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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
「定期購読について」
■魚料理にPL責任/料亭に1,200万円の賠償命令
■東京女子医大、また医療ミス/警視庁、業務過失致死傷で捜査
■子供服「アトピーノンノン」回収/イオン
■医療事故防止に患者に協力を求める新しい動き/船橋市立医療センターなど
■未検査米に「新潟コシヒカリ」表示/木徳神糧、200トン販売
■有機JAS認定で不正発覚/NPOの日本オーガニック農産物協会
■車のガソリンにアルコールを/環境省2008年から切り替え
■企業の環境品質認定で取引決定/ソニー、新制度4月に導入
■レストランの禁煙進む
12月のニュースから
■魚料理にPL責任/料亭に1,200万円の賠償命令
割烹料亭が出した料理の魚に含まれていた毒素が原因で食中毒になったとして、千葉県内の会社員ら8人が製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、料亭側に「イシガキダイの洗いや塩焼きもPL法の製造物にあたる」として、約1,200万円の支払いを命じました。
判決理由で深見裁判長は「イシガキダイという食材に手を加え、客に提供できる程度に調理しており、原材料に新しい価値を加えたPL法の『加工』に該当する」と認定したものです。合わせて「毒素を含んでいたことは製造物の欠陥に当たり、料理店経営者は賠償責任を負う」としています。毒素は海草の表面に付着している藻が作るもので、魚が長年摂取すると毒素が体内に蓄積されるものだといいます。
PL法では無過失責任を認めていますが、当時の科学技術水準では欠陥を認識できないことが免責条件となっています。深見敏正裁判長は「免責を認めるには、世界最高の科学技術水準でも欠陥を認識できないことの証明が必要」とした上で、厚生労働省関連の資料に沖縄でのイシガキダイの食中毒発症例の記載があったことなどから、「料亭は材料のイシガキダイに毒素が含まれるとの知識を入手できた」と指摘、「免責に当たる」とする料亭側の主張を退けました。
今までのPL法の解釈では一般食品については“加工されたもの”ということで、練り製品、ジュース、佃煮などの、いわゆる材料の組成を変えたり、元の味を全く別なものに変える加工食品との認識がありました。今回のケースは、洗いや塩焼きといった素材の味を生かす単純な下処理でも加工と見なしたことが画期的だと思います。粉末にするのは加工に当たりそうですが、単純な切り方である刺身などはどうなのか、などの議論がでてくるかも知れません。
しかし客に提供する食材であってもその安全性に対しプロとしての責任を厳格に求め、被害者の訴訟の助けになるものだと思います。現在料理店で食中毒を出しても、保健所による「数日間の営業停止」という程度の罰則くらいで、店に対するペナルティーは厳しいものではありません。しかし観光客の多い場所では毎年のように食中毒を出す店もあり、観光客にはその店を利用するリスクが分からないことが問題となっています。今回の判決は、現行の法律の不備により国民に被害を与える業者がいつまでも生き残る、という矛盾をPL法で補完、消費者・国民の利益を守るという運用のようでもあり、国民の理解は得られるでしょう。
今回のケースでは今後議論がでてくるかも知れませんが、元々個人・国民が事故に対する過失責任の追及をしづらかったため、原告の権利を補佐するために生まれた側面のあるPL法のため、法の主旨からは妥当なものです。法律の趣旨を柔軟に解釈する(よくある政府答弁のようではない)今回の判決は、珍しく国民の利益にかなうもののようです。売買契約で提供する“もの”に対する提供者側の責任をより厳格に求めるものとして、今後の展開も期待できる評価すべき判決でしょう。
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■東京女子医大、また医療ミス/警視庁、業務過失致死傷で捜査
東京女子医大病院で今月6日、急性リンパ性白血病で入院していた女性(42)が、栄養や薬剤を注入するための管を静脈に挿入する際のミスで、肺の外側に血液がたまる血胸を起こして死亡していた疑いの強いことが9日、分かりました。同病院は6日、警察に異常死の届け出を出し、警視庁牛込署は業務上過失致死の疑いもあるとして調べています。病院によるとこの女性は11月の入院当日、背や足の付け根の痛みを訴えたため、抗がん剤を投与したといいます。翌日午前10時ごろ、担当医が抗がん剤や栄養を体内に直接入れるための管(カテーテル)を鎖骨の上の首筋にある静脈に挿入しようとして失敗、まもなく血胸で意識不明となり、自発呼吸と心拍が停止したものです。
蘇生術で一時心拍は戻ったのですが、9日後に死亡したといいます。誤って他の血管を刺したものと見られ、直接の死因は血圧低下による循環器不全で肺炎と肺血症の合併症を引き起こした可能性が高いとしています。
直接担当したのは大学卒業後9年目の医師で、先輩の助手が指導を担当していたとのことです。通常はひじの静脈にカテーテルを入れますが、細いので首の静脈を選択し、それでもうまくいかなかったため危険な鎖骨下から挿入しようとしたといいます。
注射が得意でない医師は、看護師にやらせてばかりいるいるようで、このような技術の未熟な医師が全国の病院には大勢いると思うとぞっとします。本来は医師の仕事である注射を「医師の管理下」のもと、当たり前のように看護師に行わせていますが、技術を高めるためには医師自ら日常的に注射をすべきだと思います。
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■子供服「アトピーノンノン」回収/イオン
大手スーパーのイオンは5日、独自に企画・生産した子供服で、保湿効果を高める特殊加工(アトピーノンノン)の表示のある一部に、実際には加工が施されていない商品が含まれていることが判明したとして、同日から対象商品を回収すると発表しました。
回収するのは「トップバリュ」のスカート、トレーナーなど15種類、約8万6,000着だといいます。商品は中国で製造された後、イオン子会社のアイクが国内でヒノキなどの成分を付着される特殊加工を施すのですが、不当表示を知りながら納品したものです。
原因は、納期に間に合わせるために特殊加工したものが調達できないための犯罪ですが、製造した約18万着の内、半数近い商品が未加工品だというのですから、イオンの言う「一部」ではない大量なものです。
ノルマを達成するためには、消費者に対する配慮もなく、法律をもかえりみないわが国の商魂?を見るようです。違法者が続出する中国などの途上国に近い感覚のようですが、かの国では極端に厳格な規制が行われることも多く、順次改善されることが期待されます。しかし日本では業界を問わずいつまでたってもこのような事件が繰り返される、というのは基本的なビジネスの考え方が狂っているとしか思えません。また法律の脆弱さがこの状況をさらに助長しているようです。
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■医療事故防止に患者に協力を求める新しい動き/船橋市立医療センターなど
医療事故が頻発していますが、医療現場に潜むリスクを隠さずに説明して患者や家族に安全対策への協力を呼びかける病院が出てきました。千葉県船橋市の船橋市立医療センターでは「患者・家族の安全対策20カ条」と題した冊子を配布、職員の努力だけでは事故を完全に防げないことから患者や家族にチェックをお願いしています。同冊子では「自分から氏名を名乗ってください」「輸血の際、血液型を確認してください」など、患者の取り違えなどの医療事故を想定したアドバイスが並んでいます。
「20カ条」を作成した唐沢秀治・脳神経外科部長は「私たちの努力だけでは事故を完全にゼロにできないため、患者や家族にも協力をお願いしている」と話しています。同センターでは看護師が点滴ボトルのラベルに印鑑を押して患者確認を徹底していますが、それでも多忙な作業の中で「2、3ヶ月に一度」はミスが起きるといいます。
同センターは院内感染の件数などリスクを積極的に公表、人工呼吸器を付けた重症患者が多く、慌ただしい時期などは病棟に赤色の旗を立て、患者側に事故のリスクが高いことを知らせるなど取り組んできました。ある入院患者の父親は「最初は責任回避ではないか、とも思ったが、かえってリスクを具体的に説明され対処法が分かった」と話しています。
大阪市堺市の耳原総合病院では、外来窓口や病棟にポスターを掲示、「採血のとき、お名前の確認にご協力下さい」などと患者側に協力を呼びかけています。また九州大学病院は検査や投薬、手術の旅に患者に自ら名乗ってもらう対策を徹底しています。名前を呼んでも違う患者が返事をするケースがあるためですが、「何回名前を言わせるんだ」という苦情もあることから、今年6月からは待合室の院内ビデオでも趣旨を説明し理解を求めています。
これら病院の取り組みは、「病院のミスは絶対ゼロにはならない」と患者側に認めてもらうことでもあり、そのためには自らの健康や命がかかっている患者にも注意をうながし、「お任せ」にはしないで“自分のための責任”を自覚させることにもなります。医療事故で被害にあうのは患者自身ですから、一般の社会生活で必要な注意義務の一つとして考えることができます。また事故の再発防止の観点からは、事故を起こした「犯人探し」ではなく、原因の究明からシステムの改善を求めることが重要で、複数の立場の違う目が欠かせないものになります。
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■未検査米に「新潟コシヒカリ」表示/木徳神糧、200トン販売
精米卸業で取り扱い高が国内第2位の大手業者、木徳神糧が、未検査米約200トンを「新潟県産コシヒカリ」と不正に表示して販売していたとして、農水省は27日、JAS法違反で改善指導しました。
農水省によると同社の子会社の木徳滋賀は1月から7月にかけて、他の業者から購入した産地、品種とも表示のない身検査米を少なくとも約200トンを使用し「新潟産コシヒカリ13年産100%」と表示して生産、木徳神糧がその米を販売していたものです。
スペックが分からないことをいいことに、食品業界の不正は相変わらずでいやになります。雪印などのように最終ブランドが分かれば不買という消費者の行動が取れるのですが、卸業者の不正には各小売り店の厳格な対応が求められます。デパートなどはともかくスーパー、ディスカウント店などでは取引中止すらないかもしれず、それら小売業者が悪徳業者を保護していることを消費者は気にしなければなりません。
「安ければいい」という自己中心的な購買要求だけではなく、不正な商品を扱っている小売り業者が社会の公平さを欠く、ひいては社会負担・税金負担を招いている元凶の一味であることを認識しなければなりません。
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■有機JAS認定で不正発覚/NPOの日本オーガニック農産物協会
農水省は26日、有機JASマークの登録認定機関で、民間非営利団体の日本オーガニック農産物協会が、西日本にある緑茶製造業者が有機JASの要件を満たしていないことを知りながら、検査報告書を改ざんし不正に認定していたことが分かった、と発表しました。
同省はJAS法に基づく処分を検討しましたが、同協会が25日付けで認定業務の廃止を届け出てきたため、行政処分については手の打ちようがないといいます。同省は「事実を公表することで同じような問題の再発を防ぎたい」と説明しています。
呆れた話しですが、今の日本ではどんな表示も信頼できないように思えてしまう例がまた増えただけのことかもしれません。おそらく緑茶製造業者が便宜を図るよう同協会・個人にに何らかの利益提供を行ったのでしょう。しかし今回の信頼すべきブランドは、一般の商品・商標とは違い第三者の「品質保証ブランド」であることから事態は深刻です。
虚偽表示そのものが購入者を欺く詐欺事件、という認識の元、罰則の強化をはかり、法遵守の後ろ盾となるためには刑事罰を科すことも辞さない、という対応が求められます。事業者に遠慮することは国益でなく、議員など一部の国民への便宜でしかないようです。国民・消費者に背を向けていることを分かろうとしない政治家・事業者が多い限り、このような詐欺まがいの虚偽表示は無くならないと思います。
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■車のガソリンにアルコールを/環境省2008年から切り替え
環境省は中核的温暖化対策技術検討会の提案に添って、地球温暖化をもたらす温室ガスを削減するため、車のガソリンにサトウキビやトウモロコシなど生物資源から作られるアルコールを混ぜる方針を16日までに固めました。
当初は低濃度の混合率で従来の車でも使える1〜5%のアルコールを混合したガソリンで安全性や環境に与える影響を確認し、供給体制を整えるとともに一部地域で販売を始めるとしています。その後2008年からは現行のレギュラーガソリンを全量、混合率10%のガソリン(E10)に置き換える方針です。
アルコール混合ガソリンは次世代燃料として欧米で普及が進み、米国ではトウモロコシ原料のE10のシェアが12%を占めているといいます。またE10対応車は米国などで普及し、技術的な問題は余りないため、わが国の自動車メーカーの開発コストの問題もなく、このため環境省が決定したものだと思います。
なぜ欧米でアルコール混合ガソリンに移行が進んでいるのかというと、生物資源を原料とするアルコールから排出される二酸化炭素は、植物が大気中から吸収したもので、温室効果ガスの排出量に計上されないためでもあります。そのため各国で温室ガス効果ガスの排出量を削減する一つの有効手段として有力視されているものです。少し前にガイアエナジーが販売するアルコール混合ガソリンについての事故報告から、メーカーの消極的なコメントが多くありましたが、今後は世界の動きに合わせざるを得ないようです。
本来自動車メーカーには、温室効果ガス排出に関する環境ペナルティー税などの名目で、森林買い上げなどへの協力金を出しても良いくらいだと思うのですが…
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■企業の環境品質認定で取引決定/ソニー、新制度4月に導入
ソニーは16日、原材料や部品調達の取引先企業約4,000社を対象に、有害な化学物質を使用していないかを、監視員を派遣して立ち入り検査し、環境品質を満たした企業とだけ取引する制度を2003年4月から導入すると発表しました。
ソニーが導入する「グリーンパートナー環境品質認定制度」は、約600人のソニーの監視員が、世界中の取引企業の製造ラインなどを視察、64のチェック項目を確認します。検査に合格した取引先に環境品質の認定を行い、4月以降は認定を受けていない企業との取引を行わないことにしています。また一度認定した企業でも2年ごとの監査を行い継続的な品質を確保し、またOEM供給を受けている製品についても約450社を環境監査する方針です。
取引先企業に品質基準を求め、監査する企業は多くありますが、環境面の法令遵守の目的で監視員を派遣し総点検に乗り出すのは、日本企業では珍しいといいます。環境規制が厳しくなる中、国内外を問わず外部から資材調達を増している製造業では、設計品質を維持し顧客の信頼を得るためには精度の高い環境品質データが不可欠となっているのでしょう。有害物質が製品に混入した場合の消費者の信用低下、というリスクを最小限にするためには自社による厳格な監査が必要であり、これから他の製造業にも影響をおよぼすことになるでしょう。
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■レストランの禁煙進む
ノルウェー政府は11月29日、レストランやバーを2004年4月1日から法律で全面禁煙にすることを明らかにしました。国中のレストランを禁煙にするのは世界で初めてのことだといいます。
ホイプローテン保健相は「タバコを吸わないお客と同様に、レストランの従業員を煙の害から守るため」と狙いを話しています。
ノルウェーはかつて中国と並び世界でもっとも喫煙率が高い国だったのですが、タバコの吸いすぎによる健康問題を深刻に受けとめた政府が14年前「禁煙法」を制定し、駅やオフィスでの喫煙を禁じていました。今回更に煙の害にさらされることの多いレストランやバーで働く従業員の保護を重視した対応のようです。
一方ニューヨークのブルームバーグ市長は11日、市内のレストランやバーをほぼ全面禁煙とする条例案について、市議会側の同意を取り付けたと発表しました。条例案は近く可決、90日間の告知期間を経て施行されることになります。シカゴ、ボストンなども近く同様の措置に踏み切る構えで、米国の大都市は今後「愛煙家には厳しい都市」ということになりそうです。
イタリアでも禁煙法が21日成立、2004年から施行されることになりました。これはレストランやバーなどが「分煙」しなければ経営者に最高2,000ユーロ(約25万円)の罰金を科すものです。同法はほとんどの公共の場を禁煙とし、禁煙の場所で喫煙した者には25から250ユーロ(約3,100円から3万1,000円)の罰金を科すものですが、独特なのは、近くに妊娠した女性や12歳以下の子どもがいて違反した者には、罰金が倍になるというものです。たばこの害にさらされる人により近い目線での法律で、とても評価できます。
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終わりに
女性下着メーカのトリンプ・インターナショナル・ジャパンでは、禁煙報奨金制度を7月に導入しましたが、12月上旬までに喫煙者138人全員が禁煙したと発表しました。社員の健康維持と勤務中の喫煙時間の無駄を省く狙いでしたが、見事に成功したようです。
報奨金3万円は一つの意識付けで、禁煙を願う喫煙者が多いことを物語っているようです。たばこ税も半端な額でなく、現行の5倍程度にすれば効果は絶大なのですが、行政改革をせずに税収だけをあてにしている自民党ではいつまでたってもダメでしょう。
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