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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。「定期購読について」
■天竜川下り舟転覆/安全管理の問題は?
■食品添加物や原材料の見直し進む/JAS規格、全品目の見直作業から
■フグ養殖に禁止のホルマリン使用/香川など3県でも発覚
■家畜用飼料添加物効果なし/抗生物質12種、農水省内部報告書公表せず
■毒劇物、危うい管理/厚労省病院調査
■ハクビシン非公開?公開?/長野県内の動物園事情
■内部告発者保護の新法作り/制度案の報告書まとまる
5月のニュースから
■天竜川下り舟転覆/安全管理の問題は?
長野県飯田市の天竜川で23日、「天竜川下り」社の観光船が急流で岩に乗り上げ転覆、京都府の中学生ら29人が川に投げ出されました。たまたまラフティングのボートで近くを通りかかったインストラクターたちに救助されたことで死者は出ませんでしたが、700メートル下流まで流された生徒もいたことから、安全管理上の問題がなかったか問われています。同船には救命クッションがありましたが、生徒達は両腕をクッションに通して着用するには間に合わず、用具をつかんだまま船から転落したようです。今回は敏捷な生徒達が乗客であったため惨事にならなかったのですが、これが中高年・老人を含めた客であったら、と思うと恐ろしくなります。
同社では1987年5月に流木に舟が乗り上げ転覆、2人が死亡、1人が行方不明の事故を起こしたことから、乗客に救命胴衣の着用を義務づけたことがあります。しかし夏の暑さや胴衣の汚れなどから客からの苦情が出たため、すぐに救命クッションに戻した経緯があります。今回救助に当たったインストラクターは、「救命胴衣なら肩に取っ手があり、救助しやすいようになっている。だが子供達は胴衣を付けておらず、救助に手間どった」と話し、救命クッションにつかまって助けを求める子供達を救助するのも大変だったようです。
エンジンのない船の運航の安全管理を定める法律がないことから、このような事故が起きるたびに運航会社の安全管理が問題視されますが、いつの間にか忘れ去られてしまいます。業者任せの安全管理で過去に死者が出ている同社では、今回の事故は運が良かったとの認識に立ち厳格な安全管理体制を導入してもらいたいものです。また安全面からは救命胴衣の必要性が言われていますが、客も自身の安全のためには暑いなどといわずに多少の我慢をすべきでしょう。また、胴衣の汚れは運航会社が定期的に洗うことで解決でき、同社ならずとも全国の川下り会社でも検討してもらいたいものです。[目次へ]
■食品添加物や原材料の見直し進む/JAS規格、全品目の見直作業から
農林水産省では現在のJAS規格を見直して、対象となる63品目の加工食品の食品添加物の種類を必要最低限にするとともに、原材料も増量目的のものを制限し、国際的な食品規格(コーデックス規格)との整合性を図るための作業中で、これまでジャム類やマカロニ類などの規格が決まりました。
ジャム類では果実の含有量について見直しを行い、イチゴやリンゴなどの特級で45%、標準で33%以上、あんず・ブルーベリーなどの特級35%、標準25%、パッションフルーツの特級8%、標準6%以上から、新規格では果実の種類に関わらず「特級」は一律45%以上、「標準」は一律33%以上に統一されました。
業者に都合のよい規格から少しは前進したものですが、ジャムといいながら果実が8%しかなくても「特級」などと表示できた今までが異常でした。もともとジャムは果実と砂糖だけで作るもので、好みに応じてレモン汁などを入れる程度でしたが、メーカー製のものは保存料などの添加物を初め、ゲル化補助剤で固めたりするものばかりでした。もちろんそれは原材料コストを減らし、それらしい食品を作ること、つまり儲けるために欠かせない手段でしたが、JASもようやく規格の見直しをしたわけです。
また食品添加物は「特級」で8種類、「標準」で14種類認められていましたが、両者とも酸味料、pH調整剤など5種類に減らしました。スパゲティやマカロニ類に使用できる原料の小麦粉はデュラム小麦粉と強力粉でしたが、新しい規格ではデュラム小麦粉に限定し、食品添加物の不使用も盛り込まれました。
しかしこれらはJASマークを付けるときの条件で、現在の食品では任意である同マークを付けていないものも多数あります。企業の虚偽表示も当たり前の世の中、JASマークを付けていても食品の安全性が保証されるものではありません。
スペックを提示する規格ならば、違反防止の厳格なシステムがなければ守られない、ということを同省は認識すべきでしょう。またJASマークの信頼性とそれに基づく消費者へのアピールという優位性がなければ、規格に適合するための負担を逃れる企業も出てきて、その結果同制度が疲弊していくかも知れません。食品の品質や安全性を、生産者・業者・企業任せとしない、第三者機関による検証が強く望まれます。[目次へ]
■フグ養殖に禁止のホルマリン使用/香川など3県でも発覚
長崎県のトラフグ養殖業者の6割が、発ガン性を指摘され使用を禁じられているホルマリンを使用していたことが4月に明らかになりましたが、その後香川、大分、熊本の3県でも寄生虫駆除の目的などのために使用していたことが8日分かりました。
香川県によると高松市内の1業者が寄生虫対策で約8,000匹にホルマリンを使用、県は出荷していない約3,000匹の出荷停止を要請しました。同県水産課は「県内では使用されていないという認識だった」などと話していますが、検査などの客観的データに基づかない他人事のような発言です。
熊本県では1業者が2001年に500リットル、2002年に100リットル使っていたことが判明、業者は昨年10月から今年1月にかけて約1万匹を出荷したといいます。同県では業者に残り4万匹の出荷停止を要請しました。大分県では1業者が2001年に使用したことが分かり現在詳しい調査を進めています。
4月、養殖フグ生産高が日本一の長崎県では実に151業者の6割の95業者が、寄生虫対策に使っていたことが長崎県の調査で分かっています。どうも業者・企業というのは、シェアが高く規模が大きくなると安易な法律無視の行動に出るようです。法律を遵守できない麻痺した感覚を持つ企業・業者が多いということは、これからも雪印、日本ハムなどに連なる事件がいくらでも起きるということです。[目次へ]
■家畜用飼料添加物効果なし/抗生物質12種、農水省内部報告書公表せず
狭いケージ内で運動もさせずに飼育するブロイラーでは、体力・免疫力の低下やストレスなどから鶏の病気が発生しやすくなります。そこで飼料に抗生物質を混ぜることになりますが、成長促進効果がある抗生物質は、短期間で家畜を出荷できるといううま味があります。そのため農協の勧めなどで多くの農家が効果を期待して抗生物質入りの家畜用飼料を使用し続けてきたのです。
ところが農水省が1991年にまとめた「抗菌性飼料添加物の食肉等の残留調査報告書」と題する内部報告書では、抗生物質を使用した場合と無添加の場合での体重の推移に有為差が認められなかった、と結論付けていたことが4日分かりました。調査は農水省が国内の試験機関に実験を依託、飼料安全法で飼料添加物に指定している抗生物質と合成抗菌剤計29種類のうち、12種類を調べたものです。実験対象は豚計約160匹とブロイラー計約270羽で、90年5月〜10月まで豚は4週間、ブロイラーは8週間飼育し、これらの抗生物質を「使用した場合」(量は4段階)と「無添加の場合」に分けて体重の推移のデータを集めました。
内部報告書はブロイラーについて「抗生物質の無添加と添加に著しい差はなく、いずれも順調な発育を示した」と結論付けています。
農水省飼料課では「報告書は、抗生物質が家畜にどの程度残留するかを調べるのが目的で、この結果で効果の有無を判断するのは間違い」、「他のデータでは効果が出ている」としていますが、同省では「他のデータ」を公表せず、今回明らかになった報告書の内容も新たな実験で検証してはいないようです。同省のいう「他の有為さのあるデータ」がどのようなものか分かりませんが、客観的に評価できるデータが公表されないことから、おそらく信頼できるデータではないのかも知れません。疑ったらキリがありませんが、そのデータは年代不詳の文献などを張り合わせただけかも知れません。
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■毒劇物、危うい管理/厚労省病院調査
器具の消毒や検体の保存などに毒劇物を使用している病院で、保管場所にカギが付いていないケースが78%もあることが厚生労働省研究班の調査で分かりました。しかも「毒劇物」表示のない場所での保管も84%に上り、医薬品に隣接する棚に置かれているなど管理上の問題点が明らかになりました。
調査は昨年9〜11月に東京都内にある520〜1,103床の5つの病院各診療科など計163部署を対象に実施したもので、回答した136部署のうち94部署で毒劇物の使用実績がありました。使われていたのは消毒に用いるパラホルムアルデヒドや、病理検体保存用のホルマリン、尿防腐剤のアジ化ナトリウム、トルエンなど6種類でした。毒劇物ごとに各部署での管理状況を訊ねると、127件の回答があり、保管場所に毒劇物である表示をしていないケースが84%に上り、「カギがない」というケースも78%もありました。また保管場所が毒劇物専用になっていないものも73%ありました。
毒劇物や副作用の強い特種な医薬品などの管理に対し、医療現場の基本的な努力が感じられない現実には驚きを感じます。一般企業での危険物管理はまともで、容器のラベルには赤の縁取りを施したり、保管場所にも特別の彩色を行い誰が見ても分かるように対処しているものです。ちいさな小瓶でもラベル色を注意を促す黄色とし、縁を黒色にするだけでもその視認性は格段に上がるものです。国際規格はもとよりJISなどでも採用しているサイン・標識に関する基準を少し取り入れて、ケアレスミスの防止に努めてもらいたいものです。[目次へ]
■ハクビシン非公開?公開?/長野県内の動物園事情
世界保健機関が新型肺炎ウイルスと非常に近いコロナウイルスを中国や香港の野生のハクビシンとタヌキから検出した、と発表したことから、長野県内の動物園ではハクビシンの一般公開を見合わせるところが出てきました。
松本市アルプス公園にある市営の動物園では、昨年秋に松本市内で保護され飼育、公開してきたハクビシン2匹を27日からおりの奥の小部屋に隔離しました。同市公園緑地課では「不安が広がるといけないので、はっきりしたことが分かるまで隔離する」としています。また長野市の茶臼山動物園も28日から2匹の公開を見合わせています。同園も「国内産で全く関係ないと思うが、来園者の不安を取り除くために公開中止を決めた」としています。
一方、2匹を飼育している飯田市立動物園と3匹を飼育している小諸市動物園では今まで通り公開を続けていて、小諸市動物園では「3匹とも新型肺炎が発生する前の10年ほど前から飼育を続けており、安全と判断した。むしろ隔離することの方が安全が確認されていないという不安を招くことになるのでは」と話しています。
何かあったときの自分の責任問題ばかり考える、そんな役人マインドの動物園を持つ松本、長野両市では他の行政品質や顧客満足度も低いのかも知れません。[目次へ]
■内部告発者保護の新法作り/制度案の報告書まとまる
内部告発者を保護するための新法作りが動き出し、内閣府の公益通報者保護制度検討委員会が7日、新制度案となる報告書をまとめました。しかし同案のまとめに際し3つ争点があり、保護すべき通報者は誰かということでは「事業者に雇用されている労働者」に限定され、雇用関係のない退職者や派遣社員、取引先社員などは保護の範囲から除外されてしまいました。
2つ目は何を告発できるかについてで、「規制違反や刑法犯などの法令違反」に限定されました。したがって事業者の行為が社会通念上、問題があると思っても明確な法令違反でなければ告発しても告発者は保護されない、というのです。つまり現行の食品衛生法上では賞味期限切れの食品を販売しても直ちに法律違反とはならないため、告発しても保護の対象とはならないのです。3つ目はマスコミなど社外に通報する場合の条件についてで、告発内容が「事実または真実であると信じるにたる相当の理由があること」となり、加えて「社内の通報窓口に告発した場合に不利益を被ったり、証拠が隠滅されるという確信がなければならない」という条件となっていて、「外部に告発したものが、社内通報していたら不利益を被る可能性があったということを裁判で証明するのは非常に困難」とも言われています。[目次へ]
終わりに
タイのチャート財務相が公用車のBMWに運転手と一緒に閉じ込められ、警備員がハンマーでガラスを割って救出する騒動がありました。これは車載のコンピュータが壊れたため、ドアやパワーウインドウが自動的にロックされてしまい、クーラーも停止した車内で10分以上缶詰めになったものですが、コンピュータ搭載の商品がこれからも増えていくなか、フェイルセイフのあり方が気になる事故でした。
コンピュータシステムが壊れたときに、一般にはモータなどの動力源が止まる安全モードになりますが、高級車の場合は盗難防止システムが搭載されていることから、今回はコンピュータが壊れたときにそのシステムに異常をもたらしたようです。防ぐもの・人をコンピュータが常時認識している高度なシステムなら良いのですが、最終的に動作するメカニズムに異常事にロック、あるいは解除と、自在に替えられ安全システムは難しいのでしょう。
今後はオール電化の家やコンピュータ内臓の家電製品が増えて、それらがネットワークで結ばれるようになる、ということが言われていて、さまざまなアクシデントに対してシステムが常に人の安全側に戻ることが可能なのか、と少々心配でもあります。停電で家の鍵が使えない、でも泥棒に入られたら困る、という相反する事態は必ず出てくるものです。最後の最後で物理的なメカニズムで復旧できるシステムがなければなりません。[目次へ]
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