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2007.9 No.165  発行 2007年9月21日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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8月のニュースから

■中華機炎上、原因はボルト外れ

 那覇空港で炎上した中華航空機の事故原因は、部品から脱落したボルトが燃料タンクに穴を開けていたことが判明しました。脱落していた金属製ボルトは、主翼前縁の可動翼「スラット」を支えるアームに設置してあり、スラットを押し出した際、アームが所定位置で止めるストッパーの役割をするものです。
 ボーイング社は2005年12月、このボルトが脱落するケースが2件発生したため、事故機を含む737型機の一部を対象に「サービスレター」と呼ばれる注意喚起の文書を送付、航空各社にボルトとナットを検査するよう求めていました。

 サービスレターは、航空機メーカーが出す最も強制力が低い文書だといい、米連邦航空局(FAA)を通じて出す耐空性改善命令(AD)とは異なり、要請に応じるかは各社の判断に任されています。
 このため、対象機種のボーイング737型機を保有していた国内大手航空会社では「当時、当社ではボ社の文書を受けた整備はしていない」と明かしているようです。

 現在同型機を保有する別の国内大手は「サービスレターの当時は対象機を保有していなかった」と説明、対象機を導入した今年3月以降についても、「燃料タンクやボルト、ナット類の点検は、4000飛行時間か18カ月ごとのオーバーホールの対象となっており、まだ規定の飛行時間に達していないため行っていない」としています。

 今回の事故機は5年前に製造されており、航空関係者は「当該部分も点検対象となっていたはずで、適切な点検、整備が行われたのかが問題だ」としています。
 後日国内の航空会社が同系列機23機を緊急点検したところ、エアーニッポン(ANK)のボーイング737-700型機の主翼のスラットを動かすアーム部分のボルトについているはずの留め具(ワッシャー)1枚がなかったことが30日、分かりました。

 国土交通省はボーイング社が製造した段階でワッシャーをつけ忘れた可能性もあるとみて、FAAに情報提供した上、原因究明と対策の検討を依頼しました。

 中華航空機では、ワッシャーがなかったためボルトが脱落し、燃料タンクを突き破ったとされますが、ANK機ではボルトは脱落していなかったといいます。しかし最悪の場合、中華航空機と同様の事態になることも予想されるもので、緊急点検で見つかったのは幸いなことでした。

 国土交通省によると、ANK機は今年1月に就航したばかりで、飛行時間は約1332時間、整備を2回行っているものの、ボルト部分の点検は1回もしていなかったといいます。
 炎上事故後、米連邦航空局は同系機を運航する世界の航空会社にボルト部分の点検を求めていましたが、保有する同系機13機を緊急点検していた中華航空は9月8日、主翼前側にあり機体の揚力を調整するスラットのボルトを締めるナットのうち、100個に緩みが見つかったと発表しました。

 同航空の整備部門責任者によるとスラット部分のボルトは13機合わせて計208本で、その約半分で締め方が基準値より緩いことが分かったといいます。同航空は「問題のナットはすべて締め直したため安全上の問題はない」とし話しています。
 部品同士を固定するボルトが時間経過で緩むことはやむを得ませんが、今回の事故要因は想定していなかったようで、航空機の安全確保の難しさを感じます。

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扇風機出火で夫婦死亡/三洋電機、使用中止要請

 三洋電機は23日、東京都で今月20日に老夫婦2人が死亡した火災について、1970年製造の自社製扇風機の発火が原因だったと発表しました。
 30年以上前に製造した同社製品では、発火や火災の事故が2000年以降で24件あり、2000年と2006年に計2人がやけどを負ったことも明らかにしました。

 同車の30年以上前に製造された製品は約100機種あり、現在も7000台前後が家庭に残っている可能性があるといい、同社は、部品の劣化で発火などが起きる恐れがあるとして使用中止を呼びかけています。
 三洋などによると、火災は20日午前2時50分ごろ、東京都足立区の民家で発生、木造2階建て住宅のうち1階15平方メートルが焼け、84歳と81歳の夫婦が死亡したもので、2人が寝ていた近くには扇風機があったといいます。

 三洋は23日、消防から自社製扇風機(70年製「EF-6EZ」)の発火が原因との連絡を受けました。同社は発火の原因を特定できないものの、長期使用による部品の経年劣化で事故が起きたものとみています。
 24件の事故のうち9件が今年に入って発生、19件が扇風機の発火に伴う火災で、5件が扇風機の発火でした。同社はやけどについては経産省に報告したものの、報道発表はしていませんでした。
扇風機は長期間にわたって使用すると、モーターなどの劣化により、発煙や発火の恐れがあるといいます。同社によると、2000年9月には1人が軽いやけどを負った火災があり、06年7月にも1人が軽いやけどを負う火災がありました。

 三洋製品による火災ですが、足立区の火災では出火した室内にクーラーはなく、窓も閉め切った状態だったことから、警視庁西新井署は、扇風機を回しっぱなしにして寝ているうちに、ショートしたか、過熱して出火した可能性があるとみて調べていました。
 東京消防庁は23日、東京都内の一部を除く同庁管内で扇風機から出火した火災は、1998年以降計70件に上ると発表しました。このうち家屋などが全半焼したケースが12件あり、20日の足立区の火災も含めて4人の死者が出ていました。
  また、70件のうち製造年が判明している36件について調べたところ、10年以上経過した製品による出火が23件を占めていたといいます。

 同庁では、〈1〉羽根が不規則な回転をする〈2〉異音や振動がある〈3〉モーター部が異常に熱くなったり、焦げ臭いにおいがしたりする、といったケースでは火災につながる危険が大きいため、直ちに使用を中止するよう呼びかけています。

 古い扇風機は電子部品があまりなく、モーター、スイッチで構成される単純回路で壊れれないことから、今でもレトロな雰囲気を気に入って使っているお宅があります。
 しかし、モーターのコイルに使われている絶縁ニスが劣化してショートすることは十分考えられます。消費者の多くは、機能が維持できていれば電気製品の耐用年数を半永久的、と考えるものです。今回の事故のように、古い製品の危険性については、メーカーからの注意喚起は今まであまりないようです。

 確かに家電製品の耐用年数を明示することは、販売上のデメリットになるため企業としては困難なことかもしれません。しかし今回の事故の教訓として、長年使い続けている家電製品の危険性についての啓もう活動や、定期点検を受けてもらうなどの安全管理システムづくりが必要ではないでしょうか。

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ペットボトルが破裂して大けが/国民生活センター注意喚起

 ドライアイスを入れたペットボトルが破裂し、けがをしたという事故の情報が国民生活センターに寄せられています。8月5日には大阪府東大阪市で、ドライアイスを入れたペットボトルを中学生が公園の砂場に埋めたところ、遊んでいた小学生が直後に掘り出し、その拍子に破裂し破片で一人が大けがをする事故も起きています。

 密閉容器にドライアイスを入れることの危険性はずいぶん指摘されていると思いますが、このような事故が依然なくならないため、国民生活センター危害情報室では同種事故の調査を行い、注意を促すことにしました。
 国民生活センターに寄せられた、ドライアイスをペットボトルなどの容器に入れたところ破裂したという事故の事例6件を紹介します(2007年7月31日現在)。

【事例1】
ジュースが入っているペットボトルにドライアイスを入れて振ったところ、ペットボトルが破裂し、破片が両眼に当たり、角膜びらんの受傷。(病院情報、2005年、10歳女性)

【事例2】
ドライアイスのかけらをネジ式のフタのジュースの空き缶に入れて振って遊んでいたところ、破裂し、左眼に角膜びらんの受傷。(病院情報、2004年、8歳男性)

【事例3】
「ペットボトルを使い、飲み残しのジュースが入ったボトル内にドライアイス片を入れて炭酸飲料を作ろうとしたところ、ボトルの膨張で飛んだキャップを目に受け、失明した、という事例がある」という情報が眼科医から寄せられた。(消費者トラブルメール箱、2004年)

【事例4】
テレビでやっていた炭酸水作りをしようと、ポリタンクに水とドライアイスを入れたところ、ドライアイスの量が多すぎたのかポリタンクが破裂し、手指に負傷。(病院情報、2001年、30歳代女性)

【事例5】
友達と実験をしてみようと、ビンにドライアイス等を入れたところ、そのビンが倒れて破裂し、破片が飛び散り手指に負傷。(病院情報、1997年、13歳男性)

【事例6】
ドライアイスを買ってきて、ビンに入れ替え冷凍庫に入れておいたら庫内で爆発したとの情報が入った。子どもが使うために買ってきて、子どもが冷凍庫に入れたらしい。ガラスの破片が部屋中に飛び散り危険だったので注意表示を徹底してほしいとの要望であった。(PIO-NET、1997年)

 確かに子供が実験感覚で興味を持つ素材のドライアイスですが、このようなニュースを分かりやすく子供に教えなければならないでしょう。もちろん学校現場でも同様です。

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■殺虫剤「バルサン氷殺ジェット」引火事故相次ぐ/ライオン自主回収始める

 ライオンは8月27日、殺虫剤「バルサン氷殺ジェット」で引火事故が相次いだことを受け、該当製品を自主回収すると発表しました。
 回収対象となるのは2007年3月から販売している「バルサン飛ぶ虫氷殺ジェット」(内容量300ml/450ml)および「バルサン這う虫氷殺ジェット」(内容量300ml/450ml)で、いずれも従来の殺虫成分を含まず、瞬間的に気化して熱を奪う冷却成分で殺虫する製品です。冷却成分の噴射に可燃性ガスを使用するため連続噴射などで多量に使用したあと、換気を充分に行わず同じ室内で火気を使うと引火する恐れがあるといいます。

 ライオンは殺虫剤に「火気と高温に注意」などの注意を表示したほか、テレビや新聞、Webサイトでの告知を行ってきましたが、事故を防ぐことはできませんでした。

 スプレーには「火気と高温に注意」と表示しており、火気のない場所で使えば問題はないため、欠陥商品ではありません。ただ、経産省が28日指摘したように、ライオンが自主回収に乗り出したスプレー式殺虫剤「バルサン氷殺ジェット」の引火事故について、「氷殺」という商品名が引火を起こさないという誤解を利用者に与え、事故につながった可能性があるようです。

 氷殺ジェットは殺虫成分を使わず、マイナス40度のスプレーで冷却して害虫を凍死させるもので、ライオンは「消費者に安全、安心というイメージがあり、火気に注意する意識が希薄化したのではないか」としています。
 同商品は3月に発売し、ヒット商品となっていました。

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基準超える鉛、中国製子ども用ノート25万冊回収/米国で

 消費者製品安全委員会(CPSC)は22日、人気キャラクターをあしらった中国製子ども用ノートの金具部分の塗料に基準を超える鉛が使われているとして、米国の輸入業者が約25万冊の自主回収を始めたと発表しました。

 対象は昨年6月から今年7月までに米国内で販売された人気キャラクター「スポンジ・ボブ」が描かれたアドレス帳と日記帳で、子供が口に入れると、健康に害が生じる恐れがあるといいます。
 同種のノートが日本でも販売されているかどうかは不明だといいます。

 またCPSCは同時に「きかんしゃトーマス」などが描かれたこまやブリキ製のバケツ計約7万700個、子供向けアクセサリー計約2万1900個の中国製玩具も塗料の安全性に問題があるとして、 輸入業者が自主回収を始めたと発表しました。

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「白い恋人」の賞味期限を偽装/アイスなどの大腸菌群検出も隠ぺい

 北海道土産として知られる菓子「白い恋人」を製造する札幌市の菓子会社「石屋製菓」は14日、アイスクリームとバウムクーヘンからそれぞれ大腸菌群と黄色ブドウ球菌が検出されたと発表しました。しかし同社は保健所に報告せず隠ぺいし、事件は保健所の抜き打ち検査で発覚したものです。

 自主検査で6月30日にアイスから大腸菌群を、7月28日にはバウムクーヘンから黄色ブドウ球菌を検出しました。従業員を名乗る人物から通報を受け、保健所が8月6日に抜き打ち検査をしたものです。その後同社は12日付で、全種類のアイスクリームを回収するとの新聞広告を掲載していました。

 白い恋人の対象品は28枚入りの缶が2つ入った「商品番号A-9」で、賞味期限が「平成19年8月31日」と「平成19年9月30日」のいずれかが記載されている4328個で、返品された30周年記念商品を一般商品として再包装する時に、賞味期限を1カ月延ばしたものです。6月下旬に改ざんを告発するメールが会社に届いていましたが、同社はその後も不正を続けていました。

 薄いクッキーでチョコレートを挟んだ「白い恋人」は、石屋製菓の主力商品で、1976年の発売後、全日空の機内食のサービスに採用されてから評判が広まり、基本的に北海道内だけで販売する戦略も商品価値を高めたともいわれています。

 白い恋人のような焼き菓子や即席めんなど、比較的日持ちのする加工食品は、日本農林規格(JAS)法などに基づき製造者が賞味期限を定めるものです。つまりメーカーが商品の特性を考慮して安定した品質を提供するために自ら定めるガイドであり、その期限が過ぎたからといって品質の急激な劣化は無いのが普通です。そのようなことからメーカーでは、「多少の表示期間延長は問題ない」と考えたがるものですが、消費者との契約条項、という感覚を常に意識しなければならないものです。

  その後、同社では期限の延長を10年以上前から行っていたことも判明、そのほかアイスクリームやバウムクーヘンから、食中毒の原因となる細菌が検出され、隠ぺいの事実が判明しました。

 我が国の企業の場合、小さな会社が事業規模を拡大、業界大手となり利益が増える程に不祥事のリスクが高まるようです。
 当初は顧客の目線を持っていた経営陣も、業績拡大に満足するあまり他社の不祥事も目に入らず、まるで利益優先を突っ走る中毒患者のようです。つまり現在の大手企業も問題を抱えているということでしょう。

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