Web版

2006.1 No.145  発行 2006年1月20日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

 

[ ASP トップ ] [ ASPニュース2006 ]

ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

.



.

12月のニュースから

■洗濯乾燥機、火災の恐れ/日立、23万台回収

 日立製作所の家電子会社である日立ホーム&ライフソリューションは20日、洗濯乾燥機「白い約束」シリーズの一部機種に不具合が見つかり、最悪の場合は火災に至る恐れがあるとして、計約23万8000台を無料で点検・修理すると発表しました。

  対象は、2001年8月から2002年12月にかけて製造された「NW-D8AX」「NW-CSD80A」「NW-D8BX」「NW-D6BX」の4機種で、いずれも国内で販売されたものです。

 使用状況によっては、ヒーターのリード線が断線、発火する恐れがあり、今年に入り計5件、設置場所の壁が焦げるなどが起きましたが、けが人は出ていないといいます。

 松下の温風ヒーターに続き日立も回収騒ぎです。しかも日立の場合は松下と違い単純な製造不良のようで、23万台も出荷した後での対処、というのはどうだったのでしょう。品質特性として確認される振動試験、耐久試験などは各国の安全規格に準じることが多いのですが、製品の想定ライフサイクル内での火災・感電の危険をどのように評価していたのでしょうか。

 皮肉な見方ですがリコールは決して早くはなく、それでも松下の事故がなければもう少し様子を見ていたかもしれません。点検・修理費用20億円程度で済みそうだというのは、同社にとっては単に良い時期に巡り合ったということだけかもしれません


目次へ


.

タミフル耐性、死者から検出/ベトナム

 鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染して死亡したベトナムの患者2人から、抗ウイルス薬タミフルへの耐性を持つウイルスが検出されたことが22日分かりました。耐性ウイルスによる死亡は初めてだと見られています。ベトナムや米国の研究チームが同日付の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表しました。

 耐性ウイルスが見つかったのは13歳と18歳の少女で、いずれも1月に入院後タミフルによる治療を受けたものの、それぞれ発症8日目と20日目に死亡したものです。

 まだ鳥インフルエンザが散発的に発生、その大流行前にタミフル耐性を持つウイルスが出現してしまいました。このウイルスがすでに他の動物・ヒトに感染している可能性もあり、これからタミフルを備蓄しようとしている世界中の国々の対応にも影響が出そうです。

 一方、米疾病対策センター(CDC)の動物実験で、感染後の増殖レベルは普通のインフルエンザの数千倍、タミフルを感染1日後に投与しても手遅れなことが分かってきました。

 また現在の技術は流行発生後にサンプルを取得、鶏の卵の中で一つひとつ培養するという1950年代の技術のため、ワクチン製造までに早くても5、6カ月もかかかるといいます。そのため鳥インフルエンザのリスクを減らすには、どのタイプのウイルスにも対応できる新しいワクチン製造技術の開発が急務だと言われています。

目次へ



タミフル、服用後39人死亡/発売後の5年、厚労省調べ

 厚生労働省は15日、新型インフルエンザに有効とされる抗ウイルス薬「タミフル」について、2001年2月の国内発売から約5年間で医療機関などから報告された服用後死亡例の状況をまとめました。

 それによると、服用後に死亡したのは39人で、17才以上が26人、16歳以下が13人でした。うち17才以上の2人が「(服用と死亡の)因果関係が否定できない」とされ、残る37人は「因果関係が否定的」「なし」だったといいます。

 タミフルの安全性について同省は「現時点でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えていない」と結論づけています。そうでなくても世界で一番タミフルを消費している我が国では、同省の御墨付きをもらったことでもあり、また販売元や医師・病院の利益につながることから、今まで以上にタミフルの乱用が懸念されます。

 ベトナムでは鳥インフルエンザウイルスに感染して死亡した患者2人から、タミフルへの耐性を持つウイルスが始めて検出されたこともあり、日本でこの種のウイルスが検出されることも時間の問題かもしれません。また、一部の病院で行われているタミフルをインフルエンザ予防に使うという処方は、耐性ウイルスの発生リスクを高めるだけだと思います。

目次へ


.

三菱ふそう子会社が不正車検/3年間で積載量水増し

 三菱ふそうトラック・バスの100%子会社の荷台架装メーカー・パブコが1970年代から昨年5月まで、トラックの車両重量を実際より軽く偽る手口で車検を不正取得し、最大積載量を水増ししていたことが20日、分かりました。

 国交省は「極めて悪質」として同日、パブコに警告書を交付、改善措置を求めました。三菱自動車製大型車のタイヤ脱落事故で三菱ふそうの元会長らが逮捕された昨年5月、パブコは車検の不正取得を中止、しかし国交省などには連絡せず1年半にわたり隠ぺいしていました。この不正は国交省への匿名の内部通報をきっかけに発覚したものです。

 国交省によると、トラックの最大積載量は、大きさごとに決められた車両総重量から燃料などを含む車両重量を引いた重さで決まり、同社は通常より小さい燃料タンクを取り付けて新車登録、その後、大きな燃料タンクに付け替えるなどして最大積載量を水増ししていました。水増し分は最大1.2トンにも及んでいるということです。

 最大積載量が増えれば、販売先の運送会社などは荷物や燃料を多く積める利点があることから、安全を無視して顧客獲得に奔走する同社のやり方は、犯罪行為として厳しく罰してもらいたいものです。

目次へ


.

中国漁船がメバチマグロ産地偽装/水産庁DNA検査で判明

 中国から太平洋産として11月に日本に輸入された148トンのメバチマグロが、数が減っているため規制の厳しい大西洋産だったことが水産庁によるDNA検査で明らかになりました。

 関係者によると、漁業資源管理機関「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」の規制を逃れるため、規制が比較的緩やかな太平洋産と偽った疑いが強いものです。輸入時には「太平洋産」とする中国政府発行の証明書があったため、正規の手続きが行われ、マグロは既に日本の市場に出回っているといいます。

 水産庁は中国の証明書に虚偽があったことを重視、中国政府に事実関係の調査と関係者の処分、再発防止措置を取るよう求める異例の申し入れを行いました。

 水産庁は遼寧省金輸遠洋漁業有限公司所属のマグロはえ縄船「遼金輸102」が11月に静岡県の清水港でメバチマグロを水揚げした際に採取したDNAを分析、大西洋産と判明したものです。

 昨年、台湾が大西洋での規制逃れのために産地を偽ってマグロを日本に輸出していたことが判明、国際的な非難を浴びたばかりですが、このような不正が横行することは資源管理の枠組みを揺るがす重大事との批判が出ています。

 また日本が世界中のマグロを高値で買いあさっているような現状では、「不正をしてでも売りたい」という国・業者は今後もあとを絶ちそうにありません。資源管理においては特定の国の突出した消費量を何とかしなければなりませんが、各国の漁獲量枠の制限では押さえ込むのは難しく、大人1人の年間消費量というものから妥当な漁獲・輸入量を日本自ら提示する必要があります。

 「需要が減れば乱獲も減る」と言う単純な構図ですが、そのようなアクションに対し「食文化を壊すものだ」との反論は必死で、儲け優先社会を放任している我が国の現状では期待できそうもありません。

目次へ


通販のベルーナ、人工真珠を南洋産と表示

 外国産の貝殻を使用した人工真珠を天然真珠であるかのように広告に記載・販売したのは、景品表示法違反(優良誤認)の恐れがあるとして、公正取引委員会は7日、通信販売会社ベルーナ(埼玉県上尾市)に警告しました。

 公取委によると、同社は2000年2月から今年7月までの間、通販カタログ「ルフラン」や新聞の折り込みチラシに「南洋オーストラリア産マーメイドパール」「大粒12ミリ真珠の逸品」などと記載してネックレスを2万9800円で販売していました。しかし、実際はオーストラリア産のシャコ貝の貝殻を中国で加工し、日本で真珠に見えるようコーティングしたものだった、というからひどいものです。

 公取委は、説明書の中に「貝パール」と表示してあるものの、一般消費者にはこの表示だけでは分からないとして、自主的に改善を求める指導をしましたた。同社は「貝パールと書けば問題ないと考えていた」などと公取委に釈明したといいますが、そんな言い訳しかできない同社の顧客を騙す商売が透けて見えます。

 ベルーナは1977年設立の東証1部上場、通信販売業界では2003年度7位の大手で、この商品では約3億円の売り上げがあったといいます。現在は販売を自粛しているといいますが、同社は昨年、レトルトカレーの具材などの原産地を偽ってカタログに表示、販売したなどとして、公取委から景品表示法違反で排除命令を受けているのに、今回の事件です。舌の根が乾かないうちの不正とは、全く反省などないのでしょう。このような会社の不正がどの程度消費者に認知されいるのでしょうか。賢い消費者が健全な企業を育てる、ということになって欲しいものです

目次へ


内部告発の窓口設置、不正研究者には罰則/文部省が導入検討

 国内外の研究者による論文のでっち上げが相次いで発覚する中、文部科学省が大学や研究機関内部からの不正告発を受理する仕組みを整備し、不正が確認された研究者に罰則を科す制度の導入を検討していることが28日、分かりました。

 大学・研究機関毎に告発受理窓口を設置、窓口の運用指針をまとめ、告発の書式や告発者を保護する方策なども盛り込むとしています。不正が確認された場合、文科省が研究者の計画を審査して配分する「競争的研究資金」について応募資格を最大で5年間停止したり、受け取った資金の返還を求めたりします。

 韓国・ソウル大でES細胞の研究成果ねつ造が問題となり、技術者による耐震強度偽装事件といった不正事件がニュースを賑わしています。研究者、技術者による不正をモラルの問題として個人の資質で片付けるだけでは、今後も同様な不正は後を絶つことはできないでしょう。

 ある生命科学の研究者は、指導教授から「不都合なデータはグラフから除くように」と指示されたものの、それをできずに元のグラフを使い論文を書いたところ、怒られ、結局研究職を辞したといいます。

 しかし、このような研究者はまれで、大半は悪いことだと知りながら真実を貫くことができないままなのでしょう。そこには現社会の利益追求型の勝者第一主義から逃れられない人間の弱さがあるようです。そのため不正をしない人、不正を告発する人に対する社会的な“居場所”を提供する必要があると言われています。

 今回の文科省の研究者に対する罰則制度で、どの程度の効果があるのかは分かりませんが、論文偽造などと同じように、倫理観が希薄になっている研究現場では、あまり効果はないかもしれません。

 現在は真面目で正義感の強い人が報われる社会ではなく、真面目でなくても冗談が得意で人を笑わせる人、金儲けに長けている人がもてはやされる風潮にあり、倫理・道徳といった社会正義を躾られなかった、あるいは教育されてこなかったことに根本の問題がありそうです。

 したがって不正をする人を助長するような社会構造を変えるには、不正・罪に対する応分の厳しい処罰しか有効な手だてはないのでしょう。躾と同じく、「言って分からなければ罰」という当たり前のことになりそうです。

目次へ


タクシー受動喫煙訴訟、「全面禁煙望ましい」/東京地裁判決

 「国がタクシー車内の喫煙を防止しなかったため、受動喫煙で健康被害を受けた」などとして、タクシー乗務員や利用客26人が計1360万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、東京地裁でありました。柴田寛之裁判長は「禁煙タクシーの利用を望む人の立場に立つと、タクシーの全面禁煙化が望ましい」との判断を示しました。タクシーの受動喫煙を巡る同種訴訟のうち、全面禁煙の必要性を認めた司法判断は初めてだといいます。

 判決は、請求そのものは「国には社内禁煙を許容した事業者を規制する権限も、行政指導する義務もない」と棄却しました。判決理由で柴田裁判長は「分煙が不可能な密閉された車内では、タクシー乗務員は、乗客の吸ったたばこの副流煙を恒常的に吸わされることになり、健康に及ぼす影響は看過しがたい」として、「事業者は乗務員の清明・健康を保護する安全配慮義務を負っている」と認定しました。

 その上で「タクシーの禁煙化は他の公共交通機関に比べて著しく遅れている。事業者の自主性に任せたのでは早急な改善は困難で、普及に対する国の適切な対応が期待される」と指摘、「乗客の一般的な乗車時間や頻度からすると、全面的に禁煙としても、円滑な利用に支障を生じるとは考えにくい」として、全面禁煙化の必要性に踏み込んで言及しました。原告らは判決理由から「実質勝訴だ」として控訴しない方針のため、判決が確定されることになります。

 健康増進法では交通機関にも受動喫煙の防止措置をとるよう定めていますが、禁煙タクシーは全体の約2%しかなく、これは問題視されなければなりません。タクシー事業者は現状を改善しなければ、訴訟リスクが増すと考えるべきでしょう。

目次へ


歩きたばこ禁止条例、ぜんそくの中1市議会を動かす/静岡

 ぜん息の持病があり「歩きたばこ禁止条例」の制定を求めて署名などの活動をしてきた静岡市立安東中学校1年の大石悠太くん(12)が6日、制定を求める請願の主旨を市議会市民委員会で説明し、請願は全会一致で採択されました。市議会事務局では、請願は15日の本会議でも採択される見通しだといいます。

 大石君は小学4年のとき、たばこの煙でぜん息の発作を起こしたことから、たばこの害に関心を持ち、自由研究のテーマとして調査してきました。中学入学後の商店街で条例の賛否を問うアンケートをしたほか、仲間と一緒に署名活動を続け、11月18の日に2万3600人分の署名簿を添えて請願を提出したものです。

 小さな力が多くの人の賛同を得て、たばこの煙の被害から弱者を守る条例ができたことは、一部の喫煙者に媚びる飲食店の多い中、何やらホッとするものがあります。

目次へ


日本の都市景観不評

 日本の都市景観が「欧州と比べて美しい」と感じている日本人は5.0%、「日本の方が自分の国より美しい」と思っている外国人も16.6%にとどまる、と中部開発センターが12日発表したアンケート結果から、日本の都市景観に対する評価が日本人、外国人ともに低いことが分かりました。

 調査は、同センターが来春まとめる都市景観に関する提言の参考にするため実施、インターネットを通じて全国の日本人5219人と、名古屋周辺にすむアジア、北米、欧州など出身の外国人318人に郵送などで行ったものです。

日本の景観で外国人に不評だったのは(複数回答)
 1. 電線・電柱(62.4%)
 2. 花や緑が少ない町や通り(58.3%)
 3. けばけばしい看板・広告(34.1%) の順でした。

日本人では
 1. 散乱しているゴミ
 2. けばけばしい看板・広告
 3. 電線・電柱 となっていました。

 外国人に不評だった電線、電柱ですが、欧米諸国では電線の地中化が進んでいるため、日本のようなごみごみした印象は無くすっきりしています。日本の自然豊かな地方都市では、田園風景を写真に収めたくても電線・電柱が景観を阻害してしまいます。

 また、建物の上や壁面に取り付けられた看板類、はては駐車場の歩道側に林立する広告の旗まで、けばけばしい色や派手さなどではなく、設置場所の制限がないことも大きな問題です。これは政治が企業や業者のやりたい放題を黙認している結果だと思うのですが、国民の財産ともいうべき景観問題をもっと考えてもらいたいものです。

 電力会社は儲かっているようですが、他の先進諸国で行われている同等の景観品質が提供できないというのは、企業のどこかに無駄があったり、あるいは企業だけ儲けて消費者・国民に不利益を負わせていることにもなります。
このように国民のやすらぎや心地よさなどといったことを実現しようとしない日本社会は、ある意味文化的には遅れた国だと思うのですが、どうでしょう。最近、いくつかの地域で世界文化遺産の登録を目指していると聞きますが、観光資源をしゃぶりつくすような地域エゴと商売を優先するような、恥ずかしい国のようです。。

目次へ


[ ASP トップ ] [ ASPニュース2006 ]