1998.5 No.53  発行 1998年5月11日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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リコール隠しで富士重に過料処分/リコールでの過料初適用
カラーTV、100万台発火の恐れ/松下が無料点検・修理
旅客機の安全強化策、米政府発表/CFIT事故防止など
シートベルトの常時着用、持ち込み荷物の制限など機内安全対策
 強化/米航空各社
頭部を保護するエアバッグ/トヨタ開発
エアバッグ作動速度を時速30キロに引き上げ/トヨタ、全車種へ
 対応
耳で測る体温計に苦情/高めに出る特長に注意、国民生活セン
 ター
ハトの核汚染/英政府、核燃料再処理施設周辺の住民に警告
衛星3社、ISO9001取得へ
街の照明、地域で見直し/環境庁がガイドライン
無駄な光は年間200億円/国立天文台試算
テレビ、ラジオからたばこのCM消える/業界自主規制
通産省配布のフロッピーがウイルス感染/パソコン入札用


4月のニュースから

リコール隠しで富士重に過料処分/リコールでの過料初適用

 富士重工業が同社の乗用車の欠陥があったにも関わらずリコールの届け出を行わず、独自に修理していた問題で、東京地検は20日、道路運送車両法違反の過料処分が適当との判断をしました。過料額 1件あたり最高の20万円を適用し、対象7件計140万円の支払いを命じる決定をしました。
 ずいぶんと問題になった事件ですが不正に対する罰則として過料処分が適用されました。リコールに関わる不正で過料が適用されるのは初めてとのことで、総額140万円は大きな額ではありませんが、広報部は「厳粛に受けとめている。昨年来、会社一丸となって改善策の実施に取り組んでおり、今後も一層の努力をしたい」とコメントしています。しかし消費者の安全を確保するための情報を提供せず隠すというのは、リコール制度の根幹に関わる問題であり「この程度の罰則?」と感じる人もいることでしょう。
 富士重工のことではありませんが、重ねて不正を行う企業・個人に対するけん制策は、罰則の強化しかないように考えますがどうでしょうか。相変わらず「罰則を強化するよりも彼らの自主性にまかせた方がいい」という曖昧かつ思慮深い?ことしか言わない人も多いのですが、その結果が今の日本の企業・人に多い無責任の風潮を助長していると思います。そろそろ「日本人のモラルには期待できない」と割り切った方がいいかも知れません。
 さて、業界内での富士重工のイメージはかなり落ちたと思いますが、一般消費者の感じ方はどうなのでしょうか。車の購入時に企業の不祥事や経営体質などを考えて行動することが、罰金と社会的制裁(販売台数の大幅減)による再発抑制に貢献し、かつ同業他社の気を引き締めるものだと思います。このような企業と消費者の健全な緊張関係が、社会にとって有用な企業を増やすことだと考えます。

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■カラーTV、100万台発火の恐れ/松下が無料点検・修理

 松下電器産業は14日、カラーテレビの一部で発火事故が発生したため、15日から無料で点検・修理を実施すると発表しました。対象となるテレビは1983年から88年に生産した約800万台のうち、21機種、約100万台です。
 今年1月に広島県でテレビから発火する事故があり、調べたところ、高電圧発生回路の部品の樹脂カバーに亀裂があり、火花が隣のボリュームの金属部品に飛び、内部につもったほこりに引火したのが原因と分かりました。また、販売後10年以上経過した製品を再点検したところ、ハンダ付けなどにも経年変化による発火の危険性があることが判明し、21機種についての無料点検・修理を行うこととしたものです。
 原因はどうあれ、100万台にもおよぶリコールを決断した松下電器の姿勢は評価できます。しかし外力による物理的力が加わらなく単に高電圧だけが原因で10年程度で樹脂カバーに亀裂が入ることは考えにくく、絶縁特性の劣る樹脂の使用(設計欠陥)か、部品受け入れ時にすでにピンホールや小さな亀裂があったのかも知れません。またハンダ付け部の経年変化についてはよく分かりませんが、これも製造時のハンダ付け作業に起因するもののようです。
 このように考えると、松下の言う「経年変化の問題」ではなく、設計あるいは製造欠陥ととらえるべきでしょう。カラーテレビの場合、常識的にも10年の経年変化による致命的な不具合発生、というのでは困ります。家電大手の企業といっても、国内向け製品の安全品質はこの程度ということなのでしょう。

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■旅客機の安全強化策、米政府発表/CFIT事故防止など

 米政府は14日、航空機事故防止のため米連邦航空局(FAA)と民間航空業界が協力し、今後10年間で航空機事故の8割減少を目標とする包括的な安全強化策を発表しました。
 安全対策ではパイロットが機体の正確な位置を把握できないために夜間や悪天候時に地面に激突する「CFIT(シーフィット)」と呼ばれる事故を防ぐ最新式の陸地接近警報システムが義務付けられます。CFITは最近の航空死亡事故の最大の原因とされており、97年8月のグアム島での大韓航空機事故や、96年にブラウン商務長官(当時)が死亡したクロアチアでの米軍機墜落事故などもこれが原因と見られています。
 これまでの地上接近警報システムは、航空機の直下周辺との距離を測るものが主流でしたが、最新式のシステムでは空港周辺の地形を記憶したコンピューターが、画像で飛行位置を知らせるよう改良されています。現在は航空会社が自主的に設置している地上接近警報システムですが、2001年以降はタービン式エンジンを使用した客席6席以上の航空機に対し設置を義務付けるものです。現実には全ての旅客機が対象と考えられ、乗客の安全確保の点から歓迎できるものです。FAAの安全基準が国際民間航空機関(ICAO)に採用されて国際ルールとなることも多いため、航空会社によっては新たな安全対策が必要になるでしょう。また、昨年12月の成田発ユナイテッド航空機の乱気流事故の教訓から、飛行中のシートベルト着用も盛り込まれています。

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■シートベルトの常時着用、持ち込み荷物の制限など機内安全対策強化/米航空各社

 昨年末、ユナイテッド航空機内で起きた乱気流による死亡事故を契機に、米国では機内の事故防止に対する関心が高まっています。ユナイテッド航空やアメリカン航空は機内への持ち込み荷物の個数を厳しく制限する方針を決めたほか、飛行中は常時シートベルトの着用を義務付けることにしています。手荷物の個数制限は、機体が大きく揺れたときなどに座席上部の棚が開き、荷物が落下する危険を考慮したものです。
 トイレなどに向かうとき以外でのシートベルト常時着用はいいことですが、日本の航空会社では「客がいやがるから」といって積極的には採用しないような気がします。というのも航空機よりも事故の可能性の高い高速バスでのシートベルトの着用者はきわめて少なく、航空会社の意識も同じように感じるからです。
 バス会社ではシートベルトの着用を促すテープによるアナウンスを流すだけで、運転手は何も言わないのが現状です。これでは「客がいやがるから」といって、客のわがままを野放しにしているだけでしかないようです。それでも責任を追及されると困るのでテープでお願いしている姿は、“乗客の安全を真剣に考えていない”ことをよく表していると思います。
 「顧客満足優先」、「顧客サービス優先」などを掲げる企業でも、単にわがままな人に遠慮する(媚びる?)ことを「顧客サービスである」と勘違いしている向きがあるようです。

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■頭部を保護するエアバッグ/トヨタ開発

 トヨタ自動車は15日、乗用車の乗員の頭部を保護する「SRSカーテン・シールド・エアバッグ」を開発、世界で初めて5月発売の新型車から採用することにしました。このカーテン型エアバッグは側面衝突の際に頭部を保護する目的で、前席の窓から後部の窓にかけてカーテン状に広がるものです。一般のサイドエアバッグでは膨らむ際に腕を跳ね上げて腕や肩に障害を与える危険が指摘されていることから、保護範囲が広くより安全だ、と言われているカーテン型を採用したものです。
 1つのエアバッグで体の主要な部位を保護するものはまだ技術的に難しいため、人を取り囲むよう数多くのそれもタイプの異なったエアバッグが開発されています。車メーカーも大変でしょう…。

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■エアバッグ作動速度を時速30キロに引き上げ/トヨタ、全車種へ対応

 トヨタ自動車は17日、エアバッグの作動衝突速度を2000年までに全車種で従来の時速20キロから、同30キロへ引き上げると発表しました。トヨタでは「エアバッグが作動する際の衝撃で、シートベルトを着用しなかった子供などがけがをする副作用事故を防ぐのが目的」と言っていますが、低速時の衝撃によるエアバッグの誤作動が問題になっていますので、その対策でしょうか?
 現在トヨタではクラウンなど国内11車種で、エアバッグ作動衝突速度の引き上げを行っています。

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■耳で測る体温計に苦情/高めに出る特長に注意、国民生活センター

 国民生活センターでは、昨年から普及し始めた耳で測る体温計が「従来の体温計に比べて体温が高く出る」などの苦情が数件寄せられたことからテストを実施しました。この結果「実際に高く計測されるが、元々耳の中の温度が高いため。製品の特長が消費者に十分知られていないのが苦情の主因」とする見解を公表しました。
 同センターでは3社3銘柄で、50人のモニターが左右の耳をそれぞれ計る300回の計測を実施、従来のガラス式体温計を使ってのわきの下での計測と比較しました。その結果、銘柄間による差はなく、ガラス式の計測に比べ75%の計測が0.1度以上高く出ました。また1.0度以上高い計測も27%あり、全般的に高くなる傾向で、同じ人でも左右の耳で違う体温になることも分かりました。
 簡単お手軽商品を開発し、消費者の新たな需要を掘り起こすことは多く行われていますが、指で計る血圧計の精度の問題と同じように、健康管理のデータを表示する製品は、その取り扱いを含めて機器の特性を十分知らせる必要があるでしょう。3社のうちオムロンでは「取扱説明書などで特性を説明しているが、情報提供がまだ不十分だった。5月の出荷分から、製品に使い方を説明したビデオを付けて、さらに啓もうしていきたい」と話しています。
 メーカーの対応としてはこれでいいのでしょうが、はたしてガラス式の体温計を家庭内標準器とし、耳で測った場合は何度か引いて正しい(と思われる)値が分かる、という商品は使いやすいのでしょうか?しかも耳で測る場合に何回測定しても同じ値にならないことがあるとすると、「誤差範囲です」とも言えなくなりそうですが…。取り扱いにばらつきが出る商品では、感度は鈍く(長時間測定など)したり、複数ポイントに接触できる形状、あるいはセンサー用アタッチメントの使用など、と考えることはいろいろありそうです。

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■ハトの核汚染/英政府、核燃料再処理施設周辺の住民に警告

 英国中西部セラフィールドにある英国核燃料会社(BNFL)核燃料再処理施設の周辺に生息するハトが放射能に汚染されていることが、9日までに独ブレーメン大学のキルヒナー教授の調査で分かりました。英政府は今年2月中旬、放射能に汚染されたハトが存在するとして周辺住民に、ハトに触れたり食べないよう求めていました。
 放射性物質は主に羽からセシウム137などが検出され、キルヒナー教授は「思っていたより汚染はひどく、人間などがハトに触れると危険」と述べています。
 ハトがどのように汚染されたのかよく分かりませんが、施設の構造物の外に放射能が存在しているのでしょう。汚染が拡散するかどうかを考えるときに、排出物(空気、水)などを風や地下水の経路について考えますが、動植物や虫などを介する汚染についても意識する必要があるのですね…。

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■衛星3社、ISO9001取得へ

 三菱電機、NEC、東芝の衛星メーカー3社は宇宙・防衛分野でISO9001の取得に乗り出しました。衛星のコンポーネントの海外輸出が拡大してきたことと、防衛庁がISO取得を推進していることに対応するものです。
 宇宙部門のISOでは東芝が小向工場(川崎市)と京浜事業所(横浜市)の同部門を対象とした現場審査を今月中旬に終了し、6月にも取得の予定です。NECは横浜事業場(横浜市)と子会社の福島日本電気(福島市)の宇宙開発事業部門を対象に7月に審査を受けることにしています。三菱電機は鎌倉製作所(鎌倉市)と相模工場(相模原市)を対象に準備作業を開始、99年5月の審査を予定しています。
 防衛部門のISO取得では三菱電機が計画を進めており、99年4月に本審査を受ける予定でいます。また、東芝、NEC両社も通信電子機器事業を中心にISO取得を進めることにしています。
 宇宙開発事業団(NASDA)の通信放送技術衛星「かけはし」の打ち上げ失敗ではH2ロケットの燃焼ガス漏れが原因とされ、「きく7号」ではロボットアームの取り付けの向きを間違う初歩的なミスがあり、これまでにコンピュータプログラムの誤りやアンテナ出力が落ちるなどのトラブルが続いています。
 NASDAでは97年11月から業務の効率化など体質改善の手法としてISO導入の検討を始めていますが、コスト的に見合うかどうかでまだ結論が出ていないようです。
 しかしNASDAでは管理面のトラブルがずいぶんありそうですので、契約先メーカーのISO導入を契機に、総合的なマネージメントが要求されることを重視してISO9001取得を急ぐべきだと思います。

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■街の照明、地域で見直し/環境庁がガイドライン

 環境庁は6日までに全国各地で地域ごとに「天の川を観察できる」などの目標を掲げた「光害(ひかりがい)対策ガイドライン」をまとめました。
 ガイドラインは地域の照明環境を「星降る里と呼べる自然公園」、「夜空に天の川がかかっている郊外型の住宅地」、「北斗七星がくっきり見える地方都市」、「星が観測できる都市中心部」の4つのタイプに分類しています。各自治体はこの中から場所ごとに目指すタイプを選び、街の照明システムを見直すなどの改善計画を作って取り組むことになります。
 屋外に照明機器を設置する場合には、光が上空に漏れにくい製品を選ぶなど器具の推奨基準を示すほか、周辺の暗さを保つ適切な照明機器が使われているかどうかを見るためのチェックリストも作成、ガイドラインに盛り込んでいます。
 光害については天体観測に焦点を当てた国際ガイドラインがあるものの、今回のような総合的な対策は世界でも初めてのことと言われています。企業・業者などの対応にも期待したいものです。

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■無駄な光は年間200億円/国立天文台試算

 国立天文台の磯部秀三助教授は、米国の軍事気象衛星が毎日深夜に日本列島を撮影する画像を使い、明るさの分布などから上空に放出されている光エネルギー量を計算しました。昨年1月7日のデータをもとに1年間に放出されるエネルギーを計算したところ、関東地方では、都心から30キロ圏だけで約7,000万キロワット時の電力に相当、約18億円分の無駄と計算しました。同日と同年1月13日、2月9日の3日間のデータから日本全体での年間損失を割り出すと、約207億〜240億円にも達することが分かりました。データの誤差や、電力使用量により電気代に差が出ることを考慮しても、年間200億円以上無駄になっているのは確実のようです。磯部助教授は「夜空に放出されるエネルギーの量を把握することは、環境庁の光害対策ガイドラインが効果を上げるためにも重要だ」と話しています。
 オイルショックの頃にはビルなどの照明がずいぶん消されましたが、バブル期を経て今は照明の無駄使いなどには無頓着のようです。片や環境、環境と企業は一生懸命やっているように見えますが、何かちぐはぐな印象を持ちます。

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■テレビ、ラジオからたばこのCM消える/業界自主規制

 日本たばこ協会は未成年者の喫煙防止に配慮し、昨年秋に決めたテレビ・ラジオでのたばこ銘柄広告をこの4月1日から取りやめました。今後は雑誌などの活字媒体や店頭などでのキャンペーンに限定することになりますが、日本たばこ産業(JT)では、テレビ・ラジオでの広告を取りやめることで浮く広告費を、新聞、雑誌や店頭販促活動に振り向ける方針です。
 ようやく先進国並になりましたが、たばこの販売量の減少に効果がありますかどうか…。

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■通産省配布のフロッピーがウイルス感染/パソコン入札用

 通産省が省内に配置するパソコンやLANの入札に際し説明会でコンピューターメーカーなどに配ったフロッピーディスクが、コンピューターウイルスに感染していました。問題のフロッピーディスクは10日に開かれた省内の約7000台のパソコンやネットワークシステムの更新などのための入札説明会で、38社に配布されたものです。このフロッピーディスクを受け取った1社が、表計算ソフト「エクセル」に感染するウイルス「ラルー」が混入していることを発見、通産省に連絡しました。
 原因は電子メールなどを媒介して感染したようですが、パソコン内のウイルス対策ソフトのバージョンが古かったために気付かなかった、としています。なんともお粗末な話です。

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終わりに

 通産省のウイルス感染ですが、同省では企業や個人ユーザー向けにウイルス対策のマニュアルを作成したりセミナーを開いたりしています。結局のところ通産省の一部の部署ではウイルスに敏感なものの、省全体ではウイルス対策が標準にはなっていなかったのでしょう。
 このような標準的な仕事が求められる他省庁でも、マネージメントではいろいろと不手際があるように思います。各省庁でのISO9000システムの導入が望まれます。

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