1996.12 Vol.36  発行 1996年12月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 
Tel. 0263-78-5002


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通産省、初の回収命令/台湾製ローラースケート、安全基準満たさず
エアバッグ膨張小さく/米が新基準 作動停止装置認める
エアバッグ、安全対策相次ぎ強化
アメリカン航空、心臓病の乗客に配慮/ペースメーカー来年から機内配備
誤って原発事故放送/敦賀市 有線テレビで全世帯に
ダイオキシン、ごみ焼却作業員の毛髪から多く検出/労働環境の改善必要
化学物質から水生生物保護/環境庁がガイドライン
歩行中の喫煙ダメ/ごみポイ捨て禁止条例案、神戸市提出へ
環境配慮のない製品ボイコット/岐阜県が検討
レギュラーコーヒーも環境に配慮/缶から簡易包装に
ラベル訴訟、両社取り下げ/サッポロ対サントリー
カナダたばこ広告禁止へ法案

11月のニュースから

■通産省、初の回収命令/台湾製ローラースケート、安全基準満たさず
 台湾製の輸入ローラースケートが安全基準を満たしていないとして、通産省は25日までに、消費生活用製品安全法35条に基づき輸入業者に回収するよう危害防止命令を出した。同省では、「構造欠陥が発見され、企業が自主回収した例はあるが、製品の回収命令は74年の同法施行以来初めて」(消費経済課安全対策室)としている。回収を命じられたのは、台湾のHANKAI有限公司が製造する「Roller SKATE」。昨年1月から今年6月にかけて、玩具卸売業、タツミ(大阪府八尾市)が約1200台を輸入、玩具店や量販店などを通じて一般消費者に約630台が出回っているという。 同省の製品評価技術センターが1万メートルの走行試験などをした結果、走行時に車輪が外れたり、摩擦熱で車輪がゆがみ、人が転倒する可能性があると判断した。
 安全対策室では「この製品で事故が起きた例は報告されていないが、今後、安全基準に満たない製品には厳正に対処していく」としている。

 今までは事故が起きてからの改善、回収といった行政指導でしたが、今回のケースは歓迎できます。「安全基準を満たさない製品には厳正に対処していく」というのも心強いものです。
■エアバッグ膨張小さく/米が新基準 作動停止装置認める
 米運輸省は22日、自動車のエアバッグによる幼児の圧死事故の防止策を発表した。車の所有者が自分の判断でエアバッグの作動を止める装置を認めるほか、膨張力を現在より弱めた新基準を導入する。同時に、衝撃の大きさなどに応じて膨張力を自動調整する「スマートエアバッグ」の開発を産官共同で進める。日本メーカーは対米輸出車の設計変更などが必要になる。
 新基準は、98年秋に製造が始まる99年型モデルからが対象。このほか、エアバッグの危険性を示す警告の表示をメーカーに義務付ける。

 最近はエアバッグの弱点がいわれてきていますが、安全が確保できる状態についての説明があまりなかったようです。  米国ではシートベルトの装着は州により義務付けが異なり、日本ほど装着率は高くなく(日本の場合は約85%程度)、全米で60%台にとどまっているようです。
 このため米連邦法に基づく運輸省のエアバッグの安全基準は、シートベルトが無くても安全を確保するように作られていました。したがってエアバッグの膨張速度は、日本が時速200キロ台前半といわれているのに、米国では320キロにも達し、運転者や助手席の同乗者に対する衝撃が非常に強くなっています。このような背景を知った上で、日本の自動車メーカーの取り組みを見ていく必要があるようです。
■エアバッグ、安全対策相次ぎ強化
 自動車各社はエアバッグが膨らんだ際の衝撃による事故を防ぐための安全策を強化する。
日産のスマートエアバッグはセンサーが座席にかかる体重や座位などを読み取って、膨張速度を自動調整する。導入時期は未定だが、実用化を急いでいる。
 トヨタはパンフレットやPRビデオの配布などで、エアバッグの被害を受けやすい幼児に対してはチャイルドシートの装着は助手席を避け、後部座席を選ぶよう注意を呼び掛けている。機能面でも膨張力を弱めたタイプに切り替えるほか、助手席に後ろ向きでチャイルドシートを装着した場合、センサーが感知してエアバッグが作動しないようにする検知システムの開発も検討している。

■アメリカン航空、心臓病の乗客に配慮/ペースメーカー来年から機内配備
 アメリカン航空は97年から、米国航空会社としては初めて機内に心臓ペースメーカーの一種である自動体外除細動機(AED)を搭載する。そのため同社はシアトルのハートストリーム社からAEDを300基購入、「フォーランナー」と名付けて、保有している全ての大型機と多くの中・小型機に用意する。また同社は国際線と一部の長距離国内線のキャビン・クルー2300人を対象に、突然の心臓停止に襲われた乗客を救助できるよう同装置についての訓練を実施する。同装置は自動的に音声で操作手順を説明し、患者への電気ショックの必要性も判断、適切なときに電流を流すようになっている。
 アメリカン航空の医療部長によれば、突然の心臓停止に見舞われた患者の命を救うにはAESでの迅速な治療が決定的な療法で、1分経過するごとに生存の確立が10%ずつ減少するという。米国心臓学会も航空機、スポーツ施設、オフィスビルなど大勢の人が集まる場所にAEDが広く配備されるようになれば、年間10万人の命が救われるという見通しを示している。

 アメリカン航空の対応は、企業のCS指向を単なる宣伝としてではなく、「お客のサービスとは何か」を考えてのことだと思います。
 社会基盤、制度の違いは国により大きな違いがありますが、日本でもこのような対応をする企業が増えて欲しいものです。それには新聞・TVなどのメディアがこのようなニュースを積極的に流すことが大事だと思います。
■誤って原発事故放送/敦賀市 有線テレビで全世帯に
 動力炉・核燃料開発事業団の高速増殖炉原子炉「もんじゅ」や日本原電敦賀発電所など4基の原発を抱える福井県敦賀市で27日午前9時35分ごろ、NHKの取材を受けていた同総務課防災対策室の職員が原発事故などの発生を知らせる緊急告知放送のスイッチを誤って押し、ほぼ全世帯の約2万3000世帯が加入する有線テレビに緊急警報が流れた。
市では10分後に「誤動作による信号です」とのおわびのテロップを流したが、警察や市、消防本部などに午前11時ごろまで市民からの問い合わせが相次いだ。
 市防災対策室によると、誤って鳴った緊急警報は「ピー、ピー」と緊急事態の発生を告げる警報音。緊急告知放送は緊急度に応じて警報音が鳴る「モード1」、テレビのチャンネルが切り替わる「モード2」、自動的に画面が出る「モード3」の3段階あり、職員が押したのは「モード1」だった。
 市では「おさわがせして大変申し訳ない。日頃から危機管理に気を配っており、つい説明に熱が入ってしまった」と話している。

 困ったものです。事態は深刻だと思います。「日頃から危機管理に気を配っており、説明に熱が入ってしまった」という発言には驚いてしまいました。危機管理が全く分かっていない発言であり、そのような管理体制が今回のミスを生んだように思います。
 本当の緊急事態のときに正しく操作できるという確証はなかった、ということがこのミスで明らかになってしまいました。
■ダイオキシン、ごみ焼却作業員の毛髪から多く検出/労働環境の改善必要
 都市ごみの焼却施設で働く作業員の毛髪中のダイオキシンなどの濃度は一般の人に比べ3〜5倍も高く蓄積していることが、摂南大薬学部の宮田秀明教授らの分析で明らかになった。ごみの焼却で発生するダイオキシンにさらされていることが原因と見られ、研究グループは作業環境改善の必要性を指摘している。
 宮田教授らが測定したのは、ダイオキシン、ジベンゾフラン、コプラナPCBの3種類の有害物質。いずれも毒性の強い有機塩素化合物で、塩素を含むプラスチックなどが燃えるときに生成される。 全国約10カ所の焼却施設で働く60人の毛髪を集め、大阪府内の理髪店で入手した年齢や性別の似た一般人82人の毛髪と比べた。
 最も毒性が強い2-3-7-8ダイオキシンの毒性に換算した値で作業員が一般人の2.8倍、ジベンゾフランは4.9倍、コプラナPCBが3.7倍だった。
ダイオキシンなどがごみ焼却で発生することは知られていたが、焼却施設の労働環境について調べた例はほとんどない。  宮田教授は「毛髪中のダイオキシンなどの濃度が高いのは、施設内の空気の濃度が一般環境に比べて高いことを反映している。職場の調査を進め、ダイオキシン濃度の低減策を検討する必要がある」と話している。

 焼却施設で働く労働者は自らの安全を確保するため、このようなニュースに敏感になる必要があります。労働省も職場の健康・安全に影響するダイオキシンについての情報を提供すべきでしょう。
■化学物質から水生生物保護/環境庁がガイドライン
 環境庁は25日までに、人の健康への影響だけでなく、水生生物の保護も視野に入れ、河川や湖沼、地下水に含まれている有害な化学物質を管理するガイドライン作りに来年度から3年計画で乗り出すことを決めた。環境基準などが定められていない化学物質も含め幅広く調査し、環境への影響を未然に防止するのが狙いだ。
 水環境に含まれる有害物質は、23物質に環境基準が設定され、25物質が要監視項目になっている。それ以外に数千種の化学物質が水から検出されているが、対策が取られていないのが現実だ。
 このため、環境庁は@水環境に存在する、調査すべき化学物質を選ぶガイドラインを生物への影響も考慮して策定、300種類程度を選ぶA水に含まれる量など存在状況を把握する−−などを実施する考えだ。

 環境庁もようやく「人のための環境」から「地球のための環境」へと、考え方が変わってきたようです。
■歩行中の喫煙ダメ/ごみポイ捨て禁止条例案、神戸市提出へ
 神戸市は9日までに、繁華街などでの歩行中の喫煙を禁止する内容を含むごみのポイ捨て禁止条例案を、来年3月の定例市議会に提案する方針を固めた。同市の調査では、散乱ごみの中でたばこの吸い殻が最も多いことから、吸い殻のとくにひどい地域を禁煙ゾーン」に指定するもので、施行されれば全国で初めてという。
 同市によると、禁煙ゾーンは三宮や元町などの繁華街、市中心部のフラワーロードや北野異人館街などを想定。必要に応じて喫煙場所を設けることから、灰皿の管理をだれがするかなども含めて住民の理解を得て指定したいとしている。  吸い殻を含むごみのポイ捨てには罰則を設ける。対象は市内全域。くわえたばこだけで罰則を科するのは難しいという。同市によると、罰則付のごみのポイ捨て条例は今年4月現在、全国で67自治体が制定している。

 映画館やJRの駅など、特定の施設での禁煙は行われてきましたが、屋外の公共空間であっても規制するのに特別な理由はいらないわけです。「屋外であればどこでも喫煙できる」という誤った認識を是正するいい動きだと思います。
■環境配慮のない製品ボイコット/岐阜県が検討
 岐阜県の梶原拓知事は26日、産業廃棄物問題に関連して「環境配慮に欠ける企業の製品購入をボイコットし、県民運動として促す制度を検討したい」と述べ、廃棄物の排出元となる企業の環境保全への責任を明確化する考えを示した。
 梶原知事は製品ボイコット企業の基準として、国際標準化機構(ISO)の環境規格「ISO14000」の取得やリサイクルの推進状況などを挙げた。

 岐阜県知事の表明は非常に意義深いものと考えられます。住民運動と行政サイドの対応には、認識のギャップが多くあります。梶原知事の発言は、消費者・住民の利益を最大限考えている、という意思の表明とも取れます。
 企業にとっては穏やかならずといったところでしょうが、最近のニュースの中では最も歓迎できるものの1つです。
■レギュラーコーヒーも環境に配慮/缶から簡易包装に
 コーヒー各社がレギュラーコーヒーの簡易包装化を積極的に進めている。これまで主力だった缶容器から、ポリエステルやアルミ製のフィルム・袋に切り替え、ごみの減量化につなげるためだ。キーコーヒーや味の素ゼネラルフーズ(AGF)は専用ラインの新設も計画しており、来年度は簡易包装の比率が缶を上回る見通し。各社とも「環境にやさしい包装」を打ち出すことで、環境意識が高まってきた一般家庭への浸透を図る考えだ。
 キーコーヒーが今秋発売した「ブルーマウンテン」と「オリジナル」は、焙煎・粉砕したコーヒー粉末をポリエステルやアルミを重ねたフィルムを使って真空パック(VP)した。燃やしても有毒ガスが出ず、一般ゴミとして処分できるほか、コストも缶より2割ほど安いという。
 AGFは今夏、VPタイプのレギュラーコーヒーを一気に8品発売した。いずれも親会社の米クラフトフーズのカナダ工場に生産委託している。輸送費を削って増産体制を強化するため、来春までに鈴鹿工場にVPラインを設置し、全量を国内生産に切り替える。
 最大手のUCC上島珈琲は10月、袋入りレギュラーコーヒー2品を発売した。これで全30品中、8品が缶容器以外となる。
 全日本コーヒー協会によると、95年度の家庭用レギュラーコーヒー消費量は前年度比27%増と好調。ただ、従来の缶容器に対しては「ゴミとして処理しにくい」との苦情が増えているという。今後VPや袋など簡易包装化に拍車がかかりそうだ。

 いい取り組みだと思います。
 ただ消費者の環境に対する関心はあっても、商品の値段にその行動が左右されてしまうのが実際のようです。
 簡易包装によりコストが削減できるようですので、消費者の支持を得られるよう自動販売機で販売するときは、100円ちょうどにして欲しいものです。
■ラベル訴訟、両社取り下げ/サッポロ対サントリー
 サッボロビールとサントリーはそれぞれの主力ビールである「サッポロ黒ラベル」と「サントリーモルツ」の瓶ラベル、缶デザインが類似しているかどうかをめぐって争っていた民事訴訟を両社合意の上、無条件で取り下げた。キリンビールとアサヒビールが激しいトップブランド争いを続け、サッポロ、サントリーはシェアが低下している。両社は「これ以上の法定闘争は互いになんらメリットがない」と判断した。
 サッポロは昨年2月、サントリーの発売した新「モルツ」のデザインが自社の「黒ラベル」と酷似しているとし、不正競争防止法、商標法違反を根拠に販売差し止めを求め東京地裁に提訴した。サントリーも、サッポロの主張は事実無根で自社に対する抗議文の送付などの行為が営業誹謗に当たるとして、その差し止め仮処分を求めて逆提訴した。
 両社の主張は平行線をたどり、訴訟はこう着状態となっていた。地裁が強く和解を進めたことがきっかけになり、双方が訴えを取り下げることで合意した。

 同じ形状の容器に同じような配色デザインでは、似てくるのも無理はないと思っていました。どこまでオリジナリティーが認められるのか興味があったのですが、それどころではないといったことのようです。
■カナダたばこ広告禁止へ法案
 カナダ政府は28日、たばこの広告禁止や税金の大幅引き上げなど、たばこ禁止へ向けた大規模な取り組みを開始した。
 近く議会に提出される法案によると、たばこの屋外広告やテレビ、ラジオのCMは全面禁止され、広告が認められるのは主に大人向けの出版物だけに限られる。また、たばこ会社は文化・スポーツ行事のスポンサーになっても、会社のシンボルマークは横断幕の端にしか使えなくなる。
 オンタリオ、ケベックなど4州では、29日から1カートン(10箱)当たりのたばこ税が1.4カナダドル(約120円)アップ。これにより、たばこの値段は約7%上がる。

 先進諸外国では、子供の喫煙の害に積極的に取り組む具体的対応が行われていますが、我が日本はどうなのでしょう。JTの消極的な対応のまま、たばこが販売され続けるのは問題だと思うのですが‥‥。

終わりに
 環境問題のニュースが多くなり、企業の取り組みなどよく紹介されています。しかしそれらの優良企業の従業員であっても、一個人となるとどうなのでしょうか。
 相変わらず高速道路のサービスエリアのゴミ入れや、JRなど駅構内のゴミ入れには生活ゴミが多く捨てられているようです。
 「ごみを捨てることで、清掃する人の仕事があるんだ」などとうそぶく人は論外ですが、「公共」をどのように考えているのでしょう。施設や空間、制度などの「公共」は提供されるものと考え、それを維持管理していくための責任や努力の必要性を感じない人が多く困ってしまいます。
 そんな中で企業の従業員で行う地域の美化運動などは、教育・啓もう的活動として意義

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