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2002.3 No.99  発行 2002年3月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■運転手のミス、福岡の列車追突事故/信号見誤り

■配線ミスが原因/H2A衛星分離失敗

■氾濫するニセ食品表示/雪印食品事件を機に次から次へ…

■東京女子医大の人工心肺装置の操作ミスで装置の管理問題発覚/その後、示談は成立

■日航のCRM訓練に企業や官庁が注目

■廃棄物処理法、抜本改正求める/環境省、拡大生産者責任を導入

■テロ後の財政赤字でリサイクル事業中止/ニューヨーク市


2月のニュースから

■運転手のミス、福岡の列車追突事故/信号見誤り

 22日夜、福岡県宗像市武丸のJR鹿児島線の下り線で停車していた門司港発荒尾行き普通列車に、門司港発荒木行き快速列車の追突事故がありました。単純な追突事故ですが、JR九州は23日、後続の快速列車の運転士が自動列車停止装置(ATS)が作動して列車が停止、その後運転操作を誤ったものだと発表しました。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は同日、現地に調査官を派遣し調査を開始しました。
JR九州によると普通列車が22日午後9時半前、大きな異常音がしたため停車、そこに後続の快速列車が追突したもので、付近でイノシシの死がいが見つかっています。後続の運転士は「一度停止した後、15キロ以下で徐行すべきところを、前方にあった“青信号”(中継信号機)につられてスピードを上げてしまった」と述べ、ミスを認めました。

 普通列車が停車したため、後続の快速列車のATSが作動して信号機が「赤」を表示したため、運転士は列車を1〜2分停止させました。その後本来は運航規則にしたがって時速15キロ以下で進行するところを、運転士は別の補助信号が「青」だったため、通常走向ができると誤解して列車を加速、時速45キロまでスピードを上げ停車していた普通列車が見えた時点で非常ブレーキをかけたが間に合わず追突したものです。

 列車事故を無くすためのATSが作動しながら運転手が列車を加速させた原因は、本来の信号とは別の補助信号が「青」表示だったことにあるようです。現場は見通しが悪い右カーブで、安全のため一本の列車しか入れない約1キロの閉そく区間で、この区間の両側に信号機が設置され、ほぼ真ん中に前方の信号と連動する補助的な「中継信号機」が設置されていて、運転士はこの中継信号機の青信号を見て列車を加速させたようです。運転士には、前方に列車が停止しているためにATSが作動した、ということが伝わらず、独自の判断が入り込むスキがあったようです。運転士の行動パターンは、線路上では「列車の運行」ということで、「止まる」という状況は速やかな解除を願うものです。それはタイムスケジュールや顧客の利便性を考えての行動ですが、異常時の判断を狂わすことにもなります。鉄道に限りませんが、異常が起きたときの操作者に与える信号や警告は、「プロでも間違えるもの」との認識で設計・設置する必要があるようです。

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■配線ミスが原因/H2A衛星分離失敗

 H2Aロケット2号機が打ち上げられましたが、「ロケット打ち上げ成功、衛星分離失敗」という少々分かりにくい説明のニュースが多かったのですが、ロケットの目的が衛星の打ち上げである以上「失敗」とハッキリ言えないのはどうしたことでしょう。度重なる失態が今後の宇宙科学研究所の事業に影響を与えることは分かりますが、技術的なことに関しては国民に“正しいものの見方”を示すべきだと思うのです。

 さて実験衛星の分離が失敗したのは、衛星を製造したNEC(現NEC東芝スペースシステム)のコネクタ製造ミスだったことが15日、宇宙研の調査特別委員会の調べで判明しました。H2Aと実験機をつなぐ接続部の配線が元の設計と異なっていたため、分離機構を働かせるロケットからの電気信号が実験機に届かなかったものとみられています。宇宙研が98年にNECに製造を依頼した際に渡した配線図と、これを元にNECが作成した製造図面を比べたところ、コネクタの品につながる配線4本が入れ違っていることが分かったといいます。

 宇宙研が渡した配線図は一番大事なスペックであり、原図やCADデータを渡すにしろその内容書き換えは当然発注者の承認を得る必要があるのは疑いのないことです。どのような図面管理形態であったのか分かりませんが、かなりお粗末なもののようです。また衛星の分離信号を送る試験は実施したものの、問題部分を経由せずに信号を送る形での試験だったため、事前に分からなかったとしていますが、ハードウェアの検証にも大きな管理上の問題があったようです。おそらくユニット単体をつなげた状態の問題を検証しただけのようです。それでは人の要素が多く関わる機体配線線材の引き回しなどを考慮しないことにもなります。安全や品質ポリシーはどうなっているのでしょう。

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■氾濫するニセ食品表示/雪印食品事件を機に次から次へ…

 雪印食品の関西ミートセンターによる牛肉偽装事件では、約2年前から牛肉の産地を偽装したことから、JAS法違反で改善指示を受けましたが、同社の関東ミートセンターでも豚肉産地偽装が8日、発覚しました。これは農水省の立ち入り検査で明らかになったもので、同センターでは昨年6月頃から、米国産豚肉のみそ漬けなどの加工品を「国産」と表示して販売していました。当初は国産の不足分を補うための輸入品であったものが、最近ではほとんどを輸入品を使っていたと言うことから、全くの詐欺行為でしょう。しかも3〜4年前から米国産豚肉をスライスした生肉を国産と偽って販売していたことも判明し、虚偽表示が日常的に行われていたようです。同センターによると国産が足りずに輸入品を使うようになったが、輸入品が国産に比べて4割程度安いことから偽装を続けたといいます。また兵庫県警の調べで8日、雪印食品が昨年11月に行った関西ミートセンターへの訪問調査は実際には行われていなかったことも判明し、同社にはびこっているウソの体質が尋常ではないことが分かります。

 牛肉に対する不信が高まる中、佐賀県内のスーパーが昨年10月ごろまで国産牛肉を外国産の牛肉に混ぜて販売、狂牛病騒動後は逆に「外国産」として販売していたことが13日、分かりました。同県では景品表示法の不当表示やJAS法違反に当たるとして同日、業者に文書で厳重注意、適正な表示をするよう行政指導しました。不当表示していたのはスーパー内の精肉部門1店舗で、肉を加工する際、国産牛を約2割、オーストラリアや米国産牛を約8割の割合で混ぜてトレーにパックしていたもので、昨年4月から10月頃までは産地表示をしなかったり、タイムサービスで「国産牛」と偽ったラベルを貼って販売、狂牛病騒動後の10月から年末までは、「US産」「オーストラリア産」などと表示していました。

 一方、四国は高松市の食肉加工販売会社「カワイ」が昨年、香川県産の国産牛肉詰め合わせ商品に米国産の輸入牛肉を使っていたことが15日に分かり、愛媛、香川の両県では同社の本社工場など計5カ所を立ち入り調査しました。同社によると、商品は香川県産の讃岐牛などの冷凍肉を箱詰めしたもので、一箱数千円から2万円のものです。同社では子会社の「共同ミートプロダクト・アイ」に指示し、昨年5月中旬から9月下旬にかけて米国産肩ロースと牛タン約8万5,000パック(1パック70グラム)を加工製造させたといいます。同社はまた、岡山県産の牛肉にも米国産の肉を混入していたことや、共同ミートが宮崎県産の「高千穂牛」の商品に他の産地の肉を少量混ぜていたことも認めました。

 さて同じ15日、ミニトマトの産地偽装が明らかになりました。熊本県八千代市の青果物業者が昨年11月から12月にかけて、韓国産のミニトマト約10トンを八千代産と偽装して関東地方の市場に出荷していたというものです。韓国産は八千代産の5〜6割の市場価格で取り引きされていることから、業者は不当な利益を得ていたとみられています。ミニトマトの生産地偽装は複数の業者が行っている、との情報もあることから、県やJA熊本経済連なども調査しているといいます。

 ところで雪印乳業が、品質保持期限が切れた業務用冷凍バターを北海道の別海工場に集め、期限を1年間延長した表示に書き換えて加工乳などの原料として再利用、道から「誤解を与える行為」との指摘を受けていたことが23日までに分かりました。同社の説明では、2000年の集団食中毒事件の影響で業務用バターの在庫がだぶついたため、任意に表示が変更できることから昨年3月、今まで1年半としていた品質保持期限の書き換えを決定、バターが変質していないか検査した上で再包装し、期限を印字し直したといいます。同社ではまた「科学的根拠に基づくもので、期限は4年くらいに伸ばしても問題なかった」と説明していますが、当初定めた1年半というデータはどこから来たのでしょうか。過剰品質を嫌う企業で本来の半分以下の品質保持期限を採用する、というにはそれなりの理由があったと思うのですが…。

 食品表示の問題では、魚沼産コシヒカリが生産量と流通量に極端な差があることが前から指摘されていますが、シジミでも同じような問題があるというのです。青森県十三湖のシジミ業者によると、十三湖で現在とれる寒シジミはせいぜい1日に1〜3トンといわれるのに、青森県や首都圏で出回る十三湖産表示のシジミはその10倍は出回っているとのことです。日本経済新聞では2月中旬、東京都内の大手百貨店A店の「青森県産、津軽十三湖より」と表示のあった商品(100グラム120円)、高級スーパーB店の「青森県十三湖産」(100グラム180円)、大手スーパーC店の「青森・小川原湖産」(100グラム135円)の3点を貝の専門家に調べてもらいました。すると「A店は約1割がヤマトシジミで、後は外国の淡水産、B店は全てヤマトシジミで十三湖産と思われる。C店はヤマトシジミ1に対し、外国の淡水産3種が5の割合」との見方を示しました。

 輸入物のウナギが四万十ウナギとして売られていることもあるといい、ブランド食材を買うときには店を選ぶ必要がありますが、シジミの例でも分かるように「デパートだから安心」というものでもないので困ります。ブランド品などの人気商品は、材料の確保が難しいので偽装品の可能性が高い、とまず疑うことが必要でしょう。また、生産者も小売店も信用できなくなった背景には「表示の義務違反の罰則の甘さがある」と指摘されています。最高でも50万円の罰金では、違反をしても十分お釣りがくる、ということでしょう。我が国では法律違反に対する罰則が甘いのですが、近々自動車のリコール制度が大幅に見直しされるようです。現在、メーカーの虚偽報告の場合では最高100万円ですが、これを最高数千万円〜1億円程度に引き上げるといいます。農水省も早急に罰金額を見直す法改正を行うべきです。

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■東京女子医大の人工心肺装置の操作ミスで装置の管理問題発覚/その後、示談は成立

 群馬県の小学6年が東京女子医大病院の人工心肺装置の操作ミスで亡くなった事故で、心肺装置を管理する技師が、手術直後に「フィルターを手術のたびに交換していなかった」と周囲に漏らしていたことが16日、明らかになりました。同事故では人工心肺装置のトラブルについて、@医師らが手術部位からの出血を吸引するポンプの回転数を通常の2倍以上に上げたため、装置内の圧力が異常に高まったA装置内のフィルターが目詰まりをし、そのため15〜20分間装置が停止した、との内部調査報告書が出ています。

 このフィルターの目詰まりがトラブルの原因となったのですが、同報告書では、目詰まりについて「回路内に発生した水滴によるもので、通常生じることで特別なことではない」とし、目詰まりが日常的に発生するものとの見方を示しました。しかし人工心肺装置メーカーによると、フィルターはメッシュ状で、手術のたびに交換するのが一般的だといい、フィルターの交換状況などを考慮せずに「通常生じること」と片づけた報告書には疑問を投げかける関係者もいるようです。

 ところで手術の担当医師向けの人工心肺装置の操作方法や、トラブル時の対応方法を定めたマニュアルがなかったことが17日、関係者の話で明らかになりました。操作などの指導は口頭と実演だけで行われていたため、担当医師らが指導の際に経験しなかったトラブルに遭遇、とっさに適切な対応ができなかった可能性が指摘されています。

 フィルターは手術のたびに交換するのが一般的だとすると、客観的根拠もなく交換頻度を少なくする理由は管理技師の怠慢ではなく、同病院の患者の安全を度外視するような“コスト削減圧力”があったのではないかと、疑ってしまいます。また人工心肺のマニュアルがない、というのはこのクラスの病院としては信じがたいことです。ISO14000規格を導入するなど、環境を配慮する病院は出てきましたが、品質管理のISO9000規格を導入する病院がほとんどないというのは、環境に配慮しても品質や安全という形で人に配慮できないことだと思うのですがどうでしょう。顧客満足について鈍感な体質というのは、医師や医師会の常識からきているように思えてなりませんが…。

 その後の19日、被害者の両親が厚生労働省内で記者会見し、病院側と示談が成立したことを明らかにしました。解決金の支払いと共に、「高度の医療水準を期待される大学病院として再発防止に努力する」との覚え書きを交わしました。両親は同日、坂口労相に対し、「東京女子医大病院が安全管理体制を整え、事故の再発防止が図られるよう確認してほしい」とする要望書を提出しました。父親は事故の全容は警察の捜査に期待したいとしていますが、担当医らに対する業務上過失致死容疑での刑事告訴は取り下げないとしています。

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■日航のCRM訓練に企業や官庁が注目

 日本航空がヒューマンエラーを制御するため全社展開しているクルー・リソース・マネジメント(CRM)訓練が、安全を損なう潜在的な不安要素を認識・相談の上回避するための手法として、顧客サービスや品質の向上に役立てたい企業や官公庁の関心を集めています。

 CRMはコクピット内の意志疎通を円滑にすることで、マニュアルだけではカバーできないヒューマンエラーを防ぐ手段です。NASAが79年に提唱したCRMは、当初は運航乗務員だけが対象でしたが、89年のカナダで起きた事故を機に対象を運航に関わる全関係者のリソースを有効運用するよう改良されました。

 日航では、キャビンCRMを86年運航乗務員を対象にを導入、2000年4月から客室乗務員、整備士、地上運行管理者全員に対象を広げ、「明日から何をすれば良いか分かること」を重視、時系列に基づき日本語を極力用いているのが特徴だとしています。また「エラーの芽にすら気付いていなかった」という過去の事故分析をふまえ、芽を「認識するためのふるまい」にまで訓練範囲を広げているといいます。

 一方整備部門で展開するメンテナンス・リソース・マネジメント(MRM)は、同じヒューマンエラーの管理を目的としていますが、職場環境に応じ独自の訓練内容とし、状況認識、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーションの4つのスキルアップを求め「世界一安全な航空機の提供」を目指すとしています。
現在キャビンCRMには、ソフトウエア会社、病院や自衛隊など数多くの問い合わせがあるといい、企業のリスクマネージメントの必要性と共に、人と人、人と機械、人と組織の調和を目指したCRMの需要は、今後高まるようです。

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■廃棄物処理法、抜本改正求める/環境省、拡大生産者責任を導入

 環境省は23日、廃棄物処理法を2003年の通常国会で抜本改正する方針を固めました。有価で取り引きされているリサイクル可能物や、他の法律で規制している有害物質を、新たに同法の対象に加えるなど廃棄物の定義を拡大、リサイクル促進と不正を防ぎ適正な処理を進める考えです。
 さらに

  1. テレビなど家電4品目のように生産者が廃棄まで責任を持つ拡大生産者責任(EPR)の考えを新たに盛り込む
  2. 処理責任で二分類している廃棄物を、処理責任や安全性などから生活系、事業系、有害性、リサイクルの各廃棄物に4分類する−ことも視野に入れています。

3月中旬に中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会がこれらの考えを盛り込んだ中間報告をまとめ、年内に答申するとしています。

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■テロ後の財政赤字でリサイクル事業中止/ニューヨーク市

 ブルームバーグニューヨーク市長は13日、同時テロ後の財政赤字縮小のため、来年度予算案に缶などのリサイクル事業の凍結を盛り込みました。紙は除外されるものの、びんや缶、プラスチックなどのリサイクル事業を1年半中止するもので、市側ではリサイクル費用が1トン当たり240ドルで、廃棄する場合の費用130ドルに比べてかなり割高だと説明しています。市長はまた、「リサイクル事業の多くは浪費であり、非効率だ」と述べ、凍結で5,700万ドルも浮くと強調しています。環境保護団体などは「今どき信じられない政策」と仰天しているようです。

 リサイクルより捨てた方が安い、という論理ですが、こんなことが通ってしまうのもいかにも米国的だと思います。

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終わりに
 大手量販店のイオンでは、狂牛病問題に対する取り組みとして産地や検査証明書、処理月日などを期した生産履歴表示を導入しています。しかし、今回の「カワイ」による偽装牛肉が贈答用商品に使われていなかったか、確認に追われたとしていることから、偽装を見つけるのは難しいようです。今後小売店では、不定期による外部監査によるシステムの確立が急務のようです。

 また小売店が偽装する場合もあることから、消費者や行政による外部監査しか正す手だてがなく、業者のモラルばかりに頼っていては、いつまで経っても不正はなくなりません。現在、農水省の品質課(03-3502-5728)と消費者の部屋(03-3591-6529)、各地方農政局や食糧事務所に「食品表示110番」が設置されているので、食品の表示に不審を感じたら積極的に利用したいものです。

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