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2007.7 No.163  発行 2007年7月18日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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6月のニュースから

■いつになったら終わるのか、中国製品の回収騒ぎ

 子供に人気のキャラクター「きかんしゃトーマス」などの中国製玩具が、鉛を含むなど安全性に問題があるとして回収されるケースが米国で相次ぎ、ペットフードを食べたネコや犬が相次いで死んだ問題では、中国の小麦製品の輸入が禁止されており、中国製品への不信が消費者に広がっています。

 6月19日の米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国で販売される玩具の70−80%が中国製で、今年回収された中国製玩具は24種類に上るといいます。回収対象は米国などで150万個売れたきかんしゃトーマスの玩具や、太鼓をたたくクマの人形などで、米国の安全基準を上回る鉛が塗料に使われていたほか、目玉の形を模したボールに灯油が注入されていたケースもあったとのことです。また、のどに詰まる危険性が高かったという乳児用の「ガラガラ」も回収されています。

 日本でキャラクター商品を輸入販売している「ソニー・クリエイティブプロダクツ」も15日、中国製の「きかんしゃトーマス」の塗料に、健康被害のおそれのある鉛が含まれているとして、自主回収することを明らかにしています。

 米国は今年になって、安全性に問題ありとしてすでに24種類のおもちゃを回収、信じがたいことにはこの回収されたおもちゃはすべて中国製のものなのです。

 米国の商品安全委員会(CPSC)の資料では、中国製の商品で回収されたものは5月に28件、そのうち鉛を含有するアクセサリーなどが7件、幼児が誤飲して窒息の恐れのあるものが8件も占めています。6月では12件のうち鉛含有商品が3件、誤飲の恐れが6件あり、中国製品の回収騒ぎは依然収まりをみせていません。
統計によると、CPSCが回収命令を下した商品は、中国製品で2000年に36%を占めていましたが、2006年にはすでに60%まで高まっており、2007年では今日まで米国で回収されたおもちゃのなかで、中国製品の割合は100%という異常な状態となっています。

 日本では中国製圧力鍋でやけどの恐れがあるとして回収が始まりました。経済産業省は26日、一部の中国製の家庭用圧力鍋が消費生活用製品安全法の基準を満たしていないのに、適合マークを付け販売されていたと発表しました。ふたが外れたり、取っ手が高温になりやけどをする恐れがあるとして、輸入・販売した業者が回収を始めたものです。

 せき止め、練り歯磨き、ペットフードなどで世界中に懸念が広がった中国製品のずさんな安全・品質管理ですが、すぐには改善されないのでしょう。中国当局がようやく本腰を入れ始めたように見える報道が7月中旬頃からありますが、膨大な業者数、そして法律を順守しない業者については、コピー製品などの対策が未だにおろそかであることを私達は承知しています。しばらくは中国産・中国製という商品、および原材料が使用されている恐れのあるものは買わないのが賢明でしょう。

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中国産ウナギ、エビなどに抗菌剤/世界的な食品問題も

 米食品医薬品局(FDA)は28日、中国産の魚介類から動物に対して発がん性があるなどの理由で米国内で使用が禁止されている微量の抗菌剤が見つかったとして、エビやウナギなど5種類の養殖魚介類の中国からの輸入を一時停止すると発表しました。

 FDAによると、昨年10月から今年5月までのサンプル調査で、中国産の養殖魚介類から、米国内で使用禁止の抗菌剤ニトロフランやマラカイトグリーンなどが見つかったといいます。幸いほとんどが検出限界に近い微量だということですが、程度の問題ではなく、輸出先で禁止されている薬品を使用する業者がいるということ、そしてそのような基準を持たない、あるいはそれを把握していない中国当局の品質に関する認識が私達と大きく異なっていることに驚きを禁じ得ません。

 日本製でも材料の品質チェックを厳格に行っていない企業のものは信用できませんが、客観的な品質情報を提供できる企業・業者には消費者にアピールするいいチャンスかも知れません。それでも生活共同組合ですらミートホープ社の不正コロッケの原材料を見抜けなかった、つまりDNA検査をしていないなど客観的に信頼できる品質管理ではないことが露呈しています。

 目に見えないもの、これらは常に不正が起こり得る、それは中国だけではなく日本でも同じことなので、できるだけ加工食品は購入しない、外食は控えて自宅での食事を増やす、などの手間のかかる防御が必要になってきます。スーパーに置いてある「タレ」「ソース」類の多いこと多いこと、それら原材料の特定は消費者では全く無理で、企業自身もつかんでいないものもあることから、このような食品はできるだけ買わないのがいいのでしょう。

 少し料理の心得のある人なら分かりますが、手作りのタレは、はるかに美味しく安心できるものです。しかし手間を省きたくなる消費者心理を巧みに利用する企業も多く、テレビなどから流れてくる膨大な商品・宣伝のはんらんで頭が麻痺している人が多いのかも知れません。そして味の習慣性が植え付けられて、今の子供が大人になっても特定企業の商品を購入する、という企業戦略に乗せられていくようです。

 もちろんこのような食品を食べ続けても健康被害がでることはほとんどないと思いますが、何かのエラーで、とんでもないものが使用される恐れは皆無ではありません。そのような事件を私達はいろいろ見てきましたし、“美味しさ”と言うのは単に味がおいしいだけでなく、安全の信頼を持つ食品を食べる「心の安心感」も常に働いていることを認識すべきでしょう。

 さて驚いたことに7月12日、中国では毒性物質が含まれた段ボール紙を混入させた肉まんが販売されていたことが分かり、騒動に発展しているといいます。

 中国中央テレビによると、北京市朝陽区の一部露天商が段ボール紙の破片を詰めた肉まんを市販し、業者が当局に逮捕されたとのことです。

 報道によると、肉まんは小さく切り刻んだダンボール紙と豚肉を6対4の比率で混ぜて作られていて、消費者が段ボール紙と豚肉を区別できないように、段ボール紙を水酸化ナトリウムに漬け、暗い色に変色させる念の入れようで、肉のにおいの香料まで添加していたという恐ろしいものでした。水酸化ナトリウムは強アルカリ性でタンパク質を腐食させる性質があり、手で触れるのも危険な物質で、食材ではない段ボールを材料にするとともに危険な薬品までも使用するという業者の犯罪行為にはただ呆れるばかりです。

 段ボール肉まんが登場したのは、肉まんの材料となる豚肉が急騰したためだといい、中国人が最も好んで食べる肉類である豚肉の価格が昨年の2倍近くまで上昇、水を飲ませて重量を水増しした豚や、病気にかかった豚が市中で販売されているのが既に見つかっていたとのことです。

 一方、米紙ニューヨーク・タイムズは7月12日、中国産だけでなく、サルモネラ菌を含むインド産コショウ、不衛生で食用に適さないメキシコ産カニ肉、成分表示が誤っているデンマーク産砂糖など、食品安全基準を満たさない食品の輸入が差し止められるケースが後を絶たないと報じています。

 昨年7月から今年6月にかけ、食品全体を調査したFDAによると、輸入拒否件数はインド産(1763件)、メキシコ産(1480件)が中国産(1368件)を上回り、インド産とベトナム産(533件)はサルモネラ菌を検出、メキシコ産、中国産、インドネシア産(460件)は不衛生状態が輸入拒否の主な理由だったといいます。
我が国でもいい加減な企業が多いのですが、世界的に食品に対する安全管理の欠如、そして儲け優先の体質がまん延しているようです。

 我が国でも、全ての生鮮品、食品原材料、そして缶詰・瓶詰などの加工品における厳格なチェック体制が求められることになります。

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ミートホープのミンチ偽装事件

 ミートホープの牛肉偽装事件は不正の事実が解明されるにつれ、同社のとんでもない体質が明らかになりました。


 農林水産省は6月22日〜24日にミートホープ社に対し、「牛ミンチ」事案に係る立入検査を行い、25日に結果概要について公表しましたので、この事件を少し整理してみたいと思います。

 検査の結果、牛挽肉の問題のほか、他商品での意図的な異種肉の混入、賞味期限の改ざん、産地偽装等が判明、具体的には次のようなものでした。

@平成10年頃から牛挽肉に豚挽肉、鶏挽肉、豚内臓肉又は鴨挽肉を混入し、牛挽肉と表示して北海道加ト吉など18社に販売した(平成18年7月〜平成19年6月20日までの期間に368トン)。

A上記@の牛挽肉に、外国産牛肉を混入していたにもかかわらず、国産又は北海道産と表示して販売した。

B平成14年頃から牛脂に豚脂を混入し、牛脂と表示して販売した。

C牛挽肉及び牛脂について、科学的・客観的根拠がないにもかかわらず、賞味期限を1日延長して販売した。

D平成17年頃から牛粗挽肉の原材料に豚肉又はラム肉を混入して販売した。また、北海道産と表示された牛粗挽肉の原材料のうち牛さがり(横隔膜)については、オーストラリア産又はニュージーランド産を混入して販売した。

E平成14年頃から国産と表示された牛スライスに外国産牛肉(オーストラリア産又はニュージーランド産)を混入して販売した。この行為は、製品製造の5回に1回の割合で行われており、外国産を5%〜20%の範囲で混入していた。なお、国産と表示された牛スライス商品には、個体識別番号の表示・伝達が行われておらず、また、帳簿に個体識別番号の記録がなかった。

F平成10年頃まで、「肩ロース」と表示された豚挽肉の原材料に肩ロースのほか豚の内臓を混入して販売した。

G平成16年頃から豚挽肉の発色が悪い時には、原材料に牛の心臓を日常的に混入して販売した。

H平成17年頃から冷凍食品(フライドチキン、やきとり串、ブタ串)の賞味期限を改ざんして販売した。

I北海道加ト吉から提供を受けた冷凍コロッケを、賞味期限を改ざんして販売した。

Jその他として、鶏肉について、24年前頃に、大手鶏肉卸業者の包材を入手し、種鶏を詰めて販売していたと説明した。なお、この包材が工場内に少なくとも1.5万枚以上在庫していることを確認した。また15年前頃に鹿肉ジャーキーに羊肉を使用して販売したこと。そして24年前頃に豚挽肉に加熱調理した焼豚の端材を混入して販売したこと。


一方、同省による緊急市場調査も26日始まりました。対象は原材料表示に「牛肉」とあるコロッケやハンバーグ、メンチカツ、ミートボールなどで、同省が約100品目を全国の店頭で抜き打ち的に購入し、DNA鑑定で牛肉以外の肉が混入していないかを調べます。同省は約1カ月かけて分析し、8月上旬をめどに結果を公表するとしていますので、他の食品業者の不正も明らかになるかも知れません。

 また同社では苫小牧保健所の立ち入り検査で、雨水をためて冷凍肉の解凍に使用していた事実も判明、中国の段ボール入り餃子事件ほどひどくありませんが、同社の行き着く先には同様の結末があったのかもしれません。

 昔「スーパーの女」という映画があり、精肉部門の職人が国産ステーキ肉に外国産の肉をつなげているシーンがありましたが、今でも同じようなことが行われているのでしょう。

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WHO、電磁波対策の法整備を勧告

 電子レンジなど電化製品や高圧送電線が出す超低周波電磁波の人体影響について、世界保健機関(WHO)が「小児白血病発症との関連が否定できない」として、各国に対策法の整備など予防的な措置を取ることを求める勧告を盛り込んだ「環境保健基準」を17日までにまとめました。

 WHOは、具体的な規制値は示さなかったものの、日本や米国などでの疫学調査から「常時平均0.3―0.4マイクロテスラ以上の電磁波にさらされていると、小児白血病の発症率が2倍になる」との研究結果を支持、「電磁波と健康被害の直接の因果関係は認められないが、関連は否定できず、予防的な対策が必要だ」と結論づけました。

 電磁波による健康被害については、97年に労働省産業医学総合研究所などの研究で、免疫機能が低下することが分かっています。また2002年には高圧送電線や一部の家電製品から出る超低周波電磁波が多い環境で暮らす子供は、白血病の発症率が2倍以上になることが、国立環境研究所と国立ガンセンターなどが実施した全国調査で明らかになっています。

 しかし日本では電磁波の規制をしないまま現在にいたり、このような国は先進国では珍しいといいます。各国の規制状況ですが、スウェーデンでは2〜3mGを目安に小学校、幼稚園近辺の鉄塔の撤去や移転、住宅密集地近くの送電線の撤去などを地域の中で行っています。

 アメリカでは州ごとに磁界の規制があり、磁場については4mGの独自規制をするところも増えているといいます。またFDAでは携帯電話業界に対して電波の曝露を最低限にするように要請しています。

 ドイツでは国際非電離放射線防護委員会のガイドラインを踏まえて、法律に基づく電磁波規制を行っています。

 イギリスでは93年に英国放射線防護評議会が示した独自のガイドラインに基づいて対応し、16才未満の子どもには携帯電話の使用を控えるように勧告しています。

 スイスでは規制値以外に住宅、病院、学校など、とくに防護が必要な場所における磁界の規制値を設定しています。

 イタリアでは幼稚園、小学校などで2mGに規制しています。

 フランスでは16歳未満の子どもは携帯電話の使用を控え、イヤホンの使用によって頭部に密着させるのを防ぐようにしているといいます。そしてその際も妊産婦は携帯電話本体を腹部から離すように勧告しています。
いつも言われることですが、日本では安全・危険が分からないグレーゾーンについて、危険が立証されなければ規制をしません。

 一方諸外国では安全が立証されなければ「非安全」として規制、安全と分かればその時点で規制を解除する考えです。これは国民のリスクを最小限にできる方法で、経済最優先の日本とは大違いです。

 その結果我が国では多くの規制が諸外国より遅れることになり、これは国民の健康や利益よりも、企業・業者の経済活動を優先していることでもあります。政府には、途上国のような考えはそろそろ捨てて、国民生活の質を重視した路線に方向転換してもらいたいものです。

 また規制が少ない日本企業は、規制をクリアしても収益を上げられる体質となっている諸外国企業とは当然差がでてくるもので、この先「ものづくり」の衰退にもつながるのではと心配してしまいます。

 遅ればせながら経済産業省は今月、作業班を設置して送電線周辺の超低周波磁界規制の検討を始めたようですが、どうなりますか…。

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たばこ対策遅れる日本/欧州30国の最下位並み

 大島明・大阪府立成人病センターがん相談支援センター所長らの厚生労働省研究班が、日本のたばこ対策を欧州の評価基準で採点したところ、欧州30か国の最下位レベル、との結果が出ました。

 英科学誌「タバココントロール」に昨年掲載された評価項目に準じ、たばこの価格、禁煙対策などを計100点満点で採点したもので、その結果、日本は価格8点(満点30点)、職場・公共の場所の禁煙3点(同22点)、政府予算0点(同15点)、広告や販売促進の禁止5点(同13点)、箱の警告表示4点(同10点)、禁煙治療1点(同10点)の計21点で、最下位のルクセンブルク(26点)にも及びませんでした。上位はパブを禁煙にしたアイルランド(74点)、英国(73点)でした。

 昨年4月の禁煙治療の保険適用(6点)などで、今年1月時点での評価は27点に上昇しましたが、大島所長は「飲食店の全面禁煙などの規制策が進む欧州との差は拡大傾向にある。たばこ価格引き上げなどの対策が急務だ」と話しています。

 確かに日本では完全禁煙のレストランが少なく、味の良い店で食事を楽しんでいても、隣席からたばこの煙が漂ってくると、気持ちは「早くこの店から出たい」となります。おいしい食事の提供に自信のある店は「完全禁煙」をうたっても客が激減することも無いし、むしろ多すぎる客を制限できていいと思うのですが…。

 いずれにしてもシェフは、たばこの煙の中で自慢の料理を食べてもらうことにシビアになってもらいたいものです。味の分からない客に料理を提供することは、シェフにとってつらいもので満足感のないものだと思います。

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