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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
「定期購読について」
■推力レバーの異常はボルトの挟まり/昨年8月の日航機
■NECパソコン回収/異臭や発煙
■三洋冷蔵庫、発火の危険で回収
■手術ミスで6歳の女児死亡/国立循環器センター
■人工呼吸器が切れ、女児死亡/国立療養所松江病院
■ミネラル水にレジオネラ菌/鹿児島の業者
■ナイキ製運動着販売中止/ドイツ、TBTの使用で
■アイドリングストップ、3−5秒でも有効/環境科学研究所調査
■環境負荷を考え「脱塩カル」/コスト高で足踏み
■少額訴訟、6割が評価/最高裁、初の満足度調査
1月のニュースから
■推力レバーの異常はボルトの挟まり/昨年8月の日航機
昨年8月、名古屋空港に着陸準備中の日航機でエンジン推力を調整する「スラストレバー」が一時的に動きにくくなり、パイロットが力を加えて前後に何度か動かすと正常になった事故がありました。着陸後の点検では、レバーの動きを操縦装置に伝える部分に長さ約3センチのボルトが挟まっているのが見つかっています。ところがこのボルトは、昨年2月にコクピット内の装置を交換した際、作業員が誤って落としたものであることが7日、分かりました。
ボルトを落としたときは作業を中断して数時間探したのですが見つけられなく、作動チェックで各システムとも正常だったことから機体をそのまま運行していたということです。このため同社では事態を重視、社内各部署に注意喚起を行い運輸省にも通報しました。
スラストレバーが動かなくなると、最悪の場合エンジン推力がコントロールできなくなり、危険回避の操縦時にはきわめて危険な状態になることが考えられます。家庭用民生機器などではまれにねじなどの異物や工具が機器内部に残っていることがあると聞きますが、航空機の保守点検で紛失したボルトが「探してもないから」と、そのまま放置したというのは驚きです。作動チェックで異常がないからといって、運行を重ねるうちにそのボルトがどこに移動するかは誰にも分からないことです。ボルトが機体のどこかに転がった事実を直視し、そのボルトが機体を危険な状態にしないという確証がない限り運行はすべきではなかったと思います。「たぶん大丈夫だろう」との安易な判断に傾くのは、時間や予想されるコスト負担への懸念を個人レベルで問題の処理を考えるために起こるもので、擬似的であっても作業終了を求める現場の状況が想像できます。しかしひとたび事故が起きると多くの人命が危険にさらされる航空機の整備で、「とりあえず動くからいいだろう」という意識の低さは許されるものではありません。プロであることへの意識改革が強く求められます。
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■NECパソコン回収/異臭や発煙
NECは26日、昨年秋に発売されたデスクトップ型パソコン「バリュースターNX」の一部に異臭や発煙の後本体の電源が入らなくなる欠陥があり、約8万6,000台を自主回収・修理すると発表しました。パソコンの欠陥による回収では過去最大規模ということです。同社では実際に障害を起こすおそれのある製品は約4,000台としていますが、どの製品が該当するか特定できないため、可能性のある8万6,000台を回収することにしたものです。対象は昨年12月中旬までに製造された製品で、電源ユニット内のバリスタといわれる過電圧保護装置に欠陥があり、電源コードを数日から数週間コンセントに入れたままで主にパソコンを使用していない状態でバリスタが発熱、破損して電源が入らなくなるものです。バリスタは落雷などで異常な過電圧がかかった場合、自ら壊れてパソコン本体を保護する素子です。今回の不良バリスタは通常の電圧でも長時間コンセントに接続しているだけで壊れてしまうもので、バリスタが破損(オープン)するときに煙が出るためパソコン所有者は驚くことになるでしょう。しかし部品が壊れた後は電流が流れないため、発火などの事態にはならないと考えられています。
同社では新聞広告やホームページ、ダイレクトメールで購入者に知らせています。ただ新聞の社告文で「…製品の一部において、ロット不良の部品(電源ユニット)が混入したため電源が入らなくなることがあり、…」と説明があるのが気になります。まず「ロット不良の部品」という表現ですが、一般には分かりにくい“ロット”(製造条件ごとにグループ分けされた単位)という言葉で説明していることです。またNECではパソコン製造前の段階では電源ユニットのロット不良を把握していなかったので、正しくは「ロット不良になるべき部品(電源ユニット)」が混入したため、とすべきでしょう。このような表現になったのは、おそらく「部品メーカーが悪い」ということを強調したかったからではないでしょうか。
確かにロット不良の電源ユニットを納めた部品メーカーは、バリスタの受け入れ品質を確保する責任がありますが、消費者からみるとバリスタの製造メーカーに元の原因があり、電源ユニットメーカーもNECも同じ程度の過ちをしたと考えるのではないでしょうか。消費者に対する責任は製品として市場に提供する最終アッセンブリメーカーにあり、社告で不良原因を説明するのは必要ですが、分かりづらい言葉を使ってまで電源ユニットメーカーの過失を強調する文章はいかがなものでしょう。
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■三洋冷蔵庫、発火の危険で回収
三洋電機は6日、同社の冷凍冷蔵庫の一部に発火の可能性があるため部品の無償交換をすると発表しました。対象は98年4月に発売した「SR36Pシリーズ」(容量355リットル)の2万2,742台で、コンプレッサーのモーターを動かす始動リレーが高熱を帯び出火する可能性があることが分かったためです。
同社では昨年9月に同冷蔵庫の背面下部から出火する事故があり、原因を調査したところリレーの欠陥が明らかになったとしています。またほかにも煙が出たり異臭が発生する事故があったといいます。
同社では部品メーカーの名前を明らかにしていませんが、今後賠償を求めていく考えを新聞紙上で明らかにしていたのが印象的でした。このような場合、どの企業でも損害賠償を求めるものだと思いますが、わざわざ発表したということはよほど憤慨しているのでしょうか。それとも“損害賠償”という言葉がなじみのあるものに変わってきたことの表れでしょうか。
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■手術ミスで6歳の女児死亡/国立循環器センター
国立循環器センター(大阪府吹田市)で昨年11月末に心臓手術を受けた6歳の女児が、手術中の薬剤調合ミスのため、先月末死亡していることが4日分かりました。
同センターによると、女児は心臓の壁の穴をふさぐ手術を受けた際、心臓の動きを止めて筋肉を保護する薬剤ではなく蒸留水を投与され手術後に心臓の機能が低下、人工心臓を装着して治療したのですが、12月末に脳梗塞のため死亡したといいます。この問題で大阪府警吹田署は11日、業務上過失致死の疑いで強制捜査に乗り出しました。
同センターのマニュアルではカリウム液と重曹水、蒸留水を混ぜた心筋保護液を患者に投与する装置に入れることになっています。ところが応援の技師が「保護液は手術直前に混ぜないと効果が落ちるので、手術準備に時間がかかりそうだったので蒸留水だけを先に入れ、後でカリウムなどを混ぜればよい」と考え、先に蒸留水だけを装置に入れてしまいました。その後この技師は薬液を混ぜる作業を担当技師に依頼、自分は2000年問題の作業のため手術室を出たといいます。しかし担当技師は「引き継ぎは受けていない」と話していることから連絡の行き違いがあったようです。
応援の技師はおそらく2000年問題の作業を次に控え時間的に余裕のない状態だったのでしょう。メモを取らない言葉だけの引き継ぎでは、お互いの勘違いによる情報の欠落や誤った情報が伝わることがあります。重要な作業を途中で他人に引き継いでもらうときには、引き継ぎ内容を相手に知らしめるようにしなければなりません。簡単なメモを装置に張り付けて、担当技師にそれを指しながら「メモにも書いたが、薬液はまだ混ぜていないので後で必ず入れること」と引き継ぐような配慮が欲しいものです。引き継ぎ時の情報は依頼する側の責任と考える必要があり、やり残した作業(中途の作業)では「引き継いだ人に作業を代行してもらう」という感覚が大事になります。つまり、引き継いだ人が正しく作業して初めて「自分の責任が果たせた」と考えなければなりません。
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■人工呼吸器が切れ、女児死亡/国立療養所松江病院
22日午前11時40分ごろ、松江市上乃木5丁目の国立療養所松江病院で、入院中の島根県内に住む小学校6年の女児(12)の様子がおかしいのを看護婦が発見、医師が応急処置を行ったものの約1時間後に死亡しました。病院によると午前9時50分ごろ、ベテランの准看護婦がいつも通り人工呼吸器を切り、おむつを替えるなどの世話をして約20分後に部屋を出ています。発見した看護婦は人工呼吸器のスイッチが切れていたといい、ベテランの准看護婦は退室する際、スイッチを入れ直したかどうかを「覚えていない」と話しています。
おそらく患者の世話をした准看護婦がスイッチを入れ直すのを忘れたと思うのですが、この病院では人工呼吸器を患者から外すときに元の電源スイッチを切ることにしているようです。患者に取り付けられたチューブなどを外すと通常はアラームで警告を発し、病院によっては短時間の作業ではアラームを鳴らしたままにすることもあります。そのアラーム音が煩わしいときにはアラーム単独のスイッチを切る場合もあるようです。
しかし今回のケースのように元のスイッチを切ることは、安全上どうなのでしょうか。アラームだけを解除した場合でも人工呼吸器が作動しているので酸素を送り出すポンピング音がかなりの音量で聞こえます。この音があることで患者の世話をした後でも人工呼吸器をつなぐ必要性を認識しやすいのですが、元のスイッチを切ってしまうと人工呼吸器の存在が意識から離れてしまうことが考えられます。常に作業手順を意識し確認するよう厳格に実践する人でも、忙しいときには考えられないようなミスを犯すことがあります。
忙しいときは直接の目的(おむつ交換)を行うことが強く意識され、その目的に至る過程の作業を見落とすなど人間の経済行動からくる省略のパスが発生しがちです。今回の事故は明らかに確認を怠った看護婦のケアレスミスですが、医療機関での医療・看護品質は多くの場合医師や看護婦など個人に委ねられています。したがって再発防止には、あらゆる条件下での職員の行動を想定した安全システムの構築が必要になります。
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■ミネラル水にレジオネラ菌/鹿児島の業者
鹿児島県生活衛生部は18日、同県垂水市の業者が温泉水から製造、出荷したミネラルウォーターから肺炎などを引き起こすレジオネラ菌が検出され、鹿屋保健所が業者に回収命令を出したと発表しました。厚生省によると、同菌がミネラルウォーターから見つかったのは初めてで、現在までに健康被害が発生したとの報告はないといっています。
回収の対象は、昨年12月2日から1月6日までに同市内の垂水通商が製造した「垂冠」、「swikan」、「潤川乃玉水」(うるおうかわのたまみず)の3銘柄で、500ミリリットルのペットボトルやポリエチレン容器に20リットルが入った商品など、計約3,400個です。昨年12月7日、消費者が東京都に「水が臭い」と苦情を申し出たため、都が検査したところ同月28日に菌を検出したものです。
温泉水のレジオネラ菌については、ASPニュース98年7月号で取り上げているので、一部をここに紹介します。『長野県衛生公害研究所が県内約100カ所の温泉旅館や公営温泉施設の湯を調べたところ、67%の湯からレジオネラ菌が検出されました。県内39の温泉施設102の浴槽調査で、30施設の68浴槽(67%)の湯からレジオネラ菌が検出されたもので、同研究所では「源泉からは検出されなかったので、入浴者の体についていた菌が増殖したと考えられる」と分析しています。』
もちろん今回のケースでは浴槽からミネラルウォーターの原料を汲み上げたのではないでしょうが、完全に人から遮断された源泉からでもなかったと思います。健康に良いからと温泉水を飲むことも多く、業者の衛生意識・管理がずさんになっていたのでしょう。
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■ナイキ製運動着販売中止/ドイツ、TBTの使用で
6日付ドイツ紙ウェルトによると、米国のスポーツ用品メーカー、ナイキのドイツ子会社が販売したサッカー用ジャージーに、毒性が指摘されている重金属の一種「トリブチルスズ(TBT)」が使われていることが分かり、大手小売りチェーンが販売中止の措置をとりました。TBTは船舶の底に貝などが付着するのを防ぐ目的で塗料に混ぜられていますが、環境ホルモンの一種と見られることから最近では使用が減ってきています。防水剤として衣料品にも使われるケースがあり、ドイツ環境省がメーカーなどに使用自粛を呼びかけていました。
身の回りの物にもさまざまな化学物質が使われていることを改めて認識させられました。
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■アイドリングストップ、3−5秒でも有効/環境科学研究所調査
環境庁や自治体が提唱し、エンジン始動停止装置も開発されて都営バスなどに導入されてきたアイドリングストップ運動ですが、始動時の排ガスがマイナス効果となる指摘も出ていました。このような中、東京都環境科学研究所(江東区)では、大型ディーゼル車の場合、エンジン再始動時の排ガスを差し引いても停止から3秒程たてばプラス効果が出てくる、との実験データを8日までにまとめました。
同研究所のグループは、計11台について始動によるCO2や窒素酸化物(NOx)の排出量を調べ、どのくらいのアイドリンクに相当するか換算しました。その結果大型ディーゼル車の場合、始動1回で排出されるNOxは最大でも23.6ミリグラムでアイドリング3.3秒に相当、CO2排出量に比例する燃料消費量も最大0.98ミリリットルで、アイドリング2.7秒に相当したといいます。アイドリングストップはガソリン車では5秒程度、ディーゼル車では20秒前後たたないと効果がないとみられていたのですが、短時間の停止でも効果があることが示されました。
最近「アイドリングストップ宣言」なるステッカーを車両後部に貼ったトラックを見ますが、大きな交差点の信号待ちでもエンジンを停止しているようでもありません。これでは「環境に配慮している」という見せかけだけのようです。おもしろ半分で個人的にステッカーを貼るのはまだしも、大手宅配業者などは環境に配慮する本当の行動を実践して欲しいものです。
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■環境負荷を考え「脱塩カル」/コスト高で足踏み
環境問題の認識が広がる中、降雪地や寒冷地で道路の凍結を防ぐために散布される塩化カルシウム(塩カル)や塩化ナトリウム(塩)の影響が問題視されています。塩素成分が植物を枯らすなど生態系に影響を与えたり、コンクリート構造物をもろくするといった懸念が出ているからです。最近では環境負荷の少ない「酢酸カルシウム・マグネシウム(CMA)」が注目されていますが、導入を試みても塩カルの3−5倍のコストや、散布してから効果が表れるまでに時間がかかることなどから本格的な普及には至ってないようです。
こうした中、札幌市では「長年、塩カルを使い続けた欧米で、建物や植物、地下水源に塩害が数多く発生していることを重く見た」として、CMAだけを散布しています。札幌では予算を計上しやすい背景があるのかもしれませんが、環境に悪影響をもたらすのは気になるものの、コストの問題が大きくのしかかっている地方自治体の苦労も分かる気がします。生態系や水源、水田土壌、コンクリート構造物など、社会資本に関わる問題にこそ国の税制を使った支援が必要で、早めの対応が望まれます。
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■少額訴訟、6割が評価/最高裁、初の満足度調査
最高裁は、98年の民事訴訟法改正で導入された「少額訴訟」の利用者を対象にしたアンケートを実施しました。調査は昨年9月と11月、東京、大阪、名古屋など全国8カ所の簡易裁判所で実施したもので、原告149人、被告66人の計215人から回答が得られました。少額訴訟の利用結果を尋ねたところ、回答者全体の59.6%が「満足」や「おおむね満足」で、「不満」や「やや不満」の9.8%を大きく上回っていました。被告に限ってみても「満足」や「おおむね満足」が39.4%で、「不満」や「やや不満」の13.7%を上回っています。また、訴訟期間については7割以上が「満足」を感じていて、4割以上の人が「トラブルが生じたらまた利用したい」と評価しています。
制度導入にあたり、「日本では裁判はなじみにくい」という意見もありましたが、日常の争いごとがないわけではありません。同制度の今後の利用が進むことで自己責任の意識が増し、その結果社会基盤全体の質の向上にもつながると思います。
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終わりに
映画スターなど著名人のパブリシティー権は聞くことがありますが、動物などの人以外の物に関するパブリシティー権を認める判決が名古屋地裁でありました。これは競馬のゲームソフトに競走馬の名前を無断で使ったため、馬主の財産的権利としてパブリシティー権が侵害されたとしてゲームソフト制作販売会社「テクモ」を相手取り起こした訴訟の判決で、「パブリシティー権を著名人に限定する理由はない。物の所有者に帰属する財産的な権利として保護すべきだ」と判断されたものです。
海外で販売するゲームソフトでは単に知的財産権に関することだけでなく、当該国の歴史への配慮などからアニメや言葉など、さまざまな配慮が必要になっています。日本でもこれからは、「ゲームは面白ければいい」というだけでは済まないようです。
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