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2002.11 No.107  発行 2002年11月13日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■肺がん新薬、死者39人に/7月承認の「イレッサ」

■医療ミス「投薬」3割/厚労省、全国の主要病院調査

■伊藤忠子会社、ウナギ産地偽装/台湾産を国産に

■松坂牛偽装で排除命令/公取委京王百貨店などに

■無線ICタグの電波は安全?/ペースメーカへの影響は

■医療機関の人事・賃金制度見直し始まる

■社会的責任投資に注目/企業の倫理尊重の促進なるか

■自国に有利に進める国際規格、日本は?



10月のニュースから

■肺がん新薬、死者39人に/7月承認の「イレッサ」

 肺がんの新薬「イレッサ」(一般名・ゲフィチニブ)の副作用問題で、間質性肺炎など肺障害の副作用による死者は当初発表された13人の3倍に当たる39人にのぼることが26日、明らかになりました。イレッさは厚労省が5か月あまりという異例のスピードで審査し、世界に先駆けて輸入を承認した薬です。抗がん剤は一般薬と異なり、安全性とがんの大きさを縮小する効果が確認できれば承認されるシステムで、現在は多くの患者に投与しながら延命効果や副作用を確認中のものです。

 輸入販売元であるアストラゼネカは肺障害の副作用が相次いだことを受けて今月15日、「26人に肺障害の副作用が出て、うち13人が死亡した」と発表、医師に注意を促す緊急安全性情報を医療機関に配付していました。しかし同社は同日までに医療機関から「69人に副作用被害が出て、うち27人が死亡した」という報告を入手していたものの、その情報を厚労省に報告していませんでした。同社では「患者や薬の使用状況などが確定していなかった」と説明、「薬事法で定める期限である30日以内に報告する予定だった。副作用情報被害を隠すつもりはなかった」としています。しかしイレッサのようにまだ臨床試験の最終段階で承認され医療現場で使う場合には、迅速な情報開示が患者への拡大被害を防ぐ当然の配慮で、それを怠った責任は問われなければなりません。

 厚労省は同社が約10日前に緊急安全情報を出した時点で、把握する副作用情報の一部を報告しなかったことを重視、詳しい調査に乗り出すとしています。同社の加藤益弘社長は26日、「甘かった。ルールに従っていればいいという考えがあった。こうした社のカルチャーを変えていきたい」と謝罪しますが、今までの薬害問題では「因果関係が不明」などとして国や製薬会社の対応が遅れたことが原因でもあり、同社のような体質(おそらく多くの企業もそうだと思いますが…)が大きな要因であることから、厚労省の厳しい調査結果が待たれます。

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■医療ミス「投薬」3割/厚労省、全国の主要病院調査

 医療事故につながりかねないミスが全国の主要病院で約1年間に計約2万2,000件報告され、最も多かったのは投薬ミスで3割にのぼることが14日、厚生労働省の調査で分かりました。

 調査は昨年8月から今年6月までの11か月間に、大学病院など特定機能病院のほか、国立病院・療養所計265施設を対象に実施したものです。そのうち176施設が報告したもので、医療事故に至らなかった「ヒヤリ・ハット」のケースは2万2,734件報告されました。そのうち結果的に患者に影響がなかったもののミスをした後に気付いたケースは1万3,520件と半数に上っています。ミスの要因として、「確認不足」が半数を超えましたが、長時間勤務などを挙げるケースも2割に達しています。

 最も多かったのは、内服薬を投薬し忘れたり、投与量を間違えたミスで、7,075件(31.1%)あり、次いで気管チューブなどが抜ける管理ミスが2,976件(13.1%)となっています。ミスをした業種では患者に接する機会が多い看護婦が約8割を占め、その原因では厳しい当直体制や長時間勤務などが挙げられていました。
同省は今後、多くの医療機関に調査への参加を呼びかけ、特にミスをした薬品名や医療機器の製品名について報告を集め、薬の名称や容量、医療機器の操作法などが医療関係者のミスを誘発していないかなども調べる方針です。

 薬品の投与ミスなどは患者に頻繁に行われる日常的な業務のため、件数は多くなるのはしょうがないかも知れません。母集団に対する比率でスタッフのミスの深刻さが分かるのですが、単なる総量の比較では隠れてしまうミスがあるように思います。また看護師が医師の小間使い的な業務を強いられていることもあり、医師の監視下における注射が、医師がいなくても看護師によって行われているのも医師の要求であるといいます。欧米のように医師と看護師が対等な関係でそれぞれ専門職としての業務を遂行するのであればいいのですが、医師を補佐するとの認識の強い日本では看護師の作業内容に踏み込んだ検証は進まないようです。したがって作業環境の改善はなかなか進まず、病院側の安易な「人手が少ない」という言葉で終わってしまいます。病院側の「行わなかったことに対する評価」が行われていないのも問題です。

 「看護師の作業環境改善にどのような策を講じ、その結果をどう検証し現在の体制としているのか」また「その検証に対する客観的評価を何で提示できるのか」など、普通の企業が行っている品質ISOの基本さえできれば病院の品質は格段に良くなると思うのですが…。

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■伊藤忠子会社、ウナギ産地偽装/台湾産を国産に

 伊藤忠の子会社、伊藤忠フレッシュが昨年1月から今年3月にかけて台湾から輸入したウナギを国産と偽って販売したことが10日分かりました。偽装した量は少なくとも100トンを超えると見られ、農水省は同日、JAS法の原産地表示義務違反の疑いで同社本社を立ち入り検査しました。

 同社によると、台湾から輸入した調理済みのウナギ蒲焼きを国内で小分け包装し、「鹿児島産」と表示したといいます。加工食品を輸入した場合は原産国表示が義務づけられていますが、小分けしてパックすることを「加工」とごまかして国産品と表示することは、これまでも多くの業者が行ってきた手口です。食品の原産国表示は食材そのものの産地を指すのは明白ですが、パッキング材や包装する行為を「加工」とすることは彼等業者では当たり前のことであるようです。今回は大手の業者だったため問題とされていますが、ウナギに限らずパック入りの加工食品は疑った方が良さそうです。どのような原材料・添加物・香料が使われているかも分からないので、魚なども一匹ものを求めて店頭でさばいてもらうのがベストでしょう。もちろん調理は自分で行わなければなりませんが、味も良いし何よりも安心です。スローフードの広がりが言われている割には、簡単にパックものを購入、食卓でただ並べるだけの食事が多いのは、次々に新商品を投入する企業CMやメディアがあおるおしゃれやトレンド的な場所の紹介などのせいでしょう。楽をすることに慣れて、我慢をしなくなった日本人をますます助長する社会のゆがみみたいなものを感じます。途上国のように人の生活向上を金・ものによる価値感だけで計り、“楽”を追求する風潮がモラルの低下、子供の教育など多くの弊害を生んでいるようです。

 ところで伊藤忠フレッシュの社長と会長が21日付けで引責辞任したことが26日に報道されましたが、経営トップが変わるだけで問題の終焉と言う意味のないこともそろそろ終わりにしてもらいたいものです。新体制の構築やルール作りを経営トップの責任で行い、その間無給で奉仕するくらいの覚悟を見せて欲しいものです。

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■松坂牛偽装で排除命令/公取委京王百貨店などに

 国産牛肉を「松坂牛」と偽り販売したとして、公正取引委員会は25日、景品表示法違反で「京王百貨店」と大手食肉小売り会社「明治屋産業」に排除命令を出しました。最近の食肉偽装事件では初めての百貨店に対する公取委の排除命令となってしまいましたが、信用を重視して買い物にくる顧客にとっては、なんともやりきれないものです。

 また、原材料のほとんどが輸入豚肉なのに「国産豚肉」と表示したソーセージやベーコンを製造販売したとして、同法違反で食肉加工販売会社「林兼産業」にも排除命令を出しました。

 公取委によると、京王百貨店は今年2月から5月にかけて明治屋産業に運営を委託した新宿店の食肉売り場で、陳列棚に「松坂牛ヒレステーキ」や「松坂牛特上カルビ焼肉用」などと表示して別の国産牛肉を販売、包装ラベルにも「松坂牛」と偽りの表示をしたとしています。

 偽装はいずれも松坂牛ブランドの12品目で、この期間に販売した約1,500キロのうち約860キロを国内牛肉で偽装したものです。当初用意した松坂牛が売り切れたり、入荷が少なかったりすると、別の陳列棚の肉を移し替えていたといいます。

 ブランド品の多くは入荷数量が限られてしまいますが、「売れる」と思ったら不正もいとわない、という感覚は中小業者に限らず信頼されているはずの業者でも全く同じ実態が明かになってしまいました。対面で話しながら商品を購入する小さな小売店の方がまだ安心できますが、それでも卸の段階の偽装もあるので生産者の顔が見える商品を購入したくなります。

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無線ICタグの電波は安全?/ペースメーカへの影響は

 最近本格的に採用され始めた無線無線ICタグやタグシステムは、駅の自動改札や店舗の万引き防止などに使われていますが、その電波がペースメーカーにどのような影響を及ぼすのかがまだ分かっていません。しかし万引き防止システムの場合は、携帯電話よりも電波が強いといわれていることから、総務省でも11月に調査研究会の活動を始め、装置・端末からの電波が誤動作を引き起こさないかを実験し、来年6月をめどに報告書をまとめる方針です。

 調査研究会は電波産業会内の「電波の医用機器への影響に関する調査研究会」(高倉公朋・東京女子医大学長)が調査主体となり、医療関係者や医療・通信機器メーカー、厚労省、経済産業の各省などからメンバーを構成するとしています。

 目に見えない電波は気になりますが、考えてみれば目に見えないものを評価する検知センサーは人には備わっておらず、水、空気、食品、医薬品、環境ホルモン、放射能、電磁波、高圧線付近の強電界、耳には聞こえない低周波など安全の領域が不明瞭なものは身の回りに多く存在します。悪意で行う犯罪はともかく、これら様々な因子については社会に対するセンシング能力を高めていく必要があるでしょう。

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■医療機関の人事・賃金制度見直し始まる

 医師の場合、その業務の専門性などから評価が難しく、年功序列的要素で等級を決めている病院がほとんどだといいます。しかし相次ぐ医療事故などにより医療に対する患者側の見る目は厳しくなるばかりで、しかも診療報酬引き下げなど医療機関を取り巻く環境は大きく変わってきています。そのため一部医療機関では人事・賃金制度を見直し、医療の質の向上や職員のやる気を高めるための人事・賃金制度を導入す動きが出てきました。

 福島県西部の中核病院である竹田総合病院は来年4月、年俸制を導入することにしました。これは医師や看護職の管理職などを対象に、担当している部門の前年の業績に応じて翌年の年俸を決めるものです。病棟ごとの病床稼働率や平均在院日数などのほか、手術や入院治療の工程表である「クリニカルパス」を導入、その実施状況や新しい医療技術の導入状況など医療の質への貢献も考慮するとしています。同病院では既に2000年に全従業員を対象に業績給を導入しており、1人あたりの医業収入(売上高)が拡大、併せて医業収入に占める人件費率を押さえるなどの成果をあげてきました。このためさらに医療の質やサービス向上を目指し、年俸制の導入を決めたといいます。

 聖路加国際病院でも来年、全医師の業績を把握し給与体系に反映させる仕組みを構築する方針です。これまで各診療科ごとの損益で給与に反映できたのは部長クラスだけで、個々の医師の業績を把握することはできなかったといいます。これを新規に導入する電子カルテのシステムと連動させることで、医師も納得する客観データが取り出せるとしています。また小児科や救急など採算的に厳しい部門は、病院にとって不可欠な「戦略的赤字部門」とし、その貢献度も数値化し評価していくとしています。

 今まではクレームがあったときの対処に重点が置かれることが多かった病院ですが、日常的に自己の仕事の質を各自が確認、患者とのコミニュケーションから医療品質の検証につなげることもできることから歓迎できる動きです。

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■社会的責任投資に注目/企業の倫理尊重の促進なるか

 環境や人権などの問題に熱心な企業を対象に投資する社会責任投資(SRI)が注目を集めているようです。企業不祥事が相変わらず続く中、市場側が企業に体質改善を促す新しい流れとして期待されています。日本のSRI型投資信託の第1号は、1999年登場の環境問題に取り組む企業株式に投資する「エコファンド」で、現在は9本が運用されています。

 社会性、倫理性の高い上場企業100社の株式時価総額が、代表指標であるTOPIXに比べて1.75倍もの高い伸び率を示しているというデータもあります。1991年1月を1,000として、2002年5月とを比較した場合、TOPIXは655と3割も下がったのに対し、100社の平均は1143の驚異的成長ぶりだといいます。

 もともとSRIは1920年代、米国の協会が資産運用する際、キリスト教価値観に基づきアルコールに関連する業種を投資対象から外したことが発端のようです。60年以降は、ベトナム反戦運動や南アフリカのアパルトヘイト反対運動をきっかけに大学や公務員の年金基金が軍需産業の株式を手放す動きが広がりました。80年代からは、女性・マイノリティー問題が投資基準になり、個人が投資先を決める確定拠出年金の導入で2001年末の純資産は20兆円にのぼったようです。

 これまで「企業は慈善団体でないのだから、儲けなければならない」という強迫観念から、「儲けにならないことをやっても評価はない」との意識に染まっていると思います。しかし企業を見る目は着実に変わりつつあり、企業ポリシーそのものが社会の役に立つ、あるいは住民と一体となりこれからの社会基盤の構築に進んでいくような、そんな企業の存在が投資家の信頼を集めることになるのでしょう。

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■自国に有利に進める国際規格、日本は?

 国際標準化作業は様々な分野で進められていますが、この9月下旬には上下水道サービスを規格化するための第1回総会がパリで開かれました。この規格は昨年4月にフランスが国際標準化機構(ISO)に検討を提案し、その後専門委員会「TC224」の設置が決まり、幹事国のフランスが作成したビジネスプラン案などについて検討が続けられてきました。

 ところがフランスでは現在2大上下水道企業しか存在しないことから、そのような国の規格が原案になることへの危惧が高まっているようです。例えば、わが国では市町村が飲み水である上水道事業を行い、維持管理をしていますが、全く新しい規格ができてしまうと多くの混乱がでてきてしまいます。このため日本は第1回総会で、ビジネスプランの中の「ISO/TC224の基準と指標は当然、上下水道サービスを行う官民の委託契約で使用されなければならない」など2カ所の記述について「任意適用」と矛盾、官民契約で同規格の適用が「強制」であることを指摘しました。委託を含む上下水道システムの管理形態や、その方法を規制すべきでないと主張、削除を求めています。

 「ISOの規格を遵守する必要があるのか」という声も聞かれそうですが、WTOに加盟している日本ではそうもいかないのです。仮に欧米の下水道施工業者が参入したときに、国際規格とは異なるわが国独自の基準があると、彼等は「公平な自由競争に参加できない」ということを訴えるわけです。農産物の貿易摩擦は身近な話題ですが、他にも大きな市場を求めて国際規格やビジネスの主導権争いが進んでいます。

 さて、このような自国に有利な国際規格を作り世界市場で優位に立つ取り組みは、多くの国で行われ、わが国も遅ればせながら経産省が日本発の国際規格を積極的に提案するための施策を最近まとめたばかりです。それによると現在の審議団体依存の仕組みを見直し、企画提案の迅速化を図り、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携などを進めるとしています。ITなど国際競争が激しい先端分野では、研究成果によって生まれた新技術・製品で市場創出や獲得を目指すために知的財産を含んだ「フォーラム企画」を策定して国際規格化する活動が活発化しているといいます。

 今回の強化策ではこうしたフォーラム規格について国際規格が適当と認められた場合には、簡素化した手続きでJIS化し、日本工業標準調査会事務局から提案できるようにするとしています。またISOが認めた業務協定を結んだ機関が作成した規格も提案できるようにするなど国際提案の迅速化を進めるとしています。さらに現在の国内審議団体依存型の提案方法を見直し、案件によっては関係する技術専門委員会で新規提案などを行えるように国内体制も整備します。また提案までの間に国際的な規模で賛同者を確保する一環として国際標準化事業を活用したASEAN諸国との連携も強化するとしていますので、その効果を期待したいと思います。

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終わりに

 千代田区の路上禁煙条例が施行され話題になっていますが、反対意見もあるものの住民からは「歩道がきれいになった」「安心して子供と街を歩ける」の賛成意見も多いようです。国際線の全面禁煙、普通列車の禁煙やディズニーランドなど民間施設内での禁煙は進む一方です。千代田区の取り組みは、公共空間での禁煙を求めるもので、公共空間におけるマナーの悪さが際立つ我が国では他の迷惑行為を抑制する効果もあるかも知れません。

 最近ではマンションでも「ベランダ禁煙規制」を検討する管理組合もあるようですから、「肩身が狭い」と思う人は「禁煙」が正解かも知れません。

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