん業務を開始する。自動車の場合、業界が資金を拠出して基本財産1億円程度の財団法人を新設する方向で、近く業界団体である日本自動車工業会が設立準備委員会を発足させる見通し。家電業界では年内発足を目指し、家電製品協会内部で検討を進めている。
 苦情処理や仲裁依頼のための費用はまちまちになる見通しで、自動車業界では1件当たり数千円程度の手数料を徴収するといった案が浮上している。一方、家電業界では消費者が気軽に利用できるように相談受け付けはフリーダイヤルにして電話代も含めて無料とするが、仲裁に持ち込む場合は消費者がある程度負担する仕組みが有力になっている。個別業界は通産省の指針を待って具体的な詰めを急ぐ。また関連企業はこうした方法があることを製品の取扱説明書などに明記する方向。
 裁判外紛年処理機関は欧米では20年以上の歴史がある。訴訟が日常茶飯事の米国では年間1000件近い紛争を解決している裁判所外の処理機関もあり、消費者保護に役立っている。

■PL紛争処理機関/通産省が整備指針

 来年7月の製造物責任(PL)法の施行を控え、通産省は25日、製品事故をめぐる消費者と製造メーカーの紛争を処理する「裁判外紛争処理体制」の整備に関する指針を発表した。同省は月内をメドに自動車、家電製品、ガス器具をはじめとする約30の関係業界団体に対し、この指針を通達する。
 指針は、組織の専門性・中立性・公平性を確保するために、@独立の機関を設置するか、既存機関の相談、あっせん窓口を整備するA苦情処理の実務の経験者や製品関連技術の専門家を置くB調停を行う際は、弁護士や製品技術や消費者問題に詳しい有識者などからなる審査組織を設置し、事務局員や関連メー力ーの従業員が兼務しない――ことが重要と指摘している。
 こうした通産省の動きとは別に、経済企画庁はPL関連の紛争処理のため、同庁が所管する国民生活センターや地方自治体の消費生活センターの機能充実を急いでいるほか、農水省なども独自に紛争処理体制を整備する方針だ。

 今までよほどのことがない限り苦情は出てきませんでしたが、身近なところに相談センターがあれどうでしょうか。
 消費者に対するPRにかかってはいますが、商品のちょっとした欠陥でもデータが集まる可能性が高まります。
 これらのデータから消費者の期待する商品や消費者の陥りやすいミスなどの情報が得られ、それを企画開発段階から生かせることになります。
 PL法制定の影響の中でも、企業・消費者双方にとっていい結果をもたらすことなので、上手な運用が必要でしょう。

■取扱説明書 品目ごとに自主基準を/通産、PL対応で報告書

 通産省は13日、製造物責任(PL)法の95年7月施行に対応した安全性に関する「消費生活製品の取扱説明書のあり方」と題する報告書をまとめた。説明書には使用上の安全に関する注意事項として@製品本来の使用方法A通常予見できる誤使用B手入れと保管C故障・誤作動への簡単な対処方法D廃棄方法――などを明記することが必要としている。
 またメーカーが想定する事故の危険性については、「危険」「警告」「注意」などの程度を表す用語を区分して使うべきだと強調。
 輸入品では、オリジナルの説明書を日本語に直訳するのではなく、使用環境の違いを考慮したうえで十分な説明をすることが大切としている。
 さらに文章作成の原則や図解の利用、表現など説明書の作成に不可欠な内容を盛り込んでいる。同報告書は、産業政策局の表示・取扱説明書適正化委員会(委員長宮村鉄夫=中央大教授)が作成したもので、今後関係業界団体に周知、品目ごとの説明書自主基準づくりを働きかけていく方針だ。

 取扱説明書に力を入れている企業にとっては特段のものではありませんが、参考になる内容もありますのでいくつか紹介します。

@使用上の安全に関する注意事項の「適切な廃棄方法」
 “身体や環境に有害な物質を含むことなどにより特別な廃棄方法を要求される製品については、適正かつ安全な廃棄方法や廃棄処分を依頼すべき窓口・機関等についての説明を付す。”

A取扱説明書の確実な提供
 “取扱説明書は、一般消費者が商品を購入する際にも、重要な情報を提供するものであることを考慮する必要がある。
  また、販売店等は、製品の販売時に、一般消費者に対し取扱説明書を必ず保管するように説明する必要がある。なお、設置業者などが介在する場合には、設置の後、最終ユーザーに取扱説明書を渡すように明確に指示する必要がある。”

B取扱説明書の耐久性、入手可能性等
 “取扱説明書は、当該製品の通常の耐用期間と同様の耐久性が必要である。また、通常の耐用期間内に紛失した場合には、製造業者、販売店等から再入手できるように余部を整備しておく必要がある。”

C警告(次の事項が記載されているか。)
 “本体表示による警告の本文中における説明(貼付位置等)”

D保守・保全(次の事項が明記されているか。)
 “事故や故障の兆候の見分け方”

 今回の報告書は、今まで製品の「おまけ」的な扱いをされていた取扱説明書の認識を正しく評価するのに役立つものだと思います。
 現在各社でPL法施行に合わせ、取扱説明書や警告等の表示に関する対応を探っていますが、決まった文言を取扱説明書のどこかに表記すればよいというものではありません。
 実際の取扱説明書にも製品と同様に、企画(シナリオ)、設計(用字・用語標準、文字・図版およびそのサイズやレイアウト、色等のスペックや各構成パーツの組合せ)の要素が多くあります。
 製品の欠陥を無くすと共に、取扱説明書の欠陥も無くす必要があります。そのためには制作コスト、人材、納期等従来のやり方を改革しなければうまくいかないでしょう。
 設計部門の作成する資料も、分かりやすい表現にすることが必要になります。元設計者をマニュアル部門に配属させたり、テクニカルコミュニケーターを登用するなどの対応が求められます。
 いずれにしてもその場しのぎのPL対策として取扱説明書を見直すのではなく、「消費者にとって本当に分かりやすい取扱説明書とは」、「欠陥取扱説明書の一掃」という目的を明確にしなくてはなりません。

■環境監査義務付け/日米欧など主要21カ国 国際規格原案で合意

 日米欧など主要21カ国は環境保全に対する企業の取り組みを国際規格として定める国際標準化機構(ISO)の[環境管理システム」原案に合意した。早ければ96年1月にも発効する。日本政府はこれに沿って日本工業規格(JIS)を整備する。環境規格を守らないと製品輸出などで市場から締め出される可能性が強く、企業は環境保全のための指針や環境管理計画の作成、環境担当役員の選定など環境監査の体制作りを事実上義務付けられる。
 「環境管理システム」は、原料の購入から生産、販売、リサイクルにわたる企業活動のすべての面で環境への影響をチェックし、改善を進めるための基準となる。92年の地球サミット(国連環境開発会議)を機に導入に向けた議論が高まり、昨年1月からISOが具体的な策定作業を始めていた。
 このほどウィーンで開かれたISO作業部会で固まった原案は@環境指針の策定A環境管理計画の作成B管理計画の実施・運用法C管理計画の達成度チェックと見直しなど環境監査D経営者による管理計画の検証の五つの柱から成る。
 それによると、各企業はまず環境保全に対する独自の環境指針を定め、この指針にのっとって具体的な環境管理計画を作成する。計画の遂行にあたっては専任役員を選び、従業員や取引先など関係者に環境教育を徹底する。さらに、定期的に計画遂行をチェックする監査を実施、その結果を報告書にまとめる−−ことが必要となる。

 ISO14000シリーズ規格案は、米国と欧州各国との激しい意見の対立があり、今年5月のTC207総会では採択されませんでした。
 今回正式な委員会案(CD)に格上げされた原案では、規格本文は厳格な規格とはせずに企業の自主性を尊重した一般的なものとなっています。欧州側が望んでいた具体的なチェック項目などの記述は、付録文書という形で反映されています。
 強制力はないものの、この付録文書が、実際の運用面でどのように取り扱われるのかが議論の的になっているようです。
 また、今後の認証体制がどのように整備されていくのかも目が離せないところです。
 この原案は来年の6月に開かれるTC207総会で国際規格案として採択され、96年1月に発行される予定です。

■「駅のホームから転落」/目の不自由な人 半数経験

 視力障害者が街を歩く際に様々な危険に遭っている実態が5日、「東京視力障害者の生活と権利を守る会」(鈴木彰会長)の視力障害者アンケート調査で明らかになった。道路や駅、公共施設などで不便に感じる点や必要と考える配慮などについても聞いており、東京都が制定する方針の福祉のまちづくり条例などで改善に取り組むよう求めていく。
 アンケートは今年7月〜8月にかけて同会の会員ら100人を対象に実施した。視力の状況は全盲が68人、弱視が32人。毎日出歩くという人が69人、週数回の人が23人おり、同会は「行動力おう盛な視力障害者の意見を集約した調査になった」としている。
 駅のホームから転落したことがある人は全体で50人、全盲の人で44人いた。転落回数の最高は6回で、3回以上転落した人は18人いた。また、歩行中の転落経験では、「階段から落ちた」が49人、「側溝に落ちた」が44人、「工事現場で落ちた」が22人いた。

 このような高い率で危険な目にあっているのかと改めて考えさせられます。駅のホームなどに設置されている黄色の誘導歩道でも危険なことが多いというテレビニュースを見たことがあります。
 必要だと言われるものをただ設置するだけで、相手にとって本当に役に立つかどうかを考えているのではないようです。これは、日本ではよく目にする光景で、「形だけを整え体裁さえよければよい」「これを行ったことで自分の責任は果たした(と思われたい)」といったものなのでしょう。
 相手(製品や情報を使用・利用できる全ての人)の立場で、原点からチェックするのもいいかも知れません。

■日本ではソフト8割が不正利用/米の協会報告

 【ワシントン14日共同】米国のソフトウェア・メーカーなどで組織するビジネス・ソフトウェア協会(本部・ワシントン)は14日、1993年のソフトウェア利用状況の報告を発表し、日本で利用されているソフトウェアの80%はコピーなどによる不正なもので不正利用率は主要先進国の中で最悪だと指摘した。不正による被害額は19億6100万ドルに達したという。
 他国では、フランスが不正利用率66%、カナダが59%、ドイツが57%、イタリアが50%など。米国は不正利用率が35%と先進国の中で最低だが、被害額は22億5300万ドルと最大だった。

 コピー天国日本とはよく言われますが、この数字をどう見るかです。
 「結構他の国でも多いな」と安心する人もいるでしょうが、自分の胸に手を当てて何%かを考えてみましょう。

終わりに

 PL法施行を控えての対応が相変わらず多いようでが、ハード面での対応は各社自信がある(今までソフト面がなおざりにされていた?)のか、ソフト面での対応ばかりが目立っています。
 ハード面での安全確保技術はそれほど簡単なことではないので、疎かにならなければいいのですが‥‥。


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