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■走行中、自転車ハンドルがポキリ/メーカーに賠償命令
■マウンテンバイクPL訴訟/部品会社も責任 名古屋の男性が提訴
■高圧線下の住民に補償
■国会図書館の蔵書検索/ソフト入力ミス
■OEM提携/PL問題対応も課題に
■船の「安全」導く監視カメラ登場
◆TOPIC
5月の新聞記事より
■走行中、自転車ハンドルがポキリ/メーカーに賠償命令
自転車のハンドルが走行中に突然折れ、恐怖心を味わったなどとして、東京都内に住むイタリア人男性がメーカーの「ナショナル自転車工業」を相手取り、慰謝料など約485万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が27日、東京地裁(星野雅紀裁判長)であった。
星野裁判長は「品質管理や検査を怠った被告は不法行為責任を負う」などとして、慰謝料など約25万円の支払いを命じる原告勝訴の判決を言い渡した。原告はイタリア大使館員で、東京都目黒区在住のジャンニコ・レッテルさん(41)。判決によると、レッテルさんは、88年12月ごろ、ナショナル自転車工業が製造した27インチ型の自転車を購入。港区のイタリア大使館への通勤に使用していた89年12月、横断歩道を渡っている最中に突然、アルミ製のハンドルの中心付近が折れ、転倒した。レッテルさんは近くの自転車販売店で修理をしてもらい、その後もこの自転車を使用していたが91年2月、再びハンドルがほぼ同じ場所から折れる事故が起こった。
判決理由で星野裁判長は、製造メーカーは「欠陥ある部品が組み込まれないよう十分に検査をし、欠陥品を発見した場合は排除するという品質管理上の義務を負う」と指摘。「被告は抜き取り検査で不良品を見過ごした責任を認めており、不法行責任を負う」と述べた。その上で、星野裁判長は、一回目の事故時に接近中のトラックにひかれそうになったことなどを挙げ、精神的苦痛などに対する慰謝料の支払いを命じた。
畑耕太郎・ナショナル自転車工業常務の話 当社の原告への誠意も判決で認められたと理解している。控訴せず判決を受けとめたい。
新聞には記載されていませんが、89年12月の修理内容は、「破断したハンドルと同タイプのハンドルを交換した」というものです。したがってハンドル自体の構造に問題があると思われるのですが、本件の訴訟前に、原告側と被告側との間で交渉があり、被告は「試作品が誤って混入した」と言明したようです。
メーカーは、「本件の自転車に使用された部品だけがたまたま不良であり、市場に出ている他の自転車のハンドルには問題がない」と言いたかったのでしょうが、この発言が訴訟前に和解にいたらなかった大きな原因だと思われます。
数の少ない試作品が時期の異なる2回とも原告の手に渡る偶然など、誰が聞いても信じがたいことです。このようなことを品質管理など十分理解しているはずのメーカーの人間が言うのでは困ったものです。
おそらくこのメーカーでは、訴訟時における対応についての取り決めや教育が未整備だったのでしょう。
次の記事は6月の新聞に記載されていたものですが、自転車の訴訟ということでここに紹介します。
■マウンテンバイクPL訴訟/部品会社も責任 名古屋の男性が提訴
マウンテンバイク(MTB)で走行中に前輪が外れ転倒、傷害を負ったのはMTBの安全性に欠陥があったからだとして、ブリヂストンサイクルを相手取り、約820万円の損害賠償を求めている名古屋地裁での訴訟の原告が9日、MTBの部品を製造した自転車部品メーカー、シマノに対しても損害賠償など計約1000万円の支払いを求め、同地裁に追加提訴した。
訴えているのは名古屋市天白区の学生、浜田慎也さん(20)で、現在は英国に留学中。 原告側は「車輪脱落を防止する金具は1台当たり20円と極めて安く、その必要性を知りながらあえて装着しなかったのは悪質」と主張、通常の損害賠償に加え、日本では珍しい200万円の「懲罰賠償」を請求額に含めている。
訴状によると、浜田さんは90年2月、プリヂストン製のMTBで自宅近くを走行中に、運搬時に取り外し可能となっている前輪が突然外れ転倒、顔面を強打し、現在まで歯の治療に通う傷害を負った。
シマノ総務部の話 寝耳に水という感じだ。弁護士などと相談して今後の対応を決めたい。
「懲罰賠償」ということで部品メーカーにも訴えが広がり、メーカーの驚きが伝わってきます。
もともとこの部品については同じ訴状内容でブリジストンに提訴してあったのですが、部品メーカーに矛先を向けてきたことは興味深いことです。
自転車というのは、販売店による組立が多く行われています。特にMTBやロードレーサーなど高級なものほど好みの部品を選択し、組んでいくものです。
ですから、この部品に対するブリジストンの過失はないものとし、今後は部品メーカーと争そうことにしたようです。
ただ「懲罰賠償」を求める論拠として出てきた「きわめて安い金具をつけていなかった」から即「悪質」ではなく、「危険を知りながらあえて対策を施さなかった」ことを立証しなければなりません。あるいはそれを裏付ける社内文書がでてきたら(まるでフォード・ピント事件のようですが‥‥)別ですが、そうでなければ設計欠陥だけになると思います。
いずれにしても、訴える側も「PL裁判で勝てるかもしれない」というので今まで以上に勉強し努力してくるでしょうから、企業としてもうかうかできません。
■高圧線下の住民に補償
電磁波による健康影響問題に取り組んでいる市民団体の「高圧線問題全国ネットワーク」(懸樋哲夫事務局長)は8日、東京都内で結成1周年記念集会を開き、来月29日の東京電力の株主総会で株主提案権を行使して高圧線の下で暮らす住民らし対して補償を行うよう求める方針を決めた。電磁波問題が電力会社の株主総会の場に出されるのは初めて。
高圧線や変電所の近くに住む場合、電磁波にさらされるとして欧米では十数年前から問題化しているが、日本では資源エネルギー庁が昨年12月「有害な影響は認められない」とする報告書をまとめた。しかし、送電線の近くでは小児白皿病の発生が送電線のない場所に住む人より多いというスウェーデンの調査結果もあるため、環境庁も健康影響について再検討に乗り出している。東京電力の株主総会に提案される議案は、住民の電磁波被ばくや鉄塔崩壊の危険性、不動産価値の低下など健康、財産面への影響が考えられるため、明確な基準を設けて補償を行うべきだ、と訴えている。
横山達雄・東京電力広報部課長の話 電磁波の健康影響については問題はないと考えており、株主から提案された問題については総会で対応を決めることになる。
自社の監督省庁が「問題ない」としている事項でも、他の業界、あるいは外国の研究にも幅広く情報収集し、現在における正しい判断基準を常に明確にしておかないと、正確なリスクが予見できなくなるでしょう。
■国会図書館の蔵書検索/ソフト入力ミス
国立国会図書館所蔵の明治期刊行図書全16万冊を「丸善」(本社東京)などがマイクロフィルム化したが、検索用に作られた索引CD−ROM(コンパクトディスク利用の読み出し専用メモリ)への入力ミスで、書名などの表記に間遵いが多数あることが28日までに分かった。
マイクロフィルム化されたのは「国立国会図書館所蔵明治期刊行図書マイクロ版集成」。丸善が国会図書館の協力を得て作製したもので、同社が独占的に出版権を獲得している。ミスがあったのは同集成索引CD−ROMで、2年前に丸善が企画・監修し、日本図書館協会が35万円で発売した。書名、著者名、出版社名などに振り仮名が付けられているが、この振り仮名部分の表記にミスがあった。
例えば、「出挨及記」は「シュツエジプトキ」とすべきところが、「デアイオヨキ」となっている。また「伯多大帝」(ピヨトルタイテイ)を「ハクタダイテイ」、「弥児頓」(ミルトン)を「ヤジトン」と誤表記。
日本のデータでも、森鴎外の「西周伝」(ニシアマネデン)を「サイシュウデン」などとししている。研究者の指適により、これまでにこの種のミスが60件以上も見つかっている。
これについて丸善は「作業を急いだためデータ入力段階でチェックが十分でなかった」と責任を認めており、直接制作に当たった大日本印刷でも「当時、どういう校正をしていたか事情を調べたい」としている。丸善には発売後の早い段階から研究者からのクレームがあったが、今までのところ、改訂版製作などの前向きの案は具体化していない。
今回の問題は機械で処理したようなひどいミスになっていますが、これがもし人の手によって入力されたものだとすると、ただただ驚きの一言です。
何だか分からない言葉を確認をとらずに入力するなど、人間の持っている予防能力を全く生かさずに作業させていることになります。
「入力者が『分からない』あるいは『不自然に感じる』箇所はコメントをつける」といった基本さえ守れば、ノーチェックで出版されることもなかったのでしょうが‥‥。
「時間がない」とか、「アルバイトにやらせた」とかいう問題ではなく、文字を扱う大手の会社でありながら実際のところは品質の管理に弱いということです。ISO9000シリーズの認証を目指して勉強してほしいものです。
■OEM提携/PL問題対応も課題に
このところ論議が活発になりつつある製造物責任(PL)問題への対応も、OEM提携では重要なテーマとなっている。
例えば松下冷機から購入したコンプレッサーを搭載したシャープの冷蔵庫が92年に起こした事故について、松下電器産業では「(負担金などシャープとの間の問題は)話し合いによる妥当な線で昨年5月に円満解決した」としている。
いすゞ自動車と本田技研工業が完成車の相互OEMで合意したのは92年2月。しかし両社ともOEM調達車を店頭に出したのは、翌93年の秋になった。「1年がかりで両社とも、走行性能から外観にいたるまで、あらゆる部分で新しく品質基準を作りなおした」(本田技研の話)。擦り合わせがいい加減だと、「最悪の場合はメーカーの間で責任のなすり合いになってしまう」(同)からだ。
部品メーカーと完成品メーカーとの関係、OEM製品の製造元メーカーとブランドをつけて販売するメーカーとの関係を今まで以上に細部にわたり文書化することも必要になるでしょう。
発注元の都合で明確になっていないケースもあるかもしれませんが、供給元の企業としては、契約書と納品仕様書などの技術文書を見直す必要があります。
ニュースその後
第1号で紹介した日本ライン観光の遊覧船転覆事故のその後です。
■船の「安全」導く監視カメラ登場
可児市土田の木曽川べりに4月20日、川下りの遊覧船を見張る監視カメラが登場した。昨年11月、乗船客1人が死亡、12人がけがをした転覆現場近く。遊覧船がこの辺りにさしかかると、船員が美濃加茂市御門町にある日本ライン観光の本社配船室へ無線連絡。配船室でモニターを見て安全を確かめる。この日は、一帯で恒例の遭難救助訓練もあった。遊覧船が中州に座礁したという想定。船員19人が乗った訓練船から、配船室に「緊急事態発生」の無線連絡が入り、水陸両方で乗船客を救助した。
同社は今月中に、救助船をもう1隻増やし2隻にする計画。石田和夫社長は「訓練も年2回から3回に増やす」と話した。再び事故が起こらないように、物心両面の対策が進む。
自社の不手際で起こした事故ですので当たり前のことなのですが何やら「ほっと」した感じがします。後は従業員の教育などこれからも注意を怠らずに安全最優先でいかなければならないでしょう。
なかなか生かされない事故の教訓は、「うちの会社は大丈夫」、「あれは特別だった」などと他人事で済ましているため、非論理な意見に押し流されてしまうようです。
「安全」はお金も努力も必要になりますが、大事なことは企業トップのポリシーに安全最優先の考えがあるかどうかです。
◆TOPIC
政局の混乱の中ではありましたが、PL法が今月成立しました。
欠陥商品による消費者被害を救済しやすくする製造物責任(PL)法案が、22日の参院本会議で可決、成立した。公布後1年間の周知期間を経て来年6月にも施行される。
法案は修正せずに成立したが、審議過程で議論が続いた輸血用血液製剤の取り扱いに関する政府見解の徹底や、消費者の立証負担を軽くするための検査体制整備など、衆参両院で合わせて16項目の付帯決議が付いた。
PL制度は企業や消費者などさまざまな立場から議論を呼んだが、ようやく日本にも導入されることになった。現行の民法は、消費者が企業の過失を証明しないと被害の賠償責任を問えないが、PL法は商品の欠陥を証明すれば賠償を求められる。政府は昨年未の国民生活審議会の答申を基に法案をまとめ、4月中旬国会に提出した。
PL法は@製造物の特性A普通に使用したかBいつ出荷したか ― の三点を考慮した上で、安全性を欠いているものを欠陥製品と定義、実際の裁判に欠陥かどうかの判断を大きくゆだねる内容になっている。また製造物の範囲は「製造または加工された動産」と抽象的な規定にとどめ、国民生活審議会では対象外とした血液製剤や生ワクチンも含むことになった。
ようやく成立したPL法は、付帯事項がついているものの、4月に国会に提出された政府原案通りの内容となっています。
血液製剤を製造物に入れるかどうかでは、自民党の一部から「血液製剤は対象から除くべきだ」との強い意見がでるとともに、日本輸血学会も11日、「輸血用血液を同法案の対象に含めるべきでない」との声明を発表し、その成りゆきが注目されていました。しかし政府があらためて「ウィルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に当たらない」との見解を確認、その周知徹底を図るなど付帯決議を盛り込むことで当初法案通り成立したものです。
法律の施行は1年後ということで来年の6月末になりますが、その日以降に出荷する製造物が対象になるわけです。
「裁判所は国会の審議を十分尊重すべき」との付帯事項もついていますが、どのような法律の運用になるのかは実際の裁判の中から作り上げられていきます。
しかしPL法がまだない現在においても、3月の「松下TV火災」の裁判、今号で取り上げた「自転車ハンドル欠陥事故」の裁判に見られるように消費者保護の考え方が浸透してきています。
終わりに
「日本にもPL法ができる」ということだけで世論、裁判所の判断がずいぶんと変わってきました。法律の内容はともかく、このような波及効果が大事なことであると思います。したがって企業は、「PL法はすでに施行されたと同じ」と考えて、真剣に安全問題と取り組む覚悟が必要です。
また消費者も、企業から求められる必ず知っていてほしい情報(取説、ラベルなど)をきちんと見る、聞くなどの態度が必要です。
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