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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
「定期購読について」
■「ほっとく鍋」事故に注意/ 製品評価技術基盤機構
■汚染生カキ、検査結果偽り出荷/宮城県松島町漁協
■狂牛病対策、企業独自の取り組み進む
■食の安全確保に向けて/企業、小売り各社の取り組み
■道路上の表示で事故数激減/愛知県警の取り組み
■「海洋深層水」表示に指針/公取委
■虫歯治療材で環境ホルモン溶出/コンポジットレジンに使用のベンゾフェノン
■段ボールで建築物/英国、小学校のために試作
12月のニュースから
■「ほっとく鍋」事故に注意/ 製品評価技術基盤機構
家庭用のステンレス製二重構造のなべ「ほっとく鍋」で事故が相次いでいます。独立行政法人製品評価技術基盤機構では、事故特記ニュース(http://www.jiko.nite.go.jp/news/news48.html)で使用者に注意を呼びかけています。同機構の2001年9月25日付け事故特記ニュース(No.
43)でも注意喚起をしたのですが、6件目の事故が発生したために再度注意を促したといいます。
「ほっとく鍋」に関する事故というのは、鍋に油を入れて炒め始めて2〜3分後くらいに突然バーンという音と共に内なべがはく離して飛び出し、天井にまで達するものです。メーカーでは改良品をを作り、2001年4月以降販売していたのですが、それでも同様の事故が発生したというのですから事態は深刻です。現在、経済産業省では輸入事業者に対し、製品の販売自粛や回収などの措置を講じるよう指導しているといいます。
事故の中には内なべが飛び出して換気扇に当たり、はね返ったなべが使用者の顔にあたり、むち打ち症となった例や、飛び出した内なべで右手の親指と小指を切り、手首に火傷を負った例もあります。幸い6件の事故では油の温度が低かったため、飛散した油によるやけどの被害はないということです。
同製品は二重構造のなべで外なべと内なべの間に空気層を設けているため、熱することにより空気が急激に膨張、内なべの貧弱な固定のため爆発音と共に飛び出るものと思われます。重大事故になる恐れが非常に高い、大変危険な商品だと言えます。
同製品をお持ちの方は、アーネスト株式会社(0256-64-2525)に連絡した方がよいでしょう。
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■汚染生カキ、検査結果偽り出荷/宮城県松島町漁協
宮城県漁業協同組合連合会は29日、県内の漁協が食中毒を起こす恐れのある「小型球形ウイルス(SRSV)」に汚染された生ガキを、検査結果を偽って出荷したことが分かったと発表しました。問題のカキは26日から出荷されていましたが、そのうち98%はすでに仲介業者からの流通を停止していて、県外に発送された分は「保健所を通じて回収可能」(県生活衛生課)としています。
県漁連によると、松島町漁協の生産したカキは25日に陽性と判明しましたが、その前に県が実施した同漁協の研究調査では陰性の結果が出ていたことから、自主検査の結果が分かる前に高値の付く生食用で出荷することを漁連に連絡、漁連が検査成績書を書き換えたといいます。
県漁連では県内32地点で週1回、自主的にSRSV検査を実施していて、陽性の場合は出荷を差し止めた上で加熱調理用に出荷するようにしているといいますが、法的拘束力がないため漁協の不正に荷担する結果となったようです。たまたまサンプルだけが…」という、都合の良い非科学的な考えがあったようですが、しかし松島町漁協の生産したカキでは19日にも自主検査で陽性の結果が出ていたということから、ずいぶんいい加減なものです。
雪印事件や狂牛病問題で、食品についての消費者の信頼は大きく揺らいでいます。それにも関わらず、儲け優先で安全を踏みにじるような行為が平気でできる、というのは一体どういう人達でしょう。おそらく普段から不正を何とも思っていないとしか思えません。他にも問題が出る可能性が高い、つまりリスクの多い宮城県産のカキはしばらく食べるのをやめましょう。
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■狂牛病対策、企業独自の取り組み進む
政府は2002年3月までに、国内の牛全ての出生地や飼育場所などのデータを管理する「個体識別システム」を整備する計画でいます。しかし狂牛病の感染源の解明がいまだに特定されないため、消費者の牛肉を避ける消費行動はいまだに続いています。このような状況下、小売りや流通、生産業者の一部では独自の対応を取り始め、消費者の信頼を取り戻そうと努力しています。
大手スーパーのイオンでは2001年11月から全国の店舗で扱う国産和牛の産地や農場の名称、年齢、性別などの情報を表示し始めました。同社は、流通する牛肉に関する情報を持つ大手食肉卸会社や生産者団体に協力を求め、流通経路をさかのぼることができ、生産や取引の履歴が明確な牛肉だけを識別して購入することにしました。また生産者側でも独自対応が始まり、全国農業協同組合連合会は11月から牛の出生から移動、与えられた飼料などの履歴情報を管理するシステム構築に乗り出しました。
伊藤ハムでは、子会社の処理施設内で牛を加工する際に、狂牛病の原因物質の異常プリオンが蓄積している脊髄が飛散しないように、分割解体前に脊髄内部の液体などを吸引する方法を採用しています。牛肉の生産・加工・卸売りを一貫して手がける同社は、以前から預託飼育と呼ぶ手法を採用してきました。これは生産農家から購入した子牛を肥育農家に育ててもらう際、与える飼料や水を指定するものです。また食肉処理後に段ボール詰めされた肉には全て識別番号が付いていて、飼料の成分など全ての履歴が調べられます。
ニチレイでは、抗生物質を使わない、成長ホルモンを与えない、植物性飼料しか与えない、といった自然に近い環境での畜産物飼育に取り組んでいます。牛肉では3年前からオーストラリアで現地の食肉加工メーカー2社と協同で、対応を進め、各社の農場に出向いて飼育法を指導、飼料は牧草だけ与えるようにしています。また各種の安全証明書を備え、一頭ごとに生産から販売までの履歴を完全に管理しているといいます。
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■食の安全確保に向けて/企業、小売り各社の取り組み
最近の狂牛病事件を始め今私達の食が大きく揺らいでいますが、近年ダイオキシン、環境ホルモンといった化学物質の危険性が明らかになるにつれ、消費者の間では健康志向の高まりから農薬の少ない、そして化学肥料の少ない農産物など、安全な食を求める動きが確かなものになっているようです。このような消費者の安全に関する意識の高まりを受け、小売り・流通業者の間では独自の対応を進めています。
コープネット事業連合では、さいたま市の商品検査センターで年間600種類を越える農作物を検査、各生協が仕入れた米や野菜、果実などの残留農薬の種類や量を調べています。残留農薬の基準値は厚生労働省や農水・環境省の基準値に準じていますが、独自の安全システムをさらに追加、この基準値の1/2を越えた検査値の場合には、隣接地で大量に農薬を使っていないかを農家とともに原因を追及、改善を進めています。しかし、本来は農協でもこのくらいの取り組みを行うべきだと思いますが…。
減農薬・減化学肥料栽培農産物は、農水省の表示基準をクリアしたものを無検査で仕入れるスーパー・小売店が多いのですが、イトーヨーカ堂の「ミネラル野菜」では、外部の研究機関を介して契約農家の圃場の土壌成分を分析し、投与する肥料の種類や量などを調整しています。契約前に栽培方法など詳細に記載した栽培履歴を提出させ、収穫後の商品成分を再度分析、自社のバイヤーが試食するなど何重ものチェックをしています。同社ではこれらのデータの蓄積で「消費者からの問い合わせに対しても円滑に対応できる」としています。
大手コンビニの弁当でも安全性への配慮が進み、セブン・イレブンでは2001年10月から弁当、おにぎりや調理麺などから保存料と合成着色料の使用をやめています。ファミリーマートでは99年3月から取引先の総菜メーカーにISO9002の取得を求め、全90工場のうち30社が認証を取得、温度などの衛生管理を統一して菌の発生を押さえる体制作りを進めています。
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■道路上の表示で事故数激減/愛知県警の取り組み
愛知県警では住宅密集地を走る生活道路の車道を狭めて“センターラインをなくす”、という交通事故防止策に2000年から取り組んでいます。2000年から2001年にかけて、三河地方の15路線について試験的に実施したところ、事故が半分近くに減少したといいます。
法令では車道の幅が5.5メートル以上の場合、センターライン表示が義務付けられていますが、道の両脇に幅0.75メートルの路側帯を設けることで、車道の幅を5.5メートル以下として表示をなくしたものです。
半年後にこれらの道路での事故発生件数を調べたところ、実施前の半年と比べて人身、物損事故ともほぼ半減したとが判明しました。さらに豊田市四郷町の路上で通行車両の速度を測定すると、センターラインを無くす前と比べて平均速度は7キロも落ちていたといいます。
県警では「運転者が対向車と道路を共有しようという心理が生まれたため」と分析し、センターラインが無くなったことで、ドライバーが対向車との接触を避けようと運転に慎重になる心理的効果があったと見ています。県警では交通事故防止に大きな効果があるとし、県内全域に対象を広げるとしています。
確かに車を運転しているときにセンターラインがあると走りやすく感じ、スピードも上昇ことになるのでしょう。「スピードメーターを見ない」というドライバーも結構いるようですので、今回の取り組みは期待できます。見通しの悪い交差点よりも見通しの良い交差点での事故も多く、「何でこんなところで」と思ことがあります。道路上に立体的に見えるデザイン表示の取り組みも始まっていることから、運転者への慎重さを喚起させる良い方法だと思います。
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■「海洋深層水」表示に指針/公取委
公正取引委員会は5日、市場が拡大している海洋深層水を使った飲用水について、消費者が分かりにくい表示があるとして、ガイドラインを作成しました。深層水の濃縮液を使用した場合はその事実を明記したり、ミネラル分の豊富さなどを強調した表示をする際は、その根拠が必要としました。公取委は市場に流通している主要な11社16商品の飲用深層水を調査したところ、このうち5社は海洋深層水を脱塩するなどして製造していました。残る6社は深層水の濃縮液を地下水などの鉱泉水に混ぜたり、鉱泉水に極少量の海洋深層水和添加して製造していたとしています。つまり11社全てが純粋な深層水でなく、何らかの手を加えた商品を販売していたわけです。
公取委が消費者モニターにアンケートしたところ、海洋深層水の購買理由として「体によさそう」「ミネラルウオーターよりミネラル分が多そう」などの答えが多かったといいますが、消費者が「健康によさそう」ということで、安易に飛びつく消費行動が利用された格好です。
調査した商品では「豊富に」「バランス良く」などミネラル分について強調しているものが多かったといいます。いずれもあいまいな表現で、客観的な量を知らせるものではありません。中には市販のミネラル分を添加している商品もあったといい、表示の不適切さが明らかになったといいます。
公取委は調査の結果、
- ミネラル分を強調表示する際には、公的機関の検査結果や栄養学的な根拠が必要
- 海洋深層水の濃縮液を混ぜたり、極少量の深層水を添加して製造している場合は、その事実を明記する、
などのガイドラインをまとめました。その上で配合していることなどを明確に表示していなかった業者には改善を要請しました。
深層水は1996年から飲用水の製造が始まり、市場規模は100億円を超すと見られています。しかしこれまで表示に関する業界の自主基準などはなく、いわば野放し状態であったようです。
消費者にとっては商品の表示がその商品の素性を確かめる唯一の情報で、特に新商品の場合はスーパーの売場で各社のボトルをいろいろ見て確認している消費者も多いと思います。しかし法律や業界の自主基準がないことをいいことに、偽りの表記に走るというのは業界全体のモラルの問題でしょう。
もともと食品類では表示のあいまいさが多く、言われなければ内容を表示したくない、という風潮があるようです。顧客に正しい情報を開示したくない、という業界の姿勢を今さらながら実感しました。彼らの考えることは、「法律に触れるかも知れないが、ギリギリの線での営業」ということなのでしょう。そのような考えの延長線上に雪印事件があった、ということが分かっていないようです。彼らには顧客満足を言う資格はないと思います。
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■虫歯治療材で環境ホルモン溶出/コンポジットレジンに使用のベンゾフェノン
歯科医で充填材料として虫歯などに使用するコンポジットレジン(複合樹脂)は、様々な材料を複合することで材質を強化でき、また金属アレルギーと無縁なこと、歯との密着性が良く歯を削る量が少ない、見た目が白く自然の歯に近いなどから、1980年代から急速に広まってきました。しかし変色しやすいレジンの欠点を防ぐために、紫外線を吸収する物質のベンゾフェノンを加えることが広く行われてきました。
大阪大歯科学部の恵比寿繁之教授、樽味寿助手らのグループでは、治療に使われる量に近い市販コンポジットレジン11種類を溶液に24時間浸し、レジンから溶出した物質のホルモン作用を培養細胞を使って分析、6種のレジンから溶出物に女性ホルモン作用があることを確認しました。レジンの変色を防ぐために加えられた紫外線吸収剤のベンゾフェノンの一種や、レジンの重合を進めるためのアセトフェノンの仲間がホルモン作用の原因物質と見られています。
歯科材料では、環境ホルモンの一種であるビスフェノールAが不純物として混入、口の中に溶出する可能性が問題となっていましたが、ベンゾフェノンは添加剤ではなく、製造過程で加えられる物質であることから添加量も多く問題は深刻です。樽味さんは、「女性ホルモン作用のある物質が比較的高い濃度で口の中に溶け出すことは望ましくない。コンポジットレジンの安全性評価に内分泌かく乱作用は考慮されていない。ホルモン作用のない化学物質に切り替え、より安全なレジンを実現することが必要だ」と話しています。私達は歯の治療が苦痛で、できればお世話になりたくないと思っていますが、口の中に感じる苦い味の中にもいろいろな化学物質が混ざっているのでしょう。
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■段ボールで建築物/英国、小学校のために試作
英国南部エセックスのウェストバラ小学校に最近建てられたクラブハウスは、段ボールでできていて環境を維持する建設の見本となっています。この建物はコントレル・アンド・ヴァーミューレン・アーキテクチャー社が設計、ビューロ・ハッポルド社の技術者が建てたもので、リサイクル段ボールを使い、屋根や壁は中がハチの巣状のメッシュになっているパネルで、軽量・丈夫な造りとなっています。屋根の柱は段ボールをしっかり巻いた管で造られ、自動車の重さにも壊れることなく支えることができるといいます。また低コストで軽量、簡単に建てられることが特徴だとしています。
耐水にするため、呼吸する膜などで建物は何層にもコーティングされ、外側の段ボールはプラスチックコーティング材で処理され、内側も外側も水に強く、英国の建築物基準をクリアする耐火構造になっています。建物の総合評価による現実的な寿命は20年で、その後は解体し建材をリサイクルするとしています。
昔は「紙の家」とも言われた日本の住居ですが、最近はプレハブ系の家屋が多く、在来工法による木材の需要も少ないように思います。また山間部では林業従事者の高齢化などで山が荒れているとも聞いています。一部では間伐材を利用した商品開発の取り組みが始まっていますが、林業全体の産業としての復活には至っていません。材木としての単価・品質などで外国材と競争するのは困難な状況ですが、我が国でも木材の繊維質を生かした建築用素材開発をもっと進める必要があるようです。
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終わりに
食品の安全に関する問題がニュースで常に取り上げられます。過去には乳製品・パンなどで製造日の改ざん問題も多くあり、不正であっても自分や会社のためには「許されること」と考える人は多いのかも知れません。食中毒などで異常をきたすには個人差が大きく、また少々の腹痛で訴えの行動を起こす人はまれでしょう。そのため供給者側には「不正が見つからなかった」という実績?を残すことになります。それが「効率よく利益を上げる」というノルマ達成のためには、「やむを得ない」と考えることにつながっているのでしょうか。
ところで工業製品では製品が動かない・音が出ないなど、機能上の品質や欠陥が誰にでも分かってしまいます。そのため品質管理や安全に対する取り組みは必須であり、1995年に施行されたPL法がさらに安全や品質を厳格にすることを求めてきました。また多くの企業がISO9001に準じた品質マネージメントを導入、全世界から調達する部品などの品質を一定以上のレベルにするのが常識となっています。
またPL法では工業製品を主とした安全確保への推進を求めましたが、生産者であれば受け入れ検査や出荷検査 で安全・品質を確認すべきことは、どの産業でも同じでしょう。これは第一次産業に関わる事業者のモラルの問題、と簡単に片付けるわけにもいかないようです。
これほど多くの問題が指摘されていても自ら反省をせず儲け優先の体質が一向に変わらないという、彼らを更 正させるためには罰則の強化しかないのかも知れませんが、選挙の票が減るのを恐れる消極的な政府には期待できません。多くの賢い消費者による消費行動、そのパワーだけが直接的に彼らの反省を促す手段かもしれません。
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