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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
「定期購読について」
■東電の原発トラブル相次ぐ/7月、7基が稼働せず
■ユーザークレーム隠ぺい、そしてリコール隠しも/三菱自動車工業
■セイコーシェーバー発火事故/リコール徹底されず
■平成11年度事故情報収集結果/通産省
■ダイオキシン、通常の170倍/大阪・能勢焼却施設の作業員
■中小企業も環境会計/環境庁支援システム
■好ましい照明環境は?/環境庁、「光害」防止マニュアル策定
■ごみの回収ルールに新たな取り組み
7月のニュースから
■東電の原発トラブル相次ぐ/7月、7基が稼働せず
東京電力では柏崎刈羽原発4号機が15日、発電機冷却用の水素ガスの消費量増加で停止し、21日には茨城県沖地震の発生直後、福島第一原発6号機の気体廃棄物処理系の流量増加で停止、23日には同2号機がタービン制御油漏れで停止、25日では福島第二原発4号機の冷却水ヨウ素濃度が増加し停止になるなど、トラブルで原発が停止しています。同社の原発全17基のうち、福島第一原発4号機、同5号機、柏崎刈羽6号機が点検中のことから7月は7基が動かない異常状態となっています。同社では28日、柏崎4号機のトラブルについて、発電機内の固定子に冷却水を供給している絶縁ホース1本に、約3センチのひび割れを見つけたと発表しました。
いつも思うのですが、事故やトラブルのニュースを聞く度に、点検項目や点検周期が妥当であるとの客観的な信頼性がないように感じます。点検計画立案時は点検周期内のトラブル発生は限りなくゼロに近いものを想定し、システムの冗長度や安全度を算出していると思います。東電所有の原発のトラブルが続いていることは、個々の原発の安全度の問題よりも、東電の原発に対する安全マネージメントシステムの欠陥があるのではないでしょうか。
たまたまのトラブルがこの短い時期に集中して起きる確率は非常に低いものであり、少なくとも昨年の同時期には関係者の誰もが想定していなかったに違いありません。つまり原発の安全性は基本的には経験的な予想に基づき算出されているだけで、十のマイナス何乗という非常に安全であるかのデータ(設計値)が示されることがありますが、実際に起きた想定外のトラブルが原発の安全データの見直しにどの程度生かされているのか不安です。
安全度が高いシステムでも、全てのトラブル要因が押さえ込まれている、という条件付きのことが多いものです。ハード・ソフト両面のトラブル回避や補正プログラムが常駐して監視するなど、常にトラブルの発生を未然に防ぐシステムでない限り、個々の原発の安全度は定期点検時に修正されるべきものだと思います。7日に報告された原子力安全白書のメインテーマは「原子力安全の再構築に向けて」であり、JCOでの臨界事故で失われた国民の信頼性を取り戻すのは「安全性の確保」という観点で論じていることからも、客観的な安全度を国民に示して欲しいものです。
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■ユーザークレーム隠ぺい、そしてリコール隠しも/三菱自動車工業
運輸省では苦情処理が適切になされているかどうか、ほぼ年に一度各メーカーの定例監査を実施しています。三菱自動車工業の検査は昨年11月上旬に実施したのですが、今年6月になり匿名の電話で「提出されていない資料がある」との内部告発があり、同省では7月初めに同社に立ち入り検査を実施したところ、昨年11月の監査で報告されていなかったクレーム情報があることが分かりました。同社でこれらのクレーム情報を検討したところ、リコールに当たるケースが9件、約51万台に上ることが判明しました。同社では26日、正式にリコールを届け出ましたが、対象は53万台に増え、今後の新たなリコールが必要となる可能性があるといいます。
隠されていたクレーム報告書などの書類は社員のロッカールームなどからも見つかり、立ち入り検査直前の日付の資料も含まれていたといいます。これらの情報は1998年4月以降のもの数千点に及び、定例監査で提出した報告書リストに未提出分を含めた「裏リスト」もあったといいます。同社では顧客からのクレーム情報のうち、リコール対象とするかどうか判断が難しい情報に「秘匿」や「保留」を意味する“H”マークをつけて、通常の情報とは別に処理していたとのことです。しかし顧客窓口の部署で2年前から慣例的に行っていた事実を役員の品質本部長も知らないなど、品質問題に関わる現場の実体を把握できないマネージメントが露呈してしまいました。
また14件のクレームを受けた大型トラック「ふそう」152台は、リコールの対象であったにもかかわらず運輸省に届け出ず、個別に修理を行うなどリコール隠しが明らかになりました。
大量のクレーム報告書がロッカールームから出てきた点について同社は、「報告書を意図的に隠していたというより、社員が場所に困って置いていた。悪意はなかったようだ」(首脳)と説明しています。確かに隠ぺい工作が不完全で組織的、周到に計画されたものではないようですが、それは隠ぺい方法が幼稚であっただけのことでしょう。今回の事件の根本に潜む「顧客の安全軽視」といった“反”CS活動が業務の多忙さなどで進行していたのは明らかです。問題は「CS」を掲げていながら、個人やグループの都合で人の安全軽視が躊躇することなくできるという体質でしょう。利益・効率優先の企業組織内の人の心に潜在するウィルスみたいな「チョイス」をどのようにマネージメントするのか、多くの企業で共通する問題だと思います。
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■セイコーシェーバー発火事故/リコール徹底されず
セイコーは10日、同社製充電式シェーバー(ES1910、ES1815、ES1810、ES1395)用の充電器(RC01、RC41)が充電中に発火、やけどを負うけが人が出るなどの事故が4件起きたことを明らかにしました。今年5月、大阪府と長崎市で充電中の発火事故が発生したため、同社では6月から製品のリコールを進めていましたが、7月4日に奈良県、そして5日には北九州市でも相次ぎ事故が発生してしまいました。北九州市の事故では、充電器を素手でつかんだ男性が指に軽いやけどを負う人的被害が出ました。
今回の事故ではリコールを徹底しなかった同社の対応振りが問題視されています。6月6日の社告では「…きわめてまれではございますが、充電中に充電器より発熱し、瞬間的に火花を伴うガスが噴出する可能性があることが判明しました。」とあり、発火するおそれのあることを公表しませんでした。そのため回収が進まず3件、4件目の事故が発生したともいえ、7月10日にあわてて記者会見で事実を発表するという、失態を演じてしまいました。
発火の原因は防水などのために充填された樹脂が充電中に溶けだし、瞬間的に火花を伴ったガス状の気体が噴出、そのために発火にいたるものだといいます。
樹脂でモールドされた充電器では、製造工程の作業状態が適切かどうかは作業指示の徹底と工程内検査、そしてロットごとの破壊検査などで管理されます。当該充電器は同社工場で製造されたものではなく、長野県松本市のメーカーに委託したものだということです。このため、このメーカーに対する品質監査等のマネージメントの問題があったと考えられます。また原因は単純なものなので、5月の事故で再発の可能性など簡単に判断することができたにもかかわらず、社告を見る人に「ごくまれに」などの言葉で危機感を抱かせない曖昧な表現を採用、しかも一番大事な発火する危険性を公表しなかったことは、社告の目的を著しく逸脱するものだと思います。「何のための社告か」ということを考えれば誰にでも分かることなのですが、一部の前時代的な頭の持ち主が直接的な表現を嫌った結果なのでしょう。おそらく多くの企業でも社内にこのような社員を抱えているのではないでしょうか。異常時にユーザーリスクが増大するのですが、大事なときに適切な行動を伴わない、スローガンだけのCSは願い下げです。
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■平成11年度事故情報収集結果/通産省
通産省製品評価技術センターに寄せられた製品事故情報が3日、公表されました。それによると事故情報は964件で、製品欠陥によるもの、誤使用・不注意によるものいずれも平成9年度より続けて減少しています。これを製品事故に占める製品欠陥、誤使用・不注意の比率の推移で見てみると、製品欠陥は平成6年度の28.4%から減り続け11年度では11.0%となっています。誤使用・不注意では平成6年度の33.0%から10年度の45.6%と増え続け11年度はやや減ったものの42.5%と依然高い状態です。
製品別の推移で注目されるのは家電製品で、製品欠陥は平成6年度の47.4%から減り続け11年度では18.3%となっています。しかし誤使用・不注意では平成6年度の11.1%から11年度の34.0%と増え続けています。これは燃焼器具や乗り物・乗り物用品の推移ではいずれの推移もおおむね横ばいで、家電製品だけの現象となっています。
おそらく製品ハードの欠陥は企業努力で減少したのですが、誤使用・不注意を促すソフト面の対応が最近のコンピュータ内蔵機器の表示や機能に合っていないことが考えられます。
これはPL法施行時から始まった警告表示の効果に疑問を感じるものです。複数の製品で共用できるような汎用的な文章で、全ての注意を取扱説明書内の一部にまとめて表記するページ構成では、注意文全体が読まれないケースがでてきます。取扱説明書の本文中に必要なはずの注意を省いていることも多く、また製品開梱時に目にする追加の警告シートではシンボルマークの使用は非常にまれです。ユーザーに対し切迫した危険を回避するための注意喚起のシンボルマークを使用しないということは、どういうことでしょう。業界で決めた冊子の取扱説明書のルールには従うものの、本音はユーザーの危険回避よりも制作の効率優先なのでしょうか。
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■ダイオキシン、通常の170倍/大阪・能勢焼却施設の作業員
労働省と日立造船は12日夜、高濃度のダイオキシンが土壌から検出された大阪府能勢町のゴミ焼却施設「豊能郡美化センター」の汚染除去・解体工事に従事していた作業員から、血中脂肪1グラムあたり最高約5,080ピコグラムのダイオキシンが検出されたと発表しました。通常の人の数値は20−30ピコグラムとされ、170倍を越える高い数値は日本では過去最高のものです。同省は日立造船と下請けの計12社に対し、労働安全衛生法に基づき関係作業員の健康診断の実施を指示、省内に専門家による委員会を発足させ、原因や作業実体を調べるとしています。
検査は、日立造船が今年2月と4月、長期間解体作業に携わった35人を対象に実施したものです。同省によると、35人の平均濃度は約680ピコグラムで、5,000ピコグラムを越えたのは1人で、2,000−1,000ピコグラムが5人、1,000−500ピコグラムが11人、500ピコグラム以下が18人でした。日立造船の報告では、作業中は防塵マスクや空気呼吸器、手袋などをして厚生省の解体作業マニュアルに従っていたといいますが、昨年6月と8月の検査では、35人の数値は数十ピコグラム程度だったことから、現場の作業の実体が気になります。
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■中小企業も環境会計/環境庁支援システム
大手企業では環境会計の導入が進んでいますが、中小企業の対応はまだまだのようです。環境庁では中小企業でも簡単に環境会計に取り組めるよう、12日から「環境会計支援システム」の運用をインターネット上で開始しました。このシステムにはインターネット上のEICネットからアクセスすると、同支援ソフトがダウンロードできます。同ソフトは同庁の環境会計ガイドライン(2000年版)に基づき、環境保全コストの把握(測定)に重点を置き、環境コストに対する効果は、メモ書きのように入力するようになっています。また、集計した会計情報をEICネットに送信すれば、大手企業並に一般に情報公開もでき、同庁では今後さらに需要が増えていくと見ています。
何事にもコストがかかることから躊躇している中小企業も多いと思いますが、環境対策を推進させるための同庁の取り組みは評価できます。企業はISOやJIS規格などに対応するため多くのコストをかけていますが、個別の製品対応でないシステム構築の支援などは、行政から提供するのが望ましい気がします。各都道府県にある工業試験場などで似たような技術研究や、すでに民間で確立した研究を行っているムダを見ると、企業支援のためのシステムソフト開発にシフトすべきかもしれません。
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■好ましい照明環境は?/環境庁、「光害」防止マニュアル策定
環境庁は3日、好ましい照明環境計画作りのためのマニュアルを策定し、近く都道府県などに送り、地域に合った照明環境計画や公害防止条例の制定に役立てて欲しいとしています。最近では「光害」に関する苦情が増え、「夜空が明るすぎるために星が見えない」というものから、「夜間照明で稲の生育に影響が出ている」という深刻なものもあります。アサガオ、コスモス、キクやイネなどの短日植物では夏から秋にかけて、次第に日が短くなっていく時期に花芽を作りますが、そのときに8−9時間の連続した闇が必要だといいます。このため道路照明などのために、稲穂の中に米が実らなくなってしまう、という例も多く報告されているようです。環境庁のマニュアルでは、具体的な光害として、安眠妨害、交通標識などが見えにくい障害光、天体観測への影響のほか農作物の生育障害、昆虫の誘引、野生生物への影響などを例示し、自治体側の対応策として、関連法規や障害光などを制限した国際照明委員会のガイドラインを示しています。
夜間照明では道路などの安全・保安上必要なものはともかく、企業などの宣伝効果を期待するものは、期待する利益に対する応分の負担を徴収することで光害減少対策を積極的に展開して欲しいものです。屋外広告物の氾濫など昼間の視覚公害もある我が国では、なかなか根付かない文化なのでしょうか。少し話が飛びますが、写真家や観光客から「せっかくの景色をカメラに収めたいが、電線や電柱がじゃまをしている」との話を聞くことがあります。欧米諸国の街の様子をテレビなどで見ると、多くは電線や電柱などなく、屋外広告もウィンドウ内のもの限っている都市もあるなど、落ち着いた街並みを感じさせるものです。我が国では長いこと企業や業者の宣伝が優先されてきたため、日本の原風景といった文化が失われてきました。環境に優しい企業が増えているようですが、人の心に優しい企業は少ない、ということでしょう。
ところで電線の問題は、社会資本の整備に欧米諸国よりも少ないコストしか使わないということでもあり、そのわりには我が国の電気料金は高く感じます。諸外国の公共事業者と同じ努力を行っていないのであれぱ、我が国の公共事業者の競争力は、ずいぶんと低いのかもしれません。いずれにしても国民は高いもの(質も低いもの)を買わされているようです。
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■ごみの回収ルールに新たな取り組み
一般市民がごみを出す時間帯は大体朝8時頃までのようですが、市町村のごみ回収の時間が画一的に“朝”ということにはあまり疑問を感じていませんでした。しかし単身者や共働きの夫婦が不規則な仕事に従事している場合、週何回かの決められた曜日の朝にごみを出すことが非常な負担となっているようです。深夜にごみを出したり通勤途中のコンビニや駅のごみ入れに投げ込む者がいるのは、ルール違反をする者だけの問題ではなく、働く世帯への行政の対応に進展がない、という指摘も出てきました。
三井不動産では来年6月入居予定の分譲マンション、芝パーク・タワーで週3回、各戸ごとに玄関前のごみを回収するサービスを予定し、「要望があれば午前と午後の2回に回収を増やすなど、入居者の生活サイクルに配慮したサービスをしていきたい」としています。また総合地所のグラン・アルベーラ横浜・関内でも4月の入居と同時に、玄関のドア前に出したごみを回収するサービスを始めました。火、木曜日に可燃ごみや不燃ごみを置いておくと、連絡を受けたスタッフが午前9時から12時の間に回収、1階のごみ集積所に運ぶ仕組みです。
これらはマンションでの“楽な生活”ともいえる付加価値を付ける対応ですが、自治体にも少しずつ変化が出てきているようです。茨城県の総和町では98年10月から町内の一部で、ごみが散乱する主要幹線沿いの景観対策として夜間回収を実施しました。ごみを午後6−8時に出せばよいので、共働き世帯に好評だということです。東京都三鷹市でも10月2日からJR三鷹駅周辺地域(約5,000世帯)で朝に実施していた回収を深夜に切り替えることにしています。深夜11時までに各戸前にごみを出しておけば翌朝までに民間業者が回収するシステムです。多くの自治体はコスト面で慎重になっているようですが、地方自治経営学会の調査では、可燃ごみ1トンあたりの平均収集経費を民間に委託した場合は約8,200円で、自治体直営(約1万8,400円)の約45%で済むとの試算を出しています。民間委託を進めコストの軽減をし、住民サービスの向上につなげて欲しいものです。
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終わりに
喫煙のために肺ガンなどになったとして米フロリダ州の住民がフィリップ・モリスなど米大手たばこ会社5社に損害賠償を求めた集団訴訟でマイアミの州高裁陪審団は14日、たばこ会社側に懲罰的賠償約1,450億ドル(約15兆6,000億円)の支払いを命じる評決を下しました。会社側は上告の意向を表明していることから裁判は長期化する見通しですが、フロリダ州法では企業を倒産に追い込むほどの多額の懲罰的賠償を禁じているといいます。このことからフィリップ・モリス社の弁護士は、今回の支払い命令額は同社を10回異常倒産させるほどの額だとし、裁判所のケイ判事は支払額を大幅にカットするものと見られています。
一方、今回のような高額の評決が出たことに対し、米国民の59%は「指示できない」としていることが、18日の世論調査会社ギャラップが公表した調査結果で明らかになりました。「健康被害の責任は喫煙者自身にある」という考えの方が優勢という、当たり前のことが確認できて少々ホッとする思いです。
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