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2002.7 No.103  発行 2002年7月13日

発行人 中澤 滋 ASP研究所 長野県松本市梓川梓3072-12

Tel/Fax 0263-78-5002

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ASPニュースは、複数の新聞・雑誌などの記事から
事実関係を整理した上で個人的な見解で記事にまとめています。

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■心臓手術で手術ミス、2医師逮捕/東京女子医大、昨年の女児死亡事故

■折り畳み自転車の安全性、その後

■ホーム転落検知マット/東洋電機製造、井の頭線に採用

■精神障害者の搭乗拒否/全日空

■塩ビ製玩具など来夏から規制/厚労省

■食の安全、共同チェック/百貨店と取引メーカー

■西友が「企業内環境税」/店舗から負担金徴収

■タクシーのランキング/東京タクシーセンター



6月のニュースから

■心臓手術で手術ミス、2医師逮捕/東京女子医大、昨年の女児死亡事故

 東京女子医大病院で昨年3月、心臓手術を受けた小学6年の女児が人工心肺装置の操作ミスで死亡した事件で、警視庁捜査1課などは28日、当時の心肺担当医師、佐藤一樹容疑書(38)を業務上過失致死容疑で、手術中のリーダーで執刀医の瀬尾和宏容疑者(46)を証拠隠滅容疑で逮捕しました。また瀬尾容疑者の指示で、ミスを隠ぺいするため脳障害に伴う瞳孔数値を改ざんしたとされる臨床工学技師の男性(31)と看護師長の女性(54)も証拠隠滅の疑いで近く書類送検するとしています。

 調べによると佐藤容疑者は昨年3月、群馬県高崎市の平柳和明さんの二女、明日香さん(当時12)が受けた心肺中隔欠損症の手術で、人工心肺装置に循環不良などの不具合が発生したにもかかわらず、回避措置を怠った疑いがあります。瀬尾容疑者は、同病院の臨床工学技師と看護師長に指示して看護記録の内容を改ざん、証拠隠滅を図った疑いが持たれています。

 医療ミスで医師が逮捕されるのはきわめて異例ですが、相次ぐ医療事故に対する国民の不信感が増しているため、今回の事件は医療従事者への警鐘として重く受け止めてもらいたいものです。とは言っても今回の事件では、内部告発と見られる手紙に基づく遺族の追求が事件発覚のきっかけになったとされ、密室の事故に対する被害者の弱い立場は相変わらずです。

 さて病院側の対応ですが、死因について心不全などと虚偽の説明をしていましたが、遺族が警察への告訴などを検討を始めたことから急きょ態度を変え、昨年10月に「(担当医が)事実を隠していた」との事故報告書をまとめてミスを認めたものです。隠し通せれば人の命よりも病院の名前に傷が付かないことを望むという、同病院の経営姿勢が露呈されました。

 ところで手術当初は人工心肺の作動方式をサイホンの原理を利用する「落差脱血法」としていたのを、手術途中で佐藤容疑者が、吸引ポンプを使う「陰圧吸引補助脱血法」に変更したことに対し、同容疑者は「スタッフに伝えた」としているものの、チームリーダーの瀬尾容疑者ら複数の関係者は同課に対し、「聞いていなかった」と話していて、証言が食い違っています。

 同病院が出した調査報告書などによると、佐藤容疑者は作動方法を変えた際、手術をやりやすいようにポンプの回転数を通常の2.5倍に設定、その結果ポンプが血液と供に空気も連続して吸引することになり、圧力異常などの不具合が発生し血液が循環しなくなったとしています。このトラブルで佐藤、瀬尾容疑者はパニックになり、臨床工学技師が弁を開放して圧力を正常に戻すまでの間、脳障害が起きてしまったといいます。同課ではスタッフ間の意思確認の不徹底と、病院側の危機管理の不備が事件の背景にあったと見ています。

 厚労省の社会保険審議会医療分科会は7月12日、同病院が承認を得ている特定機能病院を取り消すこと決めました。同病院では承認の事態を表明していましたが、分科会は自主的な返上を認めずに、承認取り消しという行政処分を選んだことになります。特定機能病院取り消しについては、1999年に横浜市立大病院で起きた患者取り違え事件がありますが、当時は安全管理体制の不備を理由に取り消す制度がなかったため、当時の厚生相が設置者である横浜市長に承認の事態を勧告、同病院が自主的に返上した形になったことがあります。

 同病院では当面心臓移植の自粛を検討していますが、国内3施設ある臓移植ができる東日本では唯一の病院のため、脳死移植の待機患者にとっての影響も懸念されます。医師個人のミスから社会的に大きな影響を被る患者がいることも、特定機能病院のマネージメントシステムの是非が大きく関係していることを実感します。

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■折り畳み自転車の安全性、その後

 先月号のASPニュースで紹介した話題ですが、国民生活センターが発表した折り畳み自転車の安全性について、メーカー・関係業界などの動きが出てきました。

 (株)良品計画では、「無印良品 スチール14型折りたたみ式自転車・変速機無し」回収のお知らせ、と題する謹告(6月7日)を行い、同製品のハンドルステム部分に接合不良があることから、販売の停止と市場の製品の回収に踏み切りました。比較的早い対応で好感が持てますが、同社のような人気ブランドでは、事前に製品の安全性についての確かな評価が求められると思います。それでも今回は、ディスカウント店で売られる「安ければいい」という商品との違いを出せたようです。

 さて国民生活センターでは「業界の意見」を公表していますが、その中から少し紹介します。

 出来鉄工所は、「過日、折りたたみ式自転車の商品テストにいて、ご指摘いただきました不具合点の改善等下記のとおりご報告させていただきます。ハンドルポストの強度不足につきましては、弊社テスト結果では2,200N以上の結果を得ており、現在原因の究明を行い十分な強度を有するよう改善させていただきます。取扱説明書につきましては、表記方法の見直しを行い、図につきましても見取り図に改め、ユーザーにわかりやすい取扱説明書に改善させていただきます。ペダルの踏面が片面しか踏めず、踏む面の形状が悪く踏みづらいとのご指摘をいただきましたが、折りたたみ社の性質上、よりコンパクトにするため、ペダルも折りたたみ形状のものを採用しております。しかしながら、ご指摘いただいた踏みづらさを解消し、かつコンパクトになるような、新型のペダルが必要不可欠であることを認識しました。コンパクトで、実用性の高いペダルの開発を進めていく所存でございます。」との謙虚な姿勢が伝わるコメントで好感が持てました。

 ヨコタサイクルは、「弊社では折りたたみ車の特性を考慮し耐衝撃あるいは乗車時の負荷にも充分耐えられる自転車作りを念頭に置き、実施して参りました。最新の車両検査協会の試験につきましても弊社の試験結果を再確認するために実施いたしました。また、現在まで強度面でのクレームは1件も発生いたしておりませんし問題はないと確信いたしております。現在の商品は2001年10月よりストッパーの位置を下側に変更、2002年1月より大きくなりすぎたフレームサイズを100ミリ小さく仕様変更をしたことにより、強度面と安全性のアップを図っており、今回のテスト結果は非常に残念なことだと思います。今後は市販車を再度テストしその結果により弊社なりの判断をしたいと考えております。なお今回の結果につきましては真摯に受け止め消費者のニーズにあった万全な自転車作りをいたしますのでよろしくご指導のほどお願いいたします。日々改良を重ね、より安全な商品を提供していくよう努力する所存です。」と述べ、いつものメーカーコメントに近いものの、「市販車を再度テストしその結果により弊社なりの判断をしたいと考えております」というのは好感が持てます。今まで市場に投入した商品の検査などは考えていなかったことへの反省・コメントだと思われるからです。

 東興商会では「1:当社の製品は全て低価格車であり中国3工場にてOEM生産し、当社ブランド“TOKO”で国内販売しております。2:中価格車の日本メーカー名のブランド車に比べて厳しいテスト結果を知りました。低価格車であっても中高価格車に比べて安全性の面で落ちることがあってはならないと思っております。なぜなら低価格車は大衆車であり、中高価格車に比べても販売数量が圧倒的に多いからです。3:当社では現在中国3工場(3会社)での生産している製品について部品チェック、組立時の工程管理等あらゆる面で下請けメーカーと品質管理に、より徹底していく次第です。現在、当社は独自に日本車輌検査協会や、中国での検査基準に合わせて生産しておりますが、日本の規格SG、JISの取得を行うように計画しております。日々改良を重ね、より安全な商品を提供していくよう努力する所存です。」とのコメントを出し、その謙虚な姿勢に好感が持てます。

 業界団体の(社)自転車協会からのコメントでは、「当会では(財)自転車産業振興協会と協力し、2000年度から自転車の試買テストを実施したものの、現在のJISマーク、SGマーク、TSマーク制度では、消費者への安全性を確保することが困難なため、消費生活用製品安全法によるPSCマーク制度に自転車が対象となるよう「自転車安全基準」を当会で作成、同制度導入0の際の基準に採用されるよう2001年12月に経済産業省に提出し、PSCマーク制度への早期導入をお願いしております。今回の国民生活センターによる試験結果から、も消費者への安全性確保が現状の制度では困難なものと思われますので、このPSCマーク制度導入にご賛同くださるようお願い申し上げます」とし、現状のメーカーの安全性に危惧を持っていることがうかがえます。

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■ホーム転落検知マット/東洋電機製造、井の頭線に採用

 東洋電機製造は、プラットホームの乗降客がホーム下に落ちた場合に、いち早く検知・警報し、列車の進入や発進を予防できる「転落検知マットシステム」(ホーム保管監視装置)を開発・実用化しました。同商品は今回、京王電鉄の井の頭線・下北沢駅に採用されています。同社では、検知感度が安定しているため、体重の軽い小児でも検知できるとし、年間で10駅への販売を見込んでいます。マットの大きさは1枚当たり幅35センチ、長さ1.5メートルで、一般のホームでは1,500万円から1,600万円かかるようです。

 車両が停止したときの扉位置が決まっている場合、ホーム上に柵を設けて転落を防止することが出来ますが、列車に3つドアや4つドアが混ざる路線では、今回のマットが有効になるものと思われます。盲人や子供達には多くの危険がある鉄道のホームですが、鉄道各社の一層の努力を望みます。実現は不可能かも知れませんが、低床式の市電などもあることから、プラットホームを20センチくらいに下げるという“本質安全”の取り組みも期待したいものです。

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■精神障害者の搭乗拒否/全日空

 全日空が、社内規定に基づいて精神障害者の搭乗をいったん拒否していたことが分かり、国土交通省は13日までに、同社と同様の規定がある日航と日本エアシステムの3者に対し、障害者の社会参加を勧める国の方向性に沿って内規の改善を指導しました。

 搭乗を拒否されたのは、東京都内の50代の精神障害者の男性2人で、今年2月、沖縄への旅行から東京に戻る際、旅行会社から障害の事実と旅行中の様子を知らされた全日空が搭乗を拒否したものです。そして医師の診断書をファックスで提出させ、搭乗予定日の翌日、家族らが同乗することで東京行きの便への搭乗を認めたといいます。

 まだこのようなことが当たり前のように行われている、という事実に驚きを感じます。航空会社の明るいクリーンなイメージの裏には、このような障害者蔑視とも思われる内規、そしてそれを当然とし、世の中のバリアフリーの意識が高まっているのに内規を改善しない社内体質は、顧客に対するセンシング能力が低いといわざるを得ません。それも日本の代表航空会社3社ですから、困ってしまいます。

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塩ビ製玩具など来夏から規制/厚労省

 厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会は11日、生殖毒性などのほか、フタル酸エステル類の一部物質を、塩化ビニール製のおしゃぶりや玩具、食品用のラップや手袋などに使用禁止とする規制案を了承、厚労省に答申しました。同省は近く食品衛生法の規格基準改正を告示、1年間の猶予期間の後、来年夏から実施する予定です。

 規制対象は乳幼児が口にするおしゃぶりや、歯形めではフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)とフタル酸ジイソノニル(DINP)の2種で、通常口にしない玩具や調理用具、食品保存容器ではDEHPのみ規制することになります。

 おしゃぶりを使用する乳幼児は1日平均1時間以上口にしている実体や、2000年に塩ビ製手袋から溶出したDEHPが市販の弁当から高濃度で検出されたことなどの事件を経て、昨年7月に同審議会が食品衛生法の規格基準改正案に合意して約1年、ようやく規制が始まります。

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■食の安全、共同チェック/百貨店と取引メーカー

 百貨店業界が食品メーカーや販売会社などと組み、食品の表示と品質の厳正管理に乗り出しました。日本百貨店協会は売場の主要テナントと協議機関を設置、生鮮品や加工食品の安全性を共同で点検、表示内容を監視するほか、問題発生を防ぐ危機管理マニュアルを作ることにしています。

 25日に開く初会合には三越や高島屋、伊勢丹など主要百貨店各社と、食品会社では伊藤ハム販売や総菜販売のロック・フィールド、和菓子の虎屋など各分野を代表する7社が参加の予定です。百貨店1社あたり約200社がテナントとして入っていますが、今後これらの企業に参加を呼びかけ、最終的には取引ある大半の食品会社に参加を求めるようです。

 協議機関は

  • 問題を未然に防ぐための危機管理マニュアルの作成
  • 食品の安全性の知識を深める従業員教育
  • 表示のガイドライン作り

 などを目指しています。産地や原材料、品質などの表示を仕入れ段階から実際に商品が店頭に並ぶまで追跡・管理し、遺伝子組み換え食品や賞味期限などの問題も話し合うとしています。
生産者や物流段階での虚偽表示が横行している現在、最終小売業者、特に大手スーパーやデパートの独自品質管理体制は興味あります。

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■西友が「企業内環境税」/店舗から負担金徴収

 大手スーパーの西友は11日、二酸化炭素(CO2)排出に換算したエネルギー消費や廃棄物排出量に応じ、「企業内環境税」と名付けた環境保全目的の負担金を各店から集める制度を始める、と発表しました。同社によるとCO2排出に対し負担金を取る企業の取り組みは、全国でも極めて珍しいということです。2003年度までに制度を確定させ、04年度から全国240店で実施することにしています。

 負担金は、電気やガス、軽油の消費量、生ゴミ、廃プラスチックなどの排出量を年度ごとに集計、国の係数でCO2排出量に換算し、さらに1トン当たり1万円などと金額を定め、またリサイクル製品や省エネルギー型商品の売り上げなどで負担金を軽減する措置も導入するとしています。

 面白い取り組みで興味がありますが、消費者との関わりについても評価をしてもらいたいものです。たとえば廃プラスチックの食品トレーの回収量と店舗での使用量との比率、客数と持参の買物袋数の比率、投書箱の環境に関する意見数など実際にスーパーと消費者が一体となって環境負荷低減しているのかを見たいものです。

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■タクシーのランキング/東京タクシーセンター

 東京タクシーセンターは多摩地区を除く東京の法人タクシー事業者246社を対象に行った初のランキング結果を公表しました。これはタクシー会社のサービス向上を目的に同センターが新たに導入した制度で、優良ランクのタクシーがAA、Aマークのステッカーを張って走ります。評価は34項目で行う100点満点からの減点式で、乗車拒否や接客態度の悪さといった利用者の苦情を下に評価委員会(山内弘隆一橋大学院教授)が@法令遵守A旅客接遇B安全管理をベースに2001年度ランキングを決めたものです。その結果、苦情が皆無かきわめて少ない「AAランク」(90点以上)事業者は106社で、「Aランク」(76−89点)事業者は98社でした。苦情が比較的多い「Bランク」(61−75点)事業者は37社、苦情が多い「Cランク」(60点以下)事業者は5社ありました。AAランク、Aランク事業者の車両は今後約1年間、前後ドアに近いフェンダー後方部に、ランキングを表す丸いステッカーを張ることができ、利用者への接客サービスの向上が期待されるといいます。

 しかし、タクシー待ちの先頭の人が、「このタクシーは使いたくないのでお先にどうぞ」ということも多く、また川崎・横浜に展開する「Rバス」という、とても乱暴なバス・タクシー事業者もあり、独占的な路線・地域の問題を含めてサービス改善は難しいでしょう。国土交通省内に苦情専用窓口を設け、利用者が気軽に苦情を言えれば少しは改善するかも知れません。もちろんタクシー乗り場や駅構内、バス乗り場などに案内を掲示し、苦情記入用紙を置くなど積極的に苦情を収集する必要がありますが…。

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終わりに
 ASPニュース6月号で触れた千代田区の「歩きたばこ禁止条例」が24日の同区議会本会議で可決・成立、周知期間を経て10月1日から施行されます。しかし歩きたばこをする人に注意を促す環境作りも大事なことでしょう。看板だけではなく、周辺住民による取り組み、たとえば言葉による注意、灰皿や水の入った容器に捨ててもらうなど、知らずに通行してきた人への対応も必要だと思います。快適な社会環境を築くための、社会人としての努力を怠る日本人が多いので、条例施行後の禁煙実績が気になります。

 たとえば電車の中で騒ぐ子供に注意できない人、バス内で後ろにつめるよう声を出さない人・運転手、終日禁煙の駅ホームやエレベータ内でたばこを吸う人に注意できない人が多すぎます。迷惑だと思ったら意思表示し、目の前で人が困っていたら手をさしのべる、という当たり前の行動が出来ないのが今の日本人であり、皆が自覚しなければなりません。そうすれば中国瀋陽での事件は、まるで鏡の中の我々の虚像に見えてきます。

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