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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。.
11月のニュースから
■三洋の洗濯乾燥機同一機種で発火続く/異常とも思える4度目のリコール
経済産業省は18日、発火して過去3度にわたり無償点検・修理の対象となった三洋電機製の洗濯乾燥機「トップオープンドラム」の同一機種で、発火事故がさらに4件起きていたことを発表しました。
三洋は事故機種「AWD-A845Z」を含む関連9機種の合計約28万台を対象にリコールを実施し、事故機種など4機種は4度目のリコールとなります。費用は約50億円に上る見通しで、発火4件では家屋が半焼するなどしたものの、幸いけが人はありませんでした。
同一機種で4回ものリコールは異例で、メーカーとしての製品安全対策の在り方が厳しく問われそうです。
三洋の関野弘幹取締役は大阪市内で記者会見し「重ねての事故でお客さまに多大なご迷惑をかけ、心からおわびする」と謝罪、発火4件のうち3件は温度ヒューズの端子の緩みなどが原因で、過去3度のリコールとは異なるといいます。三洋側は「設計当時の技術基準に甘さがあった」と釈明、今回は設計欠陥であることを認めました。
温度ヒューズは作動すると破損して交換が必要になるので、火災の危険があるときにのみ作動するよう設計する部品です。そのためハンダ付けや圧著してかしめる方法が良くとられます。ネジ締めというばらつきのある作業を選んだ理由が良く分かりません。またネジ締めのトルク値についての作業標準ががあったかどうかも分かりませんが、大企業としてはどうにも納得できない今回の事故原因です。
発火3件は、愛知県岡崎市で今年6月26日、熊本市で同10月11日、大阪府和泉市で同10月17日にそれぞれ発生、和泉市のケースで家屋が半焼、残り1件は、初回のリコール対象の未点検製品だったといいます。
過去のリコールは2004年9月、07年1月、今年2月の3回で、初回は配線の製造工程のミス、後の2回は修理の際の作業ミスが原因となっていますが、今回の同社の設計欠陥が原因とする事故を考えると、同社の安全マネージメントシステムが無いのか、あっても機能していないと考えるべきでしょう。
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■電気こんろスイッチによる火事に注意
回転式のスイッチに接触防止のためのガードがついていない古いタイプの電気こんろで、使用者の気付かないうちに体や物がスイッチに当たって電源が入ってしまい、こんろ上に置かれた物が燃える火災が後を絶たないようです。
メーカー側は改修を進めているものの、家庭ではまだ多くの未改修品が使われているとみられ、18日に東京・渋谷駅周辺で街頭活動をして注意を呼びかけました。
メーカー12社でつくる小形キッチンユニット用電気こんろ協議会によると、先月までの出荷台数の累計は、スイッチが前面にある一口タイプが約53万台(改修率86.8%)、複数口タイプが約14万台(同48.5%)、スイッチが上面にある一口タイプが約6万台(同44.2%)となっています。
これらタイプのこんろは1977年に製造が始まり、学生や単身者用のアパートなどに多く取り付けられました。しかしスイッチを回し切らないと点火しないガスこんろと違い、スイッチが少しでも回転すれば加熱し始めるため、気づかないうちに熱くなって火災が起きる恐れがあります。
問題は85年に表面化、同協議会のまとめでは、この年から今年10月末までに未改修のこんろで414件の火災が起き、2人が死亡、6人がけがをしたといいます。
問題発覚以降、各メーカーでは、スイッチの周りにガードを取り付け、体などが当たっても回らない構造に変更してきましたが、販売済みのこんろで事故が続いたため、昨年6月に同協議会を設立、情報交換しながら改修を進めています。約17万台を販売したサンウエーブ工業によると、プライバシー意識の高まりや、生活時間帯の多様化などのために、住民に接触しにくくなっているといいます。
電気こんろスイッチによる火災事故防止について、経済産業省からも重大製品事故情報が発表されました。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に寄せられた「電気こんろ」のつまみによる事故情報件数は、平成10年度から平成20年度(11月18日時点)までの11年間で167件(重大製品事故含む)でした。
事故の傾向ですが、これまでの事故原因として次のようなものがありました。
最初のケースは、電気こんろが置かれている前側の通路が狭くなっている場所で、被害者が入室する際に知らぬ間に電気こんろのつまみに身体が触れたり、あるいは荷物が触れたためにスイッチが入り、電気こんろの上に置かれたカセットガスこんろのガスボンベが加熱され、爆発したものです。
次のケースは、電気こんろの近くに段ボールが置かれており、段ボールの角がスイッチつまみに接触し、電源が入ったものと推測されています。
他のケースでは、身体や荷物等が当該製品のつまみに触れてスイッチが入ったと推測されたもの、また家人が電気こんろの前を通過した際に、電気こんろのスイッチに接触してスイッチが動いてONになってしまったものと推測されています。
NITEでは事故の再発を防止するため、スイッチのつまみが飛び出した構造の電気こんろについて改めて注意喚起を行うことにしました。事故で使われていた電気こんろの大半は、ワンルームマンション等のミニキッチンのシンク横にビルトインで設置されており、日常使用されていないケースがほとんどでした。居住者は電気こんろの上にカセットこんろを置いて使用したり、合成樹脂製の台所用品や雑誌等の可燃物を置いていたところ、電気こんろの側を通った際に気付かないうちに、電気こんろの飛び出したスイッチのつまみに、身体や持っていたバック等が当たった程度で電源が入ってしまい、被害に遭っています。
NITEでは、電気こんろの使用について火災事故防止の観点から、電気こんろの上でカセットこんろや他の電気製品を使用しない、電気こんろの上や周囲に台所用品・新聞・雑誌などの可燃物を置かない、との注意を出しています。[目次へ]
■温水洗浄便座で発火事故/INAXブランド、07―08年に5件
INAXブランドの温水洗浄便座が発火する事故が2007年6月―2008年9月に合計5件発生したとして、経済産業省は11月26日に消費者へ注意を呼びかけました。いずれもアイシン精機製で、便座につながる電気コードが便器の内側に露出しているもので、コードが経年劣化で断線、そこに尿がかかったことなどが発火の原因と考えられるとしています。
INAXとアイシン精機はこれらの温水洗浄便座に関して無償で電気コードなどの不具合を確認するとしていますが、すでに製造が終了し修理する部品がないため、不具合がある場合は火災が起きないよう暖房機能を止めることにしています。
INAXによると事故が発生したのは、使用し始めてから18―23年が経過し、暖房機能が故障していた製品で、5件の事故のうち広島県と千葉県で起きた2件については、便座のヒンジピンや固定用ゴム台が外れ、コードに過度の負荷かかったまま長期間使用して断線したとみられています。また大阪府、愛媛県、熊本県で起きた3件の事故では、断線の原因を特定できていません。
一方NITEでは3日、温水洗浄便座の発煙発火事故が平成8年4月から今年11月中旬までに計92件と相次いでいたことを明らかにしました。漏水やヒーターが暖まらないなどの不具合が長期間放置されて事故に至ったケースも後を絶たず、メーカーや経産省が注意を呼びかけるものの、「ユーザーに電化製品という認識が低く、不具合のあるまま単なる便座として使い続けられてしまう」と苦慮しています。
広島県内の民家でトイレから異音がしたのは、昨年11月6日正午ごろで、気付いた家人がトイレをのぞいたところ、すでに炎が上がっていて、あわてて水をかけて消し止めたものです。出火原因は23年間使い続けたINAX製の温水洗浄便座でした。
経産省の調査では、便座を固定するゴム台が外れて不安定になったまま使い続けたため、便座と本体をつなぐ部分が破損、便座ヒーターにつながる電気コードに長年にわたって負荷がかかり、断線・出火したことが分っています。
普段は誰もいないトイレ内での事故に、経産省製品安全課は「気付かないままだったら、大きな火災になっていた可能性もある」と話しています。NITEが報告を受けた92件の事故のうち、製品に原因があったものは32件で、電源部品のメッキ不良によって発煙・発火したケースがほとんどでした。
一方で、洗浄や消臭の機能が故障したり、異音がしているのに使用を続けたために事故につながったものは4件、長期間の使用で生じた不具合によるものも3件ありました。
会見したINAXの担当者は、「事故原因は経年劣化による不具合と、放置したまま使用を続けた状況が複合した」と説明、「不具合があるのに使い続ける危険性をユーザーに伝え切れなかった」と悔やんでいました。
後を絶たない事故に、業界団体やメーカーなどが注意を呼びかけてきましたが、消費者への周知は進んでいないままで、次の対処が必要でしょう。
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■アルミホイールによる収れん火災に注意!
乗用車用アルミホイールは、デザインや機能性のから最近では新車から装着されていたり、メーカー純正ホイールからの交換等で2007年には約2,000万個販売されているといいます。
国民生活センターでは、「日差しが強い日に、車のホイールに日光が当たり、その反射で近くにあった散水ホースが焦げた。危険なので調べてほしい」というテスト依頼があり調べたところ、ディスク面が凹面鏡のように窪んでいるため、太陽光を反射し収れんにより可燃物が発火する危険性があることが分かったといいます。なお、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)にも同様の事例1件が寄せられているといいます。
そこで、ディスク面が凹面鏡のようなアルミホイールが多く販売されていることから、径やデザインの異なるいくつかのホイールについて実際に太陽光が収れんして可燃物が発火するのかテストを行い、消費者に注意喚起することとしたものです。
メッキ処理されたホイールのディスク面を正面から覗き込むと、顔が拡大され凹面鏡と同じ状態であり、実際にホイールに太陽光を反射させた際、収れんにより可燃物が燃えるかどうかテストを実施したところ、メッキ処理され反りが大きく、ディスク面を覗き込んだ際、顔が歪むことがなく大きく拡大されるホイールは、収れんにより可燃物として設置した新聞紙の束や新聞紙を詰めたゴミ袋が発煙または発火しました。
なお、取扱説明書やホイール本体に収れん火災に関する警告や注意表示が無かったとしていることから、これらの危険性についてはメーカーも認識していなかったようです。早急に警告・注意表記を充実してもらいたいものです。
センターでは収れん火災が起きる条件として、太陽の日射量と位置が問題で、太陽高度が高くなる夏季ほど日射量は大きくなるものの、今回のテスト時の日射量は冬季でもあり得る日射量であることから、季節によらず収れん火災の可能性があるとしています。
またホイールの条件として、収れん火災が発生するためには、太陽光が最も収れんする焦点付近に可燃物が存在する必要があるとしています。一般に車両に装着されているホイールは、路面に対してほぼ垂直に設置されているため、ディスク面が太陽の正面を向いていても太陽高度が高くホイールに対する太陽光の入射角度が大きすぎる場合には、焦点が下がり過ぎるためホイールの側方にくることはありません。焦点距離と入射角度を調べた結果、ディスク面の反りが大きく焦点距離が短いほど、太陽高度が高い時間でも収れんしやすいことが分かったといいます。[目次へ]
■乾燥剤に水や水蒸気がかかると火災につながるおそれ 経産省が注意呼びかけ
経済産業省は、不用意に置いた乾燥剤に水や水蒸気がかかったために、火災が発生する危険性を呼びかけています。これは11月1日、広島県で電気炊飯器から出た水蒸気が近くに置いてあった乾燥剤にかかり、乾燥剤が発熱して周辺が焼ける事故が発生したためです。
乾燥剤には生石灰が使用されていますが、水分を含むと化学反応を起こして、急激に温度が上ががることがあります、
2006年のASPニュースNo.150号では、消臭効果のある生石灰と猫の尿で火災が発生したことを紹介しましたが、乾燥剤と生石灰との関連性が直接結びつきにくいために注意が必要でしょう。
そして生石灰と水が反応するときの火災の危険性については、乾燥剤メーカーなどによる一般消費者に対する注意を継続的に行ってもらいたいと思います。[目次へ]
■取扱いに注意! 車用の樹脂製灰皿
最近の新車では、禁煙が普及したきたためか、灰皿を標準で装備しないでオプション品となっていることが増えているようです。そのため、カー用品店やホームセンター等で車用灰皿が数多く販売されています。それらはドリンクホルダーに置いて使用するものが多く、吸殻の収納部が樹脂製のものと、金属製のものに大別されています。
国民生活センターには、このうち樹脂製の灰皿について、「タバコを消して蓋を閉めたつもりが、翌日灰皿の側面に穴が開いていた。火災になる可能性もあるので商品に問題がないか調べてほしい」とのテスト依頼があり、PIO-NETにも同様な事例が2003年度以降、2008年9月末までの登録分で3件寄せられているとしています。
そこでセンターでは、樹脂製の灰皿について、内部の吸殻が燃えたことを想定し、取扱説明書に従って蓋を閉めた場合と閉め忘れた場合で灰皿の状態を調べ、消費者に注意情報を提供することにしました。
<テスト結果>
◆商品の構造と材質、耐熱温度
本体部が一体構造のものが多く、その他、二重構造になっているものや底部が別部品になっているものも見られた。材質はPBT(ポリブチレンテレフタレート)やフェノール樹脂を使用した銘柄が多く見られた。本体部の耐熱温度はABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)を使用した銘柄が90〜100℃、PC(ポリカーボネイト)が130〜160℃、PBTが210〜220℃、フェノール樹脂は1銘柄が210℃、それ以外の銘柄は 230℃以上であった。
◆吸殻が燃えた場合の灰皿の状態
吸殻が燃えた場合、蓋を閉めれば5分以内に消火したが、蓋を閉め忘れた場合、底に穴が開くものや、大きく変形するものがあった。
大きく変形した6銘柄のうち5銘柄は熱に弱いABSやPC等を使用し、1銘柄は熱に強いPBTを使用していたが厚さが薄かった。
変形しなかった3銘柄は、本体に熱に強いPBTやフェノール樹脂を使用しており、熱に弱い材質の個所は素材が厚く、金属板を装備していた。
火が消えた6銘柄のうち、4銘柄は投入口を小さくし空気を遮断して消火を行う窒息消火機能を有し、2銘柄は空気が入りにくい構造であった。
布製のドリンクホルダーを使用すると放熱が悪く、変形の程度が大きくなった。
<消費者へのアドバイス>
樹脂製灰皿の事故を避けるため、火を消してから捨て、使用後には必ず蓋をすること。
定期的に灰皿を点検し、本体の変形や蓋の閉まりが悪いなどの異常があった場合には使用を中止すること。
放熱の悪い布製のドリンクホルダーに樹脂製灰皿を置かない、と注意を促しています。
プラスチック製品の耐熱温度については一般には周知されていないこともあり、灰皿、という機能面から燃えることを想定できない消費者もいると思います。メーカーには注意表記と併せて、完全に閉まらない場合に煙りが良く出るような構造等、考えてもらいたいものです。[目次へ]
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