1996.6 Vol.30  発行 1996年6月7日
発行人 中澤 滋 ASP研究所長野県松本市梓川梓3072-12 Tel. 0263-78-5002


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欠陥製品回収しない場合、企業・商品名を公表/消費者保護 通産省方針
欠陥商品の企業名公表 大半は中小、認定めぐり摩擦も/消費者重視へ焦り
製造日 山崎パンも偽る/横浜市、2万個販売禁止処分
日産105万台リコール/ブルーバードなど20車種、欠陥−−火災の恐れ
ガラスの反射光?出火の原因/長野の民家で車庫内部焼く
注意・警告表示は改善必要/意味伝わらぬ図柄も
米大統領、PL法改正案に拒否権
エアバッグの正しい使い方、米で10億円キャンペーン
ダイオキシン、ごみ焼却で発生/地上に降下確認 愛媛大調査
環境配慮の「ステイオンタブ」/大型缶にも導入へ キリン


5月のニュースから

■欠陥製品回収しない場合、企業・商品名を公表/消費者保護 通産省方針

 通産省は14日、消費者に危害を及ぼす恐れのある欠陥製品の回収にメーカーが応じない場合、企業名や商品名を公表する方針を固めた。早ければ夏までに公表基準などを整備、こうした企業があれば順次発表していく。
 消費者保護をめぐっては、昨年施行された製造物責任(PL)法が企業による事後的な保証に道を開いたが、被害の拡大や再発を防ぐには一刻も早く消費者に情報を知らせる体制整備が必要と判断した。
 通産省は現在、事故情報収集制度に基づき業界団体や企業、消費者団体などから製品の事故について任意に報告を受けており、1995年度にはテレビやストーブの発火事故など約1200件の情報が寄せられた。
 同制度は、死亡や火災といった「重大事故」の場合に企業名などを公表できることになっているが、これまでは自主回収の行政指導を拒否する企業がなかったことや企業側への遠慮もあって実際に公表したことはなかった。
 しかし最近、温風ヒーターの発火事故で家電メーカーが決断を先延ばしにして回収まで時間がかかったケースがあったことや、情報開示を求める世論が高まっていることから方針を転換、公表に踏み切ることにした。

■欠陥商品の企業名公表 大半は中小、認定めぐり摩擦も/消費者重視へ焦り

 通産省は早ければ今夏にも欠陥製品の回収に応じない企業名の公表に踏み切る。
 公表の対象となる企業は、回収費用の負担をいやがる中小・零細企業がほとんどと見られる。通産省も「危ない製品が出回るのを防ぐためとはいえ、名前を出せば売り上げが減って会社がつぶれる事態もあり得る」(産業政策局)とし、企業側の抵抗を見込んでいる。
 通産省の製品評価技術センターは現在も再現実験などを通じて原因究明に当たっているが、「企業から強硬に反論されても大丈夫なのか」という不安が通産省内部にあるのも事実だ。

 異なる省庁それぞれが調査機関を設けたり商品テストを行ったりすることへの批判はありますが、今回のようにいい意味での競争は歓迎したいと思います。ただデータの信頼性については、評価方法などの情報を公開し、他の機関での追加試験も認めるようにするなど整備すべきことは多くあるようです。

■製造日 山崎パンも偽る/横浜市、2万個販売禁止処分

 製パン最大手の山崎製パンの横浜市内の2工場が、実際の製造年月日より1日後の日付を表示した食パン、菓子パンを製造していたことが24日、同市の調査で分かった。横浜市衛生局は同日、食品衛生法違反(製造年月日の先付け表示)に当たるとして、虚偽表示の製品約2万1000個を販売停止処分にした。今月21日には「フジパン」(名古屋市)の神戸工場が、同法違反で処分を受けたばかり。
 横浜市によると、23日午後2時頃、横浜第1工場(横浜市)、横浜第2工場(同)で製造年月日の先付け表示をしているとの通報があった。市衛生局が同日午後4時ごろ第2工場、同6時ごろに第1工場に立ち入り調査したところ、第2工場では菓子パン、第1工場では食パンに24日製造の表示があることを確認した。
 横浜市によると、工場の従業者は「業界の過当競争から先付け表示をした」と話し、以前から虚偽表示をしていたことを認めているという。
 <山崎製パン広報課の話>役員を中心に原因究明を急いでいる。年月日に対する現場の認識の甘さがあったのではないか。

 5月29日には埼玉県の伊藤製パン岩槻工場と菓子製造業「モンテール」八潮工場でも、日付の虚偽表示を行っていたことが明らかになりました。
おそらく業界全体で同じようなことを行っているのでしょう。

■日産105万台リコール/ブルーバードなど20車種、欠陥−−火災の恐れ

 日産自動車のセドリック、ブルーバードなど20車種の乗用車とRV(多目的レジャー車)に火災になる恐れのある欠陥が見つかり、同社は8日、運輸省にリコール(無料の回収修理)を届けた。対象台数は約105万台、リコール台数としては1970(昭和45)年のトヨタ自動車の約77万4000台を上回りワーストワンの記録。
 この欠陥によるとみられる火災事故が約10件発生しているが、人身事故には至っていないという。日産や東京消防庁の調査で原因が分かった。
 日産自動車広報部は「今回のリコールで掛かる費用は約60億円。客にはダイレクトメールで案内を出し、早急に修理したい」としている。
 届け出によると、発見された欠陥は@ラジオに雑音が入るのを防ぐためエンジンの点火系統の配線に取り付けてある蓄電器(コンデンサー)が、ショートして火災になる危険があるAシートベルトのたるみを瞬時に巻き取る装置は衝突時に高温ガスを発生するが、このガスで上部にあるウレタン製配線用カバーが発火する恐れがある−−の2点。
 @の対象は89年10月から92年8月までに製造された約95万台で、台数が多いのはブルーバード、プリメーラなど。Aの対象は92年7月から94年3月までに製造された約8万台。@とAの両方の対象が92年7月から同年8月までに製造された約1万7000台。
 対策としては、コンデンサーは全て交換し、配線カバーは燃えにくい材質に換える。
 東京消防庁によると、コンデンサーが原因と見られる火災事故は93年6月から昨年10月までに都内で5件発生。運輸省によると、今年に入って福岡、長崎の両県でも1件ずつあった。
 シートベルト巻き取り装置による火災事故は94年9月から昨年11月までに都内で2件、静岡県で1件あり、車が焼けている。
 リコールの対象は、89年10月から94年3月の間に製造された次の車種のうちの一部。
セドリック▽ブルーバード▽シーマ▽グロリア▽レパード・ジェイ・フェリー▽グロリア・パトロール▽セドリック・パトロール▽ローレル▽スカイライン▽セフィーロ▽マキシマ▽プリメーラ▽サニー▽パルサー▽アベニール▽プレーリー▽テラノ▽ダットサン▽サファリ

 コンデンサーの電解液が漏れてショートしたということのようですが、電解コンデンサーの不良形態としてショート状態は当然想定されるべきです。また高温ガスにさらされる配線カバーの材質は難燃グレードの高いものを使用しなければならないのですが、何でこのような初歩的なミスをおかしてしまったのでしょうか…。

■ガラスの反射光?出火の原因/長野の民家で車庫内部焼く

 長野市の民家の車庫で6日夕、中に立てかけてあった擦りガラスに日光が反射して木箱の表面に焦点を結び、長期間のうちに熱を蓄えて「低温着火」したと見られる火災があった。長野市消防局は、「擦りガラスが原因とすれば、非常に珍しい」としている。 同日午後5時半頃、同市川合新田、無職米倉広さん(64)方の車庫内で出火、木製の茶箱、新聞紙、段ボールなどを焼いた。けが人はなかった。
 同消防局や長野中央署の調べだと、車庫の東側の壁にある縦30センチ、横50センチほどの窓から日光が差し込み、古新聞の束に立てかけてあった擦りガラスに刻まれた模様が凹レンズの役目をして反射、25センチ離れたところに置いてあった茶箱の表面に焦点を結び、長い間に熱を蓄えて炭化し、出火したらしい。
   同消防局は、こうした条件が揃うのは、窓の方向などから春と秋の午前11時ころから20分ほどと見ている。米倉さん宅ではガラスと茶箱を約2年間、一度も動かさなかったという。

■注意・警告表示は改善必要/意味伝わらぬ図柄も

 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会は昨秋、首都圏の消費者約350人を対象に「製品の警告表示」と題して意識調査を実施。家電製品、玩具(がんぐ)などに現在使用されている12種類の絵表示(マーク)の認知度、理解度を調べた。
 認知度(見たことのあるマーク)は平均2.4個で、1つも見たことがない人が34%いた。
 また選択肢を設けたクイズ形式の理解度(マークの意味)の平均正解数は12問中、7.2問で、100点満点に直すと60点。文字併記された5種の正解率は7割以上だが、「一般の禁止事項」「感電注意」「発火注意」の正解率は30%台にとどまった。
 認知度と理解度の関係で見ると、認知度12%で最下位の「破裂注意」は、文字併記もないのに、正解率は66%。文字併記なしの絵表示の中では最高の正解率で、初めて見た人でも正しく理解できる表示と評価された。
 逆に「一般の禁止事項」「発火注意」は「見たことがある」人でも正解率はそれぞれ36%、49%しかなく、消費者が見ていても意味が正しく伝わらない実態が浮き彫りになった。
 さらに、個別の表示でも、例えば総合感冒薬の説明文中の「高熱の…」「長期間の…」が具体的にどの程度かを聞くと、個々の消費者の受け取り方にはかなりのばらつきがあった。
 PL法施行に伴い、各業界は表示の改善に取り組んできたが、同協会は「分かりにくい図柄の絵表示は誤答しやすく、普及、定着しにくい。このような表示は再検討する必要がある」としている。

 一般の禁止事項で使われているマークは、丸で囲まれた中の絵に対して「禁止」を示すものです。中に何も絵がない場合は、「何かを禁止する」ための外形の意味しかありません。したがってこの表示をもって「一般の禁止事項」とするにはもともと無理がありました。
 一方、一般の注意事項の場合は三角記号の中にビックリマークがあり、シンボルマークとして完成されてます。一般の禁止事項のマークの誤りは、左下図のように三角マークだけにして意味は「一般注意です」というようなものです。
 PL法施行を前に「警告表示は消費者にとっても欠陥の認識がしやすいから対策が必要だ」という企業の論理がありました。分かりやすさよりも警告・注意表示さえ行えばよいという考えの結果だと思います。
 取扱説明書などでも本文とは別構成の警告・注意が増えましたが、本文中に必要な注意書きがなかったり、分かりづらい文章が多いのは困ったものです。消費者に分かってほしいのではなく「訴えられたときに困らないよう対策をした」だけの企業が多いということでしょうか…。

■米大統領、PL法改正案に拒否権

 【ワシントン2日共同】クリントン米大統領は2日、米議会から送付されていた、製造物責任(PL)訴訟の賠償金額を制限するPL制度改革法案に拒否権を発動した。
 大統領は拒否権発動後、「法案は欠陥商品による消費者の被害を救済する道を狭める」と述べた。共和党陣営は「拒否権の真の理由は、大統領を支持する訴訟弁護士の多くが巨額の弁護料を稼げるPL訴訟をビジネスにしているため」と批判。

 今回は期待されたのですが、またダメでした。いきすぎたPL訴訟の問題を改善するための法律は、もうこの先しばらくは日の目を見ないのかもしれません。

■エアバッグの正しい使い方、米で10億円キャンペーン

 【ワシントン21日ロイター=共同】エアバッグは命を救うと同時に命を奪ってもいる。−−米政府は21日、自動車に普及しているエアバッグの正しい使い方を国民に知ってもらうためのキャンペーンを、自動車業界などから1000万ドル(約10億円)の資金協力を得て進める計画を発表した。
 記者会見したペニャ運輸相によると、米国でエアバッグが導入された1990年代後期以降、エアバッグのおかげで死亡を免れた人は約1500人に上る。しかし逆に、シートベルトをしなかったり、助手席のダッシュボードの近くに座りすぎたりしたため、膨らんだエアバッグで圧迫されるなどして死亡した子供が19人もいるという。

■ダイオキシン、ごみ焼却で発生/地上に降下確認 愛媛大調査

 猛毒の化学物質ダイオキシンが雨やちりと一緒に地上に降下していることが、脇本忠明・愛媛大農学部教授(環境計測学)らの18日までの調査で初めて確認された。
 検出されたダイオキシンは、全て燃焼過程でできた組成で、都市や家庭のごみ焼却炉で発生し、大気中で拡散、降下していることが裏付けられた。調査結果は25日から愛媛大で開かれる分析化学討論会で発表する。
 降下量は松山市内で1平方メートル当たり年間3.3ナノグラム(ナノは10億分の1)。脇本教授は「国内の年間推定降下量は、ベトナム戦争で1年間に使用された枯れ葉剤に含まれるダイオキシンの1割に近い量。早急に焼却炉などの規制が必要だ」としている。
 調査は昨年5月から1年間、愛媛大校舎の屋上で実施。1平方メートルのステンレス製採取器で収集した雨とちりから、3.3ナノグラムのダイオキシン類を抽出した。分析結果は、ごみ焼却場や病院、学校などで焼かれて出る成分とほぼ同一の種類だった。
 脇本教授は、ばい煙粒子と一緒に気流に乗って全国に拡散した後、地上に降下しているとし、松山市での検出量を基に国内での降下量を推定すると、年間1.3〜1.4キロになると試算した。ベトナム戦で米軍が使用し、胎児の奇形などの原因となった枯れ葉剤に含まれたダイオキシンは年間、十数キロという。
 脇本教授は「当然、海や川にも降下し、魚類の体内で濃縮され、最後は人体に蓄積される」と指摘している。
<宮田秀明・摂南大教授(環境科学)の話>  これまでダイオキシンの発生実態のデータが少なかったので一つの貴重なデータになると思う。地上に降下せず検出されなかった分も合わせると、さらに多くのダイオキシンが空中に浮遊している危険性もあるのではないか。環境に与える影響を早急に把握する必要がある。

 都会では焼却炉を使用する家庭は余りないかもしれませんが、田舎では多く見かけます。しかもそれらの焼却炉でプラスチックごみを燃やすことが多く、高温のためにステンレスの煙突が黒ずみ朽ちているのを多く見かけます。農家がビニールシートなどを畑で焼却することも多いのですが、どうも毒ガスを発生させているという意識がないようです。
 似たようなことで、車のアイドリング時に発生する高濃度の排ガスやベンゼンなどの問題も指摘されてはいますが、ドライバーが環境や健康に気を使うまでにはまだ時間がかかりそうです。

■環境配慮の「ステイオンタブ」/大型缶にも導入へ キリン

 キリンビールは三菱マテリアルと共同で、缶を開けた後にタブが付着したまま残る「ステイオンタブ方式」を採用した750ミリリットルと1000ミリリットル入りの大型缶容器を開発、5月下旬から順次、新型缶入りのビールを発売する。全ての缶ビールを「ステイオンタブ方式」にするのはキリンが初めて。
 現在、同社では大型缶を販売しているのは「ラガー」「一番搾り」の2商品だけで、これらの商品について全面的に切り替える。引っ張って開ける従来の「プルタブ方式」はタブの支点がふたの中心にあるため、注ぎ口が大きくなりすぎる難点があった。環境に配慮した「ステイオンタブ方式」を採用するに際し、支点を中心から外す方式を開発、難点を解消した。

終わりに

 パンの製造日を偽って先付け表示した問題は、消費者と流通・小売り業の過度の鮮度志向が生み出した側面があります。したがってパンだけでなく食品業界全体で同じような問題を抱えていることになります。
 もともと表示事項はその商品の内容が一般にはチェックできないため、表示者と消費者・社会の信頼関係で成り立つものです。しかし各種テストレポートで公表されるように、成分表示など業種を問わず不正または不適切な表示が行われています。商品の表示を信じるしかない消費者に対し、故意に偽った情報を提供するというのは弱者を対象にした悪質な行為といえます。
 企業のモラルをあてにするのではなく、罰則の強化など社会基盤の整備が必要でしょう。

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