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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
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■中部電力、芦浜原発計画断念/三重県知事の「白紙撤回」要求で
■M5ロケット打ち上げ失敗
■看護職員、248施設で結核を発病/看護協会調査
■コンクリート建造物の劣化診断、補修工法の動き
■ピスタチオの殻からキシリトール/岐阜大、新技術開発
■生態系を破壊しない松枯れ防止法/九州電力、実用化目指す
■ネットで海外感染症情報提供/厚生省
■消費者の声の橋渡し/NACS、実験始める
2月のニュースから
■中部電力、芦浜原発計画断念/三重県知事の「白紙撤回」要求で
三重県内に建設を計画していた芦浜原子力発電所に対し、三重県の北川正恭知事が白紙撤回を求めたことから、中部電力の太田宏次社長は22日の記者会見で計画を断念する意向を表明しました。同原発は1964年に同社が建設計画を決めて以来、南島町議会と紀勢町議会が反対決議を採択するなど推進派と反対派の対立が続いていたものです。同社では電力需要の伸び率の低下から、37年にわたりこう着状態が続いていた芦浜原発がビジネスとして負担になっていたようです。したがって臨界事故を機に高まっている原発に対する不安や不信が直接影響したのではないのかもしれません。ただ住民感情を無視してまで強引に計画を進めることの難しさは、最近の原発を取り巻く社会情勢の変化と見ることができます。
注目されるのは三重県知事の決断で、「国策に逆らうことはできない」とする県議ら大方の予想を覆すものでした。しかも知事の決断は表明直前の21日夜、それも決断を知らされたのは副知事、出納長ら数人だけでした。県議や中部電力との事前調整も一切せずに決めた知事の行動は、東京都の石原知事など最近の首長の世代交代を感じさせるものです。住民・県民の声を直接代弁する立場の知事が自立した行動をとることに、「頼もしい」と感じる人も多いのではないでしょうか。
また中部電力の決断が早かったのは、3月から大口電力の小売りが自由化され、地域独占の電力業界も競争の波に洗われることになる対応だ、とする見方が一般的のようです。
政府は大きなショックを受けているようですが、「臨界事故の影響がついに新規計画にまで及んでしまった」、との科学技術庁幹部職員の後ろ向きな発言に、その考え方が象徴されています。長期計画が青写真通りに進まないのは想定内のことで、計画の目的を今一度再確認し、最善の方法を探り、必要であれば計画を見直すことが国の政策の品質?向上に欠かせないものです。大事なことは計画立案者・施行者のメンツや満足感ではなく、地域住民・国民が被る不利益です。一度決めたことは変更・修正しない、という前時代的・封建的な頭から柔軟な頭に切り換えるべきでしょう。時代のセンスを敏感にかぎ取る国民や企業と違い、行政担当者の頭はいまだに「我々が○○してあげている」とする考えなのでしょう。国民から税を先に手に入れているのですから、「○○に使わせていただきます」くらいの気持ちが欲しいものです。
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■M5ロケット打ち上げ失敗
文部省宇宙科学研究所(宇宙研)は10日、日本で5番目のエックス線天文衛星「アストロE」を搭載したM5ロケット4号機を打ち上げましたが、1段目ロケットの姿勢制御ができず衛星の軌道投入に失敗しました。
事故後、発射台周辺には1段目ロケットのノズル(噴射口)内側に使われている耐熱性グラファイトの一部と見られる破片が散乱していたことが分かりました。このため打ち上げ直後から破損が始まっていた可能性が強くなり、グラファイトに最初から微細にひびが入っていたとの見方もでてきました。ただM5ロケット製造元の日産自動車によると、納品されたグラファイトは10数項目の品質検査に合格したものであるとしています。
昨年の宇宙開発事業団(NASDA)のH2ロケット打ち上げが2回連続して失敗し、今回のM5ロケットの失敗で我が国の宇宙開発技術の信頼がガタ落ちとなりました。また相次ぐ大型ロケットの打ち上げ失敗で、政府の宇宙開発委員会は5年ごとに見直している宇宙開発政策大綱を年内に改訂する方針を決めました。これで科学技術庁所管の宇宙開発事業団(NASDA)と宇宙研の2機関で行っている宇宙開発の体制そのものを見直すことになりそうです。現在NASDAの打ち上げは年間平均1、2回で、宇宙研では年間1回にも満たない状況が続いています。この打ち上げ回数の絶対数の不足が技術の維持、伝承、経験の蓄積を困難にしているという指摘もあります。
国産ロケットではここ数年大きな失敗がなかったことから、技術的には「欧米に追いついた」ともいわれ始めていて、数年後には商業衛星打ち上げ事業に参入する計画でした。宇宙工学アナリストの中冨信夫氏は「宇宙研のロケットは学者が設計し、必要な技術をメーカーが買い集めて造っており、純国産といいながら要素技術の3割以上を海外から導入、これら技術はブラックボックスでトラブルが起きると日本人では対応ができない」と技術的な問題で厳しい見方をしています。また技術評論家の桜井淳氏は「H2ロケットもM5ロケットも技術的には確立したものだが、技術者のおごりと油断から製造技術や品質管理がガタガタになっている」と指摘しています。
確かにM5ロケットは、固体燃料ロケットとしては世界最大級のもので、1997年以降2回打ち上げられ、失敗は3回目の今回が初めてです。技術者は事故を想定することなどなかったように思われます。ここにスキが生まれることになるのでしょう。ロケットに限らず最近の事故を見ていると、高い技術力があってもマネージメントの問題がいつも露呈してしまいます。ルールやマニュアルがあっても守らない者がいるなど、技術を支える“人”の信頼性が問われています。
今回は天候不順で打ち上げが延期され、9日に打ち上げられるはずでしたが、小さなトラブルのため打ち上げ3分前に再延期されていました。この原因は、打ち上げ後のロケットの状態を監視する宮崎追跡局内で、コンピューターの配線コネクターが一部外れていたというものでした。「配線コネクターの外れ」の原因は、「誰かが配線を踏んだため」という笑えないもので、人のアクセスがある場所での“コネクタ類の固定”ができていないという単純な問題です。
最先端の高度な技術が使われていようと、“人”の特性が生み出す単純ミスを防ぐマネージメントがなければどうしようもありません。ただ、機械ハードなどの物性として経験的に分かっている評価・検証とは若干異なるようで、人のエラーを誘わないためのストレスの軽減や適度の刺激、人の行動・モラル意識を考慮した観察重視のマネージメントが望ましいと思います。
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■看護職員、248施設で結核を発病/看護協会調査
日本看護協会の調査により過去1年間に看護職員が結核を発病した病院は、全国で248施設に上ることが1日までに分かりました。調査は昨年9月から11月にかけて、全国の約6,300病院に院内感染対策に関する調査票を送付して行い、約3,400病院から回答を得たものです。この結果看護職員が結核を発病した施設は、回答があった病院の7.3%でした。このうち結核専門病院・療養所では17%(8施設)、重症の合併症患者を扱うことが多い特定機能病院では14.7%(15施設)、地域医療支援病院では16.2%(35施設)で、一般病院でも7.5%(161施設)もありました。結核専門病院以外でも発病のケースが多くなっていることが分かります。
これは結核以外で病院を訪れた患者が後になって結核と診断され、気付いたときには看護職員に感染していたためと見られています。また、発病したケースの大半は看護職員が結核患者を看護するうちに感染・発病したものと見られ、院内感染対策の遅れが改めて浮き彫りになりました。厚生省では結核の新規登録患者が97年に38年ぶりに増加に転じ、98年も前年比3%の増加があったことから、99年9月に「緊急事態宣言」を出して警戒を呼びかけていました。
ところで回答した病院の9割程度で院内感染の防止対策委員会を設置していたものの、対策・防止マニュアルを整備していたのは48.3%でしかありませんでした。また結核感染を調べるツベルクリン反応を職員に実施している病院は60.9%、感染防止用の特殊な「マスク」を導入している病院は4.5%だけで、結核に対する危機感が鈍い現状が見えてきます。
最近になりあわててツベルクリン反応を全職員に実施した病院もあるようですが、今頃行うということは職員の健康配慮に重点を置いたもののようです。「看護職員経由で他の患者に結核を感染させない」といった、患者への被害を最小にすることを目的としたCSポリシーが欠けているのでしょう。
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■コンクリート建造物の劣化診断、補修工法の動き
トンネルや高架橋でのコンクリート落下事故が相次いだことから、劣化したコンクリートの診断・修復技術が多く登場してきました。
コンクリートの診断では、JRなどが行っている目視検査や打音検査はよく知られていますが、営団地下鉄では三菱重工業と共同開発した赤外線カメラによるコンクリートはく離検査装置を開発、99年4月から本格的に検査を開始しています。しかし構造物の劣化を正確に知るためには、コンクリートの一部を抜きとりX線や電子顕微鏡を使った検査が必要になります。コンクリートを一部くりぬいて調べることは、抜き取る作業の手間や後から穴を埋める工事が必要となります。このためマンションなど外壁を傷つけたくない場合では、非破壊検査が注目を集めています。
太平洋セメントと熊本大工学部の大津政康教授らが開発した新技術は、建造物表面に張り付けた音響センサーがコンクリート内部のひび割れが発する音を拾うものです。センサーは人間の耳にはほとんど聞こえない周波数15キロ〜150キロヘルツの音をとらえ、その波形パターンや周波数の分布などからひび割れの原因や進行状況を推定します。この結果ひび割れが、「大きくなりつつある」、「すき間が広がりつつある」、「鉄筋がさびて新たにひびが発生している」−−の3点で進行度をほぼ正確に判定できるとしています。高速道路の高架橋での実験で基本性能を確認した太平洋セメントでは、この4月から同社が請け負ったシンガポールの淡水化プラントで大規模な実証実験を行い、精度を向上し実用化を目指しています。
建造物の修復でも新技術が開発され、鉄道総合技術研究所(JR総研)が開発したコンクリート建造物の補修工法が本格的に普及し始めています。これは鉄筋を腐食させる塩素イオンを取り除くのが特徴で、在来の工法よりも効果が大幅に優れているというものです。この補修法はコンクリートに混入した塩化物のために鉄筋がさびて膨張し、ひびが入る「塩害」を抑えるものです。これは水酸化カルシウムなどを配合した材料で塩素イオンを取り除き、同時にさびの発生を抑える亜硝酸イオンを放出するものだと説明しています。修復方法は、まずコンクリートを削って鉄筋を露出させ、次に補修剤を混ぜたモルタルを吹き付けてコンクリートで覆うだけです。
試験の結果では鉄筋の腐食を完全に抑えられたといい、東北自動車道の高架橋補修工事に採用され、99年度の施工面積は1万5,000平方メートルになるようです。
JR西日本は今月上旬から橋桁にアルカリ溶液をしみこませて劣化をくい止める「再アルカリ加工法」の実験に取り組んでいます。この工法はコンクリートの表面に炭酸ナトリウムなどのアルカリ溶液を塗り、鉄筋に電流を流すものです。橋脚などの外側にプラス電極を取り付け、内部の鉄筋をマイナス電極として使用すると、電流の働きでアルカリ溶液がコンクリートの微細なすき間に浸透していくものです。しかし事前に超音波診断などで鉄筋の配置やコンクリートのひび割れを詳しく調べるなど、コスト的なメリットがあまりなく、同じ規模の橋脚を作るのと同程度の費用がかかるといいます。
ただ歴史的な建造物など、保存の必要性が高いものでは需要が期待されています。横浜市中区の「旧横浜商工推奨館」ではこの技術を初めて採用、外観は同じまま最新の情報化ビルに生まれ変わろうとしています。
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■ピスタチオの殻からキシリトール/岐阜大、新技術開発
岐阜大学農学部の高見沢一裕教授らは、ピスタチオの殻から甘味成分であるキシリトールを生産する技術を開発しました。殻に含まれるヘミセルロースを爆砕処理と酵素処理をしてキシロースを抽出、さらに発酵させてキシリトールを作り出すものです。
ヘミセルロースはキシランとも呼ばれるものでキシロースの高分子体で、ほとんどの植物に含まれているものの効果的な抽出方法がありませんでした。このため健康志向から人気のキシリトールは現在ヘミセルロースを多く含むシラカバから作っています。この技術により今まで燃料やたい肥などの利用しかなかった農産廃棄物も、再原料化の道が開けるといいます。またキシリトール抽出のために自生しているシラカバの伐採量が抑えられ、生態系への負荷を軽減できるのもメリットです。
キシリトールは科学的に合成しているように思っていたのですが、そうではなかったようです。最近は“身体に良い”情報に皆が飛びつきますが、原材料が自然や生物など思わぬものに依存していることは知っておくべきでしょう。ちなみにイカの内臓を化学的に処理した液晶は、電子機器はもちろん、アクセサリー、化粧品、
医薬品などに使われていることはご存じでしょうか?
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■生態系を破壊しない松枯れ防止法/九州電力、実用化目指す
九州電力総合研究所の生物化学グループは九州大学農学部、エイリツ電子産業と共同研究している「電撃による松枯れ防止法の開発」にめどをつけました。これは松に電流を流して松枯れの原因であるマツノザイセンチュウの増殖を抑えるもので、実証実験を4年間に4回行い一定の効果を確認したとしています。実験は樹齢30〜150年の約300本の松に「松枯れ防止装置」を取り付けて行いました。装置は単三乾電池8本で動作するもので、一方の電極を松の枝5カ所に付け、もう片方の電極を接地して1万8,000ボルト、8ミリアンペアの高圧パルス電流を流すものです。実験の結果、松枯れ病となったのは4年間で計4本だけでした。
現在の薬剤散布・注入に比べて生態系の破壊が少ない同技術は、実用化が期待されます。量産されれば1台5、6万円程度の価格になるようで、松の木1本に対し4年間に4回の高電圧印加も、実用的なものだと思います。ただ松枯れ病の害虫だけを排除できればいいのですが、他の昆虫や微生物などの生態系への影響を考えると、環境にやさしい技術なのかは未知数です。
一般に環境への影響は一側面だけでは解決できない難しさがありますが、効率優先といった人の都合で生態系を破壊することなく、幅広く影響評価を行う必要があるでしょう。安全かどうか分からないものは、判断するための「客観的データがない」と考え、その時点で将来負うべきリスクを評価すべきでしょう。「リスクの先延ばしは行わない」が原則だと思います。
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■ネットで海外感染症情報提供/厚生省
厚生省は15日、インターネットやファックスを使って海外で流行している赤痢、コレラなど感染症の情報を旅行者向けに提供する新情報システム(FORTH)を稼働すると発表しました。新システムは、全国27カ所の検疫所・支所をインターネットで接続し、検疫所などが直接入力した情報のほか、世界保健機関(WHO)や大学などから入手した情報を成田空港検疫所が集約してホームページ(HP)に掲載するものです。
HPでは旅行者向けの情報として地域独特の文化や法律の規制なども紹介していて、なかなか良くできています。これから海外に出かける人や長期にわたり生活する人などには最新の情報として利用できるでしょう。
FAXは0476-30-2100で、HPアドレスはhttp://www.forth.go.jp/です。
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■消費者の声の橋渡し/NACS、実験始める
製品やサービスに関する情報を消費者と企業がインターネット上で意見交換できるシステムを目指し、通産省の関連法人である日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会(NACS、東京・目黒)ではこのほどホームページ「情報流通市場」をオープンしました。今年8月までの半年で業種、業態に関わらない製品情報を集めるとしています。
情報流通市場では、1.トラブル事例の紹介などを中心とした消費者相談、2.企業が提供する製品情報、3.企業に消費者の意見を伝えるアンケート、4.サービスの評価と製品テスト結果、4.化学物質など製品の成分情報の提供−−などを行います。サービスの格付けでは公平を保つため、NPOに評価を依頼、評価方法の妥当性を消費者が2次評価するものです。今後信頼性を高めていくことが課題のようです。商品の内容を比較するための検索システムや豊富なリンク情報など、なかなか充実しているので時間があるときに訪れてみてはどうでしょう。
アドレスはhttp://www.info.nacs.or.jp/です。
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終わりに
米国では検索サービスのヤフー、報道機関大手のCNN、書籍販売最大手のアマゾンドット・コムなどのホームページでハッカーによりアクセス不能になるなどの被害があり、日本でも官公庁のホームページがハッカーに改ざんされる被害が相次ぎました。
ところで米国ではこのような被害をカバーする保険があるというのです。損害保険業界、非営利団体のインシュアランス・インフォメーション・インスティチュートによると、総収入が年間10億ドル以下の企業の場合、2万5,000〜12万5,000ドルの保険料で250万〜2億ドルの保険に加入できるといいます。またこれら保険はハッカーによる被害だけではなく、知的所有権の侵害なども対象になっているそうです。
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