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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。.
9月のニュースから
■松下、5万台を無償点検/乾燥機で衣類焦げる
松下電器産業は9日、1997年から99年にかけて製造し、東京ガスが「乾太くん」の愛称で販売したガス衣類乾燥機で、誤作動により乾燥中の衣類の一部が焦げるトラブルが7件発生したと発表しました。
松下は大阪ガス、東邦ガスが同じ愛称で販売した分を含む4機種で、計5万1513台を対象に、無償点検と誤作動を防止する部品の取り付けに応じます。これまでに火災や人的被害などはないといいます。
松下によると、これらの機種では乾燥運転中に乾燥室ドラム内で衣類との摩擦により発生する静電気が帯電し、乾燥室ドラム外側の電装基板近傍で放電した場合に、電装基板上のマイコンにノイズが侵入することで乾燥室ドラムの回転が停止することが判明したといいます。
またこの際、機器内部の燃焼室において約 3分間ガスの燃焼が継続するため、乾燥中の衣類の一部が焦げる場合のあることも併せて判明、しかし約3分間のガスの燃焼継続後には安全装置の作動により、ガスの燃焼が完全に停止することから、衣類や機器本体からの発火、機器以外への延焼に至らないことが確認されたとしています。
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■ビデオ3万台発火の恐れ/NEC、使用中止を呼び掛け
NECは10日、解散した子会社「日本電気ホームエレクトロニクス」が1990年から92年にかけて製造したビデオデッキの一部で、発火の可能性があることが分かったと発表しました。対象は「VC−BS750」「VC−BS770」「VC−BS1000」の3機種約3万台で、NECは使用中止を呼び掛けている。家電製品協会が定める部品の保有期間が経過し、補修用部品がないため同社で修理はできないといいます。
経産省によると、7月26日に北海道で、電圧制御回路のコンデンサーの劣化が原因で前面表示パネル付近から火が出て、テレビや床が焦げた。96年11月に沖縄県、01年8月に東京都で同じような場所から発煙・発火しましたが、けが人はなかったようです。
同社による事故原因分析結果では、電源部電圧制御回路における電解コンデンサの経年劣化による容量低下の影響で、製品前面の表示パネル基板上のICチップ部品に過電圧が加わり、異常発熱。そのICに隣接した蛍光表示管ホルダーに着火、延焼したものと推定しています。また1996年11月の発煙事故は、電源部供給回路の部品故障による異常発熱によるものとし、2001年8月の発火事故は、タイマー回路部の部品の焼損によるものと推定しています。
電子機器の事故の場合、その原因は製造時の問題が多いのですが、今回は違います。電解コンデンサーが適切な回路で使用されていれば、20年足らずで容量低下、というのは考えにくいので、どうやら設計欠陥だったようです。しかし補修部品が無いから使用中止を呼び掛けるだけ、というのはどうなのでしょうか。呼び掛けても気付かないユーザーの事故は責任をとらなくても良い、と思っているのであれば問題だと思います。
家電製品協会が定める部品の保有期間は、テレビ・電子レンジなどが8年、洗濯機・掃除機などが6年、電気ポットでは4年となっていて、運悪く故障した場合に修理できないことを認識しなければなりません。電子機器の場合、その特性からユーザーにとっては10年以上使いたい製品が当たり前と考えられ、これではメーカーの努力不足でしかないと思います。
製品の電子回路の修理は部品交換をすることはあまりなくなり、基板ごと、ブロックごとの交換に変わってきていてることも、このような状況をつくり出しているようです。そこにはメーカーの都合が優先され、気にいった製品を長く使う、という消費者のニーズが無視されている現状が見えます。[目次へ]
■コロナ給油タンク636万個リコール/「半ロック」が危険
大手ストーブメーカーのコロナ(本社・新潟県)は17日、石油ストーブなどのワンタッチ式給油タンク「よごれま栓タンク」の一部で灯油が漏れる恐れがあるとして、87〜00年に製造した636万個をリコール(無償点検・修理)すると発表しました。
経済産業省によると、京都府で昨年12月、このタンクに灯油を入れてストーブに戻そうとしたところ、給油口が開いて灯油が漏れ、ストーブが燃えたものですが、けが人はありませんでした。
よごれま栓タンクは、長期間使用すると給油口が変形して確実に閉まらなくなるのですが、給油口のふたを閉める際、ロックが不完全でも正常時と同じ「パチン」という音がすることから、使用者がロックが完全にかかったと思い込んだとみられています。タンクの給油口は給油後確実にロックし、先端を指で持ち上げて開かないことを確認しなくてはならないとしていますが、ロックの確認作業というのは行われないことが多いのではないでしょうか。
こうした「半ロック」は、斜めに力をかけてふたを閉めたときに起き、長く使っていると起きやすくなるといい、01年以降の製品は改良されたようです。
経産省には昨年5月以降、87〜00年製の同じタンクを使ったストーブとファンヒーターによる火災が、ほかにも兵庫や愛知など7道県で7件報告され、2人が死亡、3人が重軽傷を負っています。[目次へ]
■こんにゃく入りゼリーで男児死亡
今年の7月29日、凍らせたこんにゃく入りゼリーを、祖母が1歳9ヶ月の男児に与えたところ、喉に詰まらせた事故が発生、病院に救急搬送されたものの、9月20日亡くなりました。
こんにゃく入りゼリーによる死亡事故は1995年から今年まで17件発生、その都度注意を促すニュースが流れますが、商品の特性からツルッとのどに入り込んで詰まる危険性は改善されぬまま、袋の表示などによる取扱注意での対策に終始していました。
2006年、2007年にも2名の死亡事故があることから、取扱注意だけでは商品の安全が確保できないことが分かります。製品ハードの形状、弾力性、崩れやすさ、などの対策が必要であったわけですが、商品性というこの種の菓子が好まれる理由に危険性の認識が無いことでもあります。
我が国では毎年餅をのどに詰まられて死亡するケースがありますが、餅をまるまる飲み込むことはできないので、噛むことが前提となっています。噛むという動作があるため、人の意志で行う“噛み方”を餅メーカーの責任にするには無理がありますが、こんにゃく入りゼリーの場合は誤った食べ方が無くならない特異な商品であり、“商品そのものの存在が危険”ということになります。
それは経験的に明らかな危険性があるもので社会生活に不可欠な商品、包丁や餅などの取り扱いはユーザーの責任とする考えとは、異なるものでしょう。
ASPニュースNo.162でも紹介しましたが、EUでは2003年、ミニカップゼリーを含むゼリー菓子へのこんにゃく使用が禁止され、米FDAも窒息被害の恐れがあることを度々消費者向けに警告、FDAでは「コンニャクゼリーを見かけたら通報するように」と呼びかけるほど、その危険性の周知を積極的に行っています。
社会に流通したら危険だという商品の評価が諸外国で指摘されてから、もう5年も経ちますが、我が国では法律による規制はなく業界任せ、というのも死亡事故を相変わらず発生させて原因と考えざるを得ません。
さて、この事件は10月に入り進展があり、こんにゃく加工品メーカー「マンナンライフ」は、兵庫県の1歳男児が窒息死したミニカップ入りこんにゃくゼリー「蒟蒻畑」の製造中止を決め、卸売会社に通知したことで新たな局面に入りました。
こんにゃくゼリーの売り上げのうち約2/3が同社で、その売り上げの約9割は「蒟蒻畑」が占めるといわれる影響力あるため、同社の決断は遅すぎたものの評価できるものだと思います。[目次へ]
■α-リポ酸を含む「健康食品」について/国民生活センター商品テスト結果から
α-リポ酸は注射薬として用いられる医薬品成分ですが、2004年の「医薬品の範囲に関する基準」改正によって「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収載されたため、「いわゆる健康食品」成分としても広く利用されることになりました。
センターによると、全国消費生活情報ネットワーク・システムで、α-リポ酸を含む「健康食品」についての相談が、約5年間(2003年4月〜2008年7月31日までの登録分)で35件寄せられていて、その中には、「飲んだら不整脈が出た」、「吐き気や腹痛がする」等の危害事例も寄せられているとしています。
一方、主婦を対象にした国民生活センターの2005年の調査によると、「健康食品」の購入先はスーパー・薬局の店頭が全体の6割と最も多く、厚生労働省は、「健康食品」等を安全かつ適切に選択・摂取するためには、専門的な知識を持つアドバイザリースタッフが重要であるとしているるものの、この調査結果では、購入時に販売員の説明を参考にしているのは全体の1割程度にすぎず、商品の表示から得られる情報を参考にしている人が多いとしています。
そこで、α-リポ酸を含む「健康食品」17銘柄について、α-リポ酸の含有量、胃の中での溶けやすさ、表示等について調べることにしたものです。
主な調査結果を紹介すると、α-リポ酸量については現状では、科学的根拠に基づく統一した安全な一日摂取目安量が設定されていないが、いずれの銘柄にも通常の食生活では食経験のない量のα-リポ酸が含まれていた。そしてα-リポ酸量の表示が正しくない銘柄があった。
胃の中での溶けやすさについては、 カプセルや錠剤が胃の中で速やかに溶けて消化するか、医薬品の試験方法を参考に「健康食品」の溶けやすさ(崩壊性)を調べたところ、胃の中で溶けにくいと思われる銘柄が17銘柄中5銘柄あった。
表示については、多くの銘柄には美容、健康維持等の効果をイメージさせるうたい文句が表示されており、消費者が継続的に摂取してしまう可能性があった。また健康増進法に基づく栄養表示基準に定められた栄養成分ではない成分が栄養成分と区別されずに表示されており、健康増進法上問題がある可能性があった。
テスト対象の「健康食品」について、商品に表示された製造者又は販売者以外の事業者が運営するインターネット販売サイトに掲載された広告を調べたところ、医薬品の効能・効果と類似した表現がみられ、薬事法に抵触するおそれがあった、としています。
センターでは行政への要望として、α-リポ酸を含む「健康食品」について、科学的根拠に基づく安全な一日摂取目安量を設定するよう業界指導を要望し、また製品の崩壊性等に関する基準を作成することも合わせて要望しています。
インターネット上の広告について、薬事法に抵触するおそれがある表現がみられたため、指導の徹底を要望、α-リポ酸量の表示について、景品表示法上問題があると思われる銘柄があったため、指導を要望、消費者がより安全に「健康食品」を利用するために、専門知識を持つ従業員が販売に携わるよう販売制度を見直すとともに、アドバイザリースタッフ認定制度の充実及び普及啓発を進めるよう、業界指導を要望する、として現状の消費者の不利益が増長される環境にあることからの要望となっています。
健康ブームで、テレビをつければそれらCMばかり、最近では食品やフィルムメーカーの大手も参入して、今までの何となくうさんくさい業界から、メジャーなものに変わったかの印象を持ちます。しかし“これでもか”という宣伝・宣伝に、目も、耳も、精神も慣れて日常的に感じる人も多いのではないでしょうか。客観的な評価を常に持ちたいものです。
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■高齢者の家庭内事故、死亡原因のトップはやけど/国民生活センター
国民生活センターでは2003年5月に、危害情報収集協力病院からのデータで「危害情報からみた高齢者の家庭内事故」をまとめて発表しましたが、今回改めて2003年度〜2007年度の情報を集計し、高齢者の家庭内事故について最新の分析を行いました。
それによると65歳以上の高齢者の家庭内事故は4,138件あり、これは65歳以上の事故全体の63.3%にあたります。さらに65歳以上でも75歳未満60.4%、75歳以上65.8%と年齢が上がるにつれて割合は高くなる傾向にあります。
高齢者の事故は、階段の昇降や床を歩いている時など、ごく普通の動作で起きる転倒・転落によるものが最も多く、頭部や大腿のけが、骨折が多いという傾向が高齢者の事故が重症化・長期化する要因でもあります。また、浴室で熱い湯につかることによるやけどや着衣着火も多く、これらは死亡事故の原因にもなっています。死亡事故の4分の3はやけどによるものであり、死亡原因のトップで、屋根や脚立等の高所作業による転落事故も目立っています。
主な事例として、トイレから廊下に出たときにつまずいて転倒。左股関節を骨折して重症(86歳女性)、風呂の湯加減を見に行った際、誤って熱湯の浴槽に転落してやけどし死亡(85歳女性)などがあります。
センターでは、高齢者の家庭内事故を防ぐ消費者へのアドバイスとして、階段や床での転倒・転落事故を防止する、浴室での溺死、やけどを防止する、屋根や脚立からの転落事故を防止する、衣類に着火する事故を防止する、窒息事故を防止する、もの選びを工夫することを挙げいてます。
若い年代では包丁などによる切り傷、天ぷら油や熱湯などによるやけど、転落などがありますが、高齢者の場合は些細な動作から重大事故となるので、本人・家族共ども日常のヒヤリハットを居住空間の改善に生かしたいものです。[目次へ]
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