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2007.1 No.157  発行 2007年1月25日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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12月のニュースから

■ドコモの携帯電話電池130万個回収/異常発熱、破損の恐れ

 NTTドコモは7日、三菱電機製の携帯電話「FOMA D902i」向けの電池パック「D06」のうち、約130万個が異常に発熱したり破裂する恐れがあるとして回収・交換すると発表しました。調査中も含め、18件の発熱・破裂事故があり、うち1件は破裂が原因で利用者がやけどを負ったといいます。

 ドコモはこれまで発熱が原因で電池交換をした例はありますが、これほど大規模な回収は例がないとしています。ドコモの石川国雄副社長は記者会見で「顧客の安全にかかわる問題。深くおわびします」と謝罪しました。
 ドコモは電池回収を優先するため、当面三菱製携帯電話の販売を中止するとしています。

 D06はリチウムイオン電池で、三菱が三洋電機の子会社の三洋ジーエスソフトエナジー(京都市)から相手先ブランドによるOEM生産で供給を受けているものです。回収するのは、2005年11月から06年5月までに製造した電池で、電池パックの表面に傷やへこみが付く程度の力が加わった場合、その後の充電中や充電直後に電池パックが異常発熱、場合によっては破裂する可能性があるといいます。

 電池パックはユーザーが交換するために、誤って落とすことは十分想定されますが、ケースのへこみが内部の絶遠シートを破損、それが発熱の原因とされていますが、このようなことは設計時に当然予測できるものです。

 同社の安全品質レベルの問題ですが、ソニーのリチウムイオン電池の回収騒ぎがまだ記憶に新しいときに、今度は三洋の回収騒ぎとなつてしまいました。両社で世界シェア5割を越えるという大手企業の品質問題は、我が国の企業の品質マネージメントに何か欠落するものがあるのかも知れません。今まで問題がなかった、という内向きの評価に頼ることも多いと思いますが、安全・品質評価の見落としがないか、企業・社員の中に慢心の落とし穴がないかも検証しなければなりません。

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DS充電部品20万台過熱の恐れ/長野日無子会社製造

 任天堂は15日、同社が国内で販売したゲーム機「ニンテンドーDS」と「ニンテンドーDS Lite(ライト)」の充電用ACアダプター約1300万台のうち、長野日本無線(長野市)の香港の子会社が製造した約20万台に不具合があると発表しました。任天堂は無償で対象品を交換するとしています。

 任天堂によると、ゲームの充電時にアダプターが過熱し、充電できなくなったり発煙するおそれがあり、これまでに消費者から不具合9件が報告されているとのことです。このうち1件では、アダプターの外部樹脂が過熱のため損傷したといいますが、幸いけが人や火災などは出ていないとのことです。

 長野日本無線によると、製造工程の器具の一部に不具合があり、アダプター部品の一部に必要以上に圧力がかかったため、強度が損なわれたおそれがある、としています。

 ACアダプターの不具合ですが、メーカーを問わず良くニュースになります。今回は部品の欠陥ではなくて生産・製造技術の問題のようですが、人気商品の付属品ということもあり、20万台もの回収をすることになってしまいました。

 任天堂は「商品に対する信頼を損ね、申し訳ない」、長野日本無線は「再発防止に努めたい」としています。問い合わせは任天堂コールセンター(電話0120-210557)へ。

 また今月発売した家庭用ゲーム機「Wii」でも付属のストラップのひもが切れ、棒状のコントローラーが手から離れて危険な例があるため、直径0.6ミリのひもを、より強度がある1ミリのものに無償交換するとしています。
製造番号がLJH100419980以降と、LJF103032000以降のものは既に1ミリに切り替えています。問い合わせはフリーダイヤル(電話0120-345164)です。

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米産牛肉からダイオキシン、韓国で検出/FTA影響も

 韓国の聯合ニュースによると、同国農林省は21日、今月1日に輸入、骨の一部が発見されたため検疫不合格とした米国産牛肉から、基準値を超えるダイオキシンが検出されたことを明らかにし、米国に対し原因究明を要求しました。

 米韓は自由貿易協定(FTA)締結に向けて交渉中ですが難航しており、ダイオキシン検出が新たな障害となりそうです。

 ダイオキシンが検出された牛肉10.2トンは返送もしくは廃棄処分されており、市場には流通していないということです。韓国政府による検査の結果、基準値の1グラム当たり5ピコグラムを超える6.1ピコグラムのダイオキシンを検出したといいます。

 韓国は、米国で牛海綿状脳症(BSE)感染牛が見つかったことから2003年12月に輸入を禁止、2006年10月30日に米国産牛肉の輸入を再開しましたが、牛肉から骨片が見つかり、検疫不合格としていました。
主要先進国では厳しさの程度はあるものの、1日当たり生涯摂取し続けて健康上問題が少ないとされるTDI(耐容一日摂取量)指針を持っています。しかし、このTDIは1日に食物、大気、水などから人間が摂取する総量についての指針に過ぎません。

 そこで主要先進国では食品や飼料に含まれるダイオキシンの量も規制していて、EUの食品中のダイオキシン規制では、果物、穀物、野菜はいずれも0.4pgとしています。日本では残念ながらそのような規制は全く無いのが現状で、食品の汚染に対する予防安全対策は皆無です。つまり大幅なTDI量で人の健康被害が懸念されてから初めて対処することになるのです。

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トランス脂肪酸の食用油全面禁止へ/ニューヨーク

 アメリカ・ニューヨーク市の健康問題委員会は12月5日、同市内の飲食店2万4000軒に対し、心臓病の一因とも言われている人工添加物・トランス脂肪酸(TFA)を含む食用油の使用を全面的に禁止する決定を行いました。これまでにTFAでは外食産業を中心に利用を控えたり禁止する措置が採られていましたが、地域レベルで禁止措置が採られるのはアメリカでは初めてだといいます。

 規制は2段階に分けて行われ、まず2007年7月までに、フライ物、マーガリン、ショートニング、食用油を1人あたり0.5グラムまでに制限、さらに2008年7月までにはイースト菌などのパン生地、ケーキ用のバターオイルにも適用が広がります。

 TFAは植物油に水素を加えて固める時に発生する油で、「日持ちが良い」という特徴があることから、これまで加工食品やフライドポテトなどでよく使われています。またファストフード店の食事にもTFAが多用され、多い場合には1食分で10グラム以上のTFAが含まれているともいわれています。今回の制限措置は事実上の使用禁止措置に等しく、また飲食店に対し、メニューやレジ付近に食品のカロリー表示を義務付けることも決められています。

 今回ニューヨーク市が規制を発表したのは、TFAが原因となりうる心臓病患者が同市で多く、死因の40%が心臓病によるもの、という背景があります。また、シカゴ市でも同様の規制を検討しており、今後この動きはアメリカ全土に広まる可能性もでてきています。一方、飲食店組合は「自主的な取り組みに任せるべき」「規制開始までの期間が短すぎて対応しきれない」「TFAを含まない食材が高騰する」と反発していますが、対策を講じないで今頃意見を言ってもかなわないことになりそうです。

 すでにトランス脂肪酸の危険性については各方面で指摘されていて、大手ファストフードなどが自主的に利用を取りやめる動きが出ています。今回のニューヨーク市の決定は、さらに各メーカーのTFAの利用取りやめの流れを加速させることになります。

 気になるのは日本国内の動向ですが、日本国内では「脂肪摂取量(1.56グラム/日)がアメリカ(5.8グラム/日)より少ないから健康への心配はない」とする意見が多いのですが、日本ケンタッキー・フライド・チキンでは、トランス脂肪酸の含有量をこれまでの半分にした油を独自に開発、2006年10月から全店舗で利用してきたといいます。

 もうずいぶん昔のことですが、テレビで子どもが5ミリほどのマーガリンをべったり塗つたトーストを前に、おいしそうな顔をするCMがありましたが、あれだけで1日のTFA摂取量をオーバーすることになるのでしょう。我が国は今、ダイエット中心の偏った健康ブームですが、消費者はこのようなニュースにもっと関心を持たなければならないと思います。

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警官105人、許容値超す鉛/射撃訓練の粉じん原因

 「全国の警察学校で、射撃訓練の指導担当や受講者などの警察官105人の血液から、学会が定めた許容値を超す濃度の鉛が検出されていたことが分かりました。警察庁は拳銃の発射時に出る鉛粉じんが原因とみて、51カ所に上る射撃場の建て替えや改修など約119億円分の緊急対策に近く乗り出す方針を決めました。

 警察庁によると、一部の県で鉛の血中濃度が高い関係者がいることが判明したため、同庁が2006年6月、全国の指導員と射撃の高い技能を身に付ける特別訓練員ら約750人を対象に、健康調査を実施したものです。
その結果、105人の血液から、日本産業衛生学会が定める許容値(1デシリットル中40マイクログラム)を超える鉛を検出しました。体の不調などを訴えているケースはないものの、11人は60マイクログラムを超える濃度だったとのことです。

 拳銃の弾丸は鉛を含んでいて、発射時の銃身との摩擦や、標的への衝突などで鉛粉じんが発生するのですが、同庁は、警察官らが長時間、鉛粉じんの滞留する環境にさらされていたことが原因とみて、射撃場の構造を改め、除去機や防じんマスクを整備することにしました。

 射撃場の建て替えは中部管区警察局など11カ所、改修は40カ所の見通しで、いずれの建物も更新時期を迎えていませんが、「年度内に着手する」としています。

 警官の射撃訓練による鉛被害というのは、考えてみれば当然起こり得ることではあります。日頃あまり気にしていませんでしたが、多種多様な職種の人が働いている環境における健康被害、ということについてもう少し気にしなければならないようです。

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■自転車の歩道通行解禁へ、警察庁懇談会提言/子供運転や危険車道に限定

 自転車の通行区分や運転マナーについて協議を進めてきた警察庁の「自転車対策検討懇談会」(座長・岸田孝弥高崎経済大教授)は30日、児童・幼児による運転や、交通量が多く車道が危険な場合に限り、歩道での自転車通行を認める提言をまとめました。

 現行道交法では、自転車通行を認める標識が歩道にある場合を除き、自転車は車道を通行するのが原則とされています。提言を受け警察庁は、2007年の通常国会に自転車の歩道通行を認める道交法改正案を提出する方針です。

 提言は「自転車が絡む事故は年々増加し、全交通事故の約2割を占めているとし、自転車の安全な利用を促進する対策が必要」と指摘、子供が運転する自転車などの歩道通行を積極的に認め推進するものです。

 歩行者と自転車の通行区分については、モデル地区を設定し警察と道路管理者、地域住民らが協議して意見を集約しながら決めていくことを提案、自転車の速度や一時停止すべきケースを具体的に明示すべきだとしました。

 さらに警察と学校が協力し、従来の小学生を対象にした自転車安全教育を、自転車通学が多い中学生、高校生にも実施するよう求めています。一方、信号無視や酒酔い運転など悪質で危険性が高い自転車の交通違反に対しては、警察が交通切符を適用し、積極的に摘発すべきだとの考えを示しています。

 懇談会は、平成22年までに年間交通事故死傷者数を100万人以下にするとした政府の「第8次交通安全基本計画」の目標達成に向け設置されたものです。

 自転車の交通事故ですが、警察庁によると、平成17年は約18万3000件で、10年前の約1.34倍で、全事故件数の19.7%も占めているといいます。歩道での自転車に関わる事故も多いのですが、「歩行者優先」的な配慮を徹底してもらい、皆が安全に生活できる環境を作ってもらいたいものです。

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タクシー全面禁煙、名古屋地区8000台/大都市圏で初

 名古屋地区(名古屋市とその近郊)で営業するすべてのタクシー約8000台が、2007年5月1日から全面禁煙となります。名鉄交通やつばめ自動車など大手タクシー会社を筆頭に、地区の法人、業界団体の大半が一斉実施で合意したもので、大都市圏でのタクシーの全面禁煙化は初めてだといいます。

 名古屋地区の102社・3協同組合が加盟する「名古屋タクシー協会」によると、女性や子どもを中心とした非喫煙者から「車内がたばこくさい」と苦情が多く、また運転手にとっても狭い車内で「受動喫煙」を強いられるなど健康面で不安が根強かったため、2006年夏ごろから禁煙化の検討を開始してきました。

 そして「中途半端に喫煙タクシーが混在すると、利用者が戸惑ったり不公平感を抱いたりして、運転手もきっぱり喫煙を断れないムードになりかねない」と判断、全面禁煙の一斉実施を決めたものです。

 各社や業界団体は今後、同協会内に連絡会議を設け、利用者への周知方法を詰めるとしています。
名古屋地区の禁煙タクシーは現在5社で計80台、大手タクシー会社の幹部らは「電車や駅、路上での禁煙拡大など社会の流れからも、また多くの人を快適に運ぶ公共交通機関としてのタクシーの使命からも、全車両の禁煙化は必要」と強調、「愛煙家の方にもぜひ、理解願いたい」と話しています。

 中部運輸局は「大変な英断で、公共交通機関の健康増進対策としても、望ましい取り組み」と歓迎しています。

 タクシーの全面禁煙化は、2006年4月に大分市タクシー協会(約800台)など大分県内の一部地域が先鞭をつけ、同県内では現在、運行車両(約2800台)の90%近くまで禁煙化が進んでいるといいます。

 たしかに大都市での全てのタクシーが禁煙になる、というのは驚きでもありますが、とても歓迎できるものです。お客、運転手双方にとって良いことであり、今回の名古屋地区の取り組みが他の大都市にも影響を与えて欲しいものです。また市民の健康を大事に考えている名古屋地区、との評判になれば地域にとっても歓迎できることでしょう。

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