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2001.6 No.90  発行 2001年6月10日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■防水繊維製品の脱水でけが/国民生活センター、注意呼びかけ

■NTTドコモ、ソニーの携帯42万台回収/auの端末でもソニーの不良品が

■ミネラルウオーターの安全性検査/厚労省、水質基準強化要望受け

■ハウスの菓子で安全性審査未了の組み換え食品/厚生労働省検出

■遺伝子組み換え食品表示、米国でも6割以上が望む

■遺伝子組み換え大豆は、多くの農薬、少ない収穫/米の民間研究機関警告

■環境ISO取得企業で薬剤流出/セイコーエプソン

■ソフト違法コピーで賠償命令/予備校のLEC


5月のニュースから

■防水繊維製品の脱水でけが/国民生活センター、注意呼びかけ

 防水繊維を使った寝袋や防寒着を洗濯機で脱水した際、洗濯機が飛び跳ねたり、倒れる被害が相次いでいることが8日、国民生活センターの調べで分かりました。中には洗濯機が体に当たりけがをするケースもあることから、同センターでは注意を呼びかけています。同センターによると、1990年度から2000年度までの間に、全国から計45件の被害報告が寄せられたといい、飛び上がった洗濯機と壁との間に体が挟まれたり、洗濯機のふたが飛んで腕に当たるなどで4人が打撲などの軽いけがを負ったと報告しています。

 防水繊維製品を脱水するとき、衣類などの中に水がたまったままになり(水が入ったビニール袋を回転させるような状態)、このため水が大きく片寄ったり、たまっていた水が急に抜けるときに洗濯機のバランスが崩れることが原因のようです。防水繊維を使った製品はウエットスーツやスキーウエアだけでなく、自動車カバーやオムツカバーなどもあり、「遠心脱水機は使用できません」などの表示がある商品は残念ながら少ないとのことです。同センターでは1日、洗濯機メーカーと繊維製品メーカーの両業界団体に、安全対策の検討などを求める要望書を提出するなど、事故防止を訴えています。

 洗濯機の動作や操作は直感的で分かりやすいことから、道具的な感覚で使われることもあるようです。つまりユーザー独自の使用法が発生しやすい商品です。昔は洗濯機で芋を洗う、という人がいましたが、さすがに今はいないのではないでしょうか。しかし衣類を定量以上に詰め込んで洗濯することはあるようで、詰め方による重量の偏りから異常な振動があったりします。また手洗いした運動靴を洗濯機で脱水だけすると、とても大きな音がしたりして、あわてて洗濯機の電源を切る、という失敗をした人も多いようです。このように「大丈夫かな?」という思いで行動するときは異常な事態への予見ができますが、防水繊維の衣類の洗濯では通常の衣類と同じ扱い、と思っている人が大多数なのではないでしょうか。このような危険の発生がイメージしづらい商品では、注意を促す表示は必須のはずです。分からない人に注意するのが本来の注意表記であり、当たり前のことだけを注意する最近の取扱説明書のそれとは役割の重要度が大きく異なります。また危険の程度を考えても、大人ならは打撲で済みますが、家庭内で使用するため小さな子供が洗濯機のそばにいることも考えるべきです。

 PL法制定以後製品の注意書きは増えましたが、新しい素材や生活習慣の変化から発生する新たな危険を注意しない、というのでは困ります。企業が周知の危険についてだけ「おきまりの表示」として記載するのでは、“ユーザーのため”の安全評価を怠っていることになります。企業のいう「顧客の安全」「顧客の満足」などを実践してもらいたいものです。

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■NTTドコモ、ソニーの携帯42万台回収/auの端末でもソニーの不良品が


 NTTドコモは11日、ゲームソフトなどをインターネットから取り込める新サービス「iアプリ」対応のソニー製携帯電話「SO503i」にソフトの不具合が見つかったと発表しました。5月末まで販売を見合わせるとともに、販売済みの42万5,000台を回収し無料で新品と交換するとのことです。しかしドコモの携帯では昨年末から故障が相次ぎ、2月にも松下通信工業製の端末で23万台の回収を発表したばかりで、同社の品質管理が問われそうです。トラブルはネット上から容量の大きいソフトを取り込もうとすると、携帯内に保存されている個人データが逆にネット上に流出するというもので、現在のところ利用者からの苦情はないとしています。
ところがドコモの対処で疑念を持たざるを得ないことが22日、明らかになってしまいました。SO503iの発売直後からさまざまな故障が発生したため、改良機を用意して、申し出があった客に無料で交換・修理していたというのです。

 故障は折り畳んだときにクッションのゴムが取れて液晶画面が傷つくものや、着信音が小さいなどの問題で、4月に全国の販売店で修理などをしましたが、その後も留守番電話サービスの一部に不具合が生じることが分かり、4月下旬から5月にかけて約5,000台を再び交換・修理したといいます。それに追い打ちをかけるように今回の不具合が見つかったため、販売済み全ての端末を回収する事態となったのです。ドコモによるソニー製端末の回収は2度目ということですが、今回の回収は過去最大規模ということだけでなく、ドコモ製品の品質に不信を感じるもので、同社の信頼はがた落ちです。最近多く聞かれる迷惑メール・DMを受けるだけでもドコモの場合は課金される、ということもあり、他の携帯電話会社の食い込むチャンスかも知れません。

 さてKDDIが21日、auのcdmaOne対応のソニー製携帯電話「C101S」12万6,000台のソフト書き換えのため回収すると発表したため、ソニー製品の品質問題がクローズアップされてきました。双方のトラブルともソニー側は「当方のプログラムミス。新しい機能を十分に理解していなかった」(広報部)と全面的に認めています。携帯電話市場は次から次へと機能が更新され、新機種の端末に買い換えるユーザーも多いことから、各企業の開発スケジュールはかなりタイトになっているのでしょう。しかし世界のブランド企業がこれではいただけません。

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■ミネラルウオーターの安全性検査/厚労省、水質基準強化要望受け


 厚生労働省は食品衛生法で「清涼飲料水」の一つに分類されるミネラルウオーターについて、この夏にも水質汚染の有無など安全性を調べる方針を決めました。29日の参院厚生労働委員会で、井上美代氏(共産)が基準を厳しくするよう求めたのに対し、坂口厚生労働相が検査実施を明言したものです。

 現在国内だけでも約200社がミネラルウオーターを生産していると言われ、健康・安全志向の高まりから日常生活に定着したミネラルウオーターも、「自然水」「天然鉱泉水」など表示がまちまちです。現在の食品衛生法上では、「ミネラルウオーター類」について、大腸菌群が無く一般細菌やカドミウムの含有量が一定以下など18項目の基準を設けていますが、水源周辺の環境も大きく異なることから水質基準を厳しくするよう消費者からの要望が増えているといいます。

 ところで世界自然保護基金(WWF)が3日、ミネラルウオーターなどペットボトル入りの飲料水が水道水に比べ安全で健康に良いとは限らない、と警告する報告書を発表しました。WWFによると、ペットボトル入り飲料水は世界で年間890億リットルも消費され、市場規模は年間220億ドルに急成長したとしています。しかし価格が水道水の「500倍から1,000倍」もの高額であり、特に欧米では「ボトル飲料水業者に課す規制より、水道水への規制の方が厳しいのが実体」とし、その安全性に疑問を投げかけています。

 自然水という魅力から安全規制を「行き過ぎ」と見る人もいるかも知れませんが、取水場所によっては数十年前の雨水が湧き出ていることもあるでしょう。ということは近代になり山岳地帯の開発が進み、登山人口・観光客の増加に対する水質汚染の影響がまだ出ていない場所もあるかもしれません。定期的な水質の監視や定量的な安全評価は、“製品”としての最低限の品質保証要件だと思います。

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■ハウスの菓子で安全性審査未了の組み換え食品/厚生労働省検出

 厚生労働省は24日、ハウス食品が製造販売したスナック菓子から国内では安全性審査が終わっていない遺伝子組み替えジャガイモが検出されたとして、食品衛生法違反で同社に製品の自主回収を指示したと発表しました。同省では、「オー・ザック」の「炭焼きしょうゆ味」の2検体と「あっさり塩味」1検体の計3検体から、米モンサント社が開発したコロラドハムシという害虫とウイルス病への抵抗性をもつ、2つの遺伝子を組み込んだ「ニューリーフプラス・ポテト」が検出されたとしています。

 同省では「米国などでは許可されている組み換えジャガイモで、安全性には問題ない」としていますが、今年4月の食品衛生法改正で組み換え食品の安全性審査が義務付けられ、未審査の食品や食品を原材料に使った製品の輸入・販売は禁止されているものです。25日の同社公告では「…未承認遺伝子組み換えポテト原料の混入が判明いたしました。この原料は、米国ではすでに安全性が確認され、承認されているものですが、日本では現在申請中のものであります。つきましては弊社では早急に左記対象商品を自主回収させていただきます。」との文章が示されました。この公告を見る限り同社の品質管理の不手際を反省する趣旨の言葉が見つからず、あたかも「米国で安全なものなので問題ないが、我が国では現在申請中のものです。手続き上の問題から今回自主回収をするものである」といわんばかりです。これでは混入商品の販売が違法である、という認識を持っていないとも思われます。また「オー・ザックの原料となるジャガイモを輸入している米国とカナダの計4社から組み換え食品でない証明をとっていた」、とする人任せの弁解では、その証明の評価能力が疑われます。同社の品質ポリシーとマネージメントシステムの質が問われます。

 このように反省が感じられない同社のいう「いっそうの品質管理に努めて参る所存でございます」などの言葉が、虚ろに響きます。公告の文言は“おきまり”の言葉を掲載するものではなく、“メーカーと消費者と直接対話する手段”であることを理解していないようです。CS的にもリスク管理の点からも問題を感じさせるケースでした。

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■遺伝子組み換え食品表示、米国でも6割以上が望む

 遺伝子組み換え(GM)作物では米国の生産量が圧倒的に多いため、米政府ではGM食品の安全性に問題はないとする立場から商品へのラベル表示を義務付けていません。我が国ではGM食品の安全性を危惧する人も多いのですが、米国でも消費者がラベル表示を望んでいるようです。

 米国の非営利団体の公益科学センター(本部ワシントン)が成人1,000人あまりに対して実施した調査では、「GM食品をよく知っているか」の質問に「あまり知らない、全く知らない」が55%と半数以上を占めましたが、それでもGM食品の表示義務付けに賛成した人は62%に上ったとしています。また「GM使用」「GM不使用」と表示された2種類の食品があった場合にどちらを選ぶかという問いには、前者が8%、後者が52%という回答結果となり、米国でもGM食品を敬遠したい、という意識が高いことが分かりました。GM食品をめぐる議論が高まっていることから、米食品メーカーでは法律にはとらわれず、任意に行う表示について昨年から検討を始めたといいます。

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■遺伝子組み換え大豆は、多くの農薬、少ない収穫/米の民間研究機関警告

 除草剤耐性の遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え大豆の栽培では、通常の大豆よりも除草剤の散布量は多くなっている一方で、単位面積あたりの収穫量は低いとの調査結果を、米アイダホ州の民間研究機関「ノースウエスト科学・環境政策センター(NSEPC)が12日までにまとめました。

 組み換え大豆開発元のモンサント社は、「農薬使用量が少なく、収量も増える」と主張していますが、NSEPCは「除草剤の大量使用は、薬に耐性のある雑草を生み出すことにもなりかねない」と警告しています。NSEPCは、モンサント社がグリホサートという除草剤に耐性を発揮する遺伝子を組み込んで作った大豆に注目、1998年の米農務省のデータなどの分析から、作付け面積あたりの除草剤の使用量は、アイダホ州など9つの州で、通常の作物に比べて10−30%多かったとしています。また単位面積当たりの収量は、米国内の大学などで行われた栽培実験の結果を総合すると、遺伝子組み換え大豆は、通常の大豆より5−10%少ないことが判明したとし、「一種類の農薬への依存性を高めるようなバイオ技術は、大きな問題を生むことになる」と指摘しています。

 遺伝子組み換え食品は今後の地球規模での食糧自給率の減少に対処する、あるいはアレルギーの人に有効な食物の提供、そして経済的メリットなどの説明には納得するものがありますが、その安全性がどの程度の検証をもって行われてきたのかと疑問に思うこともあります。PCBやダイオキシンなども、その化学物質の有用性を優先するあまり、被害者が出てから多くの時間の経過をもってようやく規制されてきた経緯があります。時代と共に進む科学技術や検証精度の向上などで過去の過ちを反省することが多いのですが、これらは現在の科学や技術的な論拠(本当に正しいかどうかは分からないこともあります)を盾に、企業利益を追求する社会の弊害ともいえます。消費者はむやみに不安がることはないものの、“安全”というものについての自己の見解や消費行動に責任を持つべき時代なのでしょう。

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■環境ISO取得企業で薬剤流出/セイコーエプソン

 長野県塩尻市のセイコーエプソン塩尻事業所で17日、酸化剤の過マンガン酸カリウムが流れ出て、近くの塩尻中学校の池などで大量の魚が死んだ問題で、同社では流出ルートなどの原因を30日公表しました。同社では有機塩素系の溶剤を長年使用してきたために汚染された各工場の土壌浄化作業を進めていました。同事業所で始めていた浄化作業は、有害物質がしみこんだ土壌に地下水経由で酸化剤を送り込み無害な物質に分解するものです。これは「現位置酸化分解法」と呼ばれる処理で、米インターナショナル・テクノロジー社が開発し栗田工業が技術導入したものです。この作業ではまず井戸を掘り、そこから過マンガン酸カリウムの水溶液を地中に注入するのですが、その際に以前から地中に埋設してあった集水パイプに溶液が流れ込み、雨水マンホールを通って敷地外に流れ出たと説明しています。

 この集水パイプというのは地中の水分を除くためのもので、パイプには数多くの穴があいていることから、そこに酸化剤が流れ込んだと見られています。しかし汚染土壌浄化作業前に地中に何があるかを確認していなかった、というのはあまりにもレベルの低い話です。同社ではISO1400シリーズの認証を受けていますが、作業手順には土壌浄化などの特殊工事についてのチェック項目がなかったといいます。

 プリンターのインクカートリッジなどの回収ボックスを多くの電気店などに設置、新聞などでも環境重視型企業をアピールしていたのですが、何ともお粗末な姿が露呈してしまいました。この7月に予定されているISO認証機関の定期検査で認証が維持できるかどうかにも関わることで、些細なことから多くのリスクを抱えてしまったケースでした。それにしても企業では雨水や排水が敷地外に流れ出す箇所(公共下水道に接続する箇所など)での水質のモニタリングは行っていないのでしょうか。周辺の異常事態が発覚してから調査するようでは、出荷検査をしない製造工場みたいなものです

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■ソフト違法コピーで賠償命令/予備校のLEC

 パソコン用ビジネスソフトを不正コピーして業務に利用され、著作権を侵害されたとして米ソフトメーカー3社が大手司法試験予備校の東京リーガルマインド(LEC)を相手に約1億1,400万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が16日、東京地裁でありました。飯村敏明裁判長は原告側の主張をほぼ認め、「正規品の小売価格と同額の損害賠償をすべきだ」として、LECに約8,500万円の支払いを命じました。日本国内でのソフトの違法コピーによる損失額は1999年には10億ドル近くに上ると推定されていますが、過去の同種訴訟は和解解決であったため、今回の判決が不正コピーについての初の司法判断となりました。

 訴えていたのはマイクロソフト、アップルコンピュータ、アドビシステムズの3社で、判決によるとLECは1995年5月当時、「高田馬場西校」内のパソコンに3社のソフトを無断で違法にコピーし、教材作成などの業務に利用していたとしています。LEC側は「コピー発覚後に正規ソフトを購入、ソフトの使用契約(シュリンクアップ契約)では、一度代金を払えば無期限で利用できることになっており、原告に損害を与えていない」などと主張していました。お金を盗んでも返せばいい、という論理にも思えますが、飯村裁判長は、「著作権侵害行為は違法にコピーした時点で成立している」として、正規品を購入しても賠償は必要とする当然の判断を示したものです。

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終わりに

 米国では連邦捜査局(FBI)の捜査員が時々着るTシャツとかなり似た商品があるようですが、FBIはこのほど「着れば危険にさらされる」として、前後両面にFBIの文字が印刷されているこのTシャツの販売をやめるよう大手の販売会社に要請したといいます。日本ではちょっと考えられませんが、この会社ではガードマンや受刑者の制服に似せたTシャツも販売しているとのことです。販売会社では早速FBIの要請に従うことを決めましたが、FBIが実際に着るもので「危険にされられるからやめて欲しい」という要請の趣旨は、市民の安全というものを考えているように見えます。しかし別の見方をすると、犯罪に巻き込まれた市民がTシャツを放置したFBIを訴えることまで考えざるを得ないという、いかにもアメリカ的な背景を感じます。

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