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2006.10 No.154  発行 2006年10月22日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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9月のニュースから

■経産省、消費安全法改正原案まとまる/生活用品全般を対象、罰則強化

 パロマ工業製ガス瞬間湯沸かし器や家庭用シュレッダーの事故など生活用品をめぐる事故の多発を受けて、経済産業省は26日、生活用品全般を対象に事故情報の政府への報告をメーカーなどに義務付けることを柱とした改正消費生活用製品安全法の原案をまとめました。

 同日開催の審議会に提示、改正法案は臨時国会に提出することになります。現行法では、国への報告がされないケースがあることが、ガス瞬間湯沸かし器事故などで表面化したことからの動きで、自動車や化粧品、医薬品などすでに報告義務や厳重な規制があるものを除き、原則すべての生活用製品が報告対象になります。死亡や後遺症、火災を伴う重大事故について、メーカーや輸入業者に経産省への報告を義務付け、報告を受けた同省は迅速に内容を公表します。

 また、事故が起きた場合の原因究明や、必要な場合に回収措置などを取る責任がメーカーにあることを明確化、販売業者や修理業者に対しても、事故を知った時はメーカーなどに通知するよう要請するものです。

 なお、意図的に報告をしない悪質な事例には懲役1年以下、または100万円以下の罰金を科すことも含まれています。

 消費生活用製品安全法の改正ですが、30年の歴史を持つ米国の消費者製品安全委員会(CPSC)と比較するとどの程度のレベルなのか分かるようです。

 CPSCでは死亡など重大な事故や消費者に危害が及ぶ可能性のある情報について、法に基づき5日以内の報告を義務付けています。それに対し改正製品安全法では、当初14日間以内としていた報告を10日にすることになりそうですが、これでは初動体制の遅れによる被害者拡大の懸念があります。シュレッダー事故のように危険な製品の情報が早く出されていれば少しでも被害を押さえられたと思われることから、「調査の確認のためなるべく遅い方が良い」という企業の安易な論理を優先したようです。一刻も早く情報を消費者に提供することが、政府・企業の責任なのですが、せめて1週間程度が妥当な期間だと思いますが…。

 また強制力はなかったものの、今までも電気製品については事故後1週間以内の報告を指導していたはずですが、この根拠となった拡大被害防止の精神はどこにいったのでしょう。

 一方、法改正に伴って受け付ける膨大な事故報告を処理するために、経産省は2007年度の製品安全担当職員を36人増やすよう、総務省に求めていますが、現在の定員25人が61人になるだけで、製品の安全に特化した組織であるCPSCの抱えるスタッフ420人と比べてもその非力さが分かるというものです。

 また経産省の管轄のために対象製品が限られ、省庁縦断の消費者の安全を確保するための組織でもありません。そのため児童が学校、公園で遊ぶ遊具での事故については、今後もメーカー・管理者の報告義務については何も改善されないことになるでしょう。

 省庁により安全行政基準が異なることがおかしい、という当たり前の議論ができない国ですが、米国のように消費者の安全第一に考え、その情報・対策を共有、統轄するためのCPSC的な機関がぜひ欲しいものです。
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工作機械、軍事転用させません・森精機

 工作機械大手の森精機製作所は輸出した製品が軍事転用されることを防ぐため、設置場所から動かすと使用不能になる新機能を盛り込むことにしました。10月出荷の一部製品から搭載し、年度内に全輸出品に広げる予定で、異例の措置に顧客の反発も予想されますが、不正輸出事件が相次ぐ中で法令順守にとどまらない厳重な輸出管理をせざるを得なくなったとしています。

 日本製の工作機械は刃物を100分の1ミリ以下で動かせるなど精度が高く、軍事転用が危惧される分野で、高精度な機械の輸出は外為法で制限されますが海外からの転売を防ぐのは困難な状況です。ミツトヨが3次元測定機を不正輸出した疑いで経営陣が逮捕されたのはまだ記憶に新しいですが、これを機に先端製品の輸出管理の一つの答えを提供したものです。

 森精機は外部から取り外せない「衝撃感知センサー」を搭載、海外販売先に設置する際は社員が立ち会うことにしています。この装置の働きは、クレーンでつり上げるときなどの揺れをセンサーが検知すると、工作機械の心臓部である制御コンピューターを再起動できなくするものです。

 再び使用可能な状態にするには、森精機の社員が直接制御コンピューターに暗証番号を打ち込むなどの操作が必要です。地震でセンサーが作動した場合などは社員が即座に無料で復旧作業をするとしていますが、納入先の企業ではすぐに機械を使用できない生産上のリスクがあることから、どの程度の評価が得られるのか興味があります。

 しかし一企業がこのような不正防止対策をとったことはとても評価できるもので、政府も税制面などでのサポートができないものか検討しても良いと思います。軍事転用するかどうかは商社など流通上の不正もあり、メーカーはメーカーとしての対策をとらざるを得ない、ということでしょう。

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リチウムイオン電池、安全基準を統一/国内メーカー、加熱防止策を検討

 ソニー製リチウムイオン電池のリコール問題を受け、ソニーを含む国内電池メーカーは同電池の安全性を確保するため統一基準を作る方針を固めました。安全基準はこれまでメーカーが独自に設けていましたが、異常な加熱が起こったときに充電を停止する機能を採用する案などが有力視されています。

 ソニー、松下電池工業や三洋電機など電池大手が加盟する電池工業会や電子情報技術産業協会は再発防止に向け統一の安全基準を作ることでほぼ合意したといいます。

 ソニー製電池の不具合は製造工程で電極間に金属片が混入したことが一因としていますが、デルは電池単体の問題だとしているものの、ソニーはパソコンの充電電流の制御方法の問題の可能性も示唆していましたので、今後の統一基準が気になります。

 統一基準では電池の生産工程から、パソコン製品の組立段階に及ぶ幅広い項目を検討するとしており、電池工場で混入が許容される金属粉の量や寸法の上限を設定することなどが検討されることになります。また充電痔に過剰な電圧がかからないよう、電圧の触れ幅を一定範囲に押さえる機能も議論されるようです。

 しかし電池内でショート状態となり、そのときの加熱防止策も重要であり、基準策定にあたってはパソコンメーカーの協力も欠かせないものとなりそうです。

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医療事故、愛知に第三者判定機関/愛知NPO法人の取り組み

 愛知県内の大学教授や弁護士らでつくる特定非営利活動法人(NPO法人)の「日本医学歯学情報機構」(愛知県日進市)が、医療事故の際に第三者機関として、医療機関の責任の有無などを判定、賠償額を算定する事業を来年4月から始めることが24日分かりました。

 同機構によると、医療機関からの依頼があった場合、医師や弁護士、保険会社の査定担当者などからなる審査会を設置、病院が提出した調査結果をもとに、医療行為が妥当であったかの判定や賠償額の算定を行います。結果を受け入れ、和解や示談を成立させるかは医療機関、患者側双方の判断になるといいます。将来的には、医療機関ではなく患者が依頼した場合にも応じられるようにするとのことです。

 当面は愛知県内で起きた死亡事故や重篤事故が対象ですが、同機構理事長の小出忠孝愛知学院大学長は「裁判になってこじれる前に話し合いができる体制をつくりたい」と話しています。

 将来は判定にとどまらず、被害者救済のため裁判外紛争処理機関(ADR)として話し合いによる解決を目指す事業を始めるほか、医療機関から申請がない場合、患者の申し立てを受け付けるとしています。

 最近は医療訴訟が増加傾向にあるといい、最高裁では2005年には約1000件で、これは10年前の2倍になるといいます。

 患者側としても裁判という敷き居の高い制度で解決を目指すよりも、ADRを利用しての解決方法の選択肢が増えることはいいことです。今後の動きに注目したいと思います。

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自転車の無灯火20万件/警視庁、一斉取り締まりへ

 全国の警察が自転車の交通違反者に指導警告票を交付した件数が、今年1〜6月までに約65万件に上ることが23日、警察庁のまとめで分かりました。うち夜間の無灯火運転に対する交付が最も多く、3割余りの約20万件を占めたといいます。

  警察庁は「事故につながる危険性が高い違反にもかかわらず、認識の低い人が多すぎる」として、無灯火運転の一斉取り締まりを30日までに実施するよう全国の警察に指示しました。

 まとめによると、指導警告票の交付は無灯火が全体の31.1%に当たる20万2932件、2人乗りが29.3%の19万1190件、歩道通行者に対する危険運転が9.3%の6万848件などとなっています。

 昨年1年間の指導警告票の交付件数を見ても、約112万7000件のうち無灯火は32.4%の約36万5000件に上り、全体に占める割合も最多でした。

 昨年1年間に発生した自転車が関係する事故は約18万3000件、自転車乗車中の死傷者は約18万5000人で、いずれも1995年の1.34倍で、利用者のマナー悪化などが背景にあるとみています。

 道路交通法上の軽車両である自転車は免許が必要ないこともあり、基本的なルールを知らない人が多いようです。未だに「自転車通行可」の道路標識が無い歩道を、そこのけそこのけ」式にスピードをゆるめないでベルを鳴らしまくる若者、そしてブレーキの「キーキー音」で歩行者をどかしていく中高年者など、そのマナーの悪さは一向に改善しません。

 それもそのはず、50Mの原付きバイクで歩道を走る者もいて、中には郵便局員も歩道を平気で走っていきます。また交差点で原付きバイクが右折ラインにいることもよく見る光景ですが、バイク本人は交通違反という認識も無く、交通事故になったときに相手の人が不運な加害者になるということも分かっていないようです。
いわゆる罰則が無いためのルール無視、マナーお構いなしの行動のようですが、「相手に迷惑をかけない」という、子どもでも分かる基本的なこと無視する、社会人としては落第生です。

 このような人たちは、「つかまらなければいい」と考える人が多いようですので、罰則は無いものの警官から注意を促されれば、かなり効果があるはずです。自転車の迷惑運転については継続的な取り締まりが望まれます。それと原付きバイクの取り締まりもしっかり行ってもらいたいものです。

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■野鳥を風車から守れ/環境省、衝突防止へ実証実験

 環境省は24日、風力発電施設の周辺を通過する野鳥が風車の回転翼に衝突して死傷する「バードストライク」を防止するため、風車の色彩を工夫するなどの実証実験に取り組む方針を決めました。

 クリーンエネルギーとして風力発電施設の立地が進む一方、野鳥保護を徹底する必要があるため、実証実験で両立策を探ることになったものです。

 風力発電施設でのバードストライクはトビやカモメなどのほか、種の保存法で国内の希少野生動植物種に指定されているオジロワシも、これまでに5例報告されているといいます。このため施設の立地をめぐり、事業者と野鳥保護団体が対立する事態もおきています。

 このため環境省は、07年度から3年計画で
1  風車の色彩を工夫する
2  夜間にライトアップする
3  レーダーで野鳥の飛来を把握し風車を止める

 などの衝突防止策を実験するもので、結果をもとに風力発電施設の「立地適正化マニュアル」をまとめ、事業者らに活用してもらう方針です。

 発電用風車に野鳥が衝突する事故は、世界各国で発生、「米国では年間3万5000羽が死んでいる」(カリフォルニア州エネルギー委員会)といい、対策を進めなければ今後我が国でも衝突事故は増え続けて行くきます。
また風車の設置場所によっては、景観破壊問題が出てくるので、今後もさまざまな検証が必要になるのでしょう。

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「和牛」「黒豚」表示を厳格化/国産品だけに限定

 農林水産省は高級品として人気が高い「和牛」「黒豚」の食肉表示の厳格化に向けて話し合う有識者会議を開き、表示の見直しに着手しました。

 食肉の表示は、原産地名を明記することが日本農林規格(JAS)法で義務付けられていますが、「和牛」や「黒豚」の表示についての明確なルールが無く、外国種と交配したものでも「和牛」のブランド名で輸入されるケースが増加しているといいます。

 黒豚についても同様に輸入品が多く出回っていることから、国産品だけに表示を限定するなど消費書に分かりやすい表示作りを目指すとしています。

 初会合では「和牛」と「黒豚」の表示について、国内で生まれ育ったものに限るなどルールを明確にし、国産であることを証明する仕組み作りを議論していくことで一致、今後月1回のペースで会合を開き、年度内に結論を出すとしています。

 法律の抜け道を考えることに長けている業者というのは、消費者をいかにだますか、ということと同義であり、彼らの金儲けのためならモラル無用、という論理が無くならない限り、今後も他の方法を考えてくるのでしょう。

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災害時の外国人保護に指針/内閣府が07年度に作成へ

 内閣府は24日、地震などの大規模災害が起きた際、情報不足で混乱しやすい外国人観光客保護のために、避難、誘導の具体的方法を例示した地方自治体向けの対策指針を来年度に作成する方針を決めました。

 来春にも自治体や旅行業界などが参加する検討会を立ち上げ、作業を開始しますが、指針に盛り込むのは
1 避難場所の事前の周知方法
2 災害発生時の交通情報や被災状況などの伝達
3 ホテルや旅館、各国の在日大使館などと連携した安否確認
などです。

 例示を参考に観光地のある自治体を中心に実施してもらい、外国人だけでなく、地域事情に不案内な日本人観光客の保護にも活用できる内容にするようです。

 05年7月に首都圏を襲った最大震度5強の地震でテーマパークや駅などで外国語のアナウンスがなく、外国人観光客の避難、誘導に課題を残すなど問題となっていたこともあり、総務省では国内の定住外国人を高齢者などと同じ「災害弱者」と位置付け防災面での支援策を検討しています。ただ、観光客は首都直下など各地大規模地震の被害想定に含まれておらず、対策は遅れているのが現状です。

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