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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。.
7月のニュースから
■パロマガス湯沸かし器で中毒17件、15人死亡
パロマ工業(名古屋市)が製造したガス瞬間湯沸かし器で、排気ファンの作動不良が原因とみられる一酸化炭素中毒事故が85年以降、17件発生し、15人が死亡していることが14日、経済産業省の調べで分かりました。同省は同社やガス事業者に緊急点検を指示しましたが、同省では「パロマ製品で事故が起きている」として警視庁から情報提供を求められるまで何も対策をとっていませんでした。
同省によると、事故が起きた製品はパロマが80年4月〜89年7月に製造した4機種で、室内の空気を取り入れてガスを燃焼させ、ファンで排ガスを室外に出す仕組みのものです。
85年1月〜05年11月、これらの機種を使った北海道や東京都などの住宅や店舗で、一酸化炭素中毒で住民らが倒れる事故が17件あり、15人が死亡、19人の重軽症者が出ていました。
いずれも排気ファンが作動不良を起こし、一酸化炭素が屋外に排出されなかったのが原因で、これら機種ではファンが停止した場合ガス供給を自動的に遮断する安全装置がついていました。しかし安全装置の配線が改造されたため不完全燃焼が起きたとみられる事故が、少なくとも5件あり、事故機種以外にも類似機種が3種類あり、計7機種の出荷台数は約26万台に上るといいます。
これに対して、パロマは「事故は安全装置を不正改造した機器だけで起きている」と発表しています。
これが今回のパロマ事件の最初のニュースでしたが、同社の事業拡大のきっかけとなった不完全燃焼を防ぐために開発した独自の安全装置を無効にする「改造が問題だ」と一方的に自己弁護をする同社は、17日、「製品自体に問題はない」と主張、また「訴訟大国の米国で1度も敗訴したことが無い」(パロマ幹部)とまで言い切り、事故の責任がないことを訴訟で負けたことが無いことを根拠とする論理を展開、同社の防御だけが目立つ恥ずべき態度を見せたのです。この態度から、先頃のシンドラー社の「製品に欠陥はなく、保守の問題だ」とする客観的根拠のない言葉が思い起こされます。
その後事件の概要が明らかになると、安全装置が壊れた際の交換部品の供給が間に合わなく、顧客の利便性を優先した安全装置を無効とする改造が横行していった事情が分かってきました。
安全装置に壊れやすい設計欠陥があり、そのため修理に必要な交換部品が届くまでは安全装置の無効化を容認する対策、それと換気ファンを「音がうるさいから」といって外す顧客の行動、それらの要因が引き起こした事故であることが分かります。
安全装置を無効にした装置では、換気ファンは絶対に必要ですが、それらの安全情報を提供することもなく、ただ事故が起きるのを放置したとしか見えない同社の対応は、企業の儲け優先・安全無視の姿勢が明らかです。
大手といいながらこの程度の会社であったということは、日本では同じように“大手”といわれながら安全も顧客のことも考えない企業がまだまだ多いのでしょう。雪印、三菱などの事件を数多く見てきた国民には、今後も同様な事件が起きる懸念をぬぐい去ることができません。
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■浴室乾燥機から発火、事故24件/三菱電機など4社製
経済産業省は30日、三菱電機やTOTOなど4社が製造し、INAXなどが販売した電気式浴室換気乾燥暖房機で、コードの接続工事不良が原因とみられる発火事故が2001年から計24件発生していたと発表しました。うち1件は家が全焼しましたが、いずれの事故もけが人はなかったようです。
同省は取り付け工事の際に本体のコードと屋内電線の接続が不十分なため、発熱し事故につながったと推定、事故を起こした乾燥機と同じ構造のコードを持つ三菱電機、TOTO、松下エコシステムズ、マックスの計4社が生産した計約36万台について施工業者に点検を要請しました。また利用者には点検が終わるまで使用を控えるよう呼び掛けています。
経産省によると、複数の細い電線を束ねた乾燥機本体のコードと、屋内電線のコードの接着が不充分だと電気抵抗が大きくなって発熱する恐れがあるといいます。[目次へ]
■トヨタ部長ら書類送検 リコールせず欠陥放置
トヨタ自動車がRV車の欠陥を認識しながら約8年間リコールを届け出なかったため、5人負傷の交通事故が発生したとして、熊本県警交通指導課は11日、業務上過失傷害容疑で同社のお客様品質保証部長ら3人を書類送検しました。
ほかに書類送検されたのは、前々任の品質保証部長の自動車部品会社役員と、前任部長のトヨタ自動車リコール監査室長で、調べでは、いずれも男性の歴代部長3人はRV車のかじ取り装置に強度不足の欠陥があるのを1996年ごろから認識、しかしリコールを届け出ずに2004年8月に熊本県で5人負傷の事故を引き起こした疑いが持たれています。
トヨタ自動車は04年10月にリコールを実施、同社は「96年当時はリコールが必要との認識はなく、3人に落ち度はない」としています。
12日になると、同社が1988年に車両のモデルチェンジをした際、安全実験をせずに問題の部品を使用し続けていたことが12日、熊本県警の調べで分かりました。
実験は法律で義務付けられているものではありませんが、熊本県警は「安全確認のために実験は必要」とみています。一方、トヨタ自動車は「捜査内容にかかわることなのでコメントは控えたい」としています。
調べで欠陥が指摘されたのは、RV車「ハイラックスサーフ」のかじ取り装置「リレーロッド」で同社は1988年にモデルチェンジを実施、前輪にかかる荷重が95キロ増えることに対し、安全実験をせずに旧モデルのロッドを使用し続けたといいます。
その後トヨタは20日、道路運送車両法に基づく報告書を国土交通省に提出しました。報告書提出後に記者会見した瀧本正民副社長は、平成16年10月のリコール時に国内46件、海外36件の計82件の不具合情報を把握していたことを明らかにしました。国交省は21日にトヨタ幹部を国交省に呼び、業務改善指示の行政指導を行う方針を固めました。
同日午後、都内のホテルで会見したトヨタの渡辺捷昭社長は、「事故に遭われた方にお見舞い申し上げるとともに、心配をお掛けし、お騒がせしたことを深くおわびしたい」と、今回の欠陥車放置問題について、トヨタトップとして初めて謝罪しました。しかし「当時の判断としては間違っていなかった」などとこれまでの主張を繰り返しました。
国交省ではユーザーやディーラーから寄せられた不具合情報が社内で共有されておらずリコールの遅れにつながった恐れがあるとして、社内の連携を強化し、再発防止策の提出を求めるとしています。
82件の不具合情報のうち国交省が特に問題視しているのは、問題の部品を改良した平成8年までに見つかった5件の折損報告で、これは、ディーラーからリコールの判断材料となる「市場技術情報」としてトヨタの品質保証部に情報が上がっているものです。
最近のトヨタのリコールですが、2005年までに2年連続で180万台を突破、今年はすでに100万台を越えています。米国でもプリウスなど4車種で、エンジンセンサーの不具合などから合計約40万台を届け出ています。
2003年3月以降、世界販売台数を毎年50万台以上のペースで伸ばしてきた同社ですが、事業急拡大の裏で系列部品メーカー生産ラインの死亡事故が05年は20件以上に急増しているという事実もあります。
効率優先の中で、今回の事件の土壌が作られてきたことに気づかなかった大企業トヨの問題があったのでしょう。[目次へ]
■七面鳥とハムに米産牛肉交じる/農林水産省発表
農林水産省は14日、米国から輸入された七面鳥と豚ハムのコンテナに、BSE問題で輸入が禁止されている米国産牛肉1箱が積み込まれていたと発表しました。
米国産牛肉の輸入再開に向け、安全対策を確認するため政府の調査チームが出張中という微妙な時期でのミスに対し、同省幹部は「相変わらず米国の管理体制はずさん。何とかならないものか」といら立ちを見せています。
農水省によると、七面鳥と牛肉が同じ食肉工場で加工されていたため、米国の輸出業者が誤って積み込んだ可能性が高いといいます。同省は日本の輸入業者に焼却処分を指示していて、市場に出回ることはありませんが、米国側に必要な改善措置をとるよう申し入れました。
米国式管理のずさんさがまた露呈しましたが、牛肉輸入再開後に決定的な管理ミスが発覚、再度の輸入停止を望みたい気がします。[目次へ]
■清涼飲料に発がん物質、基準の7倍/厚労省DHCに回収要請
厚生労働省は28日、食品添加物の安息香酸(保存料)とアスコルビン酸(酸味料)の2つが含まれている清涼飲料水「アロエベラ」から、世界保険機構(WHO)が定める基準の約7倍の発がん性物質ベンゼンを検出したと発表しました。
同省は27日、アロエベラを販売するディーエイチシー(DHC)に分析結果を通知して自主回収を要請しました。
今春以降、英米などで清涼飲料水中の安息香酸とアスコルビン酸が反応してベンゼンが生成されることが分かり、WHOの飲料水基準(10ppb)を越える製品の自主回収が行われました。このため同省は国内で販売されている清涼飲料水中、安息香酸とアスコルビン酸が含まれている31製品を検査、アロエベラからベンゼン73.6ppbを検出したとのことです。
厚労省の規制以前に企業が情報を収集・対策をとるのが一般ですが、他の30製品は基準以下だったということから、同社だけに問題があったと思わざるを得ません。宣伝で良く目にする同社ですが、同社の品質・顧客満足度のレベルはかなり低いように思います。[目次へ]
■大豆加工品9%が不適正表示/農水省調査
豆腐や湯葉、納豆など大豆加工品を販売している303業者を農林水産省が抽出調査した結果、約9%に当たる27業者が、国産大豆を使っていないのに「国産大豆使用」と表示するなど不適正な表示をしていることが5日分かりました。
内訳は「国産大豆」と表示しているのに全く使っていなかったのが3業者、外国産を混ぜていたのが8業者、近隣県などと表示と違う産地の大豆を使用していたのが9業者、有機栽培でないのに「有機大豆」と表示していたのが4業者、などとなっています。
また大豆加工品延べ17万7409点のうち、みそで原則禁止されている「天然」や、加工製品のため豆乳で禁じられている「自然」といった用語を使ったり原材料名や内容量など義務付けられた表示事項がかけていたりしていたケースが述べ2359点あったといいます。
相変わらずの表示に関する違反者の多さですが、見た目優先の包装、柑橘類のへたを見せないなどの鮮度情報を隠すパッキングなど多くあります。これらは業者の意図的な行為で、「できればだましたい」とする考えが根底にあるとしか思えません。それを容認、鮮度の悪い商品を買わされてもクレームを入れない国民性が生んだ環境でもあります。しっかりしなければいけないのは消費者・国民なのですが、まだまだ非力です。
また生鮮食品では新鮮さが命なのに収穫日の表示がないなど、農水省管轄の食品表示の品質条件はまだまだ甘いのは同省の怠慢でもあります。見た目で品質がわからない玉ねぎなどの野菜では、早急に収穫日表示の導入を進めてもらいたいものです。「だましたい」とする生産者・業者がいるのに、表示に頼るしかない消費者は何もできないのです。[目次へ]
■海のエコラベル、MSC認証表示の取り組み始まる
環境保護団体WWFインターナショナルと食品会社が1997年に結成したMSC(海洋管理協議会)の認証ラベルが注目されてきました。MSC活動の概要ですが、
- 過剰な漁獲を行わず、資源を枯渇させないこと、資源が枯渇している場合は、回復できる場合のみ漁業を行うこと
- 漁場となる海の生態系やその多様性、生産力を維持できる形で漁業を行うこと
- 国際的、または国内、地域的なルールに則した漁業を行うことで、持続的な資源利用ができる制度や社会的な体制をつくること
となっています。
東京・築地の中卸業「亀和商店」では、今年4月に流通・加工の分野で認証を受け、6月からMSC認証ラベルを貼った米国アラスカ州産のサーモンの販売を始めましたが、客の反応は上々だといいます。
また京都府北部の日本海沖合いで操業する漁業者15人がつくる「京都府機船底曳網漁業連合会」は、今年MSC認証の審査を受けました。事務局では「認証を起爆剤に、漁業者の努力を消費者に知ってもらい、魚に付加価値を付けたい」といっています。
同連合会では70年代に乱獲がたたり漁獲量が急減、会員全員で操業禁止区域や禁漁期間を作り、脱皮したての水ガニの漁獲を制限するなど自主規制を始めました。隣の兵庫県や福井県に比べかなり厳しいルールですが、1992年に850トンまで落ち込んだ漁獲量は2003年には1080トンまでに回復してきたといいます。
審査は5月、面接と船上の調査など、MSCの認証機関でエコラベルの審査や認証業務をするオーストラリア企業が行い、年末に認証されるかどうかが決まります。
国連食糧農業機関の調査では、世界でとられる漁獲の24%が乱獲されているかほぼ枯渇、漁獲量の30%は違法との指摘もあると言われています。このことから消費者が購入する水産物が、適正な管理のもと市場に提供されていることの重要性がでてきます。ポリシーがしっかりした生産者の商品であれば、当然丁寧な品質管理が期待され、海のエコラベル表示の海産物を購入する人は増えていくことでしょう。[目次へ]
■ペット連れ自粛要請/高山植物等保護対策協、本年度の重点目標
高山植物や自然保護を目的とする高山植物等保護対策協議会の本年度総会が、長野市の中部森林管理局で開かれました。
総会では、高山植物保護の啓発活動として、高山帯へのペット持ち込み自粛に向けた指導、保護パトロール強化を柱とする本年度事業計画を承認、県内5地区の協議会が、昨年度事業を総括し、本年度の重点目標を報告しました。
同協議会によると、高山植物にペットともに寄生虫や菌が持ち込まれ、生態系に悪影響を及ぼすケースも懸念されていますが、ペット持ち込みに関する法規制が無く、飼い主に自粛を要請するしかないのが現状だといいます。
ペットの持ち込みは一般入山者以外にも、山小屋のオーナーなど様々な人がいます。彼らに生態系破壊の事実を粘り強く示すのも難しいものがあります。小学校での教えの充実や、環境省が率先してキャンペーンなどを展開、しかるべき時期に法制化するのが望まれます。[目次へ]
■終わりに
「ラッパのマーク」でお馴染みの大幸薬品の胃腸薬「正露丸」に似た包装で、同種で同じ名称を使った薬を販売するのは不正競争防止法違反に当たるとして、同社が和泉薬品工業に販売差し止めと損害賠償などを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は27日、「図柄が異なり、両社の製品を混同する恐れは認められない」と、請求を棄却しました。
どう見ても似ているようなのですが、個々のパーツの似ている似ていないを判断、全体のイメージという曖昧さが残る領域に対して司法は判断しない、ということかも知れません。缶ビールでの訴訟もありましたが、どうも真似をする側への配慮が大きいような気がします。
薬局で間違いそうになった、あるいは実際に間違えたかなどの調査をすればすぐに両商品を混同するかどうかの情報が得られるので、そのような調査データも審理上の参考としてもらいたいものです。
いずれにしてもオレンジ色に赤文字、シンボルマークが上部の白抜きの円内に記載、右下にもシンボルマークを配置、全体を囲む枠模様の類似性などを見る限り、後発メーカーの模倣というのは明らかだと思うのですが…。[目次へ]
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