[ ASP ホームページ ] [ ASPニュース2002
]
ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。
「定期購読について」
■日本ハム、腐りかけの肉も申請/農水省の責任は?
■コンビーフの肉、不当表示/ノザキなど3社に業務改善指示
■ラーメン店「石川家」で虚偽の材料使用
■レタスから基準を上回る農薬検出/長野県朝日農協
■行政サービス、市民が肩代わり/埼玉県志木市の計画
■食品業者を格付け/北海道、食の安全性向上促す
■伊料理店、「本物の味」に合格証
8月のニュースから
■日本ハム、腐りかけの肉も申請/農水省の責任は?
日本ハムグループの牛肉偽装・隠ぺい事件がニュースを賑わしていますが、大社義規会長ら3首脳の辞任が決まり、同社の思惑とは違った方向で決着を迎えつつあります。このような事件を起こしながら、それでも同社の今後の体制建て直しを最優先するような処分が、社会に納得されなかった訳で、それが感じ取れない同社の社会・顧客に対する鈍感な社風が感じられます。長年培われてきた体質が今回の事件の最大の要因ですが、農水省が26日発表した追加調査結果では、「儲けのためには何でもあり」というモラル無き事実が明らかになりました。
農水省の調査は、日本ハムが9月20日に不適切な申請があったとして新たに発表した日本フード姫路、愛媛、岡山、富士、香川、石川、福井の7営業所に対して実施したもので、姫路営業部が申請した品質保持期限切れの疑いがある国産牛肉約600キロは、期限切れではないものの脂肪が緑色に変色し、異臭がするなど著しく品質が劣化していたと言います。
これらは売れ残りなどのため帳簿から消され、焼却処分される予定の「いわばゴミ」(同省食肉鶏卵課)で、市場に流通しないことが明白な肉で買い取り制度の趣旨に反するものです。同課では「詐欺かどうかのボーダーラインで刑事告発の対象にするかどうか関係当局と相談する」としています。
富士営業部では、すでに判明している輸入牛肉15キロに加えて、新たに9キロの輸入肉の申請が発覚、同営業部の「別に9キロ分の国産牛肉の伝票があったので勘違いした」との説明は、このような事態の中全く緊張感のない緩んだ体質が見て取れます。
計量ミスがあった福井、石川両営業部ではそれぞれ社内調査の数字と食い違う結果となりました。骨付き肉の申請量が5倍に増えた岡山営業部では「書類に記録が無く、営業部長が記憶で答えた推定の数字を日本ハムがそのまま公表した」とのことです。安全や危機管理に対する日本ハムのマネージメントシステムが、全くなかったことを表しているもので、業界トップ企業と言ってもその内情はひどいものだと言うことが分かります。
このように社内調査との食い違いが複数判明したのですが、悪質なのは腐敗しかけた牛肉を買い取り申請してきたことです。このような犯罪行為の背景を考える際、神戸地裁で今月開開かれた雪印食品の牛肉偽装事件の公判の、畠山茂ミート営業調達部長の証言が参考になります。畠山部長が「安い廃用牛や輸入牛肉を申請対象に混ぜようとしている業者がいる。うちも他社並のことをやりたい」と述べ、それに対し桜田広巳専務は「他もやっているならそっちで考えてくれ」と述べたと言います。了承と受け止めた畠山部長はその後偽装工作に走ることになります。
証言によると、政府が国産牛肉の買い取りを検討していることが報道などで伝わった昨年10月半ば、業界では早くから「輸入肉を混ぜ込む動きがある」などの噂が乱れ飛んだと言い、食品業界だけではないのですが、税金を食い物にする業者・団体の体質が見られます。
当時雪印食品部門の赤字続きが深刻だったこともあり、同月の取締役会でも他社の不正を問題視する発言は出なかったといいます。畠山部長の言う「他社」がどの会社なのかは明らかになっていませんが、実際にはその取締役会から数日たった10月29日、日本フード愛媛営業部で約4トンの輸入牛肉の詰め替えが行われ、11月1日には姫路、徳島営業部、そして同3日には日本食品の偽装と続きます。
当初から牛肉買い取り制度の不備が指摘されていましたが、それもこれも自民党の農林族の圧力が影響しているとの報道があります。日経新聞8月24日付けでは、次のように述べています。『昨年10月下旬、自民党の「BSE対策本部」で、農水省幹部は農林族の有力議員から前頭検査前に食肉処理された国産牛肉の在庫を国が買い取って処分するよう「やるのかやらないのか、この場でハッキリさせろ」と大声で脅され、「検査前でも安全」としていた農水省は抵抗したものの、結局は押し切られ10月26日に買い上げ事業が開始されたというのです。それから11月6日までわずか10日あまりで全国約1万3,000トンもの牛肉をかき集め、当初「市場に戻す」としていたものが、12月には焼却処分することにした。』というのです。
このように慌てて作った制度には問題点も多くあり、申請時の検査は肉の部位や数量などを記した食肉会社の申請書と、倉庫会社の在庫証明書を付き合わせるだけというお粗末なものでした。ある大手倉庫会社の社員による「こんなチェックではいくらでもごまかせる」との声も聞かれます。
最近農水省の要請で買い取り制度のあり方などを協議していた学者などで構成する「第三者検討会」がまとめた報告書でも、買い上げ制度を痛烈に批判し「不十分、不徹底な実施手法およびその体制、対応が、犯罪行為などを誘発した」とし農水省の猛省を求めました。同じ日の武部農相の記者会見では、「拙速との批判は甘んじて受ける。行政のあり方も猛省しなければならない」と、業者に悪用され続けてきた同制度の不備を初めて認めました。
[目次へ]
■コンビーフの肉、不当表示/ノザキなど3社に業務改善指示
「ノザキ」ブランドの高級コンビーフに銘柄牛以外の牛肉を使用しながら表示していなかったとして、農水省は16日、製造元の食品会社、日東ベストと川鉄商事など販売元2社にJAS法違反で業務改善を指示しました。
問題の商品は「山形県産米沢牛コンビーフゴールド」「松阪牛コンビーフゴールド」など3品目です。銘柄牛を100%使用したかのように表示しながら、中国産の冷凍牛肉や国産乳牛の肉を使用していたというのです。驚くことに「米沢牛」には米沢牛は全く使われておらず、「松阪牛」も2割程度しか使っていなかったと言い、同社の詐欺まがいの悪質さが見えます。
JAS法では、100%同じ原料を使用する場合を除き、原材料の割合を表示することを定めていますが、日東ベストは「銘柄牛は脂が多く、切ったときに形崩れしやすいので他の牛を使った。割合表示をすべきだったが、100%の方が売れるのでそのままにしてしまった」と言っています。他に弁解のしようがないのでしょうか、割合表示をすべきところが、0%とはとても表示できなかった、ということでしょう。いつ頃からこのような不正をしていたのか分かりませんが、昔からの高級品メーカーである、ということも許せません。内容の偽証、そしてブランド品をわざわざ買い求めるお客への二重の不正とも言えるものです。同社の3品目の2001年度の生産量は計約7万8,000缶で、「ノザキ」ブランドの贈答用商品として全国の大手百貨店などで販売されていました。
贈答品としてデパートで購入したお客は、不正のあった商品購入に見合わない金額として補償を求めて欲しいと思います。JAS法違反で業務改善を指示されだけでは、一時的に社会的な信用が落ちるだけで2、3年もすれば元に戻るのが世間の常です。このような企業は、経営を圧迫するような大きなペナルティーを受けなければ、同社のためにもならず関連業界に安堵感を与えるだけです。
[目次へ]
■ラーメン店「石川家」で虚偽の材料使用
グルメ雑誌などで評判のラーメン店「石川家」(本部・さいたま市)が、店舗内で「霧島産黒豚」などと表示していたラーメンの具やスープの材料に、輸入品や表示産地と異なる食材を使用していたことが19日分かりました。埼玉県では景品表示法違反の疑いもあると見て調査に乗り出しました。
同店ではスープの材料に「鹿児島産豚骨」「秋田比内鶏」、焼き豚に「霧島産黒豚」などを使用しているとの表示を店舗のテーブルや壁にしていましたが、実際には輸入肉や表示産地以外の材料を使っていたと言います。
関係者によると開店当時は表示通りの材料を使用していたものの、だんだんと異なる産地の材料を使うようになったと言います。需要に対して供給が追いつかない場合に、多くの企業で行う不正と全く同じ構造です。供給できない場合は「本日の営業はこれでおしまい」というような、良心的なそば屋のようなことが何故出来ないのでしょうか。もともと儲け最優先の店でしかなかったわけですが、そのような店をメディアがネタ探しに過度に紹介したのも問題でしょう。自分の舌の絶対感覚がない消費者、そして一見こだわり派(実はメディアの評価を丸ごと鵜呑みにするだけの人々)の選んだ結果でしょう。
テレビなどの通販が人気だといいますが、人が「良い、良い」という言葉を何度も聞くことである種の催眠状態に陥り、そして極め付きの「限定○○個」の言葉で購入動機が決定付けられてしまうようです。注意したいものです。
[目次へ]
■レタスから基準を上回る農薬検出/長野県朝日農協
長野県の信濃朝日農協が出荷したグリーンリーフレタスの一部から、国の基準値を上回る残留農薬が検出されたと松本保健所が23日発表しました。同保健所は、該当品と同じ農場から同時に出荷された16箱の回収を同農協に指示しました。残留農薬は殺菌剤の一種のプロシミドンというもので、国の基準値5ppmに対し3倍近くの14ppmが検出されました。これは同農協が4日、下諏訪町のジャスコ諏訪店に出荷したものが、諏訪保健所の抜き打ち検査で判明したものでした。
同農協の説明によると、問題のグリーンリーフレタスは、生育期間が短いことを利用して、レタス畑の中で収穫時などにトラクターの通路などとなる部分に栽培しているといいます。問題となった農薬は周辺のレタスには散布したものの、グリーンリーフレタスには使用していないことから周辺の別の作物に散布した農薬が飛散した可能性が高いと見ています。
その後同農協は独自の検査によって安全が確認されたとして30日、松本保健所が発表してからわずか1週間でグリーンリーフレタスの出荷を再開しました。その根拠となる安全性ですが、同農協では問題が発覚した23日、県農村工業研究所にグリーンリーフレタスと共にサニーレタス、レタス14検体の残留農薬検査を依頼したところ、プロシミドンが全く検出しなかったから、というものです。
松本保健所が特に問題とするコメントを出していないことから、容認したものと思いますが、農協の独自の検査で安全が確認されれば良しとする現在の農産物の安全管理システムの脆弱さがうかがえます。検体のサンプリングの方法や数量、散布された農薬がどの畑にどの程度の量が使用され、残留農薬が検出された畑での分布状況の把握などが信用できるレベルなのかもよく分かりません。3種類の野菜14検体、ということは一つの畑からは数個のサンプリングでしかないようです。それが10軒の生産者554ケース、約8,000個の野菜の安全を保証する根拠とはなり得ていないようですが…。
また周辺のレタスには散布したということですが、それらの野菜の残留農薬値の検査は行っていないようなので、それらが出荷されない保証をどのように確保しているのかも説明がありません。私達は雪印乳業、雪印食品や日本ハムなど、大手の企業ですら信頼できない事件を目の当たりにしています。少々厳しい見方ですが、強い農薬で楽な作業を求める生産者が多いのも農協の指導の結果でもあり、そんな彼らの安全宣言の確からしさが今ひとつ見えないのは当たり前のことだと思います。
本来ならば安全に関する情報開示を徹底することが彼らの最大の防御であるはずなのに、それを「行わないと」いうのは、どうやら「出来ない」ということのようです。輸入農産物の残留農薬の問題が多く報道されていますが、危惧されていた国産農産物の検査が十分でないことが今回の事件で明らかになりました。りんごなどフルーツの農薬散布は非常に多いのですが、農協で独自の残留農薬の検査をしているという話は聞いたことがなく、本当に我が国の農産物の安全がどの程度確保されているかは誰も知らない、という状況なのです。外国産農産物を悪者にする裏には政治家や農業関係団体の策略が働いているように思えてなりません。
そういえばひところ外国産米が大量に入った米騒動の頃、外米の安全問題がしきりといわれました。しかしタイ米などは元々農薬を使用しないという栽培方法であるのに、何故国産だけが安全のように言われるのか、という意見を聞いたことがあります。我が国では平気で虚偽の表示をすることが横行しているので、この際農産物の全品目残留農薬検査を農協単位で義務付けるくらいの制度が求められます。「安全」という生産者・農協自らの客観的な裏付けが出てこないので、法規制で信頼できる安全性を求めるしかないと思います。
[目次へ]
■行政サービス、市民が肩代わり/埼玉県志木市の計画
埼玉県志木市は20日、市職員を現在の619人から、2021年度までに半数以上の301人に減らし、退職者分の行政サービスは市民による有給ボランティア「行政パートナー」で補充する計画を明らかにしました。
同市は埼玉県南部に位置し、人工約6万6,000人、すでに本年度から5年間の予定で職員の新規採用を凍結しています。計画では、退職者を補充する代わりに「行政パートナー」と呼ばれる市民ボランティアを採用、アルバイト料を払って図書館の運営や広報誌の編集などを担ってもらいます。戸籍や許認可権や公権力に絡む事務は正職員が担当するとしています。同市は計画をスムースに進めるため、政府が地域限定で大胆な規制緩和を実施する「構造改革特区」への申請準備を進めています。市の試算によると、20年間で人件費約67億円を削減できる見込みだとしています。
一向に進まない国の行政改革ですが、現在の官僚・職員を半減すれば日本国の財政は大きく改善することは誰でも認めることです。役所などが持つ許認可権ゆえに、業者との癒着が無くならないことも国民は気付いています。役所はスペック(仕様)を提示するだけで、そのスペックに見合った業務計画と価格が折り合えば、市民会議などの第三者が公共事業を発注することも可能です。許認可権が一部の人や機関に任されている限り汚職は無くならないし、国民の税金は無駄に使われ続けることになります。社会的モラルを犠牲にしてでも自己の利益を優先する国では、思い切った改革が不可欠です。
[目次へ]
■食品業者を格付け/北海道、食の安全性向上促す
北海道は、食品の製造・加工業者を対象に8段階の格付け評価する新制度をスタートさせました。高い評価を得た企業は、道のホームページで企業名と評価結果を公表し、食の安全性向上への取り組みを促すのが目的だといいます。
道食品衛生課によると、評価は米国が開発したHACCP(ハサップ)の手法に基づき実施、事業者からの申し出を受け保健所の職員が工場の設備や自主検査の状況、従業員の衛生管理など141項目について調査し、合計点数に応じて8段階に評価するものです。4段階以上を及第点として、1〜4個の星を付け、国のハサップ基準との比較では、7〜8段階がこれに相当し4つ星が与えられる仕組みです。最高ランクの8段階を得るには、前回の評価後に衛生管理を見直すなど再評価も必要としています。
業者に甘いと言われる行政がどの程度客観的な評価を出せるのか興味があります。一部の業者はすでにランク上位を狙った戦略を練っていると思います。
[目次へ]
■伊料理店、「本物の味」に合格証
世界的なイタリア料理ブームの中、イタリア農林省はこのほど、日本など主要国に調査員を派遣して各レストランをチェック、合格ならレストランに「認証マーク」を与える制度を実施することを決めました。早ければ年内にも実施する見込みです。アレマノ農林相が8月中旬、明らかにしたもので、現在はイタリアレストランといっても店次第では本物とかけ離れた味の伊料理を出すところもあることから、お墨付きを希望するレストランを調べ、認証マークを出す計画といいます。これから詳しい進呈基準を決めることにしています。
主観的な“味”が主役のことから、最近では雑誌などのメディアで紹介される食の話題の多いこと。多くの店は大したことはなく、メディアにクレームを言っても「味は主観的な判断」ということで逃げられてしまいます。本来は客観的な批評や判断を元に構成するのがメディアの最低限のルールだと思いますが、どうやら違うようです。要するに事実かどうかではなく「受ければ」良い、つまり売り上げ・視聴率が上がれば良い、ということなのです。
[目次へ]
終わりに
高圧送電線や一部の家電製品ら出る超低周波電磁波が多い環境で暮らす子供は、白血病の発症率が2倍以上になることが、国立環境研究所と国立ガンセンターなどが実施した全国調査の中間調査で24日までに明らかになりました。
白血病のリスクについては米国などの報告もありましたが、我が国では「影響がない」と言うのが大勢を占めていました。今後の電磁波に関する規格やガイドラインの整備に反映してもらいたいものです。安全か危険かがハッキリ解明されてない事象は、多くの場合に深刻な事件で国民の健康被害が発生することがありました。危険でない、との確証がないものはある程度の安全策を見込まなければなりません。これをオーバークオリティという人がいますが、経済性だけで論じる、いわゆる安全問題を軽視する人だと思います。
[目次へ]
[ ASP ホームページ ] [ ASPニュース2002
]
定期購読について
|